2019年8月29日木曜日

棘棘「おでこにタトゥー」

2019年8月4日 19時開演 下北沢Geki地下Liberty
作・演出:田中聡
出演:鎌田順也(ナカゴー)、岩崎う大(かもめんたる)、猪股俊明、永井秀樹(青年団)、金子岳憲、師岡広明、篠崎大悟(ロロ)、青年団 /、宮部純子(五反田団)、坂口辰平、成瀬正太郎、芦原健介
気になる役者、宮部純子ねらいで見にいきました。作・演出の田中聡さんは、映画とかコマーシャルをとっている映画監督のようです。
内容は突き抜けたところがひとつもないコメディで、退屈なものでした。
おめあてはの宮部純子は、客入れ誘導と前説の不機嫌そうな感じが芝居よりも印象に残りました。岩崎う大がロケット開発に情熱を注ぐ研究者の役で、それはお前のキャラクターではないだろうと、突っ込みたくなりました。篠崎大悟はロロの文脈の中で生きてくる役者であり、独自のキャラクターで光るタイプではまだないことも発見でした。

東葛スポーツ『78年生まれ、宮部純子』

2019年7月21日 18時開演 シアター1010稽古場1
構成・演出:金山寿甲
出演:宮部純子(五反田団)、森本華(ロロ)、川﨑麻里子(ナカゴー)、田畑菜々子(ナカゴー)、渕野修平
私の気になる役者、「舞台上の挙動不審者」宮部純子の名前がタイトルに入っているので、東葛スポーツを見にいきました。
会場がいつもと違ってシアター北千住の稽古場で、表に目立った看板も出ておらず、まるで関係者限定の試演会のような雰囲気で緊張しました。
内容は宮部純子の半生をふり返りつつ、最後にはフェミニストをディスるという、いつもどうりの展開というか安定の路線で波乱もなく、無事終わりました。今回の気づきは2点、森本華と川崎麻里子は私には区別できないことと、ラップのベーストラックは全曲一緒であるということでした。

清水宏の戯曲の真相 SEASON2「熱海殺人事件」

2019年7月16日 19時30分開演 横浜若葉町ウォーフ
監修:佐藤信
出演:清水宏
清水宏が、戯曲についてスタンドアップコメディをすると知ったので、見にいきました。
出だしは、熱海に現地調査に行っておばさんたちとストリップを見た話しで始まります。これは、まあ、つかみといったところでしょうか。
次につか戯曲の本質は「差別」であるという分析、これも「差別を肯定も否定もしていない」という的確なコメントはあるものも、あっさりしたものでした。
ラストは、「熱海殺人事件」のハイライト、取り調べのシーンを一人芝居で演じる、という構成で、全部で1時間くらいでしょうか。
短い休憩をはさんで、佐藤信とのアフタートークがありました。アフタートーク嫌いの私ですが、つか戯曲の突っ込んだ話が聞けるかと思い、残って見ましたが、つかこうへいの話は一切せず、佐藤信の出自はアングラなのかとか、なぜ若葉町ウォーフを作ったのかという話しに終始しました。
コメディをする清水宏よりも役者としての清水宏の方が好きな私としては、残念な結果に終わりました。
コメディという芸は(これは落語や漫才も同じだと思いますが)自分のパターン、芸風と言ってもいいですが、これを確立してそれにお客を引きずり込む事が要だと思います。その意味ではワンパターンなものです。そのワンパターンに以下にうまく誘導するかが腕の見せ所なのです。清水宏がスタンドアップコメディでみせる過剰な熱量は非常に面白いものではありますが、それでもいつもうまくいくとは限らず、時にはうっとうしいものになります。それよりも芝居の舞台に立っているときにそこはかとなく漂う違和感、なぜか芝居の一部になりきれていないと感じているような孤独感のほうが、私は好きです。

Newyork2019 Vol.25「Broadway Musical」

2019年7月1日
6月9日にトニー賞の発表があってから約1ヶ月、続々とミュージカルの終了予定が発表されています。一番近いのが、7月7日の「My Fair Lady」まあこれは2018年の4月に始まったもので昨年のトニー賞の範囲なので、1年3ヶ月くらいの公演期間でした。
8月11日にしまるのが、「Be More Chill」と、「The Prom」の2本です。「Be More Chill」のオープンが今年の3月11日、「The Prom」が2018年の11月15日です。どちらも1年未満、「Be More Chill」は高校生くらいの若い観客が多く、ミュージカルとは思えない盛り上がり方をしていたので、新しい観客層をつかんでロングランかと思っていたのに意外でした。「The Prom」は、よくあるブロードウェイのミュージカル製作方法にうまく今のLGBT問題をのっけて、既成のミュージカルファンと若い層を取り込めるのかと思っていたのに、残念です。
続いて8月18日に終わるのが、「The Cher Show」と「King Kong」です。The Cher Show」が2018年の12月3日開始、「King Kong」は2018年の11月3日開始ですから、やはり1年未満でのクローズです。「The Cher Show」は最近増えてきた伝記ミュージカルですが、実際にあった「The Cher Show」というテレビ番組のスタジオという大枠を構えて、その中で年代別の3人のシェールが一人で、二人で、はたまた三人で歌い、踊り、芝居もするという構成がうまく聴いていて、最後まで飽きません。同じ伝記ミュージカルの「Beautiful: The Carole King Musical」と比べると、ミュージカルのできとしては「The Cher Show」の方がよくできていると思うのですが、かたや2014年以来5年のロングラン、もう片方は9ヶ月で終わりという結果になってしまいました。キャロル・キングの方は悪くいうと「懐メロ、そっくりさん物真似ショー」なのですが、こんなに続いたのは、ソングライターとしての偉大さのせいでしょうか?
シェールの方はエキセントリックな言動や、露出の限界に挑戦するような奇抜な衣装などで、名前を知る人こそ多かったものの、嫌いな人も多かったのかもしれません。
「King Kong」は斬新で大規模な仕掛けを見せるショーだと思うので、11ヶ月の長さはこんなものなのかもしれません。
聴いたところによると、ブロードウェイミュージカルの制作に投資された資金を回収するのに1年かかるそうなので、個々であげた作品は投資資金の回収に失敗していることになります。もっとも、「King Kong」は先にオーストラリアで制作されたものなので、ひょっとしたら、回収成功案件なのかもしれません。いずれにしても厳しい世界です。
ブロードウェイの超ロングラン作品を調べてみると、一番長いのが「Chicago」で23年、次が「Lion King」で22年、三番目が「Phantom Of The Opera」で21年でした。ぐっと離れて、「Book Of Mormom」が8年で四番手です。これらの作品は宝の山ということですね。
今後オープンが予定されているミュージカルの中で、パブリシティ的に注目を浴びるのは、ボブ・ディランの「Girl From The Nortu Country」でしょう。2020年の2月プレビュー開始予定です。一度ロンドンで上演されていますが、ブロードウェイでの評判はどうなるでしょう。
個人的にはディビット・バーンのファンなので、「David Byrne's American Utopia」も気になります。ディビット・バーンは、パブリック・シアターで「Here Lies Love」というフィリッピンのイメルダ・マルコス夫人をモチーフにしたミュージカルを見ましたが、内容がシリアスすぎてブロードウェイにはこれなかったという印象でした。
ミュージシャンの名前をタイトルにもってくるプロジェクトはうまくいかないという印象があるので心配です。
2020年の秋には、ヒュー・ジャックマン主演で「MUsic Man」のリバイバルも予定されています。「世界で一番善良な人」という印象のヒュー・ジャックマンですから、恋に落ちて、その町のために働く詐欺師なんてぴったりだと思います。
伝記ミュージカルでは、ティナ・ターナーの「Tina!」の予定もありますね。夫アイク・ターナーの家庭内暴力、キリスト教から創価学会への改宗など、ドラマティックな要素はたっぷりなので、面白くなるかもしれません。もっとも、改宗ににつては描かれないと思いますが。

2019年7月28日日曜日

Newyork2019 Vol.26 Moulin Rouge! The Musical

2019年7月2日 20時開演 AL HIRSCHFELD THEATRE
今回のニューヨーク最後のミュージカルは、まだプレビュー中だった「Moulin Rouge! The Musical」でした。プレビュー中の作品については批評を発表しないというのがニューヨークの暗黙の了解だそうですが、もう正式オープンもしたし批評もぼちぼち出ているようなので、もう大丈夫でしょう。
見にいって一番びっくりしたのは、開場を待つお客さんの列の長さです。8th Ave.を1ブロック以上、人が並んでいました。この作品に対する期待の高さを伺わせます。
入場すると舞台前面に大きなMoulin Rougeのネオンサインがぶらさがり、上手のバルコニーには巨大な象、下手にはムーランルージュ名物の風車が鎮座まします。舞台上ではロートレックの絵のような衣装を着けた役者がそぞろ歩きながらポージングして、観客から写真を撮られています。世紀末のパリの雰囲気が濃厚で、今にもカンカン踊りが始まりそうです。しかし、いったん始まるとオープニングダンスは完全なディスコサウンド、振付もそれ風です。
ムーラン・ルージュのクラブのセットは、全面透かし模様のインドの宮殿風に過剰な電飾がつき、どこかテレビのセットを思わせます。その前で往年のヒット曲がアレンジし直されて次々と流れて、そのたびに客席には軽いショックが流れ、時には笑いが起きます。1幕は明るく楽しい雰囲気で終始しますが、2幕は一転してシリアスになり、セットも書き割りを多用したリアリズムに近いものになり、往年のヒット曲の再アレンジという手法も真面目に愛を歌い上げるというシリアス路線になります。とは言え、主人公たちのアトリエの窓の外には、「ア・ムール」というネオンサインが宙に浮かんでいたりしますが。
この作品の基になったのはガイ・リッチー監督の映画「ムーラン・ルージュ」で、ヒット曲の再アレンジという手法も映画から踏襲しています。これは「Remix」という最近の音楽界で重要な概念を応用したものと考えられますが、「Hadestown」や「Oklahoma!」といった「アメリカーナ」という現在のアメリカの音楽シーンの最重要概念を哲学的に考察して生まれた作品に比べると、底が浅い感じがします。とはいえ、様々な曲を元の曲のニュアンスを残しつつ、作品に合わせて(時には2つの曲をつぎはぎして!)アレンジした才能と労力はすごいものがあります。

2019年7月7日日曜日

地点「三人姉妹」再演

2019年7月5日 19時30分開演 神奈川芸術劇場中スタジオ
作:アントン・チェーホフ
翻訳:神西清 
演出:三浦基 
出演:安部聡子 石田大 伊東沙保 小河原康二 岸本昌也 窪田史恵 黒澤あすか 小林洋平 田中祐気
地点の「三人姉妹」再演を見ました。初演の時にものすごく感銘を受けた舞台でしたが、再演はそれにはるかに及ばないものでした。演出もずいぶん替わり、出演者も三女イリーナ役が黒澤あすかという若い役者に変わっていました。この人の発声だけが普通の対話のニュアンスを色濃く残しており、ずっといわかんがを感じさせられました。そのせいか、地点特有の「言葉が塊となって客席に飛んでくる」という感じがほとんどなくなっていました。
今まで地点を見てきてわかった事は、「役者の動きは激しいが、その意味がわからないときは、おもしろくない」ということです。これは、比較的広いKAATで上演される時に限って言えることかもしれませんが、空間を埋めようと役者に動きをつけるのですが、台詞がうまくいってないときにはその動きだけが激しくなり、結果、焦点がぼけ、芝居はいっこうに面白くならないということになるような気がします。

2019年6月29日土曜日

Newyork2019 Vol.24 「Working: A Musical」

2019年6月26日 19時30分開演 Newyork City Center
1974年に出版された スタッズ・ターケルのインタビュー集「Working : People Talk About What They Do All Day and How They Feel About What They Do」を元にしたミュージカル「Working: A Musical」を見ました。インタビュー集は翻訳されて私も読んだ覚えがあります。とにかく、単行本で暑さが5㎝以上あり、ものすごい数のインタビューが納められていました。読み終わるまで持ち歩いていたので、常に鞄が重かった事を覚えています。個々のインタビューについては記憶がありませんが、全体の印象として、「人はどうしても自分の仕事に対して、報酬以外の意味、やりがいとか、誇りとかを求めてしまう。そして、それは悪いことではない。」というものでした。
プレイビルによれば、このミュージカルの初演は1977年にスタッズ・ターケルの地元シカゴで行われたようです。
インタビューをミュージカルにするということで、どうしてもモノローグと歌の繰り返しになります。元々のインタビューが関連するものではないので、脚本の構成で関連づけようとしても、限界があります。結局、たいした盛り上がりもないまま、なぜか「ニューヨーク・シティ・センター、リノベイトおめでとう!」みたいになって終わってしまいました。元々、そのまま、ミュージカルにするには無理があった素材だと思いました。

2019年6月26日水曜日

Newyork2019 Vol.23「Chicago」

2019年6月24日 20時開演 Ambassador Theatre
Misoppa氏のThe Chronicle of Broadway and meブログによれば、City Centerのアンコール・シリーズでリバイバル上演されたのが、1996年。翌年からブロードウェイでの上演が始まり、今年で22年。多分、現在上演されているミュージカルの中では、最長ロングラン記録ではないだろうか。次はライオン・キングあたりだろうか。
現在のロキシー・ハートはデシ・オークレー、ベルマ・ケリーはアムラ・フェイ・ライトで、いったい何代目になるのだろうか。
さて、そのロングラン公演のはての舞台のできはというと、やはりそれなりとしかいいようがない。舞台には、脚本のできとか演出の斬新さとか役者の演技のうまさだけではなく、「今」という熱狂のようなものが、出演者だけでなく観客に必要なのだと思います。その「今」をその場にいあわせた全員が共有できることが、よい舞台と言える鍵なのです。長年やってきて「お仕事」とかしている演技と、「名物」を見に来る観客の間でそれを共有することは難しいです。
7月1日から14日までは、米倉涼子がロキシー・ハート役で3度目のブロード挑戦だそうです。がんばっていただきたいものです。

Newyork2019 Vol.22 「Wolfgang Steakhouse」

2019年6月24日 12時頃
久しぶりに高いステーキを食べました。Wolfgang SteakhouseのRib-eye steakです。Wolfgang Steakhouseはマンハッタンにいくつかあり、他のお店もいったことがありますが、ここPark Ave.のお店が一番落ち着いていて、ステーキの焼き加減も最適で美味しいと思います。重さはメニューに載っていませんが、多分600グラム以上あったと思います。赤みの肉なのでしつこくなく、あっさりと食べられます。
行ってみて一番驚いたのは、お店が入っているビルがまだ工事中だった事です。昨年行ったのも確か6月だったので、1年以上工事していることになります。しかも、進んでいる感じが全くありません。
上の写真は地下鉄の中で見かけた、反Airbnbの市条例の告知というか、キャンペーン高校です。「世界最高のピザがどれか知ることはできないだろうが、違法な短期レンタルを防ぐ方法を知ることはできる」と書いてあります。さらに下には「もしあなたが不在の間に30日以下の期間でゲストを迎えると、家主は法的な行動を起こすことができます」とも書いてあります。段々規制が厳しくなってきているようです。

2019年6月24日月曜日

Newyork2019 Vol.21 「Pilobolus Dance Group」

2109年6月22日 14時開演 Joyce Theater
ブロードウェイ・ミュージカルの情報を知るために、よく参照させていただいているMisoppa氏のブログで「ちょっとエッチなダンスグループ」と紹介されていたので、見にいきました。確かに面白いです。うまく言えないのですが、ダンサー同士のつながり方、手をつないだり、リフトしたりの方法が、一般的なものとは違います。アクロバティックだったりしますが、基本にあるのはダンサー同士の深い信頼関係だと思います。その信頼が、他よりより親密なつながり方になって現れているのだと思います。そのつながりが「ちょっとエッチ」と感じられるのかもしれません。

2019年6月22日土曜日

Newyork2019 Vol.20 「Beetlejuice」

2019年6月21日 20時開演 Winter Garden Theatre
ティム・バートンの映画「ビートルジュース」を元にした「Beetlejuice」を見ました。特に斬新な舞台装置を作らなくても、新しい解釈の演出にこだわらなくて、面白い舞台はできると証明するようなミュージカルでした。
一幕は、「スクール・オブ・ロック」の主演をしていたアレック・ブライトマン演じるビートルジュースの喋りと動きに頼りきりで乗り切り、二幕はリディア役のソフィア・アン・カルーソーのなき母親に逢いたいという想いだけでのりきってみせるという、わかりやすく面白い舞台でした。
強烈な個性がある役者がいれば、ブロードえぇいの今までのノウハウをスムーズにつなぎ合わせていけば、十分面白い舞台を作ることができるということでしょうか。そういえば、「トッツィー」もある意味同じ考え方でできていると言えると思います。

2019年6月21日金曜日

Newyork2019 Vol.19 「The Cher Show」

2019年6月20日 19時開演 Neil Simon Theatre
「The Cher Show」を見ました。今年のトニー賞ベストミュージカル主演女優賞を取ったステェファニー・ジェイ・ブロックはアンダースタディに交代していたので、見られませんでしたが、代役のディー・ロッシオリもなかなかの熱演でした。タイトル通りシェールのショー・ステージという括りの中で、若い頃のシェール、全盛期のシェール、現在のレジェンドとしてのシェールという三人のシェールが、それぞれ、もしくは一緒に人生をふり返って行くという構成です。あくまでショー・ステージなので、素早い転換と短い芝居で中だるみしにくいのはよいアイディアだと思いました。
見ながらずっと考えていたことは、「歌の力」と「芝居の力」の違いについてでした。歌には一瞬にして別次元に連れて行ってくれる力があるますが、芝居はそれよりも時間をかけてより広い世界を見せてくれる力だと思います。ミュージカルの中の歌はどうしても芝居に引っ張られて、一瞬にして世界を変える力が弱まってしまう傾向があります。今回のようにショーという枠組みを作ると、なぜか煮え切らない感じがするのはそのせいだと思います。

Newyork2019 Vol.18 「The Prom」

2019年6月19日 14時開演 Longacre Theatre
今年のドラマ・デスク・アワード ミュージカル部門作品賞を受賞した「The Prom」を見ました。インディアナ州の片田舎エッジウォーターのレズビアンの高校生が卒業記念のダンス・パーティー「プロム」にガールフレンドと出席したいと言い出したことから大騒ぎになり、PTA会長が断固反対のメッセージを地元放送局を通じて表明します。一方その頃、ブロードウェイではエレノア・ルーズベルトのミュージカルが初日を迎えますがニューヨーク・タイムズに酷評され、それを挽回すべくこのプロム騒動に目をつけて、役者たちが乗り込み、騒動が始まります。とにかくこのブロードウェイ・アクターズのキャラクターがよくできています。トニー賞に2回ノミネートされたことがある魅力のないライザ・ミネリのような女優、自分ではいけていると思っている中年のゲイの男優、ジュリアードのドラマ部門卒業が自慢の、役に立たない二枚目の男優、ホッシー・ガールのなれの果てのような女優など、少しでもブロードウェイ・ミュージカルに興味がある人なら笑ってしまう設定です。すったもんだの末、ハッピー・エンドで終わるのですが、そのきっかけもSNSに投稿した主人公の決意と心情を歌った歌に、多くの共感が得られたのがきっかけという今日的な理由で、LBGTの時代にマッチして、無理のないものです。役者では、主人公のガールフレンド役を演じたイサベラ・マッカーレがエッジの効いたしっかりした演技で目にとまりました。

2019年6月20日木曜日

Newyork2019 Vol.17 「King Kong」

2019年6月18日 19時開演 Broadway Theatre
巨大な操り人形ミュージカル「キング・コング」を見ました。事前に知り合いから「ストーリーが単純すぎてつまらない」と聞かされていたのであまり期待もせずに見にいったのですが、あにはからんやとても面白かったです。面白さの原因はただひとつ、高さ6m、重さ1.1tのキングコングが動くことです。極端に言えば、俳優も筋書きも音楽もキングコングの為のサイドストーリーにすぎない、そんな割り切りさえ感じさせるほどキングコングが動くところは面白いです。両肩から太いワイヤーで吊されてそれで全重量を支えつつ、腕や足の動きを人力のロープと滑車で見せる、細かい動きは直接手や足を人が押したり引いたりしてつけていくという仕掛けは見え見えなのに、いや、見え見えだから面白いのかもしれません。全体重をワイヤーで支えている都合上、その場で立ったり座ったりはできますが、大きな場所移動は、いちいち転換幕を下ろして作業する必要があったり、欠点をあげていけばきりがありませんが、そんなことは気にならないくらい巨大なものが動き回ることには魅力があります。

2019年6月19日水曜日

Newyork2019 Vol.16 「Mel Brooks on Broadway」

2019年6月17日 19時開演 Lunt-Fontanne Theatre
「Mel Brooks on Broadway」を見てきました。私としてはミュージカル「プロデューサーズ」の裏話でも聞ければと思っていってみたのですが、話題のほとんどは映画についてでした。私にとっては「サイレント・ムービー」や「ブレイジング・サドル」などの割と面白い映画を撮り、ミュージカル「プロデューサーズ」のプロデューサーという認識ですが、プレイビルを読んでみるとトニー賞だけでなく、グラミー賞、アカデミー賞を何度も取っている巨匠なのですね。びっくりしました。観客も年齢層はかなり高めでしたが、満員でした。
会場のルートーフォンテェーン・シアターは、確かブルース・スプリングスティーンのブロードウェイ公演が行われた会場で、最近は期間限定の公演を行っているようです。

Newyork2019 Vol.16 「Oklahoma!」

2019年6月16日 15時開演 Circle in the Square Theatre
歴史上アマチュア劇団や学校の学生による上演を合わせると、全米で最も上演されているミュージカルといわれる「オクラホマ」を観てきました。
この作品は、今年のトニーでベストリバイバルミュージカルになりました。昔の映画を見るとお気楽な恋愛ものとして描かれていますが、この舞台では違います。音楽は、暗く重苦しく演奏されますし、役者は自分が演じている事が気に入らないかのように演じます。今日の文脈で読み直した新しい演出ということは知っていましたが、実際に見てみると戸惑いました。どのような文脈で読み直されているのかいまいち理解できず、イライラや鬱憤だけが貯まっていくような舞台でした。




2019年6月17日月曜日

Newyork2019 Vol.15 「Snarky Puppy」

2019年6月15日 20時開演 Brooklyn Stell
今回ニューヨークに来るきっかけになったスナーキー・パピーのライブに来ました。今年の初め、新しいCDの発売と前後して、ワールドツアーのスケジュールが発表になりました。その中に「6/15 Brooklyn」の文字がありました。後先考えずに即予約しました。その後、4月に日本公演があることを知り、もちろん見にいきましたが、お疲れだったのか演奏時間も短く、満足のいくものではありませんでした。それで満を持してのブルックリン・スティールです。ワールドツアー2クール目のラストステージで、ひさしぶりの地元での公演、盛り上がらないわけがありません。
スナーキー・パピーのライブの最大の魅力は、ブラスセクションのソリです。切れ味鋭く、ユニークなフレーズをビシバシ決めてくれるのが最高です。


2019年6月16日日曜日

Newyork2019 Vol.14 「Tootsie」

2019年6月14日 20時開演 Marquis Theatre
今年のトニー賞でサンティノ・フォンタナがミュージカル主演男優賞を取った「Tootsie」を観ました。絶え間ない逆の連発で客席は大受けでしたが、ほとんどが台詞のギャグなので私の英語力ではそれほど楽しめませんでした。一番受けたのは、訪ねてきた自分のエージェントに女装がばれ、「これならトニー賞が取れる」と言われた場面です。本人が後ろを向いてしまい必死で笑いをこらえるシーンは、なんとも言えないどよめきと笑いでかなりの間芝居が止まりました。ブロードウェイにおけるトニー賞の大きさを感じました。
光っていたのは主人公の同居人で、少々エキセントリックで偏執狂的なところのあるトッツィーのバランスをとる役割をクールに演じたジェフ・スレーター役のアンディ・ガーテルーシェンです。終始トッツィーをなだめながら、ラストには芝居仲間のサンディとできてしまう、ちゃっかりしたところもあり最高です。と思ったら、ちゃんとミュージカル助演男優賞にノミネートされていました。

2019年6月15日土曜日

Newyork2019 Vol.13 「Be More Chill」

2019年6月13日 19時開演 Lyceum Theatre
若い世代の間で大評判と噂の「Be More Chill」を観ました。主役のジェレミー・ヒーレーは、アンダースタディのトロイ・イワタに変わっていました。ストーリーは、オタクな高校生が怪しげな薬を飲むことでスーパーコンピュータとつながり、いけてる高校生になるが次第に精神に異常をきたし、精神病院送り寸前にオタクだったときの唯一の友達に救われるという、「ディア・イーブン・ハンソン」の二匹目のドジョウをコメディで狙ったものです。
全体にすごくよくできたプロダクションですが、「ディア・イーブン・ハンソン」のシリアスさが、高校生の必死さを現して感動的だったのに比べて、プロデュース側の狙いが露骨に見えて、その分白けるのは否めません。観る前は結構期待していたので、残念です。


2019年6月14日金曜日

Newyork2019 Vol.12「Kiss Me, Kate」

2019年6月12日 20時開演 STUDIO 54
シェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」を翻案したコール・ポーター作曲のミュージカル「Kiss Me, Kate」を観ました。とてもポピュラーな「ソー・イン・ラブ」と「トゥー・ダン・ホット」の2曲を含むミュージカルです。
正しくは「王様と私」でトニーを取った、ケリー・オハラのためのキス・ミー・ケイトというべきです。それほどまでにケリー・オハラを中心に演出されています。

しかし残念ながら、「王様と私」では、芯の強さに見えた正確差へのこだわり、神経質な表情がコメディでは邪魔になります。もうすこし、図太い方がより面白くなったと思います。
今回のハイライトは、「トゥー・ダン・ホット」の歌とダンスシーンでした。めまぐるしいほどの展開とスピード感は圧倒的でした。

Newyork2019 Vol.11

2019年6月12日
この日は少し遠出して、アッパーウェストサイドのコミュニティ・フード&ジュースにいってみました。ここは、パンケーキで有名なクリントン・ストリート・ベーキング・ファクトリーと同じ経営だそうですが、地域住民や学生に利用されている感じで、はるかに落ち着いています。


フレンチトーストを頼んでみました。厚く切ったイングリッシュトーストをさっと卵液に浸して焼いた感じで、あっさりした食感です。ソースは、レモン風味のカスタードクリームとラズベリーソース、暖めたメイプルシロップバターです。
横のベーコンは、最近厚切りのベーコンのおいしさにはまっているので、確認もせずに頼んでしまいましたが、来たのは塩辛い薄いベーコンで失敗でした。
コミュニティ・フード&ジュースに行ったのは、クロイスターズ美術館に行く途中にあったからです。
クロイスターズは、私がニューヨークで一番好きな美術館です。好きな理由は、いつ行っても人が少なく静かだというところです。中世ヨーロッパの建築物や美術品の美術館で、ユニコーンのタペストリーが有名です。
中世の美術は当然宗教美術で、その地域の住民や巡礼者などが寄進した絵や、彫刻なども数多く、その素朴さやおおらかさは、見る者に安心を与えます。
クロイスターズというのは、「回廊」という意味で、ここには3つの回廊があります。写真は、一番大きいクサの回廊です。廊下にあるベンチに座って明るい中庭を眺めていると、心が落ち着きます。
クロイスターズへの行き方は、いつも地下鉄の1ラインで適当なところまでいって(今回は、157 st.)、M4のバスに乗り換えてクロイスターズの前までというルートにしていまし
たが、今回の帰り北側の急な階段を降り、AラインのDyckman Streetに抜けるルートを試してみたところ、時間的にはこのルートが一番短くなるのではないかと思いました。ただし、初めてDyckman Streetからフォート・トライオン・パークの中を抜けるのは、標識も少ないので少々難しいかもしれません。

2019年6月12日水曜日

Newyork2019 Vol.10 Ain't Too Proud - The Life and Times of The Temptations

2019年6月11日 19時開演 IMPERIAL THEATRE
リズム&ブルースのボーカルグループ、テンプテーションズのミュージカルです。基になっているのは、オリジナルメンバーで今もテンプテーションズを率いている、オーティス・ウィリアムスの「THE TEMPTASIONS」で、劇中でもオーティス・ウィリアムス役の役者デリック・ラスキンがナレーターを務めて話を進めていきます。他のメンバーは唄うか、短い芝居をするだけ。もちろん、オーティスもそこにいるので、その環から抜けてナレーションをすることになります。
その繰り返しがリズムを生み出して、話がどんどん前に進んでいく仕組みになっています。
このミュージカルはいわゆる「ジュークボックスミュージカル」に分類されると思うのですが、単なる懐メロの垂れ流し状態にならずに、ドラマとしてもしっかりしたものを持った作品に仕上がっています。既製の曲を使ってもちゃんとしたミュージカルを作れることを「ジャージー・ボーイズ」に続いて証明したと思います。
リズム&ブルースのボーカルグループには曲ごとに決まった振付があります。それも魅力のひとつですが、このミュージカルでは、そのオリジナルの振付がブラシュアップされたり、新たな振りになっていたりして、単純にかっこよさが倍増しています。

Newyork2019 Vol.9

2019年6月11日
この日のランチは、久しぶりに美味しいパスタを食べました。近所のGnoccoというイタリアンレストランです。期待しないで入ったのがよかったのか、ゆで加減もぴったりで、塩辛すぎず、量も適度でした。
久しぶりにあたりでした。

夕食は前に行ったことがあるE 12st.のMOTORINOにしました。ピザ・マルゲリータです。直径20㎝以上ありますが、クラストが薄いのでぺろりと食べられます。












2019年6月11日火曜日

Newyork2019 Vol.8 「Hadestown」

2019年6月9日 14時開演 WALTER KERR THEATRE
シンガーソングライターのアナシス・ミッチェルの書いたアルバム「Hadestown」を元に作られたミュージカルです。ストーリーは、ギリシャ神話の「オルフェスとエウリュディケ」を現代アメリカに置き換えたもので結末も全く同じだと知っていたので、少々斜に構えて観ていたのですが、あっという間に話しに引き込まれました。主役のオルフェスを演じたリーブ・カーニーは「ミュージカル・スパイダーマン」のタイトルロールで、エウリュディケを演じたエヴァ・ノブレザダは「ミス・サイゴン」の再演で、トニー賞にノミネートされたことがあるようですが、この二人の印象はかなり薄いです。
というよりは、各シーンごとに主役が入れ替わり、それをアンディ・デ・シールド演ずるエルメスが、狂言回し的につなげていくという構成でできていて、そのバランスが実に見事です。
演出のレイチェル・チャブキンは、「ナターシャ、ピエールとグレイトコメット1812」の演出でトニー賞にノミネートされて、今回は見事、ミュージカル演出賞を取りました。エルメス役のアンディ・デ・シールドはベストミュージカル助演男優賞を取りましたし、アナシス・ミッチェルはベスト作曲賞を受賞しました。そして、作品自体もベストミュージカル作品賞に輝きました。こうしてみると、素晴らしいと思ったところがすべて受賞していることになります。昨年の「バンドビジット」の受賞の時も思いましたが、自分が観て感動した作品がトニー賞を取るのは本当に嬉しいものです。
この日は夜トニー賞授賞式の放送があり、見ていたのですが最後のベストミュージカル賞の発表に合わせて登壇してきた大勢の中に、マチネーの客出しをしながら、「トニーを取りに行くぞ!」と叫んでいたタキシード姿の男性がいたのが印象的でした。。