2013年1月11日金曜日

東京デスロック「東京ノート」

2013年1月10日 19時開演 こまばアゴラ劇場
作:平田オリザ
演出:多田淳之介
出演 : 夏目慎也、佐山和泉、佐藤誠、間野律子、松田弘子、秋山健一、石橋亜希子、高橋智子、山本雅幸、長野海、内田敦子、大川潤子、大庭裕介、坂本絢、宇井晴雄、田中美希恵、永栄正顕、成田亜祐美、波佐谷聡、李そじん
私の知らない理由で、4年間も東京での公演を休止していた東京デスロックの久しぶりの東京公演。それなりに力の入った公演のようで、劇場はいちめんに白のフェイクファーを敷き詰め、とことどころに同じく白のフェイクファーのベンチ、壁面上部には6面のスクリーンやモニターが設置され、映像加工された場内映像や、テキストが投影される。観客は好きなところに座り、その間を役者が歩きながら台詞を語る。場内全体が美術館のロビーという設定だ。
その昔、青年団の東京ノートを見たことがあって、どうしてもそれと比べてしまうのだが、青年団の方はワイドレンズで人物と背景を一度にとらえていて、しかも、その両方にピントがしっかり合っている印象だった。それにより、何気ない日常会話に遠いヨーロッパでの戦争という社会情勢が、様々な影響を及ぼしているという関係がはっきりと見えた。今回の芝居は、より人物をクローズアップしている演出で、それにより背景がぼけてしまっている感じがする。その結果、日常的な会話がどうでもよいものに聞こえて、印象が薄い。
演出家は、この観客と役者を同一レベルにおくという演出を選んだときに、観客の存在をどのように考えていたのだろうか?装置の一部として考えていたのなら、観客に対して失礼な話だと思うし、観客と役者の相互作用を目指していたのなら、もっと積極的な仕掛けが必要だったと思う。
もう一つ、オープニングで、スクリーンに投影された「Where did you come from?」「When did you come here?」というテキスト(一部うろ覚えだが)に答えるように、役者達が自分の経歴を口々に喋るシーンはなんだったのだろうか?
私は、寺山修司の「書を捨てよ、町に出よう」という映画に同じようなシーンがあったのを思い出してしまったが、演出家の意図がよくわからなかった。役者の衣装が、その後の劇中と違っていたから、地の部分での語りだったことは間違いなさそうだが。
全体に、演出の頭の中だけが先走っていて、舞台に具現化されていない消化不良な作品という印象だった。

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