2015年11月5日木曜日

てがみ座「地を渡る舟」

2015年10月26日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作:長田育恵
演出:扇田拓也
出演:清水伸、俵木藤汰、三津谷亮、伊東潤、川面千晶、近藤フク、福田温子、松本紀保、西山水木、今泉舞、箱田曉史、岸野健太、中村シュン、横山莉枝子、酒井和哉、峯崎亮介、谷恭輔、須田彩花
KUNIO12の「TATAMI」の時にも思ったことですが、よい台本とよい役者がいれば演出の仕事は新たな演出プランを追加することよりは、役者間の交通整理をしつつ、台本の意図を役者に伝えていくことに徹したほうが、よい芝居になりやすいということです。
演出家によって付け加えられたであろう、場面転換時の維新派のような群衆の往来や、ほっかむりをして半纏やどてらを着た名もなき民衆を表すような姿をした役者による転換、老農民と宮本常一の尾根道での会話を表しているのであろう、高さの違う丸イスを前に順繰りに送りながらそれを伝っていきながら会話するシーン、極めつけはラストの戦後すぐの群衆の往来が、段々現代の服装をした人々にすり替わっていくシーンなどが、芝居の内容を関係ないといいませんが,違和感を感じざるを得ない不要なシーンでしかありません。
芝居の内容は、渋沢敬三と宮本常一を中心に戦前から戦中にかけて戦争への熱狂とはうらはらな、地に足をつけて民俗学を通じて日本の原点を探す活動を描いたもので、昔の俳優座が好きそうな題材です。確かに,古き良き「新劇」を見ているような感じがして、演出としてはそれがイヤで様々な演出を考えたのであろうと推察できます。
しかし、台本がよくできているだけに小手先のプランを追加したくらいでは太刀打ちできなかったようです。
演出の扇田拓也は、オノマリコの「奇跡の年」で言葉の美しさを生かした端正な演出が記憶に残っていますが、ある種抽象的なオノマ台本と違い、あくまでも具体的で史実に基づいたこの芝居では、うまくフィットしなかったようです。

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