2013年4月8日月曜日

テアトル・ド・アナール「従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ攻勢の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行“─およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない”という言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか?という語り得ずただ示されるのみの事実にまつわる物語」

2013年4月3日 19時30分開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:谷賢一
出演:伊勢谷能宣、井上裕朗、榊原毅、西村壮悟、山崎彬
手で書いたら間違えずに書き写すことが不可能なほど長い題名が、すべてを言い表しているような芝居でした。しかし、それは中身がないという意味ではなく、それにふさわしい内容の充実した芝居でした。始めて谷賢一の作・演出を見たのは、俺とあがさと彬と酒とというプロジェクトによる「マクベス」でしたが、その時の印象は、「若さゆえの勢いと未熟さ」でした。しかし、今回はうってかわって大人な感じのがっしりした思考実験にも似た落ち着いた芝居に仕上がっていました。
第一次世界隊のオーストリアの最前線の兵舎という生と死が隣り合っている場所で、人間の様々な本性がむき出しになっていく中で哲学的考察を続けるウィトゲンシュタインが、有名な命題「およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない」にたどり着く過程を、イギリスにいる友人の亡霊との対話や、周りの兵士たちとの対立を通じて、わかりやすく描いて行きます。
実に見応えのある105分間でした。
悪い芝居の中では、少し嫌味に感じる山崎彬の芝居も、今回のアンサンブルの中では、即物的な人間性の迫力として感じられ、好演でした。
谷賢一としては、「語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない」という言葉の後に、「語り得ぬことを語るのは、芸術の仕事だ。」と、続けたかったのだろうと思います。

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