2014年5月20日火曜日

清水宏「清水宏の情熱コント大陸」

2014年5月18日 19時開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出・出演:清水宏
INGELプロデュースの「鮫に食われた娘」で、野口かおると互角にやりあったり、KAKUTAの「秘を以て成立とす」でいつも怒っている大工のペルソナをハイテンションで演じて、気になっていた清水宏の単独ライブを見にいきました。
私の中では「役者」に分類されていたのですが、エジンバラのフリンジフェスティバルに毎年出ていたりして、「コメディアン」の活動に軸足を置いているようです。
自分のコントを複数舞台にかけていくのですが、ネタによって出来不出来が激しく、困ってしまうようなネタ「プロレス三本勝負」があるかと思えば、一人芝居のように完成度が高い「ウルトラセブンに告ぐ」があったりで、本人の性格をそのまま表しているかのように、複雑ではちゃめちゃな舞台でした。
特筆すべきは各々のネタの出来不出来ではなく、見終わった後、感動的な大ネタ「ウルトラセブンに告ぐ」の後に、「やる気満々男」として出てきて、わけのわからない小ネタを連発したにもかかわらず、清水宏という男を大好きになっているということです。素直に応援したくなる。また、見にいって大きな声で笑いたくなる。清水宏の人間の魅力に心打たれた一晩でした。


娯楽天国「ゴドーを待ちながら」

2014年5月18日 13時開演 下北沢OFFOFFシアター
作:サミュエル・ベケット
構成・演出:小倉昌之
出演:高畑加寿子、小倉昌之、関口英司、沢井エリカ、角野竜太、戸澤進
今まで見た「ゴドーを待ちながら」の中で自分が思い描く芝居に最も近い上演でした。ただし、それは方向性が近いということで、できあがりは色々と不満があります。
ポイントは、この芝居を喜劇ととらえて台詞を関西弁とし、帽子のやりとりなどのコメディの体芸をはっきりと際ただせた演出にあります。
関西弁にすることで、会話のリズムがはっきりとし、芝居の流れがスムーズになったことは大きな進歩です。また、テンポがよくなったことで要所要所で繰り返される「ゴドーを待つんだ」という台詞の意味がよりはっきりしてきます。ただし、それにたいするエストラゴン(高畑加寿子)の反応は、大げさなだけでいただけませんが。
さて、方向性が私の好みだということになると、次に気になるのはその到達点です。これは、残念ながら納得できるものではありませんでした。作者のサミュエル・ベケットはバスター・キートンとチャップリンのコンビで上演されることを望んでいたといわれていますし、日本でもツービート、星セント・ルイス、コント55号でやったら面白いのではないかといわれたりするように、漫才やコントの芸人が演じた方がよりよい舞台ができるでしょう。要するに演技を見せるのではなく、「素の自分」を見せているような演技が必要とされているのです。そこが、この芝居の面白いところであり、難しいところです。
多分、私の好きな戯曲 No.1であるこの芝居について、長年思っていたことが間違いではなかったことがわかって、嬉しいです。

2014年5月15日木曜日

財団江本純子「じんせい2ねんせい」

2014年5月13日 19時30分開演 下北沢小劇場B1
作・演出:江本純子
出演:佐久間麻由、羽鳥名美子、藻田留理子、鄭亜美、加藤啓、江本純子
2回目の財団江本純子の観劇でした。毛皮族の公演に比べてとんがったところがなく、その分喜楽に見られました。とんがった表現はそれが自分の感性にうまく突き刺さると、その衝撃もひとしおですが、外れた場合「なにやってるんだか。」となってしまいます。前回の毛皮族「ヤバレー、虫の息だぜ」の外れ感は相当なものでした。
主人公のさちこは、30才で自殺したが、なぜか妹の子供として生まれ変わり、何となくその自覚があるという設定で、2回目の人生を生きていく女性です。これがなかなかかわいらしく、生き生きと演じていて好感が持てました。周りの女性陣も結構極端な性格設定でおもしろおかしく好演でした。
はつらつとした女性陣の中で、狂言回し的な役割の江本純子だけが、どんよりした印象だったのが気になります。

2014年5月13日火曜日

砂地「3 crock」

2014寐ん月12日 14時開演 吉祥寺シアター
作・演出:船岩祐太
出演:小野健太郎、野々山貴之、とみやまあゆみ、日下部そう、中村梨那、NIWA、浦川拓海、小瀧万梨子、林愛子、尾崎宇内、高川裕也
河竹黙阿弥の「三人吉三廓初買」を基に現代語訳したような作品。緊張感の途切れない、シリアスで面白い芝居でした。複雑に絡み合う因果法王の下世話なストーリーがみごとに蘇り、現代の不安や消失感の物語になっていました。
ただ1つ気になったのは、その台詞が翻訳調というか台詞を言ってる感満載で、自然さがないところでした。もう少しこなれていればさらに面白くなっていたのにと言う思いが消えません。

快快「へんしん(仮)」

2014年5月10日 19時30分開演 駒場東大前アゴラ劇場
作:北川陽子
演出:快快
出演:大道寺梨乃、野上絹代、山崎皓司
私にはよく理解できない若手女性演劇人を、多少なりとも理解しようとする修行のような観劇も、限界に近づいてきたようです。前回の「6畳間ソーキュート社会」の批判的な印象にもかかわらず、また快快を見にいきました。
前回よりもさらにわけがわかりませんでした。理解不能と言うよりも、やってることが全く面白いと思えません。ゴリラの物まねや、鳴き真似、あれはいったい何だったのでしょう。こうなると、三田後でもいいから、どなたかに解説していただきたいものです。
当面の間、若手女性演劇人の芝居は見ない方が良さそうです。

2014年5月7日水曜日

離風霊船「運命なんてぶっとばせ!」

2014年4月29日 15時開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:大橋泰彦
出演:伊東由美子、松戸俊二、山岸諒子、小林裕忠、橋本直樹、江頭一晃、竹下知雄、瀬戸純哉、柳一至。栗林みーこ、祥子、松延春季、大迫綾乃、沙織、比留間彩理
初めて見たときには「昭和の小劇団」の古き良き雰囲気を今に伝えて面白かったのに、その後の作品は30周年記念公演の2作品は同じ装置で2本やるという企画自体に無理があったし、再演物はノスタルジーしか感じられない低調な物でした。久しぶりの新作と言うことで期待して見にいったのですが、残念な結果に終わってしまいました。
ストーリーは、サスペンスコメディ物でよくある感じだし、何よりも離風霊船の特徴だと思っていた大転換が一つもないところが残念です。
音楽でもそうですが、同時代感が感じられない物はノスタルジーとして語るしかないというのは、真実だと思います。
劇団の歴史に関係なく今を生きているという感性はとても大事です。出なければ、時代を超越できるような強力な個性がなければ、見ていて面白いわけがありません。