2014年9月18日木曜日

青蛾館「星の王子さま」

2014年9月12日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターウエスト
作:寺山修司
構成・演出・振付:スズキ拓朗
出演 : 未唯mie、大鶴美仁音、野口和美、森ようこ、山口ルツコ、ジョディ、伴美奈子、七味まゆ味、阿萬由美、新部聖子、万里沙、蜂谷眞味、松山由佳、真弓瞬、清水ゆり、浅場万矢、増田ゆーこ、落合美香、今井夢子、千葉りか子、こもだまり
実はこの芝居を見るかどうかは、かなり迷いました。理由は、今まで寺山の戯曲の上演でおもしろいと思ったことが一度もなかったこと。「男装音楽劇」と銘打ってあり、宝塚のへたくそな真似で、自己陶酔的な芝居を見せられる可能性があること。前から気になっていた若手の劇団ロ字ックの公演が同じ日にあることなどです。
それらのマイナスな要素を振り切って見に行った理由は、ただ一つ、たまごPLINの「最愛!シャイクスピアレシピ」でとても面白い舞台を見せてくれたスズキ拓朗が演出だということでした。
見に行って、大正解。寺山ワールドというよりは、たまごPLINに通ずるところが多々あるスズキワールド全開で、特に前半は、羊ともネズミともつかない着ぐるみを着たコロスが歌うわ、踊るわの大活躍で飽きさせません。
この芝居の寺山的テーマは、「星の王子さまは、見えないものを見るのが大切だというが、それは見えるものを見ないということではないのか。」「星の王子さまがいつまでたっても大人にならないのは、虚構の中に入り浸っているからだ。」というものですが、この芝居でも、点子はラストに「うそだ。この壁のうしろに、青い空だなんて、ある筈がない……。
どうせあるのは、紙の星と、豆電球の天の川!
いつまでも、いつまでも、大人になれない『星の王子さま』!きたないものを見ないふりをするごまかしの童話!
うそでかためたお芝居のホテルの後ろに、ほんものの人生をみせて頂戴!」と叫び、舞台全面に張られていた白い幕が振り落とされて、その後ろで着ぐるみを脱ぎ、私服に着替えた出演者たちが、点子に名前を呼ばれて前に出てきます。そして、本物の星を見るために客席を通って退場していきます。
舞台暗転。
その間、イントレの上で虚構の塊のような女装の野口和美はひたすらうろたえるだけです。それはそうですよね、自分の存在を否定されているのですから。
しかし、舞台は再び明るくなり、点子が戻ってきて「野口和美さん」と優しく呼びかけ、手を伸ばします。それに答えるように手を伸ばす野口和美。
そこで暗転。終演。
ラストを、鈴木拓朗の優しさととるか、主宰者の顔を立てたとととるか、どちらでもかまいませんが、見事な幕切れでした。
確かに、寺山の毒のようなものは表面的にはかなり薄くなったように見えますが、ポリシーはしっかり受け継がれていると思いました。
11月にスズキ拓朗主宰のチャイロイプリンの公演があるようですが、そちらも是非見たいと思います。

2014年9月13日土曜日

葛河思潮社「背信」

2014年9月12日 14時開演 横浜芸術劇場大スタジオ
作:ハロルド・ピンター
翻訳:喜志哲雄
演出:長塚圭史
出演 : 松雪泰子、田中哲司、長塚圭史
なかなかスケジュールが合わないし、あっても人気のようでチケットがとれない長塚圭史演出の芝居ですが、公演が横浜ということもあり、チケットがとれたので見てきました。いってみると、平日の昼間だというのにほぼ満席、やはり、人気があるようです。
内容は私の苦手なシリアスもので、しかも演出がストイックに余計なものを極力そぎ落とし,台詞を立たせることを目指しているようで、なかなかつらい90分でした。
演出としては、余計なことを排除して全体の底上げを狙い、台詞と芝居の構造を明確にすることを目指したのだと思いますが、それが成功するためには、役者の力量が足りないと思います。台詞を聞くだけでイメージが膨らむだけの技量がないと、台詞の意味を理解しようとする努力だけで疲れてしまい、集中が続きません。
私の辛抱のなさもあると思いますが、好みとしてはストイックよりも、1点突破の全面展開を狙う方が好ましいです。
そういう意味で言うと、男の馬鹿さ加減にフォーカスを当てた「わが友ヒットラー」や、ダンスの振付のよな切れのよい一人二役を見せてくれた「醜い男」の方がよく思えてきます。

2014年9月12日金曜日

iPhone6, iPad mini,

iPhoe5を購入したときにブログを書きましたが、その後順調にiPad Retina 64GB Wi-Fiも導入しました。外出にも持ち出して、iPhoneのデザリングでWebにも繋いでみましたが、接続が結構煩わしいこと、何よりも持って歩くには微妙に重くて大きいことが災いして、すぐ、室内専用になりました。外で仕事をする必要があるときには、ノートブックがどうしても必要なので、iPadは仕事の合間の暇つぶしや、情報収集が役割になります。そのためだけに持って歩くには、少々大きすぎ、重すぎでした。
今年の6月頃に、iPhone5のバッテリーが弱りだして使用時間が短くなり出しました。思い切って、バッテリーを交換してもらったのですが、しばらくすると勝手に電源OFFになったりするようになりました。どうも、バッテリー交換が徒になったようです。
その上、老眼のためiPhoneでメールの返信をするのが辛くなってきました。
そこで、メール環境を統一して素早い返信をするため、また、10月にニューヨークに行くことを決めたので、地図を見やすく、今までためたEvernoteのデータも見やすくするためと称して、SIMフリーのiPad miniを7月になって購入しました。Expansysで約9万円でした。プラス、AppleCareを1万円で付けました。
iPhone5はauに下取りしてもらい、差額18000円を払って、ガラケーにしました。
iPad miniは IIJの格安SIMを入れて、月額約1000円、ガラケーもオプションを全て取り払って、月額1000円。今まで、iPhoneだけで6000〜8000円払ってきたことを思えば、かなりのコストダウンになりました。
ただ一つ計算外だったのが、私がガラケーの使い方をすっかり忘れてしまい、電話帳の登録すらもできないことでした。
ほとんど電話をしない私ですが、あまりの使いにくさに、本日SIMフリーのiPhone6を予約してしまいました。月末までには納品されると思うので、されたら速攻、MNPで格安SIMを突っ込んで、使いたいと考えています。

富士山アネット/Manos.「醜い男」

2014年9月11日 20時開演 東京芸術劇場アトリエイースト
作:マリウス・フォン・マイエンブルグ
翻訳:林立騎
構成・演出・振付:長谷川寧
出演 : 板倉チヒロ、中林舞、大原研二、福原冠
20時という遅い開演なので、ゆっくり東京芸術劇場の地下にいったら、シアターイーストには別の芝居のポスターが貼ってありました。劇場を間違えたのかと(過去に一度経験あり)、慌ててWebで検索したところアトリエイーストとのこと。周りを見渡したところ、今まで気がつきもしませんでしたが、シアターイーストの左手にそれらしき受付がありました。中に入ってみると、そこは真っ白い画廊のような空間で椅子が50席くらい並べられていました。
開演前に主宰者の長谷川寧氏の前説で、本体の富士山アネットは、台詞のない演劇的なダンスをする団体であり、今回の富士山アネット/Manos.は、台詞のある演劇を上演する旨の説明がありました。
新聞紙のようなチラシの面白さだけに惹かれて見に来た私にとっては、あまり意味のない情報でした。
ストーリーは、ふとしたことから自分が非常に醜いことを知った男が整形手術を受け、それがあまりに成功したため、真似する者が増えすぎて次第にアイデンティティが崩壊するという、ある種寓話のような話でした。役者は4人だけで、主役の醜い男以外は、一人二役、三役をこなすのですが、その切り替えが、最小限の声色の変化や、動きの変化だけで小気味よく行われ、気持ちがよいものでした。

2014年9月11日木曜日

風琴工房「我が友ヒットラー」

2014年9月10日 19時30分開演 渋谷 TRUMP ROOM
作:三島由紀夫
演出:詩森ろば
出演 : 古河耕史、朝倉洋介、山森大輔、小田豊
前回の「Proof」の芝居がおもしろかったので,見に行きました。まず第一に、その芝居にふさわしいと思える場所を探す情熱に感心します。
「Proof」の時は空に浮かんでいるように見える全面ガラス張りのビルの1室でしたし、今回は渋谷の怪しげな雑居ビルの1室でした。普段は、バーか,クラブとして営業しているであろうアンティークのシャンデリアや、ミラーが所狭しと飾ってある退廃的なムード漂う不思議な空間でした。
その退廃的なムードが背景としてふさわしいと考えて選んだと思われるのですが、その効果が発揮される以前に芝居が残念な結果しか残せていませんでした。
シェイクスピアの作品が典型的ですが作家の書く言葉に力がありすぎる場合、それを言う役者の力量も比例して必要になってくるわけで、それが不足しているときには、今回のように悲しい結果にならざるを得ないということでしょうか。
特に、今回のように本当に役者が目の前で演じていると、演技している役者と一緒に演技していない素の肉体も垣間見えてしらけてしまいます。
考えてみれば、三島由紀夫の戯曲をちゃんと見たのは初めての経験でした。今まで食わず嫌いでしたが、台詞の力強さや構成の巧みさは、さすがな物があります。
次に三島の作品を見るときには、うまい役者の座組で見たい物です。

はえぎわ「ハエのように舞い 牛は笑う」

2014年8月25日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:ノゾエ征爾
出演 : 川上友里、橘花梨、井内ミワク、富川一人、河井克夫、町田水城、笠木泉、竹口龍茶、鳥島明、鈴真紀史、上村聡、踊り子あり、滝寛式、山口航太、ノゾエ征爾
ゾンビ映画のエキストラが主な産業である南の火山島で、様々なエピソードが語られていく。離婚して東京で父親と暮らす妹と一緒にアイスクリームを食べるために牛乳が飲めるようになりたい姉、ゾンビのバイトするために島に流れてきた弟と、自ら記憶喪失になろうとしている兄、大規模なレジャー施設開発の噂におびえるボーリング場オーナーとその右腕、ボーリングのボールが抜けなくなり,悪戦苦闘する二人の男、人間嫌いな自販機飲料補充員、全くかみ合わないカップル、悪事を推奨して落書きをする女、人間でもない動物でもない謎の生物もろた、すべてがどこかでつながっているようでも有り、全く関係ないようでもある。
物語は、それぞれのエピソードを淡々と、しかし十分おもしろく描き、突然、歌と共に終わってしまう。
最後に、口の周りを血だらけにしながら何かを食べている謎の生物もろたと、高校生ながら妊娠しているらしい妹のつぶやきを残して。
まるで、映画のイントロ部分だけか、知らされていなかったシリーズ物の導入部分のようである。この先続きがあるのかどうかもわからないが、それを知るためだけにでも次回作を見たい。