2015年5月30日土曜日

イキウメ「聖地X」

2015年5月29日 19時30分開演 三軒茶屋シアタートラム
作・演出:前川知大
出演:伊勢佳世、安井順平、浜田信也、盛隆二、岩本幸子、森下創、大窪人衛、橋本ゆりか、揮也
途中、カタルシツの「地下生活者の手記」の再演や、KAATでの「暗いところからやってくる」の再演はあったものの、約1年ぶりのイキウメでした。
この芝居も再演だそうですが、初演は見ていないのでわかりません。
ドッペンゲルガー現象という一人の人間が二人に分裂する話なのですが、難しいことを考えなくても素直に楽しめました。
イキウメの場合、設定がSF的なのでそれを説明することがどうしても必要になってきます。その説明がうまく流れに乗ってくれば楽しく見られるのですが、少しでも説明くさくなると、途端に興味をそがれてしまいます。この芝居は、ぎりぎりセーフといったところでしょうか。とは言え、結構楽しく見れました。
オープニングで、装置の一部が動いて壁面に照明が広がっていくシーンは、原理がわかれば単純な仕掛けなのですが、とても印象的でした。

「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」

2015年5月27日 19時30分開演 下北沢OFFOFFシアター
作:トム・ストッパード
演出:鵜山仁
出演:浅野雅博、石橋徹郎
私も名前だけは知っていた「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」を見ました。出演者二人のプロデュース公演とのことですが、二人につての知識は全くありませんでした。調べたら、浅野雅博はわかぎふえの玉造小劇店「洋服解体新書」に出演していたようですが、全く記憶にありません。
有名なハムレットの端役、ローゼンクランツとギルデンスターンを主役にしてハムレットを裏側から描いた作品と言うよりは、周りに翻弄されてなすすべもなく、なんとか軽口や冗談でその場の正気を保とうとする、極めて「ゴドーをまちながら」的な作品でした。トム・ストッパードの戯曲は実によく書けていて、ゴドー好きな私には、ぴったりでした。
主人公が若い分、生きたいという想いが楽天的に表されていますが、根本はウラジミールとエストラゴンのペシミズムと同じです。
今回は二人芝居と言うことで、本来なら出てくるはずの他の登場人物、ハムレットやクローディアス、オフェーリアなどは、二人が扮装して映像での登場となり、重要な旅役者の座長は、人形を黒子が操作するという形になったのも、「ゴドーを待ちながら」的な印象を強めて効果的でした。
お二人とも20年くらいのキャリアがある文学座所属の役者で、台詞や動きに雑音が少なく、実に見やすい芝居でした。
それにしても、あの翻訳劇特有の台詞は何とかならないものなのでしょうか。日本語ではそんな言い方はしないでしょうという気持ちが、どうしてもしてしまいます。それとも、翻訳劇を見慣れれば、気にならなくなるのでしょうか。

岩井秀人×快快「再生」

2015年5月26日 19時30分開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
原案:多田淳之介
演出:岩井秀人
プロデュース:北川陽子
出演:大道寺梨乃、野上絹代、山崎皓司、天野史朗、後藤剛範、テンテンコ、岡田智代(中林舞休演につき、代役)
戯曲についてなんの知識もないまま見て、びっくりしました。暗い中から立ち上がり、大音量の音楽がかかる中、時々叫び声を上げながら動き回る。曲が変わるたびに,動き方も変わり、それぞれにクライマックスらしきものを迎えますが、最後には全員倒れ込んで終わります。そして、それが3回繰り返されます。それが全てです。意味のわかる台詞はひとつもなく、意味があると思える動きもありませんでした。始まって5分過ぎたあたりから少し不安になってきて、どんなタイミングで意味がわかる形にきりかわるのか心配し始めました。2回目の途中あたりで、これはこのまま最後まで行くであろうことがわかり、1ルーティンが約30分だから、上演時間から計算して、3回繰り返して終わるのだろうことが理解できました。
帰ってから少し調べたら、2006年の東京デスロックの初演の時は、最後に集団自殺するという設定で同じように繰り返していたようですが、2011年の再演時には集団自殺という設定も明示されないような演出になっていたようです。繰り返しについては、「始まったら終わる」という演劇の形に疑問を持ってのことのようです。本来なら永遠に続けたいが,役者の体力の限界で3回の繰り返しを決めたと言うことでしょうか。
振付というか役者の動きにも聞いてみれば意味があると思うのですが、見てわからなければ無駄な動きにしか見えません。理解できないのは、多分、私の感性が悪いと言うことなのでしょう。
それにしても、元々の台本(もし、あればですが)がどんなもので、それをどのように演出したらあのような舞台になるのかは知りたいところです。
2013年に「6畳間ソーキュート社会」を見たときには、美大生の思いつきパフォーマンスみたいで初々しさのようなものを感じたのに、2年経ったら自分の観念に凝り固まったおばさんのようで、少し悲しいです。

2015年5月26日火曜日

入江雅人グレート5人芝居「デスペラード」

2015年5月20日 19時開演 赤坂レッドシアター
作・演出:入江雅人
出演:水野美紀、オクイシュージ、野口かおる、入手杏奈、入江雅人
前回の清水宏とのグレート二人芝居「狼たち」があまり二人がかみ合っていなくて,今回もどうしようか悩んだのですが、私の気になる女優の一人である野口かおるが出演するというので、アンサンブルもよくなっているであろう楽日に見にいきました。
結論から言うと、前回よりは面白かったけれど、次も見にいくかと言えば、いかなくてもよいかなと言う感じです。
積極的にシュールにボケまくるオクイシュージと、芝居の受け方がシュールすぎる野口かおるがいて、全体をまとめて進行する入江雅人とその妻役の水野美紀は割とまとも、ただし、水野は隙があるとマメにボケる。全体のバランスは悪くありませんでした。
しかし、進行役がほぼ入江一人に限られるのでストーリーの展開がワンパターンになりがちで、なかだるみも生じていました。
野口かおるのシュールさは、今回のようにほかに強力なキャラクターがあれば、そんなに浮いた印象もなく、存分に楽しめました。

ままごと「わが星」

2015年5月19日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:柴幸男
音楽:三浦康嗣
振付:白神ももこ
出演:大柿友哉、黒岩三佳、斉藤淳子、寺田剛史、永井秀樹、仲島佳子、端田新菜、山内健司
柴幸男の代表作、「わが星」を見ました。再再演だそうです。地球の誕生から消滅までを小さな女の子に擬人化して語る、一種の寓話のようなようなストーリーです。その中で
、ひとの出会い、別れ、生と死について,淡々と語られていきます。
時報の音をテンポマーカーとして,リズミカルに話は進んでいき、飽きさせません。
まんが日本昔ばなしでの常田冨士男が屈指の「語り部」だったように、脚本・演出においても,「語り部」としての才能が存在すると確信できる作品でした。
なかなか東京での公演の少ないままごとですが、次回も是非見たいと思います。

2015年5月10日日曜日

渡辺源四郎商店「海峡の7姉妹」

2015年5月4日 19時開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:畑澤聖悟
出演:工藤由佳子、三上晴佳、山上由美子、奥崎愛野、音喜多咲子、夏井澪菜、我満望美、北魚昭次郎、佐藤宏之、工藤良平
毎年ゴールデンウィークにスズナリで公演している青森の劇団、渡辺源四郎商店をやっと、見ることができました。
いわゆる地域劇団の中では、全国的な知名度を持つ老舗の劇団です。
ストーリーは、戦後すぐから青函トンネルができるまで運行していた青函連絡船の歴史を通して、高度成長期の日本を描くものでしたが、舟のかぶり物をした七人の女優さんが七隻の青函連絡船を演じる、その演出自体があまりにもドンピシャリで、ずるいとまで感じさせるものでした。
青森という地方で芝居をすると言うことのけなげさと、高度経済成長に合わせて一日何十往復もする連絡船のけなげさ、それもトンネルの開通にあわせて廃止されてしまう無情さ、それが地域劇団の現状と重なって収支、涙なくしては見られない者となっていました。
芝居自体がうまいわけでないのですが、涙なくしては見られない。これをずるいといわないで、どうしましょうか。

CHAiroiPLIN「FRIEND」

2015年5月3日 14時開演 六行会ホール
原作:安部公房
構成・演出:スズキ拓朗
出演:池田仁徳、加藤このみ、増田ゆーこ、NIWA、長嶺安奈、本山三火、鳥越勇作、柏木俊彦、荒木亜矢子、まひる、今井夢子、ジョディ、スズキ拓朗、清水ゆり
2014年の若手演出家コンクールの受賞作品であり、今回はその再演と言うことである。昨年の秋に見た「マッチ売りの少女」は、踊る戯曲シリーズの2作目であり、最初の踊る戯曲はこの作品と言うことになる。
戯曲を踊ると、言葉は粗筋だけになります。台詞は踊る肉体に入れ替わります。ただ、この作品は最初と言うこともあり,踊りが当て振りの段階にとどまっている箇所も多く、完成度としては「マッチ売りの少女」の方が高いと言えます。
「さくらんぼ」を見た後だと、あの荒唐無稽さをダンスが体現していたのに比べて、シリアスさに負けて、イメージが広がっていかなかったのが残念です。

突劇金魚「ゆうれいを踏んだ」

2015年4月27日 19時30分開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:サリngROCK
出演:片桐慎和子、有北雅彦、山田まさゆき、大畑力也、sun!!、ののあざみ、殿村ゆたか
子供鉅人が東京に進出して以降の大阪の希望の星であると、どこかで書いてあったような気がする劇団です。
幽霊を踏んだら頭から桜の木が咲いたという,落語の頭山と同じ設定のストーリーですが、落語と違い頭に木が生えた状態の自分を受け入れてくれる場所を探す女性と,それを追いかける男の話が主眼となっています。
設定のキテレツさの割にまともな自分探しという内容に違和感がないところは、うまくまとめてきた感じですが、登場人物の過激さの割に毒が感じられないのが残念です。