2012年7月27日金曜日

ナカゴー「黛さん、現る」

2012年7月26日 20時開演 王子小劇場
作・演出:鎌田順也
出演:佐々木幸子、鈴木純子、墨井鯨子、田畑菜々子、鎌田順也、高畑遊、篠原正明、甘粕阿紗子、菊池明明、飯田こうこ
高校時代の友人3人が都電の駅で待ち合わせて、もう一人の友人の家に行こうとしている。
どうもその友人がストーカー被害にあっているらしく、それを助けに行くつもりなのだ。家に着くと、そこには、昔所属していた劇団の仲間(カムヰヤッセンの甘粕阿沙子実名そのまま)もいて、じつはストーカー騒ぎはあっさり解決していたことがわかる。高校時代の話から、同じ美術部で事故でなくなった親友だった子を思いだし、喪失感のあまり海に行って死にたくなる。なぜか全員にそれが感染し、海に行こうとするが、一人夜アルバイトのある子が、正気を取り戻し、金槌を使った大立ち回りで阻止しようとする。
延々と続いた立ち回りの後、全員痛さのあまり正気を取り戻し、悪魔払いをして亡くなった子の記憶を忘れる。
あらすじをまとめてみると、荒唐無稽というか行き当たりばったりというか、何が言いたいのかわかりません。
それよりも気になったのは、最初の駅での会話が、妙に間の悪い訥々とした調子で始まったことでした。
現実の会話は考えながらしゃべるので、おかしなところに間があったり、話が途中で飛んだりしがちなものですが、それを再現したのかもしれませんが、舞台上で聞くとリアルには聞こえず、へたくそに聞こえるだけでした。
金槌の立ち回りまでは、少ししらけた雰囲気が漂いつつ、無理矢理話が進んでいきます。
立ち回りで、一気にヒートアップして、おもしろかったです。
もしかしたら、この立ち回りがやりたかっただけなのかもしれません。
次回公演は、見に行かないと思います。

ハイバイ「ポンポン、おまえの自意識に小刻みに振りたくなるんだポンポン」

2012年7月25日 19時開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:岩井秀人
出演:荒川良々、岩瀨亮、安藤聖、平原テツ、川面千晶、坂口辰平、永井若葉、師岡広明、岩井秀人
「ある女」に続いて2回目のハイバイ観劇。前半が、ファミコンをする子供の話。後半が、うさんくさい劇団の稽古の話。前半の子供パートは、荒川良々の個人芸炸裂。後半は、岩井秀人のあやしい芝居爆発という、一度で二度おいしいともいえる芝居でした。
巷では、ハイバイの傑作といわれているらしいですが、どこが傑作なのかよくわかりませんでした。
私のハイバイの興味は、岩井秀人の演技にあることは変わりませんでした。

2012年7月15日日曜日

範宙遊泳「東京アメリカ」

2012年7月11日 14時開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:山本卓卓
出演:大橋一輝、熊川ふみ、杢本幸良、浅川千絵、斎藤マッチュ、高木健、田中美希恵、福原冠、山脇唯、緑茶麻悠
作・演出の山本卓卓がTwitterで、「芝居の方法論を語るよりも、舞台上で役者がどれだけ生き生きしているかの方が重要だ。」というようなことをつぶやいていたので、見に行きました。本番直前の小劇場演劇の稽古場風景。思いつきのように様々な要求を出す演出家。
理解できないながら何とかそれに応えようとする役者。
なぜか、遅刻ばかりする演出助手。
はたまた、演出家と女優ができていたり、理屈で役柄を理解しようとする新人がいたり。
実は、この芝居を見た後、ある劇団の稽古に立ち会う機会がありました。実際の演出家も、結構、わがままな要求を矢継ぎ早に出していて、おかしかったです。
役者が実名で登場するすることや、演出家役の役者がいることで、現実なのか虚構なのかだんだん曖昧になっていき、降板した役者の代役に海王星人が現れたり、作り物のレーザーガンで人が死んだりします。
現実と虚構の間をぬっていく脚本と演出はうまいと思いました。
しかし、悪い芝居の時に感じたように、「前に見た気がする」感が否めません。
次回公演を見るかどうかは、微妙なところです。

2012年7月11日水曜日

悪い芝居「カナヅチ女、夜泳ぐ」

2012年7月10日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:山崎彬
出演:吉川莉早、呉城久美、植田順平、森井めぐみ、大河原瑞穂、村上誠基、渡邊圭介、、大塚宜幸、池川貴清、畑中華香、山崎彬、宮下絵馬
悪い芝居という魅力的な劇団名に誘われて、観劇しました。芝居をしていない役者も舞台上にいて、必要に応じて様々な役を演じていく形で、芝居は進みます。道具も学校椅子と机が二つくらい。窓や、扉などは、必要なときに役者が持って出てきたりします。
役者の若さとチームワークの良さで、話はテンポよくどんどん進みます。
物語は、河童と人間の合いの子の主人公蛍は、気持ちが高揚すると体が宙に浮いて、空が飛べる。なぜだかわからないが、高校卒業と同時に東京に家出するが、12年ぶりに故郷に帰ってくる。しかし、東京の12年間はおろか、故郷でのこともほとんど記憶がない。親友らの助けを借りて記憶をたどってみると、どうも自分は4年前に自殺したらしい。記憶がないのもそのせいらしい。河童の力で過去に飛んで帰り、自殺しようとしている自分を説得しようとする。
うーん、実に話がめちゃくちゃですね。私が肝心なところを聞き逃していたのか、勢いに乗せられて見過ごしていたのか、よくわかりません。
とにかくラストは、東京に夜行バスで着いたときのモノローグを、テンション高く繰り返して唐突に終わる。
十分楽しかったし、おもしろかったです。しかし、こういう芝居って前に見た気がするんですね。
役者がいつも舞台にいる。(出番でない人が、楽屋に引っ込まない。)
舞台の転換も役者がやることで、芝居の中に積極的に取り込んでしまう。
過去の自分を助けに行く物語。
うまくいったり、いかなかったりしていた芝居を昔、具体的にどれといえないけれど,
さんざん見た気がする。
別に、似ていてもいいんです。でも、そんなことが気にならないくらいおもしろいわけではなかったことが、少し残念です。

2012年7月9日月曜日

可児市文化芸術振興財団「高き彼物」

2012年7月5日 14時開演 吉祥寺シアター
作・演出:マキノノゾミ
出演:石丸謙二郎・田中美里・品川徹・金沢映子・酒井高陽・細見大輔・藤村直樹
人生を生きるということに、正面から取り組んで真摯に考える良質な作品。物語の展開は、ユーモラスで涙もあり、ラストはハッピーエンドで終わる。誰も、なんの文句もつけないような芝居でした。私も感動しましたし、泣きました。
ただ一つ気になるのは、ラストの終わり方です。
昔、TVの中継録画で、マキノノゾミ作・演出、森光子主演で「本郷菊富士ホテル」を見ました。大正から戦前にかけて、いろいろな文豪や哲学者、政治活動家が集まった本郷の菊富士ホテルを切り盛りする女将に森光子が扮して好演しました。また、がらっぱちな伊藤野枝を高畑淳子が演じて、印象に残っています。
この芝居のラストも、終戦後、焼けてしまった菊富士ホテルの跡地の屋台に、森光子が現れて再建を誓うというハッピーエンドでした。その時も、このラストは不必要だ、ない方が芝居の印象がより深まると思った記憶があります。
「高き彼物」でも、主人公が昔、高校教師を辞めた理由(宿直室で寝てしまった男子生徒に欲望を覚えて思わずオナニーをしてしまったことを恥じ、その学生を深く傷つけたことを恥じて退職する。)が、娘の婚約者として現れたその生徒により記憶にもないこと、転校の理由も両親の離婚による物であることがわかり、主人公の暗い噂は打ち消されます。また、肝臓癌だとの思い込みも、膵臓炎であるとわかり、ハッピーエンドを迎えます。
しかし、これはハッピーなことでしょうか?
「自分の過ちを自分の物として、自分の一部として生きる。」が、信条の主人公にとって、自分の一部として10何年一緒に生きてきた想いが、一瞬にしてなくなってしまったのです。これは、かなりの不幸だと思うのですが。

オフィスコットーネプロヂュース「コルセット」

2012年7月4日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:前川麻子
出演:伊佐山ひろ子・明星真由美・松永玲子・有園芳記・白井圭太・十貫寺梅軒
伊佐山ひろ子といえば、40年前の日活ロマンポルノで、おっぱいが小さくてもエロい人はエロいことを教えてくれた人でした。でも、それから40年たっているし、もともと映像の人で舞台経験はほとんどないようですから、大丈夫だろうかと心配しながら見に行きました。
結果は、ぎりぎりセーフという感じでしょうか。緊張のせいか、年のせいか、台詞が落ち着かず、周りに対する反応も鈍いものでした。その分、残りの二人の女優が大車輪の活躍でストーリーを進めていくという感じでした。
話は、新任の美術教師(明星真由美)が生徒と無理矢理関係を持ったという噂が流れ、事実無根にもかかわらず、噂だけがエスカレートして周りが右往左往してしまう。犯人は、中年の国語教師(伊佐山ひろ子)で、関係を持った生徒に捨てられると同僚の英語教師(松永玲子)の息子に手を出したり、美術教師の日記をねつ造して夫に読ませ仲を裂いたり、以前には音楽教師にストーカーしてやめさせたりする、極悪非道ぶり。
でも、舞台上では、我関せずのマイペースを貫くという不思議な感じでした。それを犯人と誤解される美術教師を演じた明星真由美が、思ったことを口にすぐ出す天然が入ったキャラクター全開で演じて、カバーしきっていました。
あて書きの台本だと言うことなので、役者の力量、性格を考えて、この構成になったものと思われますが、この不思議なバランスを作り出した作・演出の前川麻子の才能はたいしたものだと思います。
ぎりぎりセーフな伊佐山ひろ子でしたが、ラストの「愛なんかいらない」という台詞には、ゾクッとする魅力がありました。あれだけでも、伊佐山ひろ子が出てきた価値があると思います。
前川麻子の次回作は、ぜひ、みたいと思いました。

2012年7月4日水曜日

ままごと「朝がある」

2012年7月3日 19時30分開演 三鷹芸術文化センター星のホール
作・演出:柴幸男
出演:大石将弘
チケットを予約した後で、苦手な一人芝居なことに気がつき、キャンセルもできないので気が進まないまま、見に行きました。
課題曲のコンクールを模したような形で、同じ台詞をさまざまなバリエーションで語っていきます。独特なアクセントがリズムを生み、時々挿入される映像や照明がアクセントにになって、飽きさせない工夫がされています。しかし、地味な前半は正直半分寝ていました。後半は、声も振りも音も大きくなり、何とか起きていられました。
そして、最後には歌ってしまうのですが、これが微妙に音程がずれていて、笑っていいのか盛り上がるべきなのか心が迷ってしまいます。
動きもだんだんダンスのようになってくるのですが、発声に従って動きがあるという関係が明確にわかるので、あまり気になりません。しかし、歌は、新しい次元に入ると言うことなので、あの微妙な下手さ加減がとても気になりました。
演劇の枠を広げるのか、演劇を飛び越えた表現をめざしているのかわかりませんが、とても明快な方法論があることはわかります。
それが、どれくらい有効なのかなわかりませんが。
次回公演も、ぜひ、見たいと思います。

2012年第二四半期観劇のまとめ

2012年4月から6月に見た芝居は、以下の通り。
4月7日 リジッター企画「もし、シ」
4月12日 離風霊船「SUBJECTION」
4月17日 柿食う客「絶頂マクベス」
4月24日 チェルフィッチュ「現在地」
4月26日 毛皮族「軽演劇」

5月1日 ナイロン100℃「百年の秘密」
5月2日 サンプル「自慢の息子」
5月15日 桟敷童子「軍鶏307」
5月16日 イキウメ「ミッション」
5月17日 はえぎわ「I'm here」
5月19日 コーヒーカップオーケストラ「チャンス夫妻の確認」
5月25日 バナナ学園純情乙女組「翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)」
5月30日 東京乾電池「恐怖ハト男」

6月1日 温泉キノコ「コアラちゃんの世界」
6月6日 タテヨコ企画「鈴木の行方」
6月13日 五反田団「宮本武蔵」
6月20日 ネオゼネレータープロジェクト「The Icebreaker」
6月21日 長塚圭史「南部高速道路」
6月26日 競泳水着「Goodnight」
6月30日 チャリT企画「12人のそりゃ恐ろしい日本人2012」

の、20本。相変わらずの貧乏の中、よく頑張ったと思います。
この中で、ベスト3は、
離風霊船「SUBJECTION」
サンプル「自慢の息子」
長塚圭史「南部高速道路」
の、3本でした。
離風霊船は、私がよく知っている昭和の小劇団のにおいがする劇団でした。
サンプルは、人間の自立と依存に関して新しい見せ方をしてくれました。
南部高速道路は、劇中の時間の流れがすてきでした。

次点は、柿食う客「絶頂マクベス」、はえぎわ「I'm here」と、バナナ学園純情乙女組「翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)」です。
柿食う客は、登場した女優さんがほとんどかわいかったです。
はえぎわは、よく理解できていないですが、そのさわやかさがすてきでした。
バナナ学園純情乙女組は、あのパフォーマンスをどこまで維持して走り続けられるのか、見届けたいと思います。



2012年7月1日日曜日

チャリT企画「12人のそりゃ恐ろしい日本人2012」

2012年6月30日 14時開演 座高円寺1
作・演出:楢原拓
出演:熊野善啓、松本大卒、内山奈々、雷時雨、前園あかり、川本直人、小杉美香、北側竜二、海原美帆、岡田一博、原扶貴子、浪打賢吾、飯塚克之、大石洋子、おくむらたかし、久保田南美、平田耕太郎、堤千穂、小寺悠介、小見美幸、室田淫人、丸山夏未、津田拓哉、下中裕子
小劇場を見ているとここに所属している役者がよく客演しているので、それなら一度本体を見てみるかと思って、高円寺に足を運びました。
結果は、約2時間の間、全くおもしろくありませんでした。あまりにもおもしろくなかったので、私の見方が間違っているのかと思い、ネット上で劇評を探してみました。この作品の劇評は見つかりませんでしたが、過去の作品の劇評によれば、「前面でコメディを演じつつ、背景にシリアスな問題を展開して作品に深みをもたせる。」のが、この劇団の持ち味のようです。
しかし、私の見たところ、コメディらしい台詞の繰り返しによるギャグはただ叫んでいるだけで少しも笑えないし、背景にあるべきシリアスな問題(今回は、林マスミのヒ素事件から裁判員裁判の問題、ホームレスの派遣村問題、女子高生のいじめ自殺事件など)は、前面に並列に提示されて、芝居がばらばらでまとまっていないことを明確にしているだけでした。
東京乾電池の芝居には、簡単におもしろくないと言わせないようなわけのわからない迫力がありましたが、チャリT企画のこの芝居は簡単におもしろくないと言い切れてしまいます。
次回公演は、絶対見ないと思います。