2016年1月30日土曜日

梅棒「OMG」

2016年1月28日 19時30分開演 吉祥寺シアター
作・総合演出:伊藤今人
出演:鶴野輝一、楢木和也、天野一輝、たかりん、Sun!!、遠山晶司、飯野高拓、五十嵐結也、櫻井竜彦、田中英恵、IYO-P、池田遼、ザンヨウコ、小坂奈央美、早瀬さくら、工藤広夢、ひこひこ
豪華二本立ての二本目、初期の作品の初の再演もののようでした。「OMG」は、「Oh My God」の略だと思うのですが、例によって意味はありません。
最初、バスケのスポーツ学園物で始まるのですが、途中からギャングとC.I.Aのアクションバトルになるという謎の展開でした。ラストに梅棒らしい荒唐無稽差が少し現れるのですが、それも不発に近く、何となく終わってしまいます。何よりも、登場人物達が物語の中に安住していて、ストーリーの殻を破って「踊ることが何より好き。」と、飛び出してこないことが面白くなかった一番の原因です。まるで、ダンスでストーリーを説明している下手くそなミュージカルのようでした。

梅棒「風桶」

2016年1月28日 15時開演 吉祥寺シアター
作・総合演出:伊藤今人
出演:遠藤誠、正安寺悠造、西野正崇、塩野拓矢、梅沢裕介、野田裕貴、菊池祐太、照沼大樹、原田康正、Na☆、中林舞、七味まゆ味、稲葉麻由子、土倉有貴、YOU、楢木和也、KENZO MASUDA、伊藤今人
多くの外部からの出演者を招いての豪華二本立ての一本目、「風桶」は多分、「風が吹けば、桶屋が儲かる」を略したものですが、意味はありません。
ストーリーは、人気絶頂のロックバンドが江戸時代にタイムスリップして、勧善懲悪の大活躍をするというものですが、たいした意味はありません。
今回は初の髷ものと言うこともあり、見ていてその昔学生のころ照明のバイトをしていたニューハーフショーを思い出しました。ニューハーフの人たちは、自分がより美しくより目立つように、衣装を選び、踊り、唄います。それと同じように、梅棒は、「俺たちは踊りたいんだ。踊ることが何より好きだ。」というために、舞台に立っていることが十二分にわかります。そのためのストーリーであり、衣装であり、装置なのです。
本来ダンスは、「言葉で言えないことを表現するために踊る。」ものだと思うのですが、それだと、普段芝居を見ている私などは、そのストイックさに負けてフラストレーションだけが溜まりがちですが、梅棒は「ダンスが好きだ。」としか言っていないので、それなら私でもわかるし、共感、感動できるのです。逆に
ダンス好きの人にとって、梅棒がどう写っているか知りたいところです。
客演で、柿食う客の七味まゆ味が出ていたのですが、そこそこ踊れていて、失礼ながらびっくりしました。ただ、横で踊っているのが振付もできる中林舞なので、少々、見劣りしましたが、顔の大きさと不気味さでは勝っていました。
俳優座の「クロスジンジャーハリケーン」の時に、伊藤今人の足の短さが印象的だったのですが、今回、和服を着るとぴったり。出演者の中で、一番似合っていました。

ハイバイ「夫婦」

2016年1月27日 19時開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:岩井秀人
出演:山内圭哉、猪俣俊明、菅原永二、田村連太郎、鄭亜美、平原テツ、川面千晶、高橋周平、岩井秀人
今や人気劇団となって、1ヶ月近いロングラン公演でもなかなかチケットのとれないハイバイを見てきました。
芝居は、山内圭哉と猪俣俊明という二人の芝居巧者が夫婦役で、なんの破綻もなく進んでい
くのですが、芝居の出来不出来と関係なく、私には受け付けないところがありました。岩井秀人の戯曲には、「ヒッキー・カンクーントルネード」、「手」、そしてこの「夫婦」という自分もしくは自分の親族を描いた私小説の演劇版、「私演劇」とでもいうべき流れと、取材などをして書かれたであろう「霊感少女ヒドミ」、「ある女」、「おとこたち」という2つの流れがあるのですが、その私演劇のほうが私は苦手なようなのです。理屈では、私演劇であろうとも登場人物は岩井秀人の創作物であるということはわかっているのですが、実際見るとやはりいけません。あの人達がどこかで生きているのだと思えて、見ていて落ち着きません。どうしても、芝居に集中できないのです。

田上パル「合唱曲第58番」

2016年1月25日 19時30分開演 こまばアゴラ劇場
作・演出:田上パル
出演:安村典久、飛知和寿輝、日高啓介、高橋義和、飯田一期、野田慈伸、緒方和也、長野海、江花明里、能島瑞穂、伊藤昌子、福田健二
スケジュールがなかなか合わず見に行けない劇団だった田上パルを、やっと見に行けました。スケジュールが合わず見られない劇団は、いざ見てみると残念なことが多く、田上パルもそんなに期待しないで見に行ったのですが、これが失礼ながら面白くてびっくりしました。
多分作者の実体験を元に作られているであろう、九州の片田舎の小学校から中学卒業までを、様々なエピソードをつないで描かれていきます。小学校の時、教師の失言から引きこもりになった一人の生徒を中学の卒業記念公演に無理矢理引きずり出して、ハチャメチャな鶴の恩返しを上演してしまうところをクライマックスに、明るくさわやかに進んでいくところに、素直に好感が持てました。
「月光のつつしみ」で、シリアスな芝居が素晴らしかった能島瑞穂が、さらりとコメディタッチの芝居をしていて面白かったです。特に、2回ほどシーンラストのオチで、映画の名台詞をつぶやくところが、全くオチになっていなくて、それがかえって微妙なおおかしみになるところが素晴らしいです

テアトロコント Vol.4

2016年1月22日 19時30分開演 渋谷ユーロライブ
出演:さらば青春の光、ナカゴー、東葛スポーツ、チョップリン
東葛スポーツが出演するというので、見にいきました。生でコントを見るのは、生まれて初めての体験でしたが、いかにテレビで見るコントが笑えるように整備されているのかということを痛感しました。芝居の中の笑いは、ある程度時間をかけて芝居の流れの中で笑わせられるので、周囲と関係なく面白ければ笑えるのですが、コントの場合時間が短いので、雰囲気ができておらず、少しの面白さだと周囲に気兼ねして笑わないことが良くありました。テレビだと、少しでも面白いと笑い声をかぶせてあるので、安心して笑えるのですが、ライブではそれは難しいです。逆に言えば、短い時間で笑わせる難しさに気がつきました。
さらば青春の光は、キングオブコントの上位常連ということですが、下ネタを連発する勇気はよしとしても、あれがいつものできならキングオブコントもたいしたことないと思えるできでした。ナカゴーは、いつも通り、短い分、さらにどこが面白いか全くわかりませんでした。東葛スポーツは、1月末の公演の抜粋だと思われるものでしたが、あれではいいも悪いもわかりません。チョップリンは、最初のコンビニのネタがわかりやすくてこの日、一番面白かったです。
チラシのあおりに、「コントは,既存のフォーマットを破壊する短い演劇であり、未来の演劇の実験場である。」と書いてありましたが、この日を見る限り、「既存のフォーマットを破壊できるかもしれない。その可能性は、否定できない。」くらいが、正しい現状認識だと思います。

清水宏「海外コメディ・チャレンジセレクション」

2016年1月19日 19時30分開演 下北沢シアター711
作・演出・出演:清水宏
昨年秋にやった海外コメディ奮闘記の再演のようなシリーズです。日によって演目が違い私が見に行けた日は、「今治タオル編」でした。
要するに、スポンサー探しの話なのですが、これがい
けません。これまでの海外フェスティバルの話は、完全にドンキホーテな話で彼の情熱ややる気がいかに空回りしたのかという、元々笑い話の要素が多いストーリーなのですが、スポンサー探しはどうやっても、
「お金をもらいに行く」という生臭い話なので、清水宏の熱量をもってしても生臭さが消えません。最終的に今治の池内タオルというスポンサーを獲得するのですが、そのスポンサーに対する配慮もあるのか、いまいち及び腰な感じもします。
そんなこんなで話は盛り上がらず、ラストのファンタジーも不発で爽快感のない話でした。

wits「マクベス The tragedy of Mr. and Mrs. Macbeth」

2016年1月16日 19時30分開演 シアターカイ
原作:ウィリアム・シェイクスピア
上演台本:wits(松岡和子訳による)
演出:西悟志
出演:チョウソンハ、池田有希子、佐藤友
Twitterのつぶやきで知り、慌ててチケットを予約して見にいきました。KAATの「ピノキオ」で好演していた池田有希子が、二人芝居でマクベスをどう演じるのかという興味だけでしたが、結果、今まで一番面白いシェイクスピアでした。
簡単にいうと、漫才の形を借りた芝居で、地の文や役柄の説明を漫才でして、そこから体を一回転することや、お互いの立ち位置を入れ替えることで役に入っていき、演じていくというやり方で、ダイジェストにも関わらず、それを感じさせずにマクベスをやりきって、見事の一言でした。
何しろ、あの形容詞の連続のシェイクスピアの台詞が、なんの抵抗もなく聞こえてくるのですから、たいしたものです。
演出の西悟志は、昔、小鳥クロックワークスというかわいらしい名前の劇団をやっていて、今回は10年ぶりの演出だそうです。何か、私が見たいと思っていていつもスケジュールが合わないHula-Hoopersと関係が深いようで、益々、Hula-Hoopersに興味がわいてきました。

シンクロ少女「ファニー・ピープル」

2016年1月15日 14時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:名嘉友美
出演:泉政宏、満間昂平、用松亮、中田麦平、浅野千鶴、名嘉友美、小野寺ずる、しまおみほ、田中のり子
シンクロ少女の公演は今まで3回ほど見にいきました。テーマが一貫していて、「人はそれぞれ心に闇の部分を抱えていて、それでもより幸せになろうとしている。」と唱えていて、それはそれで1つも反対するところはないのですが、随所に挟み込まれる「笑い」の部分や、突如として始まる歌と踊りがうまくこなれていなくて、ぎくしゃくするのが気になって、あまり積極的に見にいく気になれない劇団でした。今回見にいったのは、1年ぶりの公演でどう変わったのか知りたかったのと、浅野千鶴が出演すると知ったからでした。
1年ぶりの公演も、芝居自体はあまり変化はなく、一貫したテーマの追求は偉いとも言えますが、代わり映えのしない芝居にもみえてしまいます。
高校時代、ずっとつるんでいた男と二卵性双生児の兄と妹。男は、高校教師の女性と不倫関係になってしまい、町にいられなくなって駈け落ちしようとしたところを旦那に見つかり、女性は殺されてしまいます。男はそのまま行方をくらませます。双子は、お互い恋愛感情を抱きますが、決定的な関係になる前に妹の方が家出します。それから15年経ち、男が町に帰ってきます。兄にとっては、止まっていた時間がまた動き出します。昔と同じように男とつるみ、遊び出す兄でした。兄は、時々マリファナを浮かしながら時間をやり過ごし、前に進むことを拒否していたのでした。
しかし、時間は待ってくれません。幼なじみの警官にマリファナ所持で逮捕された兄は、そのまま、家出します。今度は、それをじっと待つ男。やがて戻ってきた兄は、河原で男と再会します。妹なしでは前に進みたくない兄と、何とか前に進もうとあがく男、二人はもみ合い、川に落ちてしまいます。何とか這い上がってきた二人は、とりあえず目先のことをともに考えることで休戦します。
そこに、突然現れる妹、まるで許しを与える女神のようです。
というのが、粗筋なのですが、その女神のような妹が浅野千鶴で、声質もあるのでしょうが
一人クールで、他の役者の淡々としているようで実はしめった演技とは、一線を画していました。

ロロ いつ高シリーズ Vol.2「校舎、ナイトクルージング」

2016年1月14日 19時30分開演 横浜STスポット
作・演出:三浦直之
出演:亀島一徳、島田桃子、望月綾乃、大石将弘、北村恵
2016年最初の観劇は,ロロでした。昨年から始まった高校演劇大会ルールに乗っとった「いつ高シリーズ」の第二弾ということで、やはり約1時間の上演でした。
前作はやや、尻切れトンボに終わった感があったのですが、今回は同じ1時間でも山あり谷ありの充実した1時間でした。
お話しは、窓際に写っていた幽霊を探しに夜の教室に忍び込んだ三人の高校生が、ラジオネーム逆乙女と称する、昼間学校に来ないで夜忍び込み、前日に仕掛けたヴォイスレコーダーを聞いて昼休みの感覚を味わう引きこもりや、その引きこもりと仲良しで、幽霊らしくないことに悩んでいる幽霊に出逢うというストーリーです。いつもながらのしらけないぎりぎりのナイーブさが溢れ、「実在するファンタジー」としても高校生活が描かれ、とてもおもしろかったです。
それにしても、島田桃子は木ノ下歌舞伎の「心中天の網島」の時は、花魁の役なのに単なるバカな小娘にしかみえないし、今回も女子高校生のはずなのにおばさんのコスプレにしかみえませんでした。役柄と存在がいつもかなりずれているのはネライなのでしょうか?
劇中、大石将弘が映画「GO」の窪塚洋介の物真似をするのですが、その映画を見ていない私でも、あの一本調子な台詞のしゃべり方は窪塚洋介に違いないと思わせる不思議な説得力を持った物真似でした。
第三弾の予定もあるようなので、とても楽しみです。