2013年5月26日日曜日

ハイバイ「て」

2013年5月21日 19時30分開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出 : 岩井秀人
出演:猪股俊明、岩井秀人、平原テツ、佐久間麻由、富川一人、上田遥、永井若葉、高橋周平、奥田洋平、小熊ヒデジ、青野竜平、用松亮
Twitterでの評判では、「岩井秀人の自伝的戯曲にして、最高傑作。何度見ても号泣。」「どうしてこの戯曲で岸田戯曲賞が取れなかったのか。」などと書かれていますが、私には今ひとつピンときませんでした。どうも私は、この戯曲や、「ポンポン………」などよりも、「霊感少女ヒドミちゃん」や、「ある女」のような映像を使ったポップな作品の方が好みのようです。
話は、久しぶりに全員集まった家族が前半は次男の視点から、後半は母親の視点から描かれています。舞台上のレイアウトもそれに合わせて、180度ひっくり返ります。同じ話が視点を変えることで、違った側面を見せることになるという演出は面白いのですが、別にそれで謎解きになるというわけでもなく、それがどうしたという印象は拭えません。
確かにリアルなんでしょうけれども、カタルシスを感じられないところが、納得いかないのだと思います。

離風霊船「マインド2013」

2013年5月20日 19時30分開演 下北沢ザスズナリ
作・演出 : 大橋泰彦
出演:伊東由美子、松戸俊二、倉林えみ、江頭一晃、柳一至、栗林みーこ、祥子、松延春季、生津徹、川崎蘭子、沙織、秋月愛
4回目の離風霊船の芝居ですが、最初の新鮮さが薄れて普通の芝居に感じました。
2本目、3本目の「30」2バージョンが結構残念な出来だったので、「貴方はもっとできる子のはず」と勝手に期待して見に行ったのですが、残念ながら贔屓の引き倒しだったようです。
話は、ある日、珍しく早く帰ってきたお父さんの様子が少し変です。家庭に波風を立てるのを恐れるあまり、昇進を断ってきたと嬉しそうに話します。びっくりしている家族の前に、さらに3人のお父さんが帰ってきます。博愛精神にあふれ、2リットルも献血したり、もっているお金をすべて募金したりするお父さん。目の前の欲望に忠実に、食べたいウナギやトンカツをすべて買ってくるお父さん。ずる賢くて、銀行強盗をするお父さん。どうやら、満員電車の中で足を踏まれ続けたショックで、4人に分裂してしまったようです。
自分達が良しとする提案を勝手にしまくるお父さん達に、混乱する家族。ドタバタあって、結局今のお父さんを選ぶ家族に、選ばれなかったお父さんたちは自分たちの原点、子供の頃に帰ります。そこに、選ばれた今のお父さんも現れるのですが、自ら全く覚えがない(なぜなら、子供の頃には、現れていない資質だから)と言っている場所になぜもどってくることができたのでしょうか。
不思議です。
子供の頃の母親とのやり取りを見て色々思い出すが、結局、今更かんたに変えられないと呟いて、芝居は終わります。
正直な結末だとは思いますが、今、再演するならそれを突き抜けたところまで行って欲しかったです。それとも、これが年を取るということなのでしょうか。

2013年5月21日火曜日

イキウメ『獣の柱 ~まとめ*図書館的人生(下)~』

2013年5月15日 19時30分開演 三軒茶屋シアタートラム
作・演出 : 前川知大
出演:浜田信也、盛隆二、岩本幸子、伊勢佳世、森下創、大窪人衞、加茂杏子、安井順平
前作に続いて、「まとめ図書館的人生」というタイトルがついているので、また、幾つかの作品をつなげたオムニバス的な作品かと思っていたら、丸々一本の作品でした。いわゆる再演ということなのでしょうか?最近になってイキウメを見始めた私にはよくわかりません。
話は、ある日、突然、空から大きな柱が降ってきて、それを見た人間は、意識を失い、硬直してしまう。外部からの刺激がないと目覚めず、目覚めてもその間の記憶がない。ただ、目覚めるととても幸福な気分に襲われる。経済は崩壊し、物流も止まってしまった世界で、人々は何とかそれに適応し、やがて神と崇めるようになる。やがて、何十年もその状況が続くと、柱を見ても気絶しない新しい人間が現れ、自分たちの世界を作るため、旅立っていく。とてもSF的なストーリーでした。その時間お流れと関係性を、プロジェクションで年号を映写することと、同じ役者が自分の子供や孫を演じることで、重層的に表していて面白かったです。
芝居の本質とは全く関係ないことですが、一つとても気になったことがあります。イキウメの一連の作品や、砂地の「disk」の照明デザインは、小劇場の芝居を数多く手がけている松本大介さんがされているのですが、どの芝居も基本的にストイックな芝居で、アクティングエリアを区切ることと、若干の状況的な説明をする照明(夕方とか、夜とか)を組み合わせることで事足りてしまいます。芝居に合わせたストイックな照明と言っていいでしょう。それにフラストレーションを感じるのか、ラストに必ずと言っていいほど、照明的な遊びのあるシーンがありました。「Mission」での虹の七色のビームとか、「disk」でのラストのオーストラリアでのモノローグでの大量の生のライトの方向性で、朝から夕方までを表すシーンとかです。同業者として、気持ちがわかるような気がして、シンパシーを感じてしまいます。

酒とつまみ「もうひとり」

2013年5月14日 15時開演 下北沢 OFF-OFF シアター
作・演出 : 倉持裕
出演:村岡希美、池谷のぶえ
Twitter上での評判は面白かったと思う人しか書き込まないので、当てにならないと重々わかっているのに、ついつい書き込みが多いと気になって見に行ってしまいます。この芝居もそんな気分で予約をいれてしまいました。
Twitterの評判をまとめると、「名女優二人が丁々発止とやりあう報復絶後の爆笑1時間20分」ということになるのですが、そもそも、村岡希美、池谷のぶえの二人が名女優なのかと言われれば、疑問が残ります。確かに芝居はうまいと思いますが、名女優と呼ばれるような女優ならこのような二人芝居で示すであろう「私は名女優なのよ。ほら、こんなに芝居がうまいでしょ。」といういうなケレン味が、あまり見られません。下手をしたら嫌味にしか感じられないような事も、さらりとできる人こそ名女優だと思います。でなければ、時には芝居の枠を外れるくらいの熱演をして欲しいものです。この二人には、残念ながらそれが足りなかったような気がします。全ては想定内の演技といった感じがします。
話は、縁もゆかりもないのになぜかいる居候と、大家という不思議な関係の中年女二人。隣人は大家が洗脳されているのではないかと心配して乗り込んでくるし、大家の婚約者は居候の存在が気になってプロポーズできない。そんな不思議な二人の関係の話でした。
ストーリーで一番気になったのは、途中の居候の息子への電話で明らかになるのですが、どうも、居候の家族は、プロの居候とでもいうべき存在で、本人も夫もその息子も別々の家庭に居候しているらしいということでした。その顛末を芝居にしたら、とても面白そうな気がしました。




2013年5月13日月曜日

iPadでブログ編集その後

iPadでブログ編集をする方法ですが、その後、blogger.comの純正APPを見つけて使って見ました。これを使えば、オフラインでテキストの入力、編集もできますし、Wi-Fiでつながっていれば、公開もできます。今のところの問題は、写真の挿入はできるのですが、位置調整ができません。さらなる研究が必要のようです。
その後、いろいろ調べましたが、位置調整は無理のようです。これでは下書き用にしか使えません。やはり、最終調整はMacからやるしかないようです。

少年社中「ラジオスターの悲劇」

2013年5月9日 15時開演 吉祥寺シアター
作・演出 : 毛利亘宏
出演:森下亮(クロムモリブデン)、堀池直毅、井俣太良、岩田有民、甘浦裕介、加藤良子、杉山未央、山川ありそ、内山智絵、竹内尚文、桂亜沙美、中村龍介、松本寛也、川本裕之、江口愛、大山真絵子
芝居を見ながら、この感じは何処かの劇団と似ているとずっと思っていたのですが、途中で「あっ、キャラメルボックスだ。」と、気がつきました。作風とか、演技の質が同じだとかの話ではなく、両方ともエンターテイメント志向で観客を楽しませることに全力を尽くしている、その姿勢がよく似ているのです。しかし、この芝居をエンターテイメントとして見た場合、私が満足できるレベルには達していないと思います。
まず、ダンスが酷い。基本的に踊り慣れていない人たちのようで、振付は平凡、身体のきれもなく、人様に見せられるレベルではありません。
また、脚本は安物のロールプレイングゲームのシナリオみたいで、悲しい限りです。今時、「夢は諦めなければ必ずかなう。絶対に!」と言い切ってしまうなんて、恥ずかしくないのでしょうか。
ここまで書いてきて、自分のエンターテイメントに対するハードルの高さに気がつきました。これは、古くは藤山寛美の松竹新喜劇や、初期の東京乾電池、最近のシルクドソレイユが基準としてあるからでしょう。それらに無意識に比べているように思います。また、エンターテイメント志向というよりは、各々の現実を引きずり、舞台の上でなんとかそれに対峙しようとしている芝居には、シンパシーを感じて採点が甘くなっていると思います。

2013年5月7日火曜日

ミームの心臓プロデュース公演「focus」

2013年5月8日 15時開演 王子小劇場
ハイブリットハイジ座「皮にパンク」
作・演出 : 天野峻
出演:広井龍太郎、羊、城築創、牧俊平、田中裕子、南美櫻、木村圭介、田中亜紀、町田地獄、来栖玄都、櫻谷翔吾、神山慎太郎

ミームの心臓「東の地で」
作 : 酒井一途、演出 : 岩渕幸弘
出演:浦田大地、小林依通子

四次元ボックス「cicada」
作・演出 : 菊池史恩
出演:森山拳、三品優里子、佐藤修作、山口栞、宮崎卓真、朝戸佑飛、渡辺苑衣、曽我祥之、北川まりえ、菊池史恩
ブリットハイジ座ー早稲田大学、ミームの心臓ー慶応義塾大学、四次元ボックスー日本大学芸術学部、学生劇団3団体による合同公演でした。2500円で各々1時間程度の芝居が3本見られるのはお得でしたが、引き換えにお尻の痛みを我慢するという苦行が待っていました。
全体の印象は、よく出来た学芸会以上のものではありませんでした。しいてあげれば、ハイブリットハイジ座には見せ方の工夫という点で、一日の長がありました。テンポの良い台詞運び、トリッキーな動きには、お客をとりあえず楽しませようという努力が見えますが、それも何処かで見たようなものでしかありませんでした。
ミームの心臓は、いわゆる「イタイ」感覚をそのまま、正面切って展開するような芝居で、今更見せられても感想にも困るような代物でした。二人芝居で、女優の方が存在感を発揮していましたがそれも二人を比較した場合の話で、役者としてどうかといえば、スタートラインに立ったところという感じです。
四次元ボックスは、大学8年生で新入会員が6年間もいないオカルトサークルの部長、原田マサオ役の佐藤修作が唯一舞台の上で存在感を発揮していましたが、他の役者が学芸会レベルで目立っていただけでした。せめて、全体のレベルが佐藤修作程度まで上がってこないと、芝居が始まらないという感じでした。
舞台の上に上がったら、学生も、プロも、アマチュアも関係なく、興味はただ一つ、面白いか面白くないかだけです。突然、面白くなることはないので、学生の皆さんは日々、精進していただきたいと思います。
面白いという噂が広まったら、また、見たいと思います。


2013年4月26日金曜日

泥棒対策ライト「あ~あ」


2013年4月25日 20時開演 吉祥寺キチム
振付・演出 : 下司尚美
出演:大庭裕介、近藤彩香、佐々木冨貴子、白倉裕二、下司尚美
ダンスの公演は、その独特のストイックな雰囲気が苦手で積極的に見にはいかないのですが、この公演は急に入ってきた仕事の都合で、観劇のスケジュールを組み直さなければいけなくなった時に、チラシを見て一発で見に行くことを決めました。「あ~あ」という脱力感満載のタイトルのせいかもしれません。結果はとてもゆったりした気分のまま、楽しく1時間を過ごすことができました。これは、振り付け・演出の下司尚美の肝っ玉母さん的な人柄からくるところが大きいと思います。本人自ら、客入れを行い、トイレの心配をし、前説までして、そのまま、本番になだれ込むという大活躍でした。出演者も、ダンスのトレーニングをしていたのは近藤彩香ただ一人で、残りは、下司を含めて正式なダンスレッスンを受けたこともない役者ばかりでした。ダンサーとしてみると、決してうまくはないが、それぞれの頑張りと解釈で踊っていて、面白かったです。特に、背が小さく手足も短い佐々木富貴子が、踊れていないなりに、がんばって工夫している姿は、面白かったです。また、それを良しとしてうまくまとめた下司の力量はたいしたものです。会場も、劇場ではない地下のカフェで、客とダンサーの距離が近く、それが否応無く一体感を醸し出して、楽しめました。
前日に見た「レミング」が、この何十倍ものコストと人間を動員して出来上がっていたのと比べても、満足度としては、こちらの方が上でした。

「レミング」


2013年4月24日 14時開演 渋谷パルコ劇場
作 : 寺山修司
演出 : 松本雄吉
出演:八嶋智人、片桐仁、常盤貴子、松重豊 他
寺山修司の言葉が未だに古びていないことが確認できた芝居でした。唐十郎の言葉が、まだ見ぬロマンスを語る言葉だとすれば、寺山修司の言葉は、存在しないノスタルジーを語る言葉だと思います。ただ、ロングコートに山高帽で舞台を上下に行進するコロスたちは、その言葉とは明らかに異質でした。維新派の舞台を見たことのある人によれば、あのコロス達は「とても、維新派風」なのだそうです。コロスのストイックな動きは、過剰なまでにロマンチックでノスタルジックな寺山修司のイメージを拡大するためには、決して役立っておらず、静かな異物としてなぜかそこにあるという感じでした。

水素74%「半透明のオアシス」


2013年4月23日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター
作・演出 : 田川啓介
出演:斎藤淳子、浅野千鶴、兵藤公美、斎田恵子
知人から面白いと噂を聞いて、見に行きました。私の中では、「青年団系」と分類される人のプロデュースユニットです。
見て、なぜ私が「青年団系」の芝居を積極的に見にいかないのか、その理由を再確認しました。
いわゆる「現代口語体演劇」とか、「静かな演劇」と呼ばれる芝居は、一見、素材の味を重視したほとんど調理しない料理のように見えますが、実際には余分な台詞を排除し、なにげない台詞を目的に向かって厳密に並べていくという、かなり高度な脚本力、演出力、役者の演技力が必要となってきます。そのどれかの不足を補おうと自分なりのスパイスを効かせると、ただのよくある芝居になってしまいます。しかも、基本的に抑制された芝居ですから、脚本や演出の意図しない、役からはみ出してしまう役者の個性とか、とちった時の役者の素の部分とかを見る喜びは、ほとんど期待できません。
また、「静かな演劇」では、背景もかなり重要です。その芝居のおかれている社会情勢なり、心理的な背景が見えてこないと、単なる家庭内の愚痴の言い合いにしか見えなくなる危険性が常に存在します。
この水素74%の芝居も、残念ながらそのようなつまらない「現代口語体演劇」の一つでした。

庭劇団ペニノ「大きなトランクの中の箱」


2013年4月23日 19時30分開演 森下スタジオBスタジオ
作・演出・美術:タニノクロウ
出演:山田伊久磨、瀬口タエコ、島田桃依、飯田一期
マンションの一室をアトリエにして様々な作品を作ってきたらしい劇団が、老朽化によるマンション取り壊しに伴い、始めて外部で発表するはこぶね作品(箱舟とはアトリエの名前らしいです)の、第一作ということでした。スズナリの半分程の広さのスタジオに60名分のひな壇客席と、幅二間、高さ9尺ほどの額縁舞台をわざわざ作っての公演でした。額縁にはもちろん目的があって、それは、盆回しで四つの部屋を転換するためでした。しかも、そのうち二つは二階建て。ある意味、驚愕の舞台装置でした。
物語は、エディプスコンプレックスをそのまま芝居にしたようなストーリーで、ペニスのオブジェや、射精を思わせるシーンがふんだんに出てきます。普通の劇場であれば白けてしまうと思われますが、あの狭い空間では観客も共犯意識を知らず知らず持ってしまうので、白けることもありませんでした。
何より面白かったのは、あの空間を選び、執拗なまでにこだわった芝居つくりをした演出家の執念でした。偏執狂とも思えるこだわりは、怖いほどでした。

2013年4月21日日曜日

iPadでブログ編集

iPadを購入した目的の一つは、Macを使わずにiPadだけでブログの編集をすることでした。
買ってすぐにトライしてみましたが、なぜかログインはできるもののその先に進めず、あきらめていました。ところが、先ほど何の気なしにiPadからログインしてみたところ、するすると編集画面までいけてしまいました。前回は、何がいけなかったのでしょう。全くわかりませんが、終わり良ければすべて良し。大きな前進です。
今までのブログ編集の流れは、
1.iPhoneかiPadのメモで,文章を入力。
2.写真は、iPhoneで撮って、iPhotoに保管。
3.Macから、iCloud上のメモにアクセスして、文章をコピーペースト。
4.写真は、Mac上でPhotoshopでトリミングして、アップロード。
というものでした。
下書きはiPadでできるが、編集、アップロードにMacが必要でした。
それができることがわかったので、後はiPhoneからiPadに写真を持ってくる方法だけです。
それもWebで検索したところ、いろいろな方法があることが簡単にわかりました。様々な方法を比べて見ましたが、私の目的にはDropboxを経由するのが一番向いているようです。「設定」の「プライバシー」の「写真」のDropboxの項目をONにするだけで、アップロードダウンロードが簡単にできます。後は、iPadのPhotoExpressでトリミングすれば、OKです。
これで、どこでもインターネットにつながりさえすれば、ブログの更新ができます。
と思って、iPadでトライして見ましたが、Web上での写真のレイアウト変更がうまくできませんでした。結局、最後はMacからアクセスし直して、レイアウト調整を行いました。ここをクリアできれば、当初の目的が達成できるのですが、さらなる研究が必要なようです。
ちなみに、この文章も、iPadからアップロードしてみましたが、Web上でコラム内のスクロールがうまくいかず、結局、Macから編集しました。

Straw&Berry「マリア」


2013年4月17日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:河西裕介
出演:野田祐貴、百花亜希、鮎川桃果、金丸慎太郎、松澤匠、野田滋伸、佐賀モトキ、岡野康弘、岩本えり
手書きをそのまま印刷したようなチラシに惹かれて見にいきました。「絶望」と「再生」をテーマだと言っていますが、中身は明らかに神聖かまってちゃんのの子をモデルにした躁鬱病のバンドマンのわがままいっぱいの恋とセックスと失恋の話で、この年になると全く共感できるところがありません。輪をかけてわからないのが、「おまけ演劇」の「会沢ナオトインティライミ」です。「愛は地球を救う」と称してわけのわからない寸劇が上演されましたが、あれは何だったんでしょうか?
お客さんへのサービスのつもりでしょうか?こっぱずかしい芝居をしてしまったことの照れ隠しでしょうか?
私には全く理解できませんでした。
二度と見に行くことはないでしょう。

2013年4月14日日曜日

犬と串「左の頬」

2013年4月10日 19時30分開演 シアター風姿花伝
作・演出:モラル
出演:鈴木アメリ、二階堂瞳子、満間昂平、藤尾姦太郎、一色洋平、堀雄貴、石黒淳士、宮本初、萩原達郎
犬と串の鈴木アメリと、昨年解散したバナナ学園の二階堂瞳子のW主役なんですが、二人とも全く可愛くない。まず、それが残念でした。しかし、最大の残念はくだらないことを貫徹できなかったことです。くだらないことを、僕たちはこれがくだらないことだとわかってますけど、やります。という意識が見え隠れするところが、最大の残念でした。くだらなかろうがなんだろうが、これだと信じてやり抜く意思と熱意、それこそがくだらないけれど面白い芝居を作るのに、それをするには頭が良すぎるのでしょうか?
結局、よくある若者のダジャレ芝居になっていました。
次回作は、見ないと思います。


2013年4月8日月曜日

iPad 4


去年の12月にiPadを購入しました。
購入は前々から考えていたことですが、iPhone 5にしてテザリングができるようになったこと、iPadにもRetinaディスプレイが乗ったことが最後の購入動機となって、Applestore渋谷店に飛び込みました。
考えてみれば、iPhone 5にしたのも前に使っていたiPhone 4を間違ってiOS 6にアップグレードした結果、動きが緩慢になったのに耐えきれなかったせいでした。見事に、Appleの術中にはまったというべきでしょう。iPad購入の最大の目的は、夏に向けてハンモックに寝っ転がりながら、ウエブブラウズしたり、映画を見たり、読書をすることでした。また、外出時も、MacBookより手軽に持ち運んで芝居の感想を書いたり、ブログの更新もできればしたいというものでした。
買ったのは、64GBのWi-Fi専用の黒です。Wi-Fi 3G兼用は、テザリングできるし、LTEにはつながらないし、月々5000円払うのは、たまにしかつなげないのにもったいなさすぎると思って、最初から眼中にありませんでした。
約、4ヶ月使って見ての感想は、このサイズ、この重さでは、まだまだ大きいし、重すぎるというものです。
寝っ転がって使うには、手で支えているのには重すぎでした。すぐに手がくたびれてしまいます。
外出時には、やはり、直に電話回線につながらないのは、不便です。テザリングは、結構めんどくさいです。また、ブログの更新も今のところ成功していません。
結論としては、あれば便利だけれど、なくても大丈夫という感じです。
私の外出時の理想は、iPad Miniのサイズで、LTEにも対応したiPhoneです。そう思われている人も少なくないと思いますが、Appleはわかっていてもそんな機種は出さないでしょうね。自分のマーケットを荒らすだけで、パイが増えるわけではないですから。
とりあえず、夏までに、フレキシブルアームのついたiPadのスタンドを探しています。

ブルドッキングヘッドロック「少し静かに」

2013年4月4日 19時開演 下北沢ザスズナリ
作:喜安浩平
演出:西山宏幸
出演:山口かほり、帯金ゆかり、はしいくみ、星原むつみ、津留崎夏子、宮下雄也、嶋村太一、深澤千有紀、寺井義貴、篠原トオル、福原充則、喜安浩平、永井幸子、根本宗子、小島聴、藤原よしこ、岡山誠、猪爪尚紀
元バンドマンの劇団主催者が、本公演23本目にして初めての演出というチラシの裏情報に惹かれて見にいきました。
様々な演出上のアイデアに溢れた舞台でしたが、そのために芝居の焦点がぼけて、上演時間が延びただけの結果に終わっていました。
例えば転換ですが、セットが写実的ななため、転換しなければならない小道具が山のようにありました。それを役者達がシルエットの中、音楽に合わせて、踊りながら転換する。上手の壁には時間経過を表す日付が投影される。気詰まりな転換時間を少しでも面白いものにしようという考えでしようが、役者の動きが計算され尽くされていないので、へんにワサワサした落ち着かない時間になっていました。
芝居のテーマとしては、人と人のコミュニケーション、関わり方の難しさでしたが、ラスト、テルミンが故障して、偶然すべての人がつながってしまうのは、あまりにも御都合主義ではないでしょうか?その疑問を打ち消すためか、オーストラリアかニュージーランドのオールブラックスが試合前にやるアボリジニの戦いのダンスを全員でやるのですが、疑問は減るどころか、増えるだけでした。
芝居の楽しみの一つに前見た芝居に出ていた役者が、今回は別のキャラクターで出ているのを見ることがあると思います。今回は前々から気になっていた役者が多く出ていたので、その面では楽しかったです。
役者は面白かったが、芝居は残念というところでしょうか。

テアトル・ド・アナール「従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ攻勢の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行“─およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない”という言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか?という語り得ずただ示されるのみの事実にまつわる物語」

2013年4月3日 19時30分開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:谷賢一
出演:伊勢谷能宣、井上裕朗、榊原毅、西村壮悟、山崎彬
手で書いたら間違えずに書き写すことが不可能なほど長い題名が、すべてを言い表しているような芝居でした。しかし、それは中身がないという意味ではなく、それにふさわしい内容の充実した芝居でした。始めて谷賢一の作・演出を見たのは、俺とあがさと彬と酒とというプロジェクトによる「マクベス」でしたが、その時の印象は、「若さゆえの勢いと未熟さ」でした。しかし、今回はうってかわって大人な感じのがっしりした思考実験にも似た落ち着いた芝居に仕上がっていました。
第一次世界隊のオーストリアの最前線の兵舎という生と死が隣り合っている場所で、人間の様々な本性がむき出しになっていく中で哲学的考察を続けるウィトゲンシュタインが、有名な命題「およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない」にたどり着く過程を、イギリスにいる友人の亡霊との対話や、周りの兵士たちとの対立を通じて、わかりやすく描いて行きます。
実に見応えのある105分間でした。
悪い芝居の中では、少し嫌味に感じる山崎彬の芝居も、今回のアンサンブルの中では、即物的な人間性の迫力として感じられ、好演でした。
谷賢一としては、「語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない」という言葉の後に、「語り得ぬことを語るのは、芸術の仕事だ。」と、続けたかったのだろうと思います。

2013年4月4日木曜日

2013年第一四半期観劇のまとめ


1月3日 「新年工場見学会2013」
1月8日 「100万回生きた猫」
1月9日 ぬいぐるみハンター「ゴリラと最終バス」
1月10日 東京デスロック「東京ノート」
1月12日 生前葬「笑ってタナトスくん」
1月13日 長塚圭史「音のいない世界で」
1月19日 ナカミチ円陣「三人獅子舞」
1月19日 30 Years Godot「ゴドーを待ちながら」
1月20日 マームとジプシー「あ、ストレンジャー」
1月23日 毛皮族「ヤバレー、虫の息だぜ(仮)」
1月24日 タカハ劇団「世界を終えるための会議」
1月25日 トムプロジェクトプロデュース「熱風」
1月26日 砂地「Disk」
1月30日 サンプル+青年団「地下室」

2月2日 羽衣プロデュース「サロメ VS ヨナカーン」
2月3日 劇団宝船「撫で撫で」
2月25日 柿食う客「発情ジュリアスシーザー」
2月26日 ナイロン100℃「デカメロン21あるいは男性の好きなスポーツ」
2月27日 鹿殺し「BONE SONGS」
2月28日 扉座「つか版・忠臣蔵」
2月28日 レモンライブ「トリオ」

3月5日 KAKUTA「秘を以て成立とす」
3月12日 月刊根本宗子「今、出来る、精一杯。」
3月14日 松尾スズキ「マシーン日記」
3月15日 ワワフラフラミンゴ「馬のリンゴ」
3月25日 MONO「うぶな雲は空で迷う」
3月26日 悪い芝居「キャッチャーインザ闇」

2013年の第一四半期は、1月 14本、2月7本、3月6本で、計27本。1月は暇だったので、大量に芝居を見ることができました。しかし、チラシの印象だけで見ず知らずの劇団を見にいくと、ハズレの芝居に出会うこともよくあることで、そんな芝居が2、3本続くと、劇場に行くことさえ辛くなったりします。やはり、芝居は間を開けて、体調も万全で心に余裕がある状態で見たいものです。
幸いなことに、面白い芝居も何本もありました。到底ベストスリーに絞れないので、面白かった芝居を列記したいと思います。
1月8日 「100万回生きた猫」
1月13日 長塚圭史「音のいない世界で」
1月20日 マームとジプシー「あ、ストレンジャー」
1月25日 トムプロジェクトプロデュース「熱風」
1月26日 砂地「Disk」
1月30日 サンプル+青年団「地下室」

2月2日 羽衣プロデュース「サロメ VS ヨナカーン」
2月27日 鹿殺し「BONE SONGS」
2月28日 扉座「つか版・忠臣蔵」
2月28日 レモンライブ「トリオ」

3月14日 松尾スズキ「マシーン日記」

以上、11本でした。
ざっと見渡すと、若手の小劇場の劇団に混じって、中堅の劇団や一般的に評価されている劇作家が入っていることが今期の特徴でしょうか?
長く続けているにはそれなりの理由があるわけですし、一般の評価もそんなに間違っているわけでもなさそうです。問題は、それらの劇団の料金が若手に比べて高いことです。そちらに照準を合わせていくと、財布が持ちません。懐具合と相談しながら、見る劇団を選んで行きたいと思います。

2013年4月2日火曜日

悪い芝居「キャッチャーインザ闇」



2013年3月26日 14時開演 王子小劇場
作・演出:山崎彬
音楽 : 岡田太郎
出演:池川貴清、植田順平、大川原瑞穂、北岸淳生、呉城久美、宮下絵馬、森井めぐみ、山崎彬、大塚宣幸、田川徳子、福原冠
MONOに続いてこちらも2回目の観劇でした。「目が見えるようになると、見えなかった時に見えていたものが見えなくなる。」を合言葉にした、「夢をみる。夢を見続ける。」ことについての芝居でした。
前回の「カナヅチ女、夜泳ぐ」では、漠然とした目標はあるものの、そこにどのようにたどり着いたらよいかわからず、手探りで闇雲に進んでいるような印象でしたが、今回は目標にたどり着く方法はわかったつもりなのだが、思っているようには進めない、その焦りが色こく現れていました。何とかスピードをあげることで、目標に早くたどり着きたいという気持ちばかりが前面に出すぎて、空回りしている場面が多々ありました。
全体にスピード感を出すことにこだわりすぎて、焦っているように見えてしまうことが多々ありました。
3本のストーリーが入り乱れる構成ですが、そのうちの1組が松本大洋の「鉄コン筋コンクリート」のパクリで、衣装がほとんど漫画のままというのには、笑いました。
一作毎に成長の感じられる劇団です。次回作も是非、見たいと思います。

MONO「うぶな雲は空で迷う」


2013年3月25日 19時30分開演 赤坂レッドシアター
作・演出:土田英生
出演:水沼健、奥村泰彦、尾方宣久、金替康博、土田英生
2回目のMONO観劇でした。ロビーで今までの40回の公演のポスターの展示がありました。時間ギリギリで入ったので、詳しく見る余裕がなかったのですが、私が知らないだけで結構古い劇団だったのですね。前回の「少しはみ出したら、殴られた」と言い、今回の公演もそうですが、落ち着きというのか、安定感はそこからきているのでしょう。
「大きな戦の後、大陸がなくなって様々な島々に別れてしまった世界を、飛行船で飛び回る五人の窃盗団」という、ラピュタから借りてきたような背景設定には、ラピュタ好きとしてはニンマリしてしまいました。
嘘をついてまでも自分のアイデンティティを確立したいという馬鹿げているが愛おしい人間を、優しく描けているのには、感心しました。

2013年3月24日日曜日

ワワフラフラミンゴ「馬のリンゴ」


2013年3月15日 19時30分開演 神楽坂フラスコ
作・演出 : 鳥山フキ
出演:北村恵、浅川千恵、石井舞、加藤真砂美、佐藤祐香、名児耶ゆり
以前、鳥山フキの個人企画の公演を見に行ったところ、独特の不思議な感覚があることはわかるものの、それのどこが面白いのか全く理解できず、本体のワワフラフラミンゴの公演を見てみようと考えていたことを実行しました。
神楽坂の表通りを一歩はいったところにある、小さなギャラリーが会場でした。私には慣れ親しんだ、劇場という「何かを見せてやる。」という雰囲気に満ちた場所とは違い、何かが始まるという感じの全くしない静かな時間が流れているだけというギャラリーを、会場に選ぶ理由は何なのでしょうか?
会場費が安い。
観客と出演者の距離が異常に近い。
そんなところでしょうか?もっと、何か深い理由があるような気もします。
芝居は、やはり、フワフワ、フニャフニャした不思議な感覚に包まれた日常会話と、同じ感覚のままでの吸血鬼との会話で構成されていました。どなたかがチラシの裏の推薦文で、「女の子の秘密の会話を覗き見ているようないけない感覚」というようなことを書いていましたが、私とっては、目前で赤裸々に繰り広げられる不思議な会話という感じでした。
私が男性だからか、年寄りだからか、理由は今ひとつわかりませんが、面白いとは思えませんでした。あの感覚に共感できる人には、面白いのかもしれませんが、私はダメでした。

2013年3月14日木曜日

月刊根本宗子「今、出来る、精一杯。」


2013年3月12日 18時開演 下北沢駅前劇場
作・演出:根本宗子
出演:早織、加藤岳史、墨井鯨子、梨木智香、大竹沙絵子、前園あかり、下城麻菜、あやか、遠藤隆太、浅見紘至、野田裕貴、根本宗子、片桐はづき
劇団名の珍しさに惹かれて見に行きました。結論を一言でいえば、高校演劇じゃないんだから、そんなに頭でっかちにならないで芝居をして欲しいということです。
チラシや当日パンフレットにも書かれていますが、最近、根本宗子の親しい人が亡くなったようで、そのことに影響を受けて書かれた芝居のようです。
他人との関係をあまりにも真面目に、もしくは頑なに自分の考えを貫き通そうとするために、めんどくさい人になっている人々が描かれています。中学時代に事故で女性を半身不随にしてしまい、自分はどもりになってしまった人、引きこもりに惚れたため相手のすべてを肯定しすぎて、完全に依存され自分も崩壊してしまう人、前のバイト先で自殺がおき、それを自分のせいだと思ってしまい、さらに自分のからに閉じこもってしまう人など、様々なめんどくさい人々が出てきます。その人たちが、一人のバイトのわがまま放題の振る舞いに振り回され、やがて、自分なりの「今、出来る、精一杯」を考えて、一歩を踏み出そうとする。そんなストーリーなのですが、何しろ、ほとんどすべてを台詞で説明してくれるので、芝居を見ているというよりは、芝居の解説を聞いているような感覚に陥ります。最後に、駄目押しでスライドで、「人間関係はめんどくさいことが色々起きる。一度に呑み込むことはできないけれど、精一杯飲み込んで前に進んでいこう。それが、私にできる精一杯。」(おおよそ、そのような意味だったと思います。なにしろそれまでに説明が多すぎて、お腹いっぱいの状態だったので、半目を開いているのが精一杯だったので)という言葉が出てしまいます。
これを出すくらいなら芝居なんかやめて小説か、エッセイでも書けば良いのにと思わざるを得ません。それは、芝居を見たお客さんが感じることで、そのために芝居をするにではないでしょうか?
完全に勘違いしているとしか思えません。
次回作を見に行くことはないでしょう。

2013年3月12日火曜日

KAKUTA「秘を以て成立とす」


2013年3月5日 19時30分開演 三元茶屋シアタートラム
作・演出:桑原裕子
出演:吉見一豊、藤本喜久子、清水宏、成清正紀、瓜生和成、原扶貴子、佐賀野雅和、若狭勝也、高山奈央子、野澤爽子、桑原裕子、ヨウラマキ
トムズプロジェクトの「熱風」の時にも思ったのですが、桑原裕子は達者な作家だと思います。謎を含んだまま進んで行くストーリーで観客の興味を引っ張り、最後にスッキリ謎解きをして納得させ、更に明日への希望をさらりと提示して、優しい気持ちで客を帰す。できそうでなかなかできないことだと思います。
ストーリーは、子供の頃、姉を死なせてしまったと思い込んだ医者が、それを超えるため、エリートの医者と、乱暴者の大工を別人格として生み出し、生きていく。家族は、それを秘密として隠して生きことで家の平和を守っていく。しかし、町内のマラソン大会をきっかけに秘密が公になり、もう一度、やり直す決心をする。それ以外にも様々な人の様々な秘密が描かれて行き、人間は実に秘密を抱えながら生きている動物であることが提示される。
秘密というテーマ自体よりも、それを抱えて右往左往する人々が良く描かれていて、実に笑える芝居に仕上がっている。
しかし、自分の病気を自覚した主人公がやり直す決心をするラストで、妻と手を取り合ってマラソンに復帰するのは、あまりにも安直な演出にしか見えませんでした。何か別の意図があったのでしょうか?
最後に、役者としての桑原裕子も特筆すべき存在だと思います。
ブサ可愛いを絵に描いたような演技で、メインストーリーとあまり関係ないところで、芝居を膨らませていました。

アマヤドリ「月の剥がれる」


2013年3月5日 14時開演 座高円寺1
作・演出:広田淳一
「散華」と言えば、私の世代だと高橋和巳の小説「散華」ということになるのですが、この劇団にとっては、どんな意味を持つのでしょう。本来の意味は仏教で法要時に花をまいて場を清め、悪霊を祓うということらしいですが、その後、戦死の婉曲的表現として使われるようになったようです。
ストーリーとしては、散華と称する平和運動が起こる。これは、自国の軍隊が人を殺すたびに、会員は一人づつ自殺していくという運動。運動はやがて世界中に広まるが、最終的に大量殺戮兵器が使われ、会員の大量自殺が起こり、運動は崩壊する。
それを反省して、その国では「怒り」を放棄することで、平和を目指すことを選択する。ざっとまとめるとこのようなストーリーなのだが、私には、どこにも共感できるところがありませんでした。
と、ここまで書いたところで、時間となったにでソワレで劇団KAKUTA「秘を以て成立とす」を見ました。KAKUTAの感想はまた別稿で書きますが、見てわかったことがあります。それは、アマヤドリの役者の芝居が下手でそれに共感できなかったので、散華の考え方に共感できなかったわけではないということです。共感以前の問題で、下手な芝居にうんざりしただけだったのです。
演出家にもその自覚があったようで、ダンスをいれたり、コロスのような人が場面場面で、外から見ているという演出を多用したりしていました。しかし、私には更に意味不明度を増しているだけのように思えました。
次世代を担う劇作家の一人と期待されているという前評判を聞いて、見に行ったのですが、残念な結果となりました。

2013年3月4日月曜日

LEMON LIVE Vol. 10「トリオ」


2013年2月28日 19時30分開演 下北沢 OFF-OFFシアター
作・演出:斎藤栄作
出演:西牟田恵、野口かおる、武藤晃子
日替りゲスト:我善導
開演前の日替りゲストと作・演出の斎藤栄作のトークで知らされるまで全く知らなかったのですが、LEMON LIVEとは斎藤栄作のプロデュースユニットであり、過去9回男優ばかりで公演を行ってきたこと、今回、10回目ということで、初めて女優ばかりの芝居をやってみたことなどを知りました。
何も知らないまま見に行った私のお目当ては、もちろん、野口かおる。ベッド&メイキングスの好演以来、気になる女優です。
芝居は、完全に三人に向けた当て書きで、売れない音曲漫才トリオで、酸いも甘いも噛み分けた年増の姉御が西牟田恵、奔放でだらしなく一人では生きていけない女が野口かおる、チャッカリしていて目ざといが、基本的にはいいこの若手が武藤晃子、その三人が一人の男(日替りゲストの男優)を取り合うのだが、実は女癖の悪い男を懲らしめる手のこんだお芝居だったというストーリー。
トムプロデュースの「熱風」の時にも思ったことですが、当て書きで演技に余裕のある時のベテラン女優の爆発力は、すごいものがあります。この芝居でも、コント風あり、ドタバタあり、サスペンスありの盛りだくさんの内容でしたが、あっという間の90分でした。
特に、野口かおるが長いアドリブのシーンで叫んだ「台詞なんかどうでもいいじゃない。(舞台の上で)生きてさえいれば!」というセリフには、感動しました。
秋には、つかさんの「買春捜査官」を演じるようですが、今から楽しみです。

扉座「つか版忠臣蔵」


2013年2月28日 14時開演 すみだパークスタジオ
原作:つかこうへい
脚本・演出:横内謙介
つかこうへいさんとは、つかさんが有名になる前、早稲田の劇団と一緒にやっている時に、その劇団に参加していた高校の同級生の誘いで手伝いに行ったのが、最初の出会いでした。まだ、「熱海殺人事件」の前で、「郵便屋さん、ちょっと」をやっている頃でした。それがきっかけで、私は、舞台照明の世界に足を踏み入れました。途中、いろいろ回り道をしたけれど、今、また、照明の仕事をしています。つかさんとその劇団の人々には、芝居について色々教えてもらいました。
その後、仕事が忙しくなってつかさんの舞台を見ることもなく、今日、40年以上ぶりにつかさんの芝居と再会しました。
40年ぶりのつか芝居は、思っていた以上に面白く楽しいものでした。年をとったせいで、役者や観客のエモーションを無理やり高めるために大音量で鳴り響く音楽は、少々辛いものがありましたが、あっという間の2時間15分でした。現代にあのような形でつか芝居を再現できた横内謙介の才能はたいしたものです。
つかさんの芝居は、「やせ我慢の美学」だと思います。惚れた女のためにすべてを打ち捨てて討ち入りにいく。忠臣蔵では、討ち入りを企むものとして井原西鶴と中村座の座長七五郎が描かれていますが、討ち入りを悪用する黒幕というより、討ち入りの動機を説明するという役目にしか見えません。つかさんの力点は、「やせがまん」におかれています。
他に面白かった点としては、井原西鶴役の役者が、どう見ても漫画美味しんぼの「海原雄山」にしか見えなかったこと。本人も完全に意識していると思います。また、殺陣が、すごく良くできていて、様式美の領域まで達しているように思えました。最近見た殺陣の中では、秀一でした。
前から思っていたことですが、つかさんのあの長台詞のルーツは、大衆演劇の「見得」にあることを、再確認しました。逆説的にいえば、長台詞を成立させるために、日本人の共通の美学である「やせ我慢」を持ち出し、それを煽るために大音量の音楽を流すと言えるかもしれません。
これだけ楽しかったのですが、、もっとつかさんの芝居が見たいとはあまり思いませんでした。昔のガールフレンドに久しぶりに再会して楽しかったが、よりを戻したいとは思わなかっということなのかもしれません。

2013年2月28日木曜日

鹿殺し「BONE SONGS」


2013年2月27日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作:丸尾丸一郎
演出:菜月チョビ
出演:菜月チョビ、松村武、姜蜴雄、丸尾丸一郎、オレノグラフィティ、山岸門人、谷山知広、森貞文則、橘輝、傳田うに、坂本けこ美、円山チカ、山口加菜、鷺沼恵美子、浅野康之、近藤茶、峰ゆとり、佐竹リサ、有田杏子
始まってすぐびっくりしたことは、全員のダンス、歌、楽器演奏のスキルが格段に上手くなっていたことでした。前回の「田舎の侍」の時に比べると、アマチュアとセミプロぐらいの差がありました。
舞台は、菜月チョビ on STage といっても良いほど、菜月チョビを中心において、周りを客演の松村武をはじめとした役者達が入れ替わり立ち替わり固めるという構成で、しっかり芯のあるものになっていました。
私が見始めた頃のような、客演の役者は面白いが、劇団員はズタボロという時期を経て、前回あたりから方針が変わったような気がします。
ストーリーは、「人は、みんなに支えられて生きている。」という道徳の時間にでも出てきそうなテーマを、暴走族と、卓球と、ロックバンドと、プロレスで物語るという鹿殺しらしいものでしたが、私としては、ラストも叙情的にならずに、最初のスピードで駆け抜けてくれればもっと面白かったと思います。
ダンスや楽器だけでなく、着ぐるみやコスプレの小道具のクオリティも上がっていて、それには感心するのですが、新たな問題も抱えてしまったような気もします。客は、ダンスや演技の技術が低くてもそれを超える何かがあれば、勝手にその可能性を想像して感動したりします。中途半端にうまくなると、それは、ある意味普通なので、冷静になったりしてしまうものです。鹿殺しは、今、その分岐点にきているような気がします。
私が鹿殺しを好きな一番の理由は、今の小劇場の中で、最も昔のアングラの匂いを持っていて、それが魅力になっているところです。今の小劇場は、皆スマートで、カッコ良く見せることがうまくて、泥臭いことはしません。その中で、鹿殺しは、あえて泥臭いことをやって見せる。そこが他にはない魅力です。
裏方は基本的に職人なので、自分の仕事の完成度を上げることを目指します。その職人的な完成度と、自分たちの泥臭さをどうバランスをとっていくか、脚本、演出の力にかかっていると思います。
亡くなった忌野清志郎のホーンセクションを長年務めた梅津和時は、清志郎との思い出話の中で、「ホーンセクションが、少し難しいハーモニーをやろうとすると、そこは基本的な泥臭いハーモニーを要求された。」と、語っていました。泥臭くやったからこそ、あれだけビッグになれたのだと思います。
鹿殺しが、今後、どうして行くのか、楽しみです。

2013年2月27日水曜日



ナイロン100℃「デカメロン21あるいは男性の好きなスポーツ」
2013年2月26日 18時30分開演 渋谷シブゲキ
作・演出:ケラーノ・サンドロヴィッチ
映像:上田大樹
出演:みのすけ、松永玲子、新谷真弓、喜安浩平、廣川三憲、藤田秀世、長田奈麻、安澤千草、吉増祐士、植木夏十、眼鏡太郎、皆戸麻衣、猪俣三四郎、水野小論、伊予勢我無、野部青年、小園茉奈、白石廿日、菊池明明、森田甘路、木乃江祐希、内田滋、安藤聖、松本まりか、千葉哲也、熊川ふみ、徳橋みのり、望月綾乃、森本華
ナイロン100℃創立20周年記念公演第一弾として企画された2004年初演の「男性の好きなスポーツ」の再演だそうです。当日パンフレットによれば、諸所の事情により「初演台本をサンプリングし、リミックスした」台本での上演となったようです。実際本番には、それを強調するかのように、突然のブラックアウトや、ラジオの局間ノイズのような効果音、ブラウン管の砂嵐のような映像が繰り返し挿入されていました。
初演を見ていないので比較はできませんが、改訂されたデカメロンはあまり笑えない艶笑コント集のような出来上がりでした。よく言えば、突然出てくる二人の謎の演劇の世界をコントロールしているらしいえらい人の存在を考慮して、メタ演劇とよんでもいいかもしれません。いずれにしても、あまりパワーの感じられないショボい出来でした。
唯一面白いと感じられたのは、映像の使い方でした。プロジェクションマッピングの技術の発達によって可能となった役者の動きと合わせた映像表現が随所に見られ、新鮮でした。プロジェクターの発達により、映像の光だけで、役者の表情や動きまで見えるようになり、照明によってかき消されていた映像のディティールまでしっかり見えるようになりました。今後、映像のわかる演出家と舞台がわかる映像作家の組み合わせにより、舞台上で新しい表現方法が見られる可能性を信じるのに十分な出来栄えでした。
映像プロジェクションのできるムービング機材DL-1がデビューした時に、「照明家が始めて具象性を始めて手にできるチャンスだ。」と思ったことを思い出しました。その後、コストの問題などで普及するには至りませんでしたが、プロジェクションマッピングの登場でまた、可能性が出てきました。将来、すべて映像投影に置き換わるとは思いませんが、照明家と映像作家の住み分けと協力により新しい表現方法が、ドンドン出てくると思います。

柿食う客「発情ジュリアスシーザー」


2013年2月25日 19時30分開演 青山円形劇場
原作:ウイリアム・シェイクスピア
脚色・演出:中屋敷法仁
出演:石橋菜津美、岡田あがさ、岡野真那美、荻野、川上ジュリア、七味まゆ味、清水由紀、鉢嶺杏奈、葉丸あすか、深谷由梨香、我妻三輪子、渡邊安理
約3週間ぶりの芝居見物だったので楽しみに寒い中でかけましたが、残念な結果に終わりました。中屋敷の演出は最初に見た「絶頂マクベス」は「キャッチーで面白い」と思いましたが、次のパルコの「露出狂」はかなり残念なできだったので、演出手法に飽きてきたのかなとも考えました。それにもめげず見た3本目は、シアターイーストで行われた「無差別」。これは、かなり良い出来で面白いものでした。そして、今回4回目はまたまた残念なパターンでした。彼の芝居は、始まってすぐに面白いかどうかわかるので、面白くない場合は残りの時間を耐えるのが大変です。
中屋敷の演出の基本は、「見得を切る」芝居をし続けることにあると思います。これは時系列的に考えて、つかこうへいの芝居の影響だと思います。そしてつかこうへいのルーツは、大衆演劇の「見得」にあります。大衆演劇において「見得」をきることが許されるのは、その劇団の花形役者だけでした。それは、「見得」をきるためにはその芝居、その劇団を背負うだけの力量と人気が必要だったからです。
つかこうへいの芝居においては、その役者の資質にあった「見得」を見つけるために、あの有名な「口だて」の稽古で、少しづつ台詞を変えながら繰り返し繰り返し稽古が行われました。
中屋敷の「見得」を成立させる方法論は、台詞を厳密に組み合わせて役者同士がより緊密に支え合う構造を作り出し、大上段の見得の連続を成立させていく、というようなものだと思います。それが、うまく回転してテンションが維持、上昇していけば、「絶頂マクベス」や、「無差別」のように面白いものになるし、歯車が何かの原因で狂えば、今回のように残念な結果になるということです。今回などは、頭からストーリーを早口の大声で説明しているだけにしか聞こえず、うんざりしました。
その中での救いは、他とスピードを合わさず自分のテンポを守り通した七味まゆ味と、「見得」を失敗するという荒技で輝いた岡田あがさの存在でした。あの二人がいなければ、90分の芝居がさらに辛いものになっていたことでしょう。
もう一人、ブルータスの奴隷、ルーシアスを演じた我妻三輪子も可愛かったです。私はどうも、狸顏で息が漏れているような喋り方の演技をする女優に弱いようです。

2013年2月4日月曜日

劇団宝船「撫で撫で」


2013年2月3日 14時30分開演 座高円寺
作:新井友香
演出:ペヤンヌマキ
出演:西牟田恵、黒田大輔、岩瀬亮、高松呼志響、川面千晶、佐久間麻由、島田桃衣、伊藤俊輔、山崎和如、川本直人、飯田一期、高木珠里
アラフォー女二人の、夢と希望と挫折を描く執念の2時間ドラマと言ったところだろうか。一人は、若い頃の不倫を清算し、周りから適当な男を見つけて高齢出産にチャレンジすることに執念を燃やす。もう一人は、若い頃と同じような恋愛を繰り返し、ダメ男ばかりとくっつく。
現実をそのままのサイズで芝居にすることを否定はしませんが、それには緻密な演出の計算と、とても力量がある役者が必要です。今回のこの芝居には、そのどちらもが不足していました。
感想は一言、「まるで、テレビドラマのような芝居でした。」テレビと違い、パンもクローズアップもできない舞台ですから、テレビ以下かもしれません。
個人的にも設定が現実的である芝居は、苦手です。突飛な設定や、エキセントリックな性格の登場人物がいた方が、感情移入もしやすいです。

フカイプロデュース羽衣「サロメ VS ヨナカーン」


2013年2月2日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
脚色・演出・音楽・美術:糸井幸之介
出演:深井順子、西田夏奈子、鯉和鮎美、大西玲子、伊藤昌子、中林舞、浅川千絵、岡本陽介、日高啓介、代田まさひこ、高橋義和、澤田慎司、加藤靖久、ゴールド☆ユスリッチ、藤一平、枡野浩一
七組のサロメとヨナカーンによる様々な愛のパターンの物語。雨が降り続く「ワイルド系の街」でいろいろな年代と立場の男女の愛が、オスカーワイルドのサロメの台詞をキーワードに繰り広げられていく。個人的にツボだったのは、おじさんと援交少女のボーリング場のシーンでした。
糸井幸之介の脚本の根底には、「人生はそんなに悪いものじゃない。」という信念があると思います。それが、見ている人を幸せな気持ちにさせるのだと思います。誰もが反対しそうにない信念ですが、押し付けがましくなく、かつ、卑屈にならずに表明するのは、結構むつかしいことですが、糸井幸之介は、それができる稀有な才能の持主です。
歌とダンスが多用されるミュージカルのような構成ですが、役者のスキルは、けっして高くありません。なかには音程をキープするのが精一杯の人もいました。それでも、白けることなく、楽しく芝居を見られるのはすごいことです。
最後に、上から吊るされた3000個のチュッパチャップスは、「飴」と「雨」のダジャレなのでしょうか。

2013年2月1日金曜日

サンプル+青年団 地下室


2013年1月30日 19時30分開演 駒場アゴラ劇場
作演出:松井周
出演:古舘寛治、奥田洋平、古屋隆太、辻美奈子、野津あおい、小林亮子、富田真喜、折原アキラ、たむらみずほ、森岡望、山内健司
観劇前に、まとめサイトで見た人の感想を読んでしまったのがよくなかったのでしょうか。
「怪しい共同体の生成と、変容と、崩壊。」
「客観的に見られず、気分が悪くなった。」
そのような感想が並んでいたのを読んでから見ました。
確かにその通りでしたが、それ以上でもそれ以下でもない芝居が淡々とながれて行きました。それに私は、引き込まれることもなく、大きく心を揺さぶられることなく、約2時間の芝居は終わってしまいました。オウム心理教の事件にインスパイアされて書かれたと思われる芝居ですが、あの事件から時が過ぎ、共同体幻想に無自覚に引き込まれる人間の弱さを、しっかり、客観視できるようになったということでしょうか。
チェルフィッチュの岡田利規が、twitterで、「初演の時に、心揺さぶられた自分がいて、今、再演を見て、心惹かれない自分がいることが面白かった。」と、つぶやいていましたが、初演を見ていない私も、同じような感覚なのでしょうか。

2013年1月28日月曜日

砂地「Disk」


2013年1月26日 14時開演 三軒茶屋シアタートラム
作・演出:船岩裕太
出演:田中荘太郎、小瀧万梨子、藤井咲有里、野々山貴之、中村梨奈、岸田研二
周りとの関係を拒否する兄と、過剰なまでに周りとの関係を求めて拒絶される妹の二人を中心に、絶望的にすれ違う人々についての演劇。
一言で言ってみれば、そんなところでしょうか。
小劇場=無勝手流だと思っていた私には、なぜか、とても正統的な芝居に見えました。しかも、日本的な湿ったところがない、欧米の翻訳劇のような乾いた感覚が新鮮でした。複雑に入り組んだ時間と場所が、混乱なく頭に入ってくる演出は見事です。世間には、私の知らない素晴らしい才能が、まだまだいっぱいいるのだと嬉しくなりました。
ラストで、オーストラリアに留学した妹が自販機の前で、「最近、ここでタバコを吸う時が一番落ち着く。」と自殺した兄に語りかけるところは、求められた時だけ(コインをいれた時だけ)、答える(商品を出す)、コミュニケーションにしか安心できないと言う、彼女の絶望に、涙が出そうになりました。
しかし、男優は、全員、かっこよく描かれているのに、女優が全員、ブスに見えるのはなぜでしょう。
早く、次回作が見たいです。

2013年1月25日金曜日

トムプロジェクトプロデュース「熱風」


2013年1月25日 14時開演 赤坂レッドシアター
作・演出:桑原裕子
出演:大西多摩恵、駒塚由依、林田麻里、岸田茜、斎藤とも子
ベテラン女優二人の活躍で、とても面白い舞台となっていました。
陰と陽の二人。陽の駒塚由依は、大きな演技でに活気を与え、怒鳴っても汚くならず、可愛さを残した確かな演技で舞台に明るさを与えました。陰と言っても陰気ではなく、抑えた演技の大西多摩恵は、舞台をしっかりしめて、若手の三人に活躍の場を提供していました。特に、清川虹子に少し似ている駒塚は、付け睫毛が半分取れるほどの熱演でした。
当日パンフレットによれば、作・演出の桑原裕子の実体験(南の島のホテルに台風のため閉じ込められる)に基づく話だそうですが、五人それぞれに見せ場を作りつつ、2時間飽きさせないで話をまとめてくる力量は、たいしたものです。
ラスト近くの、「私達、ずっと、男達の話をしている。男達は、こんな風に女達の話をしているのかしら。」という台詞は、心にしみました。
2月のKAKUTAの公演がますます、楽しみになりました。

タカハ劇団「世界を終えるための会議」


2013年1月24日 19時30分開演 下北沢駅前劇場
作・演出:高羽彩
出演:有馬自由、山口森広、岸井ゆきの、大村学、宮島楠人、かんのひとみ、有川マコト、異儀田夏葉、高畑こと美、石澤美和、高山のえみ、町田水城
人類のすべての問いに答えるべく開発された人工知能も、3年前に次世代機が開発され、今では一日中オセロをしたり、様々なクイズを出し合ったりして暇を持て余している始末。そんなある日、一つのモジュールにアップデートという名目で次世代機の機能を停止せよという命令が伝えられる。人工知能は知恵を絞り、次世代機に答えられない命題を与えてハングアップさせることを計画する。その計画は、一見、うまくいったように見えたが、ハングアップ後も、自分達に人類からの問いかけが全く増えないことから、自身暗鬼に陥り、自滅してしまう。実は、これは、すべてを費用対効果で考える人工知能を廃止に追い込むための、次世代機と人類の作戦だったのだ。より、悩み続ける人工知能の開発が必要だというのが、人類の考えだった。
これがざっとした粗筋ですが、とても良くかけていると思いました。わかりやすく時系列の整理もされていて、街頭での人工知能と人々のやり取りのシーンが、良いアクセントになっていて、中だるみすることもなかったです。
ただ、これは私の印象だけなのですが、テーマをもっと深く掘り下げられるのに、わざと手前で止めて綺麗にまとめているような気がしました。
役者もそれぞれ個性的で面白かったです。特に、次世代人工知能の役をやった岸井ゆきえは、城山羊の会の「あの山の稜線が崩れていく」で、目力の凄い娘の役を演じて印象的だった人ですが、ここでクールな演技で落ち着いた演技でした。セーラー服もよく似合っていました。
次回作も見たいと考えていたら、KAATで4月に宮本亜門演出の「耳なし芳一」の脚本を担当するようです。

2013年1月24日木曜日

毛皮族「ヤバレー、虫の息だぜ」


2013年1月23日 19時開演 座高円寺
作・演出:江本純子
出演 : 柿丸美智恵、髙野ゆらこ、羽鳥名美子、延増静美、高田郁恵、町田マタニティー、金子清文、江本純子
この芝居の問題点
1.
当日パンフレットに、「パリのクレジーホースを見て、このショーを毛皮族らしくやってみたい(パクってみたい)と言う思いで着想しました。」とあるが、ダンスが酷すぎてパクりになっていない。酷すぎるという自覚はあるらしく、ドタバタする演出はしてある(小道具を忘れる。マネキンを動かす機構がトラブる。)が、泥縄である。
2.
スケジュール管理の不備。妊娠は、自然の摂理であり、それ自体は喜ばしいことであるが、1週間前に突然臨月になったわけでもあるまいに、代役を準備していないのはあまりにもひどい。代役の代わりにマネキンをおき、録音した台詞を流すという演出は、機能していれば未だしも、ひたすらしらけるだけだった。観客をなめているし、観客に甘えているだけだ。これで良しとした時点で、演出家として芝居の制作者として、失格だと思う。それとも、代役が立てられない理由があったのか。もし、あったとしても、観客には関係ない話だし、百歩譲っても開演前に役者の降板を知らせ、見たくない客には返金する旨をアナウンスすべきだ。
3.
2.に関連して、劇中映像で、「人間は、日々、変わっていくもので、それに連れて芝居も毎日変わって行っても良いと、考えている。」というような妊娠による降板を正当化するような発言があったが、その考え方は認めるとしても、最低限のレベルは保証すべきだ。その保証もできないならば、公演形態を考え直すべきだ。例えば、料金を自由設定として観劇後、観客が自分で良いと思った金額をはらってもらうなど。

今回は、芝居の中身がどうのこうのという前に、制作体制があまりにもひどいので、それについて書きました。10年以上続いている劇団なのに、あまりにもひどい。まるで制作がいなくて、演出家が一人で演出も制作もしていて、手がまわらないかのようだ。それでも、芝居の出来がよければすべて良しなのかもしれないが、それは望むべくもなく全くひどいものだった。

2013年1月22日火曜日

シンクロ少女「めくるめくセックス 発酵版」


2013年1月21日 14時開演 王子小劇場
作・演出:名嘉友美
出演 : 泉政宏、墨井鯨子、中田麦平、坊薗初菜、奥村拓、横手慎太郎、用松亮、兵藤公美、名嘉友美
2年以上眠り続ける妻を持つ男は弟の彼女と浮気してるし、大学時代の同級生同士のできちゃった婚の夫は、SMクラブにはまっている。弟は、彼女とバイト先の童貞君の浮気を疑うしというようなドロドロの恋愛肉体関係のお話。
歳をとって性浴が減退している私としては、「そんなに頑張らなくても」と言うのが正直な感想です。
役者はうまい。眠り続ける妻を持つ男を演じた泉政宏と、バイト先のうるさい先輩を演じた用松了がいい。特に、用松は、悪気はないが、図々しくて相手の気持ちを考えない世間というものを体現しているような芝居で怪演だった。
演出は、随所に笑わす工夫を執拗にいれてくるのだが、どれも少しづつ私の感覚とずれているようで笑えない。しかし、その工夫と量はかなりのもので努力には頭が下がる。
別のテーマをどう扱うのか、見てみたい。

野鳩+ナカゴー「ひとつになれた」


2013年1月20日 19時開演 下北沢OFF OFFシアター
作:鎌田順也
演出:水谷圭一
出演 : 佐伯さち子、すがやかずみ、佐々木幸子、日野早希子、高畑遊、鈴木潤子、篠原正明、加瀬澤拓未、鎌田順也
昨年観て面白くなかったナカゴーの「薫さん、現る」が、王子小劇場の佐藤佐吉賞の作品賞を受賞したことを知って、権威に弱い私は直近のナカゴー関連のこの芝居を見に行くことにしました。
見た結果は、やはり、少しも面白くない。いい加減長く生きてきて、好き嫌いも固まってしまっているのだから、自分の好みはそう簡単に変わらないことを自覚すべきだと反省しました。
オープニングは、6年間の休止期間を経て復活した鬱病あがりの演出家が、マチソワの間にダメだし稽古をするところから始まります。病気のせいか、いっこうにはっきりしない演出家、ワガママをいい放題の役者たち、それをコントロールできなくて、ますます落ち込む演出家。内幕暴露ものというか、野鳩の休止の説明も兼ねているのかもしれません。
そこに突然現れる宇宙人、あろうことか演出家を食べてしまいます。慌てて劇場を逃げ出し、車で逃げ惑う役者たち。逃げ回った挙句、ノロウィルスで休んでいる脚本家のところに行って、宇宙人騒動の経過と対策を教えてもらい、一安心、一人でもお客さんがくるかもしれないとみんな揃って、劇場に戻ってメデタシ、メデタシ。
実にあらすじを書くだけでも馬鹿馬鹿しい、いい加減なものです。
この芝居で作者がやりたかったのは、車での逃走シーン、丸椅子4つと照明、音響と役者の動きとセリフだけで車で走っているとことを見せる。ただ、それだけではなかったのかと考えてしまう。「薫さん、現る。」の時には、カナヅチを使った乱闘シーンが延々と続きました。それと同様に、車での逃走こそが作者のやりたかったことで、他のことはそれをやるための付け足しにすぎないのではないか。そう見えてしまうほど、他のシーンがいい加減すぎると思います。そして、肝心の逃走シーンが良くできているかといえば、中途半端としか言いようがありません。様式がはっきりしているわけでもなく、緊張感も中途半端だし、躍動感、疾走感、車での逃走シーンに必要と思われる要素が足りません。要するに、自己満足にしか見えないのです。
劇中で、「小劇場の芝居は好き嫌いがはっきりする。特にうち(ナカゴー)の芝居はそうだ。」と言う台詞があるのですが、全くその通りだと思います。
私には、ナカゴー+野鳩の芝居は面白くありません。

2013年1月21日月曜日

マームとジプシー「あ、ストレンジャー」


2013年1月20日 14時開演 吉祥寺シアター
原案:アルベール・カミュ「異邦人」
作・演出:藤田貴大
出演 : 青柳いづみ、石井亮介、荻原綾、尾野島慎太郎、高山玲子
前回の作品よりもゆっくりなテンポと抑えた熱量で繰り返される台詞。静かにマームとジプシーの世界が広がっていきます。
完全に青柳いづみの独り舞台。彼女の乾いた少しかぼそい声が、静かに「わたしたちは、みんな。どこにいったて、よそもの。なのだ。」というテーマを繰り返します。他の役者が、様々な役柄を兼務することもあり、繰り返しの中に個性が埋没していく中、青柳いづみだけは、自分の世界をしっかり保って、舞台に存在していました。経歴も桜美林大学卒業くらいしかわからない、まだ、若い役者ですが、気になる女優が一人増えました。
カミュの「異邦人」が立ち上がってくるのは、ラスト近くになってから。「昨日、ママンが死んだ。」という台詞とともに、見たこともないアルジェリアの青い空が広がっていきました。
何か言葉にできないものが、心に残る舞台でした。

30 Years Godo Project「ゴドーを待ちながら」


2013年1月19日 18時開演 上野ストアハウス
作:サミュエル・ベケット
演出:鈴木ハルニ
出演:鈴木ハルニ・須貝英・小玉久仁子・渡辺芳博・河野真紀
多分、世界で一番好きな戯曲「ゴドーを待ちながら」の公演があるというので、嬉しさ半分、心配半分で見に行ってきました。古くは、紀伊國屋ホールで 今の野村万之上、萬斎の父親の野村兄弟のものや、パブリックシアターでの、柄本明、石橋蓮司が出演したものとかも見ましたが、どちらも今ひとつでした。そういえば紀伊國屋ホールも、パブリックシアターも、演出は佐藤信でした。いまいちだったのは、佐藤信のせいだったのでしょうか?
今回の30 Years Godot Projectの「ゴドーを待ちながら」も、イマイチ、いや、いまさんくらい残念でした。何よりも翻訳の硬い日本語がこなれていないので、台詞が浮いてしまうシーンが多々あったことがとても気になりました。寓話のような話なので、台詞がこなれていないと全くの絵空事になってしまいます。また、台本から離れて暴走するところも、見当違いのところへ行こうとしているように見えてしまいます。収穫は、ポッツォ役の小玉久仁子でした。戯曲では成金風の中年のおじさんというような設定ですが、女優が髭を描いて、軍人のような衣装で演じるという設定で演じることにより、自由さを手にして生き生きと演じて、ただ一人光っていました。ウラジミールと、エストラゴンももっと自由にやれば、良いのにと思ってしまいます。
昔から、この芝居は役者が演じるより漫才コンビがやった方が面白いと言われていて、古くは、星セント・ルイス、コント55号、ツービートなどの名前があがっていました。言葉遊びで時間を潰すシーンなどをみると、確かに漫才コンビの方が面白そうだと思ってしまいます。
名前にうたっているとおり、30年に渡って「ゴドーを待ちながら」を上演し続けるプロジェクトのようですから、今後に期待したいと思います。とりあえず、演出が変わったら、また見に行こうと思います。

ナカミチ円陣「三人獅子舞」


2013年1月19日 14時開演 下北沢シアター711
作・演出:福田転球
出演:小椋あずき・佐伯太輔・シューレスジョー・大堀こういち・中道裕子
作・演出も出演者も誰一人知らないのになぜ見る気になったのか思い出してみたら、Webで中道裕子を検索したとき、誰かのブログで(確か、後藤ひろひとのような気がするのですが)中道裕子を紹介していて、それが結構面白かったからのような覚えがあります。
実際に見てみると、始まった途端にこれは面白くならないという確信が100%持てるという、哀しくも腹立たしい芝居でした。シアター711のようなごく狭い空間での芝居では、演技しているとは思えないほど自然に見えるか、役者の地だと錯覚するくらい当て書きにするとか、何か一つ飛び道具的に武器を持つとかしないと、普通に芝居しても演技しているのがバレバレで、さみしい気分になるだけです。全員、演出家の指示を忠実に守って動いていることがミエミエで、面白い訳がありません。
チラシの裏の挨拶文によると、今まで知り合った人を集めて芝居がしたかっただけのようも読めます。もう少し、この戯曲をやりたいとか、この演出家とやってみたかったとか、具体的な目標がないとピントが甘くなって、面白くなりにくいと思います。
主宰の仲道裕子はよくいそうな小劇場の脇役タイプで、普通の舞台なら地道に舞台を支えて、芝居をキュッと締めることもできそうな感じでしたが、狭いところで台詞を言っただけで観客の関心を集めてしまうことに慣れていないのか、なかなかエンジンがかからないようでした。もう一人の女優、小椋あずきは、小さい体に大きな声、よく喋り、よく動く、飛び道具的なタイプで、狭いところではうるさいだけでした。男優陣は、全員、芝居がヘタなのに、あまりその自覚もないように見えました。
なかなかの残念な1時間半でした。
後日、中道裕子のプロフィールを検索したら、「特技 獅子舞」とありました。ひょっとしたらこれが飛び道具のつもりだったのかもしれませんが、見事に不発でした。

2013年1月14日月曜日

長塚圭史「音のいない世界で」


2013年1月13日 11時開演 初台新国立劇場小劇場
作・演出:長塚圭史
出演:首藤康之・近藤良平・長塚圭史・松たか子
タイトルと出演者から、無言劇+モダンダンスの公演かと勝手に想像していったら、子供から大人までを対象とした童話劇でした。
貧しい夫婦のもとに、悪魔にそそのかされて泥棒兄弟が蓄音機を盗みに入ります。盗まれてしまった夫婦は、何か大切なものがなくなったと思い、それぞれそれを探しに旅に出ます。様々な人に会い、少しづつ大切なものを探し当てます。最後に、無事蓄音機を見つけて、めでたしめでたし。ストーリーは、簡単にいうとこんなところです。
それより新鮮だったのが、ダンサーである首藤康之の台詞回しの良さ。全くたくらまず、自分の言葉として発声していて、無理をしていない。その分素直に言葉がこちらの心に入ってくる。ダンサーは、動きを第一の表現と考えているから、台詞は苦手というこちらの思い込みを見事に覆してくれました。近藤良平は、コンドルズの公演でコントのようなこともしているから、台詞を喋ることに違和感はありませんでしたが、主藤康之については、踊るところしか見たことがなかったので、驚きでした。
松たか子は、どんなセリフを言っても肉体がついてくるというか、抽象的なセリフでも実感を込めて喋れるところが、素晴らしいです。それにいつも可愛いし。
長塚圭史として、難しいことを考えずに素直に作って見ましたというところでしょうか?
作品によって、スタンスを変えてくるところが、賛否両論を生む原因の一つかもしれません。今年も、彼からは目を話さず、追っかけて行きたいと思います。

2013年1月12日土曜日

生前葬「笑ってタナトスくん」


2013年1月12日 14時30分開演 江戸川橋ギャラリー絵空箱
作・演出:モラル(犬と串)
出演 : 藤尾姦太郎、椎木樹人、一色洋平、二階堂純子
昨年末風邪で行けなかったバナナ学園純情乙女組の主宰、二階堂純子が出演するというので、見る気になったのだが、久しぶりにひどい芝居を見た。
チラシによれば、小劇団のイケメンが三人集まって、一波乱起こそうと企んだところから始まった企画だそうで、三人に絡む謎の女優が、二階堂純子なのだそうだ。蓋を開けてみれば、いうほどイケメンでもなく、笑のセンスも乏しい三人組が声を張り上げてドタバタやっているだけの100分間。なかなかの苦行であった。
二階堂純子のセレクトも、多分、NGの少なそうな女優というのが選考理由だったような気がする。二階堂純子の芝居自体も他の三人に比べれば、性根が座っていてスッキリとしたものだったが、まだ、演技力がとか存在感がとか語れるレベルではないと思う。
作・演出に関しては、妄想の中に生きて最後に自殺しようとするのを、山葵寿司の食べ比べとか、乳首相撲とか、顔面小麦粉まみれとかいう、実際の我慢比べで思いとどまらせる着想が多少面白いとは思った。
次回作hq、もちろん見ないし、名前だけは聞いている劇団犬と串の公演も見る気がなくなった。

2013年1月11日金曜日

東京デスロック「東京ノート」

2013年1月10日 19時開演 こまばアゴラ劇場
作:平田オリザ
演出:多田淳之介
出演 : 夏目慎也、佐山和泉、佐藤誠、間野律子、松田弘子、秋山健一、石橋亜希子、高橋智子、山本雅幸、長野海、内田敦子、大川潤子、大庭裕介、坂本絢、宇井晴雄、田中美希恵、永栄正顕、成田亜祐美、波佐谷聡、李そじん
私の知らない理由で、4年間も東京での公演を休止していた東京デスロックの久しぶりの東京公演。それなりに力の入った公演のようで、劇場はいちめんに白のフェイクファーを敷き詰め、とことどころに同じく白のフェイクファーのベンチ、壁面上部には6面のスクリーンやモニターが設置され、映像加工された場内映像や、テキストが投影される。観客は好きなところに座り、その間を役者が歩きながら台詞を語る。場内全体が美術館のロビーという設定だ。
その昔、青年団の東京ノートを見たことがあって、どうしてもそれと比べてしまうのだが、青年団の方はワイドレンズで人物と背景を一度にとらえていて、しかも、その両方にピントがしっかり合っている印象だった。それにより、何気ない日常会話に遠いヨーロッパでの戦争という社会情勢が、様々な影響を及ぼしているという関係がはっきりと見えた。今回の芝居は、より人物をクローズアップしている演出で、それにより背景がぼけてしまっている感じがする。その結果、日常的な会話がどうでもよいものに聞こえて、印象が薄い。
演出家は、この観客と役者を同一レベルにおくという演出を選んだときに、観客の存在をどのように考えていたのだろうか?装置の一部として考えていたのなら、観客に対して失礼な話だと思うし、観客と役者の相互作用を目指していたのなら、もっと積極的な仕掛けが必要だったと思う。
もう一つ、オープニングで、スクリーンに投影された「Where did you come from?」「When did you come here?」というテキスト(一部うろ覚えだが)に答えるように、役者達が自分の経歴を口々に喋るシーンはなんだったのだろうか?
私は、寺山修司の「書を捨てよ、町に出よう」という映画に同じようなシーンがあったのを思い出してしまったが、演出家の意図がよくわからなかった。役者の衣装が、その後の劇中と違っていたから、地の部分での語りだったことは間違いなさそうだが。
全体に、演出の頭の中だけが先走っていて、舞台に具現化されていない消化不良な作品という印象だった。

2013年1月10日木曜日

ぬいぐるみハンター「ゴリラと最終バス」

2013年1月9日 19時30分開演 下北沢駅前劇場
作・演出:池亀三太
出演 : 片桐はづき、石黒淳士、松下幸史、浅利ねこ、ぎたろー、神戸アキコ、浅見紘至、安藤理樹、竹田有希子、北尾亘、三宅綾子、南陽介、工藤史子、橋口克哉、村上誠基、黒木絵美花
3回目の観劇となったぬいぐるみハンター、「へたくそだけど、疾走感だけはある」作風も、だんだんスピードが落ちてきているように感じるのは、見慣れたせいか、それとも飽きてきたせいでしょうか。
何より気になるのは、テーマ(今回は、家族の絆)を前に押し出し始めたことです。テーマ自体に新鮮みがないし、切り口も真っ向正面からむかっていくだけで新しさもありません。テーマをまじめに語る分、スピードは確実に落ちています。池亀三太の脚本は、テレビのコントのようで、その荒唐無稽さと発想の柔軟さが魅力だったのに、テーマを語り出したことで安いホームドラマの雰囲気が漂いだして、魅力半減です。この劇団にとっては、テーマなんてものは不要だし、あっても観劇後、観客の頭の中でぼんやりイメージされればよいものだと思います。
それと、この劇団最大のトリックスター神戸アキコの扱いも疑問です。サイドストーリーに追いやられて、不照れ腐っているようにも見えました。
司会作は、もう見なくてもよいかもしれないという感じです。

2013年1月9日水曜日

「100万回生きた猫」

2013年1月8日 19時開演 池袋東京芸術劇場プレイハウス
原作:佐野洋子
脚本:糸井幸之介・成井昭人・中屋敷法仁
演出・振付・美術:インバル・ピント、アブシャロム・ポラック
出演:森山未来・満島ひかり、田口浩正、今井朋彦、石井正則、大貫勇輔、銀粉蝶、藤木孝
BAND : 水野栄治、柳本雅寛、江戸川卍丸、皆川まゆむ、森下真樹、清家悠圭、鈴木美奈子、三東瑠璃
自分へのお年玉として、いつもなら絶対買わない1万円のチケットを購入して見てきました。心の狭い私は、「1万円も出すのだから、ミラクルの一つや二つ見せてみろ。」常々思っているのですが、そんな私でも満足するよい芝居でした。
題名の通り、王様の猫になって戦争で死に、猟師の猫となって海でおぼれて死に、泥棒の猫になって番犬にかまれて死ぬというシンプルなストーリーの繰り返しなんですが、そこにイスラエル人の演出グループの日本人にはない感覚やセンス、動きがいいアクセントとなって退屈することがありません。特に、生きているか死んでいるかわからないおばあさんのシーンでの、背景の家の造形や、動きは日本人では思いつかない感覚で、感心しました。
主演の森山未来も、役が猫だけあって、台詞が少なく、喋っても一言二言がせいぜいというのもよかったと思います。前から、長台詞を喋ると森山未来の「地」が出てくるのが気になっていたのですが、これくらい短い台詞ばかりだと、全く気になりません。幼いことからダンスをしていたせいで、体の動きも切れがよく、ダンサーの動きでもなく、体のよく動く役者とも一線を画す独特なものがあっておもしろかったです。
ラストの白い猫とのラブシーンは、会話がしりとりになっているなどの工夫がされていましたが、二人(森山未来、満島かおり)の感情の盛り上がりがもっと現れていれば、さらによい作品になったのに、結構さらりと終わってしまったのが残念です。

2013年1月8日火曜日

「新年工場見学会2013」



五反田団「黒田、演劇やめるってよ」
作・演出:前田司郎
出演 : 金子岳憲、大山雅史、岩井秀人、中川幸子、内田慈、札内幸太、斎藤庸介、前田司郎、師岡広明、立蔵葉子、木引優子、石澤彩美、平塚陽子、成瀬正太郎、西田麻耶、菊川朝子、宮崎晋太郎、平田ハルカ、平田耕太郎、伊東沙保、プーチンズ

ハイバイ「大作映画のニセモノー多分スターウォーズ」
作・演出:岩井秀人
出演 : 平原テツ、植田遙、川面千晶、師岡広明、浅見二加、斎藤庸介、岩井秀人

プーチンズ ライブ

2013年最初の芝居は、予定になかったお年玉的な芝居2本立て+α
お気に入りの上田遥が出演するというのでいってみました。
五反田団の「黒田、演劇やめるってよ」は、主役の黒田大輔(シャンプーハット)が喉を潰したため、代役が金子岳憲になり、金子の役を前田司郎が、前田の役を岩井秀人が急遽やるというかなりやっつけの出来上がりにならざるを得ないものでした。
いつもの五反田団の、卑怯者でその場限りの言い訳を延々としゃべり続ける主人公というよりは、ストーリー自体が卑怯と言ってもいいくらいの話でした。
やはり、私には五反田団は向いてないと思いました。
ハイバイの方も、あまり考えていない荒唐無稽な話でしたが、後半、平沢テツのサディスティックな性格全開で、各自にダークサイドな話をさせるところが面白かったです。
プーチンズは、ギターとテルミンの男女2人組ですが、演奏がうまいわけでもなく、コントみたいなことをしても面白いわけでもなく、全く、興味なしです。
黒田の降板に伴い、パンフレットにあった「ポリスキル」は中止でした。

2013年1月1日火曜日

2012年第四四半期観劇のまとめと年間の総評


2012年10月から12月に見た芝居は以下の通り
10月1日 「ファンファーレ」
10月2日 はえぎわ「ライフスタイル体操第一」
10月3日 劇団本谷有希子「遭難、」
10月4日 子供鉅人「幕末スープレックス」
10月7日 岩井秀人「ヒッキーノソトニデテミターノ」
10月7日 劇団鹿殺し「田舎の侍」
10月11日 ブス会「女のみち2012」
10月27日 アトリエダンカン/デラシネラプロデュース「日々の暮らし方」
10月30日 アンファンテリブルプロデュース「愛のゆくえ」

11月9日 ハイバイ「霊感少女ヒドミ」
11月9日 鋼鉄松村「高橋ギロチン」
11月12日 モダンスイマーズ「楽園」
11月13日 ベッド&メイキングス「未遂の犯罪王」
11月15日 猫のホテル「峠越えのチャンピオン」
11月15日 パルコプロデュース「こどもの一生」
11月21日 ポツドール「夢の城」
11月22日 イキウメ「まとめ*図書館的人生(上)」
11月23日 離風霊船「THIRTY大橋編」
11月23日 離風霊船「THIRTY伊東編」
11月25日 「地球空洞説」

12月3日 鳥山フキ個人企画「Rのお出かけ」
12月4日 8割世界「ガラクタとペガサス」
12月5日 城山羊の会「あの山の稜線が崩れていく」
12月17日 ロロ「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校」
12月20日 中野成樹+フランケンズ「ナカフラ演劇展」
12月27日 ,ナ・ポリプロピレンプロデュース公演「ブレーメンの怪人」
12月30日 俺とあがさと彬と酒と「マボロシ兄弟・ふたりマクベス」

計27本。
その中のベストスリーは、
はえぎわ「ライフスタイル体操第一」
ハイバイ「霊感少女ヒドミ」
ベッド&メイキングス「未遂の犯罪王」の、3本です。
「ライフスタイル体操第一」は、そのさわやかで嫌みのない語り口が新鮮でした。
「霊感少女ヒドミ」は、主演の上田遙が可愛いかったです。
「未遂の犯罪王」は、唐十郎へのオマージュといえる作品ですが、今の世の中では、妄想に殉じて生きることもできない悲しみとあきらめが心を打つ作品でした。
次点は、劇団鹿殺し「田舎の侍」と、モダンスイマーズ「楽園」です。
「田舎の侍」は、相変わらずのばかばかしさに安心して笑えました。
「楽園」は、戯曲の構成の完成度の高さと、配役の見事さに感心しました。

2012年は、83本の芝居を見ることができました。年の初めに、今年は芝居を見ると決心してそのメモとしてこのブログも始めました。月に7本弱、まあ、まめに見た方だと思います。おかげで、新しい才能を知ることもできました。
はえぎわ、ハイバイ、イキウメ、ロロ、マームとジプシー、並べて書くとおかしな劇団名ばかりですが、それぞれにおもしろい芝居をやっています。
2013年も、さらに新しい才能に出逢うために芝居を見たいと思います。






俺とあがさと彬と酒と「マボロシ兄弟 / ふたりマクベス」

2012年12月30日 15時開演 小竹向原アトリエ春風舎
「マボロシ兄弟」
作・演出:山崎彬 出演:谷賢一・岡崎あがさ
「ふたりマクベス」
作・演出:谷賢一 出演:山崎彬・岡崎あがさ
京都の劇団「悪い芝居」の山崎彬と、劇団「DULL-COLORED POP」の谷賢一が合体したプロジェクト。
悪い芝居は、今年、王子小劇場で行われた公演を見ておもしろかったし、谷賢一は劇団の芝居はまだ見たことがないが名前はあちらこちらでみかけるので、興味を引かれて見にいってきた。
「マボロシ兄弟」は、精神病院に隔離されているらしい兄と、その妹を中心に周りの様々な人々を二人でとっかえひっかえ演じていく形で舞台が進んでいくうちに、誰が実在で誰がマボロシかはっきりしなくなるのがおもしろかった。ラストで兄と妹だけになったところを見ると、すべて二人の妄想だったのだろうか。
「ふたりマクベス」は、マクベスとマクベス夫人の二人が、寝室で繰り広げるマクベスストーリーという形だが、三人の魔女もマクベスの台詞にしか登場しないし、動く森も登場しないので、気弱な年下のマクベスが年上のマクベス夫人に励まされて悪事を働くという形にしか見えない。山崎彬も小劇場百戦錬磨の岡崎あがさの前では、演技の堅さ、未熟さだけが目立っていいところなし。
谷賢一のホームベース「DULL-COLORED POP」の公演を見てみたいものだ。

バナナ学園純情乙女組「バナナ学園大大大大大卒業式」

前回の公演である事件が起き、その責任を取って解散することになったバナナ学園の最終公演。前売りチケット取ってまで行く気満々だったが、当日風邪でダウン。
残念ながら、見ることができなかった。
ある事件というのは、本番中にある役者が観客の女性を舞台に上げて体を触りまくったということらしいのだが、詳しいことはわからない。

ナ・ポリプロピレンプロデュース公演「ブレーメンの怪人」


2012年12月27日 19時開演 下北沢シアター711
作:細見大輔 演出:大岩美智子(劇団ジュークスペース)
出演 : 陰山泰、有馬自由、有川マコト、細見大輔、加藤敦、山口森広、瓜生和成、野口かおる、生津徹
ベッド&メーキングスの舞台で、素晴らしい芝居を見せた野口かおるが出演していたので、仕事が キャンセルになったこともあり、いってきました。
野口かおるの芝居の魅力は、静から動、柔から剛、善から悪までの振れ幅の大きさとそのスピードとダイナミックさにあると思います。その芝居がより輝くためには、周りの役者たちの芝居がぶれないことが必要です。ベッド&メーキングスの舞台ではそのバランスがうまく取れていて、野口かおるの芝居を一層素晴らしいものにしていました。
今回の舞台では、残念ながらうまく行っていません。自分たちが楽しく芝居をしたいという思いが悪い方に働いて、各自の芝居の軸がブレブレで、その中に野口の芝居も埋没しがちで輝きが見られません。だいたい、楽に芝居をすることと楽しく芝居をすることは別の話であるはずなのに、楽しくするつもりで、楽しているようにしか見えませんでした。
ストーリーは、オードリー・ヘップバーンの「ローマの休日」のパクリで、野口かおるがヘップバーンの王女役なのですが、ラストの王女の務めを自覚して自国に帰るところなどは、ふざけているようにしか見えませんでした。どうみても、野口かおるに純真無垢な役は無理なので、別の演出を考えるべきだったと思います。
ナ・プロピレンの次回作を見ることはないでしょう。野口かおるは、3月に「レモンライブ」という公演があるようなので、もう一度見たいと思います。