2014年3月20日木曜日

ゲキバカ「男の60分」

2014年3月19日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:柿ノ木タケヲ
出演:西川康太郎、菊池裕太、鈴木ハルニ、石黒圭一郎、書川勇輝、伊藤亜斗武、伊藤今人
梅棒の伊藤今人が掛け持ちで参加しているということで見にいきました。
コンセプトは、梅棒と全く同じ、くだらないことを熱意と勢いだけでやりきる。笑ってしまうほど同じです。ただし、梅棒がダンス8割の芝居2割なら、ゲキバカは芝居8割のダンス2割という割合の違いはあります。
地点、サンプルとシリアスな芝居の後だったので、余計面白く感じたのかもしれません。
梅棒と同じで、年に1回くらい見るのはよいかもしれません。
小劇場を見る楽しみの一つに、「つぎの伸びしろに期待する」というのがあると思うのですが、梅棒もゲキバカもその楽しみはあまりありません。吉本新喜劇と一緒で、定番の笑いを楽しむのが正しい楽しみ方だと思います。

2014年3月19日水曜日

サンプル「シフト」

2014年3月18日 19時開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:松井周
出演:古屋隆太、奥田洋平、野津あおい、兵藤公美、武谷公雄、黒宮万里、市原佐都子
2007年に初演された作品の再演になるのだそうです。その頃から松井周の関心が、「閉ざされた集団」にあることがわかりました。ただし、松井の関心は。「度座された集団」それ自体にあるのではなく、そうであれば、極端な状況や、あり得そうもない設定をすることが可能になるのだからだと思います。それがだんだんとエスカレートして、最近の悪趣味な設定にまでなってきたようです。
初演は見ていないので、今回どの程度改訂がされているのかわかりませんが、悪趣味とか露悪趣味と呼べるほどのえぐさは見られません。
その悪趣味のバランスが絶妙だったのが「自慢の息子」で、あれがサンプルの最高傑作なのかもしれません。

2014年3月18日火曜日

地点「悪霊」

2014年3月17日 19時30分開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
原作:F. ドストエフスキー
演出・構成:三浦基
出演:阿部聡子、小林洋平、窪田史恵、根本大介、小河原康二、岸本昌也、河野早紀、石田大、永濱ゆう子
とても疲れた1時間半の観劇でした。3年前の幻の公演「河童」以来、地点の東京公演はほとんど見ているはずですが、回を重ねるごとに観劇の疲労度は増し、地点がどこに向かおうとしているのかわからなくなるような気がします。
今回は、1時間半の上演中ほとんどの時間を役者はひたすらぐるぐる舞台を走り、とっくみあい、わけのわからない言葉を叫び、時々ドフトエフスキーの言葉を喋るという状態で、気をつけていないと、誰が誰に話しているかということすらわからなくなるのでした。
誰もが役柄を誇張したしゃべり方をする中で、小河原康二だけが話し方が自然で、最後には彼が喋り出すだけで、ほっとする有様でした。

小池博史ブリッジプロジェクト「銀河鉄道 -Milky Way Train-」

2014年3月13日 19時30分開演 池袋あうるすぽっと
演出・脚本・振付:小池博史
出演・振付:津村禮次郎、白井さち子、小尻健太、南波冴、松尾望、石原夏美、谷口界
昔から名前だけは知っていたパパ・タラフマラの演出家、小池博史が、今どんなことをやっているのか知りたくて見にいきました。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフにしていますが、ストーリーをなぞるのではなく様々な人が一緒に旅立つようなイメージになっています。オープニングも、私服で客席から表れた出演者が舞台上で衣装に着替え、自己紹介をするところから始まります。その後、列車に乗り込み出発するのですが、それ以降、私には一つも面白いところがありませんでした。
確かに、能楽師、サーカスの芸人、ダンサーなど、様々なバックグラウンドをもつ出演者を違和感なく一つにまとめて動かす振付能力はたいした物だと感じましたが、本筋が退屈というか、見えてこないのは困ったものです。
Twitter上の好評も観劇の動機の一つだったのですが、あてにはならないことが、また証明された形です。

岩松了プロデュース「宅悦とお岩」

2014年3月7日 19時開演 下北沢駅前劇場
作・演出:岩松了
出演:安藤聖、梅宮万紗子、尾上寛之、亀田梨沙、児玉拓郎、小林竜樹、駒木根隆介、清水優、高橋ひろ無、滝沢恵、永岡裕、橋本一郎、藤木修、ジョンミョン、𠮷牟田眞奈
トラッシュマスターズの次の日に見たせいもあって、よい劇作家の条件には「性格の悪さ」が上げられるに違いないと思わせるような芝居でした。昨年秋のハイバイの公演「月光のつつしみ」の本が面白かったので、最近の岩松了はどんな感じなのか知りたくて見にいきました。
四谷怪談の稽古をしている劇団の稽古場を中心に、横暴な演出家、その演出家に言い寄られている女流新進作家、当て馬なのに舞い上がって仕事をやめてしまった作家の幼なじみ、演出家に反発して稽古にこない俳優などの複雑でどこか滑稽な人間関係を、過不足なく描いて面白かったです。
岩松了は、劇中で「岩松は、ぱっと見、人の良さそうなおじさんに見えるが、本当は性格が悪いらしいよ。」と、役者に言わせるほど性格が悪いですが、それくらいひねくれて物事を見ないと行き届いた脚本は書けないのかもしれません。
安藤聖は小劇場に出演しても花のあるよい女優だとは思いますが、いつ見ても何か堅い印象があります。頑固というか頑なに何かを守っているような気がします。それが見えなくなると、もっといいのになあと見るたびに思います。

2014年3月10日月曜日

トラッシュマスターズ「虚像の礎」

2014年3月6日 19時開演 座・高円寺
作・演出:中津留章仁
出演:カゴシマジロー、吹上タツヒロ、星野卓誠、龍座、村上洋康、井上裕朗、坂東工、林田麻里、川崎初夏
まめに小劇場を見て回っていると、定期的にチラシは目にするが、なぜかいつもスケジュールが合わずに見に行けない劇団ができてきます。今回は、そんな劇団の一つ、トラッシュマスターズを見てきました。今まで見ていなかったのはスケジュールの都合が大きいのですが、いつもチラシが暗くて地味な絵で面白そうに見えなかったのも理由の一つです。
物語は、人々の争い、戦争や、人種差別の原因を「人が、自分の心の矛盾に気づかない二している」ところに求め、それを気づかせ、教えていくのは、「心の専門家」である「劇作家」のつとめだと主張する主人公を中心に進んでいきます。実際、彼は自分の周りで怒る様々な争いに、誠実に勇気を持って行動し、説得していきます。実に明快で、新興宗教の教祖のお話を聞いているようでした。でも、私が芝居でみたいのは、そんなお説教ではありません。様々な矛盾の中で葛藤している人間であって、安易な解決策ではないのです。
きっと、この作者はまじめで優しい人間なのだとは思いますが、まじめだからと言って芝居が面白くなるわけではないのです。

2014年3月4日火曜日

ニッポンの河川「大きなものを破壊命令」

2014年3月3日 20時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:福原充則
出演・音響・照明:峯村リエ、佐藤真弓、中林舞、光瀬指絵
役者が芝居をしながら、音響・照明の操作を自ら行う芝居でした。その格好はジャージの上下にレッグウォーマー、スニーカー、膝当てまでつけて、左手には懐かしいウォークマンタイプのカセット、腰のベルトにはスピーカーとアンプとバッテリーをつけているという、芝居の衣装と言うよりは重装備のジョギングマニアのようでした。その左手のウォークマンのカセットを入れ替え入れ替え、 BGMを流し、照明の切替は舞台の各所に設けられたフットスイッチを踏むことで ON/OFFすることで操作するのです。物語は、首締めジャックをやっつけようとする熊谷の珍走団ビートルズと、鳥と戦うジャングルの脱走兵、お見合いを進められる小津安二郎の映画のような4人姉妹の話が、テンポよく切り替わって語られていきます。3年前の東日本大震災以降を受けての芝居らしいのですが、私にはその辺のことは少しも感じられませんでした。ただただテンポよく、切れのよい動きの中で話がどんどん飛んでゆく、その気持ちよさに笑っていただけでした。それにしても、4人の役者は大変だっただろうと思います。台詞、動き、カセットの入れ替え、フットスイッチを踏むタイミング。いくら練習しても、うまくいかないような気がします。それをほぼパーフェクトにやりきっただけでも感動ものです。