2013年8月29日木曜日

少年王者館「ハニカム狂」

2013年8月26日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作 : 天久聖一
脚色・構成・演出 : 天野天街
出演 : 夕沈、黒宮万里、宮璃アリ、池田遼、小林夢二、織田圭祐、谷宗和、石橋和也、丸山厚人、井村昴
レミングの上演台本を書いた天野天街が主催する少年王者館を見ました。台詞にそこはかとなく感じられる唐十郎の匂いが気になって、観劇後 Web で調べたところ、「小劇場第三世代」と呼ばれている結構古い劇団で、しかも本拠地は名古屋だとのこと、全く知りませんでした。今時珍しいアングラ感いっぱいの舞台は、それなりにおもしろかったのですが、唐十郎を超えようとして考え出されたと思える、「突然のリセットからの芝居の繰り返しの多用」は、「その先にあるのは行き止まりだろう」感も満載で、あらたな地平を感じさせるものではありませんでした。
開演前に行われた「誘導員のかけ声にあわせて、観客が膝半分づつ、真ん中に移動する客席詰め」40年前の人気小劇団では、お約束のように行われていて、観客の一体感を否が応でも高めていたものでしたが、今日では、おとなしく従う客の間には、そんな一体感も特にありませんでした。
いろいろと、昔を思い出させてくれる公演でしたが、今回でしばらくの間は十分という感じでした。

ミクニヤナイハラ プロジェクト「前向き、タイモン」

2013年8月25日 15時開演 駒場東大前アゴラ劇場
作・演出 : 矢内原美邦
出演 : 笠木泉、鈴木将一朗、山本圭祐
第56回の岸田戯曲賞受賞作品ということで、見に行きました。受賞理由として、「止めどなく流れ出る言葉のイメージが、ポジティブに戯曲を成立させている。」というようなことが書かれていたような気がしますが、私の見た限り、止めどなくあふれでる台詞のイメージに役者の肉体がついて行けず、ほとんど息も絶え絶えにもがいているという感じでした。
ポジティブということがキーワードであれば、リンゴ農家役の山本圭祐には、比較的言葉のイメージを膨らましていく余裕があったようですが、タイモン役の鈴木将一朗は、台詞が飛び抜けて多いせいもあってほとんど余裕がなく、喋れば喋るだけ悲観的なイメージだけが感じ取れました。

東京乾電池「真夏の夜の夢」

2013年8月22日 14時開演 浅草5656会館 ときわホール
作 : W・シェイクスピア
演出 : 柄本明
出演 : 西村喜代子、麻生絵里子、宮田早苗、鈴木千秋、田中洋之助、嶋田健太、血野晁修、西本竜樹、沖中千英乃、重村真智子、鈴木美紀、高尾祥子、杉山恵一、岡部尚、高田恵美、吉川靖子、有山尚宏、作間ゆい、飯塚祐介、池口十兵衛、中村真綾、太田順子、島守杏介、深堀絵梨、吉橋航也、川崎勇人、鈴木一希、前田亮輔、松沢真祐美、山口智子、茨木真之介、林摩耶、古屋正明、池田智美、重田未来人、柴田鷹雄、中井優衣、藤森賢治、矢戸一平、井下宣久、宇都宮五月、河野柑奈、川端美郷、庄司知世、本田彰秀、荒川楽、荒川暖
2回目の東京乾電池観劇でした。前回見たときにも思ったのですが、ほとんどおもしろいと思えない芝居なのに、どうしてああも自信たっぷりに演じられるのでしょうか。
なぜか、台詞の頭だけ英語で、そこではづみをつけて、一気に長い台詞をまくし立てる。おかげで、誰が喋っても全く同じに聞こえます。動きも、どたどたと動くだけで、いわゆる洗練されたところは少しもありません。なのに、あそこまで自信たっぷりにやられると、見ている方が間違っているような不思議な気分になってきます。
あれが老舗の力というものでしょうか?
次回作も、積極的に見る気にはなれないけれど、暇があったら見に行ってしまうかもしれません。

2013年8月18日日曜日

七里ガ浜オールスターズ「オーラスライン」

2013年8月16日 20時開演 新宿SPACE雑遊
作:前川麻子
演出:瀧川英次
出演 : 浅野千鶴、森田ガンツ、有川マコト、野口雄介、本井博之、一色洋平、瀧川英次
アンファンテリブルプロデュース「愛のゆくえ(仮)」で好演した瀧川英次が自身の演出で芝居をする、しかも脚本は前川麻子、これは見るでしょうということで見に行きました。
「オーラスライン」というタイトルと、出演者がほとんどおじさんばかりということから、何となく話の内容は見えてきてしまいますが、実際の話もほとんどその通りで、とあるなんとなく劇団四季をおもわせるミュージカルのオーディション会場に、各々勝手な理由で受けに来たおじさん4人と、まじめに受けに来た若い男女。気が弱くて、4年もオーディションを受けているのに,毎回審査前に帰ってしまう少女を励ますため、おじさんたちが自分勝手な動機を話し出す。
たぶん、当て書きであろうよく書けた台本と、おじさんの適度に力の抜けた演技で終始笑わせてもらいました。
残念なのは、まじめな動機で受けに来た若い男を演じた一色洋平で、極端な
な演技をしすぎて、見事に浮いていました。もっと、普通に演技すればふざけたおじさんたちとの対比で、おもしろくなったのに残念です。
おじさんたちの中では、本井博之の傍若無人さが,一番おもしろかったです。

マームとジプシー「COCOON」

2013年8月15日 19時開演 東京芸術劇場シアターイースト
原作:今日マチ子
作・演出:藤田貴大
出演 : 青柳いづみ、伊東茄那、大岩さや、尾崎紅、尾崎桃子、川崎ゆり子、橘高祐奈、菊池明明、小泉まさ、小宮一葉、中前夏来、鍋島久美子、難波有、長谷川洋子、的場裕美、山崎ルキノ、吉田彩乃、吉田聡子、李そじん、石井亮介、尾野島慎太朗
藤田貴大の演出方法「リフレイン」が進化して、新たな表現域に到達したことを感じさせる公演でした。今までの芝居では、一つの事柄についての「リフレイン」が様々な方向から順番に行われ、イメージが多方面から現れていく,どちらかといえば、静かに物事が進んでいく感じだったのが、「COCOON」では時には、「リフレイン」同士がぶつかり合ったり、突然、前の「リフレイン」が現れたりして、そのことが混沌と恐怖を一層強調していました。
独自のアクセントで語るというと、どうしても早稲田小劇場の「劇的なものを巡って」を思い出してしまうのですが、今のマームとジプシーはそんなことは関係ないオリジナリティを手に入れたと思います。
役者で圧巻なのは、やはり、青柳いづみ
でした。彼女が発する台詞は、口から出た瞬間に独自に存在感を獲得して,空間に存在するようでした。ほかの役者の発する台詞が,その体から離れては存在できないのに、彼女だけだが空間に台詞を置くことに成功しています。
実に不思議な存在です。

2013年8月4日日曜日

INGELプロデュース「鮫に食われた娘」

2013年8月3日 18時開演 渋谷シブゲキ
作・演出:ブラジリィー・アン・山田
出演:櫻井智也、朝比奈慧、高山奈央子、諫山幸治、武藤心平、堤千穂、三科嘉代、守田菜生、藤森祐輔、水野裕介、若松健治、野口かおる、清水宏
最近気になる女優、野口かおるめあてで見にいきました。
野口の役がこの芝居の鍵となる役のため、彼女の振れ幅の大きい独特な芝居を堪能できましたし、その相手役の清水宏の、狂気とも思える芝居で野口の倍音成分の多い演技を正面から受け止める力量には、凄みすらおぼえました。
野口めあてという意味では、ここ最近の出演作の中ではぴかいちのできでしたが、それ以外では、プロデュース公演の欠点が目立つ芝居でした。
まず、演技の質がばらばらすぎて見ていてイライラしました。姉役の朝比奈慧は出てきたときから、宝塚の男役みたいだと思っていたら、本当に宝塚出身でした。若手の女優は、3人とも芝居が下手すぎ。演出家にまともに演出してもらってないみたいでした。ライフセーバー役の武藤心平は、海パン一つでの力演が完全に空回りしていて、それを本人も自覚しているようで、時々、部隊の隅で所在なげに立っている姿だけが印象的でした。
主役の櫻井智也はがんばっていましたが、野口の芝居を正面から受けずにすかしているようなところが、私としては不満です。
あと、高山奈央子は、所属劇団の主宰者桑原裕子に芝居がよく似ていて、思わず笑ってしまいました。

カタルシツ「地下室の手記」

2013年8月2日 19時開演 赤坂レッドシアター
原作:ドストエフスキー
脚本・演出:前川知大
出演:安井順平、小野ゆり子
イキウメの別動部隊、カタルシツの旗揚げ公演は、ドストエフスキーでした。時代を現代に置き換えて、起こっていることは原作とほぼ同じですが、インターネットとかニコニコ生放送とか、現代のツールが様々取り込まれています。それも、ただ漫然と使われているわけではなく、安易なカタルシスに水をぶっかけるために有効に使われていて、面白かったです。安井順平の少しとぼけてクールな語り口を聞いているとついつい納得してしまいそうなところに、ニコ生風の書き込み、「GJ !」、「童貞乙!」などがプロジェクションでカーテンに流れると、はっと我に返って思わず笑ってしまう。
前川知大の緻密な演出力はたいしたものです。
出演者は二人ですが、ほぼ、安井の一人舞台でした。他の登場人物は、フィギアやダルマで表されていましたから、娼婦の役も会話の必要がなければ、フィギアになっていたかもしれません。
イキウメと並んで楽しみな集団が増えました。次回がいつになるかわかりませんが、また、見にいきたいと思います。