2013年1月28日月曜日

砂地「Disk」


2013年1月26日 14時開演 三軒茶屋シアタートラム
作・演出:船岩裕太
出演:田中荘太郎、小瀧万梨子、藤井咲有里、野々山貴之、中村梨奈、岸田研二
周りとの関係を拒否する兄と、過剰なまでに周りとの関係を求めて拒絶される妹の二人を中心に、絶望的にすれ違う人々についての演劇。
一言で言ってみれば、そんなところでしょうか。
小劇場=無勝手流だと思っていた私には、なぜか、とても正統的な芝居に見えました。しかも、日本的な湿ったところがない、欧米の翻訳劇のような乾いた感覚が新鮮でした。複雑に入り組んだ時間と場所が、混乱なく頭に入ってくる演出は見事です。世間には、私の知らない素晴らしい才能が、まだまだいっぱいいるのだと嬉しくなりました。
ラストで、オーストラリアに留学した妹が自販機の前で、「最近、ここでタバコを吸う時が一番落ち着く。」と自殺した兄に語りかけるところは、求められた時だけ(コインをいれた時だけ)、答える(商品を出す)、コミュニケーションにしか安心できないと言う、彼女の絶望に、涙が出そうになりました。
しかし、男優は、全員、かっこよく描かれているのに、女優が全員、ブスに見えるのはなぜでしょう。
早く、次回作が見たいです。

2013年1月25日金曜日

トムプロジェクトプロデュース「熱風」


2013年1月25日 14時開演 赤坂レッドシアター
作・演出:桑原裕子
出演:大西多摩恵、駒塚由依、林田麻里、岸田茜、斎藤とも子
ベテラン女優二人の活躍で、とても面白い舞台となっていました。
陰と陽の二人。陽の駒塚由依は、大きな演技でに活気を与え、怒鳴っても汚くならず、可愛さを残した確かな演技で舞台に明るさを与えました。陰と言っても陰気ではなく、抑えた演技の大西多摩恵は、舞台をしっかりしめて、若手の三人に活躍の場を提供していました。特に、清川虹子に少し似ている駒塚は、付け睫毛が半分取れるほどの熱演でした。
当日パンフレットによれば、作・演出の桑原裕子の実体験(南の島のホテルに台風のため閉じ込められる)に基づく話だそうですが、五人それぞれに見せ場を作りつつ、2時間飽きさせないで話をまとめてくる力量は、たいしたものです。
ラスト近くの、「私達、ずっと、男達の話をしている。男達は、こんな風に女達の話をしているのかしら。」という台詞は、心にしみました。
2月のKAKUTAの公演がますます、楽しみになりました。

タカハ劇団「世界を終えるための会議」


2013年1月24日 19時30分開演 下北沢駅前劇場
作・演出:高羽彩
出演:有馬自由、山口森広、岸井ゆきの、大村学、宮島楠人、かんのひとみ、有川マコト、異儀田夏葉、高畑こと美、石澤美和、高山のえみ、町田水城
人類のすべての問いに答えるべく開発された人工知能も、3年前に次世代機が開発され、今では一日中オセロをしたり、様々なクイズを出し合ったりして暇を持て余している始末。そんなある日、一つのモジュールにアップデートという名目で次世代機の機能を停止せよという命令が伝えられる。人工知能は知恵を絞り、次世代機に答えられない命題を与えてハングアップさせることを計画する。その計画は、一見、うまくいったように見えたが、ハングアップ後も、自分達に人類からの問いかけが全く増えないことから、自身暗鬼に陥り、自滅してしまう。実は、これは、すべてを費用対効果で考える人工知能を廃止に追い込むための、次世代機と人類の作戦だったのだ。より、悩み続ける人工知能の開発が必要だというのが、人類の考えだった。
これがざっとした粗筋ですが、とても良くかけていると思いました。わかりやすく時系列の整理もされていて、街頭での人工知能と人々のやり取りのシーンが、良いアクセントになっていて、中だるみすることもなかったです。
ただ、これは私の印象だけなのですが、テーマをもっと深く掘り下げられるのに、わざと手前で止めて綺麗にまとめているような気がしました。
役者もそれぞれ個性的で面白かったです。特に、次世代人工知能の役をやった岸井ゆきえは、城山羊の会の「あの山の稜線が崩れていく」で、目力の凄い娘の役を演じて印象的だった人ですが、ここでクールな演技で落ち着いた演技でした。セーラー服もよく似合っていました。
次回作も見たいと考えていたら、KAATで4月に宮本亜門演出の「耳なし芳一」の脚本を担当するようです。

2013年1月24日木曜日

毛皮族「ヤバレー、虫の息だぜ」


2013年1月23日 19時開演 座高円寺
作・演出:江本純子
出演 : 柿丸美智恵、髙野ゆらこ、羽鳥名美子、延増静美、高田郁恵、町田マタニティー、金子清文、江本純子
この芝居の問題点
1.
当日パンフレットに、「パリのクレジーホースを見て、このショーを毛皮族らしくやってみたい(パクってみたい)と言う思いで着想しました。」とあるが、ダンスが酷すぎてパクりになっていない。酷すぎるという自覚はあるらしく、ドタバタする演出はしてある(小道具を忘れる。マネキンを動かす機構がトラブる。)が、泥縄である。
2.
スケジュール管理の不備。妊娠は、自然の摂理であり、それ自体は喜ばしいことであるが、1週間前に突然臨月になったわけでもあるまいに、代役を準備していないのはあまりにもひどい。代役の代わりにマネキンをおき、録音した台詞を流すという演出は、機能していれば未だしも、ひたすらしらけるだけだった。観客をなめているし、観客に甘えているだけだ。これで良しとした時点で、演出家として芝居の制作者として、失格だと思う。それとも、代役が立てられない理由があったのか。もし、あったとしても、観客には関係ない話だし、百歩譲っても開演前に役者の降板を知らせ、見たくない客には返金する旨をアナウンスすべきだ。
3.
2.に関連して、劇中映像で、「人間は、日々、変わっていくもので、それに連れて芝居も毎日変わって行っても良いと、考えている。」というような妊娠による降板を正当化するような発言があったが、その考え方は認めるとしても、最低限のレベルは保証すべきだ。その保証もできないならば、公演形態を考え直すべきだ。例えば、料金を自由設定として観劇後、観客が自分で良いと思った金額をはらってもらうなど。

今回は、芝居の中身がどうのこうのという前に、制作体制があまりにもひどいので、それについて書きました。10年以上続いている劇団なのに、あまりにもひどい。まるで制作がいなくて、演出家が一人で演出も制作もしていて、手がまわらないかのようだ。それでも、芝居の出来がよければすべて良しなのかもしれないが、それは望むべくもなく全くひどいものだった。

2013年1月22日火曜日

シンクロ少女「めくるめくセックス 発酵版」


2013年1月21日 14時開演 王子小劇場
作・演出:名嘉友美
出演 : 泉政宏、墨井鯨子、中田麦平、坊薗初菜、奥村拓、横手慎太郎、用松亮、兵藤公美、名嘉友美
2年以上眠り続ける妻を持つ男は弟の彼女と浮気してるし、大学時代の同級生同士のできちゃった婚の夫は、SMクラブにはまっている。弟は、彼女とバイト先の童貞君の浮気を疑うしというようなドロドロの恋愛肉体関係のお話。
歳をとって性浴が減退している私としては、「そんなに頑張らなくても」と言うのが正直な感想です。
役者はうまい。眠り続ける妻を持つ男を演じた泉政宏と、バイト先のうるさい先輩を演じた用松了がいい。特に、用松は、悪気はないが、図々しくて相手の気持ちを考えない世間というものを体現しているような芝居で怪演だった。
演出は、随所に笑わす工夫を執拗にいれてくるのだが、どれも少しづつ私の感覚とずれているようで笑えない。しかし、その工夫と量はかなりのもので努力には頭が下がる。
別のテーマをどう扱うのか、見てみたい。

野鳩+ナカゴー「ひとつになれた」


2013年1月20日 19時開演 下北沢OFF OFFシアター
作:鎌田順也
演出:水谷圭一
出演 : 佐伯さち子、すがやかずみ、佐々木幸子、日野早希子、高畑遊、鈴木潤子、篠原正明、加瀬澤拓未、鎌田順也
昨年観て面白くなかったナカゴーの「薫さん、現る」が、王子小劇場の佐藤佐吉賞の作品賞を受賞したことを知って、権威に弱い私は直近のナカゴー関連のこの芝居を見に行くことにしました。
見た結果は、やはり、少しも面白くない。いい加減長く生きてきて、好き嫌いも固まってしまっているのだから、自分の好みはそう簡単に変わらないことを自覚すべきだと反省しました。
オープニングは、6年間の休止期間を経て復活した鬱病あがりの演出家が、マチソワの間にダメだし稽古をするところから始まります。病気のせいか、いっこうにはっきりしない演出家、ワガママをいい放題の役者たち、それをコントロールできなくて、ますます落ち込む演出家。内幕暴露ものというか、野鳩の休止の説明も兼ねているのかもしれません。
そこに突然現れる宇宙人、あろうことか演出家を食べてしまいます。慌てて劇場を逃げ出し、車で逃げ惑う役者たち。逃げ回った挙句、ノロウィルスで休んでいる脚本家のところに行って、宇宙人騒動の経過と対策を教えてもらい、一安心、一人でもお客さんがくるかもしれないとみんな揃って、劇場に戻ってメデタシ、メデタシ。
実にあらすじを書くだけでも馬鹿馬鹿しい、いい加減なものです。
この芝居で作者がやりたかったのは、車での逃走シーン、丸椅子4つと照明、音響と役者の動きとセリフだけで車で走っているとことを見せる。ただ、それだけではなかったのかと考えてしまう。「薫さん、現る。」の時には、カナヅチを使った乱闘シーンが延々と続きました。それと同様に、車での逃走こそが作者のやりたかったことで、他のことはそれをやるための付け足しにすぎないのではないか。そう見えてしまうほど、他のシーンがいい加減すぎると思います。そして、肝心の逃走シーンが良くできているかといえば、中途半端としか言いようがありません。様式がはっきりしているわけでもなく、緊張感も中途半端だし、躍動感、疾走感、車での逃走シーンに必要と思われる要素が足りません。要するに、自己満足にしか見えないのです。
劇中で、「小劇場の芝居は好き嫌いがはっきりする。特にうち(ナカゴー)の芝居はそうだ。」と言う台詞があるのですが、全くその通りだと思います。
私には、ナカゴー+野鳩の芝居は面白くありません。

2013年1月21日月曜日

マームとジプシー「あ、ストレンジャー」


2013年1月20日 14時開演 吉祥寺シアター
原案:アルベール・カミュ「異邦人」
作・演出:藤田貴大
出演 : 青柳いづみ、石井亮介、荻原綾、尾野島慎太郎、高山玲子
前回の作品よりもゆっくりなテンポと抑えた熱量で繰り返される台詞。静かにマームとジプシーの世界が広がっていきます。
完全に青柳いづみの独り舞台。彼女の乾いた少しかぼそい声が、静かに「わたしたちは、みんな。どこにいったて、よそもの。なのだ。」というテーマを繰り返します。他の役者が、様々な役柄を兼務することもあり、繰り返しの中に個性が埋没していく中、青柳いづみだけは、自分の世界をしっかり保って、舞台に存在していました。経歴も桜美林大学卒業くらいしかわからない、まだ、若い役者ですが、気になる女優が一人増えました。
カミュの「異邦人」が立ち上がってくるのは、ラスト近くになってから。「昨日、ママンが死んだ。」という台詞とともに、見たこともないアルジェリアの青い空が広がっていきました。
何か言葉にできないものが、心に残る舞台でした。

30 Years Godo Project「ゴドーを待ちながら」


2013年1月19日 18時開演 上野ストアハウス
作:サミュエル・ベケット
演出:鈴木ハルニ
出演:鈴木ハルニ・須貝英・小玉久仁子・渡辺芳博・河野真紀
多分、世界で一番好きな戯曲「ゴドーを待ちながら」の公演があるというので、嬉しさ半分、心配半分で見に行ってきました。古くは、紀伊國屋ホールで 今の野村万之上、萬斎の父親の野村兄弟のものや、パブリックシアターでの、柄本明、石橋蓮司が出演したものとかも見ましたが、どちらも今ひとつでした。そういえば紀伊國屋ホールも、パブリックシアターも、演出は佐藤信でした。いまいちだったのは、佐藤信のせいだったのでしょうか?
今回の30 Years Godot Projectの「ゴドーを待ちながら」も、イマイチ、いや、いまさんくらい残念でした。何よりも翻訳の硬い日本語がこなれていないので、台詞が浮いてしまうシーンが多々あったことがとても気になりました。寓話のような話なので、台詞がこなれていないと全くの絵空事になってしまいます。また、台本から離れて暴走するところも、見当違いのところへ行こうとしているように見えてしまいます。収穫は、ポッツォ役の小玉久仁子でした。戯曲では成金風の中年のおじさんというような設定ですが、女優が髭を描いて、軍人のような衣装で演じるという設定で演じることにより、自由さを手にして生き生きと演じて、ただ一人光っていました。ウラジミールと、エストラゴンももっと自由にやれば、良いのにと思ってしまいます。
昔から、この芝居は役者が演じるより漫才コンビがやった方が面白いと言われていて、古くは、星セント・ルイス、コント55号、ツービートなどの名前があがっていました。言葉遊びで時間を潰すシーンなどをみると、確かに漫才コンビの方が面白そうだと思ってしまいます。
名前にうたっているとおり、30年に渡って「ゴドーを待ちながら」を上演し続けるプロジェクトのようですから、今後に期待したいと思います。とりあえず、演出が変わったら、また見に行こうと思います。

ナカミチ円陣「三人獅子舞」


2013年1月19日 14時開演 下北沢シアター711
作・演出:福田転球
出演:小椋あずき・佐伯太輔・シューレスジョー・大堀こういち・中道裕子
作・演出も出演者も誰一人知らないのになぜ見る気になったのか思い出してみたら、Webで中道裕子を検索したとき、誰かのブログで(確か、後藤ひろひとのような気がするのですが)中道裕子を紹介していて、それが結構面白かったからのような覚えがあります。
実際に見てみると、始まった途端にこれは面白くならないという確信が100%持てるという、哀しくも腹立たしい芝居でした。シアター711のようなごく狭い空間での芝居では、演技しているとは思えないほど自然に見えるか、役者の地だと錯覚するくらい当て書きにするとか、何か一つ飛び道具的に武器を持つとかしないと、普通に芝居しても演技しているのがバレバレで、さみしい気分になるだけです。全員、演出家の指示を忠実に守って動いていることがミエミエで、面白い訳がありません。
チラシの裏の挨拶文によると、今まで知り合った人を集めて芝居がしたかっただけのようも読めます。もう少し、この戯曲をやりたいとか、この演出家とやってみたかったとか、具体的な目標がないとピントが甘くなって、面白くなりにくいと思います。
主宰の仲道裕子はよくいそうな小劇場の脇役タイプで、普通の舞台なら地道に舞台を支えて、芝居をキュッと締めることもできそうな感じでしたが、狭いところで台詞を言っただけで観客の関心を集めてしまうことに慣れていないのか、なかなかエンジンがかからないようでした。もう一人の女優、小椋あずきは、小さい体に大きな声、よく喋り、よく動く、飛び道具的なタイプで、狭いところではうるさいだけでした。男優陣は、全員、芝居がヘタなのに、あまりその自覚もないように見えました。
なかなかの残念な1時間半でした。
後日、中道裕子のプロフィールを検索したら、「特技 獅子舞」とありました。ひょっとしたらこれが飛び道具のつもりだったのかもしれませんが、見事に不発でした。

2013年1月14日月曜日

長塚圭史「音のいない世界で」


2013年1月13日 11時開演 初台新国立劇場小劇場
作・演出:長塚圭史
出演:首藤康之・近藤良平・長塚圭史・松たか子
タイトルと出演者から、無言劇+モダンダンスの公演かと勝手に想像していったら、子供から大人までを対象とした童話劇でした。
貧しい夫婦のもとに、悪魔にそそのかされて泥棒兄弟が蓄音機を盗みに入ります。盗まれてしまった夫婦は、何か大切なものがなくなったと思い、それぞれそれを探しに旅に出ます。様々な人に会い、少しづつ大切なものを探し当てます。最後に、無事蓄音機を見つけて、めでたしめでたし。ストーリーは、簡単にいうとこんなところです。
それより新鮮だったのが、ダンサーである首藤康之の台詞回しの良さ。全くたくらまず、自分の言葉として発声していて、無理をしていない。その分素直に言葉がこちらの心に入ってくる。ダンサーは、動きを第一の表現と考えているから、台詞は苦手というこちらの思い込みを見事に覆してくれました。近藤良平は、コンドルズの公演でコントのようなこともしているから、台詞を喋ることに違和感はありませんでしたが、主藤康之については、踊るところしか見たことがなかったので、驚きでした。
松たか子は、どんなセリフを言っても肉体がついてくるというか、抽象的なセリフでも実感を込めて喋れるところが、素晴らしいです。それにいつも可愛いし。
長塚圭史として、難しいことを考えずに素直に作って見ましたというところでしょうか?
作品によって、スタンスを変えてくるところが、賛否両論を生む原因の一つかもしれません。今年も、彼からは目を話さず、追っかけて行きたいと思います。

2013年1月12日土曜日

生前葬「笑ってタナトスくん」


2013年1月12日 14時30分開演 江戸川橋ギャラリー絵空箱
作・演出:モラル(犬と串)
出演 : 藤尾姦太郎、椎木樹人、一色洋平、二階堂純子
昨年末風邪で行けなかったバナナ学園純情乙女組の主宰、二階堂純子が出演するというので、見る気になったのだが、久しぶりにひどい芝居を見た。
チラシによれば、小劇団のイケメンが三人集まって、一波乱起こそうと企んだところから始まった企画だそうで、三人に絡む謎の女優が、二階堂純子なのだそうだ。蓋を開けてみれば、いうほどイケメンでもなく、笑のセンスも乏しい三人組が声を張り上げてドタバタやっているだけの100分間。なかなかの苦行であった。
二階堂純子のセレクトも、多分、NGの少なそうな女優というのが選考理由だったような気がする。二階堂純子の芝居自体も他の三人に比べれば、性根が座っていてスッキリとしたものだったが、まだ、演技力がとか存在感がとか語れるレベルではないと思う。
作・演出に関しては、妄想の中に生きて最後に自殺しようとするのを、山葵寿司の食べ比べとか、乳首相撲とか、顔面小麦粉まみれとかいう、実際の我慢比べで思いとどまらせる着想が多少面白いとは思った。
次回作hq、もちろん見ないし、名前だけは聞いている劇団犬と串の公演も見る気がなくなった。

2013年1月11日金曜日

東京デスロック「東京ノート」

2013年1月10日 19時開演 こまばアゴラ劇場
作:平田オリザ
演出:多田淳之介
出演 : 夏目慎也、佐山和泉、佐藤誠、間野律子、松田弘子、秋山健一、石橋亜希子、高橋智子、山本雅幸、長野海、内田敦子、大川潤子、大庭裕介、坂本絢、宇井晴雄、田中美希恵、永栄正顕、成田亜祐美、波佐谷聡、李そじん
私の知らない理由で、4年間も東京での公演を休止していた東京デスロックの久しぶりの東京公演。それなりに力の入った公演のようで、劇場はいちめんに白のフェイクファーを敷き詰め、とことどころに同じく白のフェイクファーのベンチ、壁面上部には6面のスクリーンやモニターが設置され、映像加工された場内映像や、テキストが投影される。観客は好きなところに座り、その間を役者が歩きながら台詞を語る。場内全体が美術館のロビーという設定だ。
その昔、青年団の東京ノートを見たことがあって、どうしてもそれと比べてしまうのだが、青年団の方はワイドレンズで人物と背景を一度にとらえていて、しかも、その両方にピントがしっかり合っている印象だった。それにより、何気ない日常会話に遠いヨーロッパでの戦争という社会情勢が、様々な影響を及ぼしているという関係がはっきりと見えた。今回の芝居は、より人物をクローズアップしている演出で、それにより背景がぼけてしまっている感じがする。その結果、日常的な会話がどうでもよいものに聞こえて、印象が薄い。
演出家は、この観客と役者を同一レベルにおくという演出を選んだときに、観客の存在をどのように考えていたのだろうか?装置の一部として考えていたのなら、観客に対して失礼な話だと思うし、観客と役者の相互作用を目指していたのなら、もっと積極的な仕掛けが必要だったと思う。
もう一つ、オープニングで、スクリーンに投影された「Where did you come from?」「When did you come here?」というテキスト(一部うろ覚えだが)に答えるように、役者達が自分の経歴を口々に喋るシーンはなんだったのだろうか?
私は、寺山修司の「書を捨てよ、町に出よう」という映画に同じようなシーンがあったのを思い出してしまったが、演出家の意図がよくわからなかった。役者の衣装が、その後の劇中と違っていたから、地の部分での語りだったことは間違いなさそうだが。
全体に、演出の頭の中だけが先走っていて、舞台に具現化されていない消化不良な作品という印象だった。

2013年1月10日木曜日

ぬいぐるみハンター「ゴリラと最終バス」

2013年1月9日 19時30分開演 下北沢駅前劇場
作・演出:池亀三太
出演 : 片桐はづき、石黒淳士、松下幸史、浅利ねこ、ぎたろー、神戸アキコ、浅見紘至、安藤理樹、竹田有希子、北尾亘、三宅綾子、南陽介、工藤史子、橋口克哉、村上誠基、黒木絵美花
3回目の観劇となったぬいぐるみハンター、「へたくそだけど、疾走感だけはある」作風も、だんだんスピードが落ちてきているように感じるのは、見慣れたせいか、それとも飽きてきたせいでしょうか。
何より気になるのは、テーマ(今回は、家族の絆)を前に押し出し始めたことです。テーマ自体に新鮮みがないし、切り口も真っ向正面からむかっていくだけで新しさもありません。テーマをまじめに語る分、スピードは確実に落ちています。池亀三太の脚本は、テレビのコントのようで、その荒唐無稽さと発想の柔軟さが魅力だったのに、テーマを語り出したことで安いホームドラマの雰囲気が漂いだして、魅力半減です。この劇団にとっては、テーマなんてものは不要だし、あっても観劇後、観客の頭の中でぼんやりイメージされればよいものだと思います。
それと、この劇団最大のトリックスター神戸アキコの扱いも疑問です。サイドストーリーに追いやられて、不照れ腐っているようにも見えました。
司会作は、もう見なくてもよいかもしれないという感じです。

2013年1月9日水曜日

「100万回生きた猫」

2013年1月8日 19時開演 池袋東京芸術劇場プレイハウス
原作:佐野洋子
脚本:糸井幸之介・成井昭人・中屋敷法仁
演出・振付・美術:インバル・ピント、アブシャロム・ポラック
出演:森山未来・満島ひかり、田口浩正、今井朋彦、石井正則、大貫勇輔、銀粉蝶、藤木孝
BAND : 水野栄治、柳本雅寛、江戸川卍丸、皆川まゆむ、森下真樹、清家悠圭、鈴木美奈子、三東瑠璃
自分へのお年玉として、いつもなら絶対買わない1万円のチケットを購入して見てきました。心の狭い私は、「1万円も出すのだから、ミラクルの一つや二つ見せてみろ。」常々思っているのですが、そんな私でも満足するよい芝居でした。
題名の通り、王様の猫になって戦争で死に、猟師の猫となって海でおぼれて死に、泥棒の猫になって番犬にかまれて死ぬというシンプルなストーリーの繰り返しなんですが、そこにイスラエル人の演出グループの日本人にはない感覚やセンス、動きがいいアクセントとなって退屈することがありません。特に、生きているか死んでいるかわからないおばあさんのシーンでの、背景の家の造形や、動きは日本人では思いつかない感覚で、感心しました。
主演の森山未来も、役が猫だけあって、台詞が少なく、喋っても一言二言がせいぜいというのもよかったと思います。前から、長台詞を喋ると森山未来の「地」が出てくるのが気になっていたのですが、これくらい短い台詞ばかりだと、全く気になりません。幼いことからダンスをしていたせいで、体の動きも切れがよく、ダンサーの動きでもなく、体のよく動く役者とも一線を画す独特なものがあっておもしろかったです。
ラストの白い猫とのラブシーンは、会話がしりとりになっているなどの工夫がされていましたが、二人(森山未来、満島かおり)の感情の盛り上がりがもっと現れていれば、さらによい作品になったのに、結構さらりと終わってしまったのが残念です。

2013年1月8日火曜日

「新年工場見学会2013」



五反田団「黒田、演劇やめるってよ」
作・演出:前田司郎
出演 : 金子岳憲、大山雅史、岩井秀人、中川幸子、内田慈、札内幸太、斎藤庸介、前田司郎、師岡広明、立蔵葉子、木引優子、石澤彩美、平塚陽子、成瀬正太郎、西田麻耶、菊川朝子、宮崎晋太郎、平田ハルカ、平田耕太郎、伊東沙保、プーチンズ

ハイバイ「大作映画のニセモノー多分スターウォーズ」
作・演出:岩井秀人
出演 : 平原テツ、植田遙、川面千晶、師岡広明、浅見二加、斎藤庸介、岩井秀人

プーチンズ ライブ

2013年最初の芝居は、予定になかったお年玉的な芝居2本立て+α
お気に入りの上田遥が出演するというのでいってみました。
五反田団の「黒田、演劇やめるってよ」は、主役の黒田大輔(シャンプーハット)が喉を潰したため、代役が金子岳憲になり、金子の役を前田司郎が、前田の役を岩井秀人が急遽やるというかなりやっつけの出来上がりにならざるを得ないものでした。
いつもの五反田団の、卑怯者でその場限りの言い訳を延々としゃべり続ける主人公というよりは、ストーリー自体が卑怯と言ってもいいくらいの話でした。
やはり、私には五反田団は向いてないと思いました。
ハイバイの方も、あまり考えていない荒唐無稽な話でしたが、後半、平沢テツのサディスティックな性格全開で、各自にダークサイドな話をさせるところが面白かったです。
プーチンズは、ギターとテルミンの男女2人組ですが、演奏がうまいわけでもなく、コントみたいなことをしても面白いわけでもなく、全く、興味なしです。
黒田の降板に伴い、パンフレットにあった「ポリスキル」は中止でした。

2013年1月1日火曜日

2012年第四四半期観劇のまとめと年間の総評


2012年10月から12月に見た芝居は以下の通り
10月1日 「ファンファーレ」
10月2日 はえぎわ「ライフスタイル体操第一」
10月3日 劇団本谷有希子「遭難、」
10月4日 子供鉅人「幕末スープレックス」
10月7日 岩井秀人「ヒッキーノソトニデテミターノ」
10月7日 劇団鹿殺し「田舎の侍」
10月11日 ブス会「女のみち2012」
10月27日 アトリエダンカン/デラシネラプロデュース「日々の暮らし方」
10月30日 アンファンテリブルプロデュース「愛のゆくえ」

11月9日 ハイバイ「霊感少女ヒドミ」
11月9日 鋼鉄松村「高橋ギロチン」
11月12日 モダンスイマーズ「楽園」
11月13日 ベッド&メイキングス「未遂の犯罪王」
11月15日 猫のホテル「峠越えのチャンピオン」
11月15日 パルコプロデュース「こどもの一生」
11月21日 ポツドール「夢の城」
11月22日 イキウメ「まとめ*図書館的人生(上)」
11月23日 離風霊船「THIRTY大橋編」
11月23日 離風霊船「THIRTY伊東編」
11月25日 「地球空洞説」

12月3日 鳥山フキ個人企画「Rのお出かけ」
12月4日 8割世界「ガラクタとペガサス」
12月5日 城山羊の会「あの山の稜線が崩れていく」
12月17日 ロロ「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校」
12月20日 中野成樹+フランケンズ「ナカフラ演劇展」
12月27日 ,ナ・ポリプロピレンプロデュース公演「ブレーメンの怪人」
12月30日 俺とあがさと彬と酒と「マボロシ兄弟・ふたりマクベス」

計27本。
その中のベストスリーは、
はえぎわ「ライフスタイル体操第一」
ハイバイ「霊感少女ヒドミ」
ベッド&メイキングス「未遂の犯罪王」の、3本です。
「ライフスタイル体操第一」は、そのさわやかで嫌みのない語り口が新鮮でした。
「霊感少女ヒドミ」は、主演の上田遙が可愛いかったです。
「未遂の犯罪王」は、唐十郎へのオマージュといえる作品ですが、今の世の中では、妄想に殉じて生きることもできない悲しみとあきらめが心を打つ作品でした。
次点は、劇団鹿殺し「田舎の侍」と、モダンスイマーズ「楽園」です。
「田舎の侍」は、相変わらずのばかばかしさに安心して笑えました。
「楽園」は、戯曲の構成の完成度の高さと、配役の見事さに感心しました。

2012年は、83本の芝居を見ることができました。年の初めに、今年は芝居を見ると決心してそのメモとしてこのブログも始めました。月に7本弱、まあ、まめに見た方だと思います。おかげで、新しい才能を知ることもできました。
はえぎわ、ハイバイ、イキウメ、ロロ、マームとジプシー、並べて書くとおかしな劇団名ばかりですが、それぞれにおもしろい芝居をやっています。
2013年も、さらに新しい才能に出逢うために芝居を見たいと思います。






俺とあがさと彬と酒と「マボロシ兄弟 / ふたりマクベス」

2012年12月30日 15時開演 小竹向原アトリエ春風舎
「マボロシ兄弟」
作・演出:山崎彬 出演:谷賢一・岡崎あがさ
「ふたりマクベス」
作・演出:谷賢一 出演:山崎彬・岡崎あがさ
京都の劇団「悪い芝居」の山崎彬と、劇団「DULL-COLORED POP」の谷賢一が合体したプロジェクト。
悪い芝居は、今年、王子小劇場で行われた公演を見ておもしろかったし、谷賢一は劇団の芝居はまだ見たことがないが名前はあちらこちらでみかけるので、興味を引かれて見にいってきた。
「マボロシ兄弟」は、精神病院に隔離されているらしい兄と、その妹を中心に周りの様々な人々を二人でとっかえひっかえ演じていく形で舞台が進んでいくうちに、誰が実在で誰がマボロシかはっきりしなくなるのがおもしろかった。ラストで兄と妹だけになったところを見ると、すべて二人の妄想だったのだろうか。
「ふたりマクベス」は、マクベスとマクベス夫人の二人が、寝室で繰り広げるマクベスストーリーという形だが、三人の魔女もマクベスの台詞にしか登場しないし、動く森も登場しないので、気弱な年下のマクベスが年上のマクベス夫人に励まされて悪事を働くという形にしか見えない。山崎彬も小劇場百戦錬磨の岡崎あがさの前では、演技の堅さ、未熟さだけが目立っていいところなし。
谷賢一のホームベース「DULL-COLORED POP」の公演を見てみたいものだ。

バナナ学園純情乙女組「バナナ学園大大大大大卒業式」

前回の公演である事件が起き、その責任を取って解散することになったバナナ学園の最終公演。前売りチケット取ってまで行く気満々だったが、当日風邪でダウン。
残念ながら、見ることができなかった。
ある事件というのは、本番中にある役者が観客の女性を舞台に上げて体を触りまくったということらしいのだが、詳しいことはわからない。

ナ・ポリプロピレンプロデュース公演「ブレーメンの怪人」


2012年12月27日 19時開演 下北沢シアター711
作:細見大輔 演出:大岩美智子(劇団ジュークスペース)
出演 : 陰山泰、有馬自由、有川マコト、細見大輔、加藤敦、山口森広、瓜生和成、野口かおる、生津徹
ベッド&メーキングスの舞台で、素晴らしい芝居を見せた野口かおるが出演していたので、仕事が キャンセルになったこともあり、いってきました。
野口かおるの芝居の魅力は、静から動、柔から剛、善から悪までの振れ幅の大きさとそのスピードとダイナミックさにあると思います。その芝居がより輝くためには、周りの役者たちの芝居がぶれないことが必要です。ベッド&メーキングスの舞台ではそのバランスがうまく取れていて、野口かおるの芝居を一層素晴らしいものにしていました。
今回の舞台では、残念ながらうまく行っていません。自分たちが楽しく芝居をしたいという思いが悪い方に働いて、各自の芝居の軸がブレブレで、その中に野口の芝居も埋没しがちで輝きが見られません。だいたい、楽に芝居をすることと楽しく芝居をすることは別の話であるはずなのに、楽しくするつもりで、楽しているようにしか見えませんでした。
ストーリーは、オードリー・ヘップバーンの「ローマの休日」のパクリで、野口かおるがヘップバーンの王女役なのですが、ラストの王女の務めを自覚して自国に帰るところなどは、ふざけているようにしか見えませんでした。どうみても、野口かおるに純真無垢な役は無理なので、別の演出を考えるべきだったと思います。
ナ・プロピレンの次回作を見ることはないでしょう。野口かおるは、3月に「レモンライブ」という公演があるようなので、もう一度見たいと思います。