2013年11月30日土曜日

マームとジプシー「モモノパノラマ」

2013年11月29日 19時30分開演 横浜芸術劇場大スタジオ
作・演出:藤田貴大
出演:石井亮介、伊東茄那、荻原綾、尾野島慎太朗、川崎ゆり子、成田亜佑美、中島広隆、波佐谷聡、召田実子、吉田聡子
この劇団独特の語り口も回を重ねていくうちに気にならなくなって、内容がすんなり入ってくるようになりました。又、今回は四方客席のため、同じシーンを視点を変えて繰り返す手法も四方の客へのサービスともなって、有効性が上がっていました。
今回のテーマは「生きる」でした。猫のモモの生涯が周りの人間の生死と平行して語られていきます。けんかしたり、恋愛したり、自殺してしまったりする人間の傍らで、「ただ、生きている。」だけの猫。じんわりと、感動が押し寄せてくるいい作品でした。
少し気になったのは、途中で役者のうちの何人かが感情オーバーになって、涙声になってしまうことでした。個人的には、クールな視点をキープした方がこの演出にはふさわしいという感じがします。前はそれができていたのに、今回できなっかたのはなぜでしょう。演出の考え方に変化があったのか?役者の質の問題でしょうか?
少し、
気になります。

2013年11月29日金曜日

子供鉅人「ハローヘル!!!」

2013年11月28日 19時30分開演 池袋シアターグリーンビッグツリーシアター
作・演出:益山貴司
出演:影山徹、キキ花香、億なつき、益山寛司、小中太、岡野一平、小嶋海平、クールキャッツ高杉、山西竜矢、三ツ井秋、地道元春、山本大樹、小林欣也、益山U☆G、松原進典、ミネユキ、永沼伊久也、花本ゆか、東ゆうこ、藤澤賢明、PIKA☆、呉山夕子、BAB、グレコワ・タテュー、デグルチーニ、益山貴司
前の日に見たトリコロールケーキがあまりにひどかったので、それと無意識のうちに比べてしまうせいか面白く見られました。
初めて見たときは、「芝居が派下手だが、熱意と勢いはある。ただ、その方向がばらばらでうるさいだけだ。」というような印象でしたが、今回は勢いの方向性がそろってきて見やすくなっていました。
前回の記録を読み返してみたら、「まったく、受け付けない。」とまで書いてありました。今回、そんな拒否反応が出なかったのは、脚本、演出が整理されて見やすくなっていたからだと思います。
役者的には、大鬼役のでかい外人のバリトンサックス吹きとサタン役のわけのわからない人(多分、歌手)が、役者には出せない存在感で面白かったです。

2013年11月28日木曜日

トリコロールケーキ「ギョーザ丸、出港す」

2013年11月27日 20時開演 新宿眼科画廊・スペース地下
企画・原案:鳥原弓里江
脚本・演出:今田健太郎
出演:鳥原弓里江、古田彩乃、今田健太郎、藤野帆奈美、河村美沙、川口雅子、長谷川一樹、南綾希子、モリサキミキ
久しぶりに全く面白くない芝居を見てしまいました
。このところ、若手女性作・演出家の芝居で「理解できない」作品が何本か続いていましたが、それらは「何かありそうだが、それがなんなのか私には理解できない=言葉にできない」ものでした。
しかし、この芝居は違います。まったくなにもありません。演技は超へたくそで、高校演劇にも劣るレベルですし、演技の下手さをカバーする熱意も全く感じられません。ストーリーはシュールではなく、単なるご都合主義しかすぎず、そのご都合主義も苦笑すらできないものでした。役者も可愛い女の子やかっこいい男子が一人もいないので、芝居中目を開けていることすら辛い有様でした。
これだけいいところがないと、かえってあっぱれといえるのかもしれません。
私も大きな声で、「二度と見ない。」ときっぱり言い切ることができます。

2013年11月25日月曜日

サンプル「永い遠足」

2013年11月23日 14時開演」にしすがも創造舎
作・演出:松井周
出演:久保井研、野津あおい、羽場睦子、坂倉奈津子、古屋隆太、奥田洋平、稲継美保、坂口辰平
当日パンフレットによると、オイディプス王を下敷きにした家族の変態の物語とのことです。この変態とは、いわゆる異常者のことではなく、周囲の状況により変わっていく人という意味だと思います。母親との間にできた娘は養子に出され、やがてそれを知らされて当然のようにぐれます。何日も家に帰らず、その間売春したりもします。養父母はそんな娘にどう接してよいかわからず、おかしな指導者に言われるままに性転換したり、犬になったりします。ラストで真実を知った父親は、オイディプスの話のとおり自分の両目をつぶしてしまうのですが、この意味が私にはよくわかりません。目をつぶすと言うのは、世界の否定でしかないと思います。オイディプスは世界の汚れを取り除くためと称して様々な悪行をなし、最後に本当の汚れが母親と姦通した自分であることを知るわけです。その自分を否定するのではなく、世界の方を否定するのはなぜでしょう。一度、ちゃんと原作を読まなければいけません。
電気自動車の荷台に張り出し舞台を乗せて、ぐるぐる回りながら転換していく装置は紙芝居みたいで面白かったです。

2013年11月20日水曜日

イキウメ「片鱗」

2013年11月15日 19時開演 青山円形劇場
作・演出:前川知大
出演:ハマダ信也、安井順平。伊勢佳世、盛隆二、岩本幸子、森下創、大窪人衛、清水葉月、手塚とおる
イキウメにおける前川知大のテーマはこのところ一貫して、「集団に異物が入ってくることにより起こる集団の変化」です。その異物が、宇宙人だったり、モノリスだったり、超能力者だったするのですが、焦点は「集団の変化」にあります。そして今回はホラーと言うことで、ゾンビというか化け物が現れ、人にとりつきやがては死んでしまうということになっています。原因は引っ越してきた少女で、彼女の初潮が始まって以来住んでいる町内にゾンビが現れるようになり、それが原因でその家族は引っ越しを繰り返していたのでした。
道具立ては完全にホラーですが、ホラー的な脅かしの演出があるわけではないので少しも怖くありませんし、集団の変化についても町内がゴーストタウン化してしまうだけなので、印象に残るシーンもありませんでした。名前や人間関係、職業などの設定がしっかりしていることからくる構成力はさすがイキウメという感じですが、結果としては不満がのこる舞台でした。
今回、もっとも印象に残ったのは、装置でした。9尺×9尺の4尺高の二重が四つ、3尺ずつ離れておいてあるだけの装置ですが、二重が各家庭の部屋として使われ、間の3尺の通路が人々の行き交う道として設定されていました。各家がどの二重と決めないでシーン、シーンで役者が3尺幅を飛び越えて展開していくスピード感は快感でした。

2013年11月12日火曜日

Carne 「売春捜査官」

2013年11月8日 19時30分開演 下北沢 OFF - OFF シアター
作:つかこうへい
演出:黒川麻衣
出演:野口かおる、なだぎ武、植木潤、宮下雄也
気になる女優の一人である野口かおるが主役の舞台ということで見にいきました。いつものはちゃめちゃさが主役と言うことで、どうなるのかという興味が一番にあったのですが、とりあえず主役の役目は果たしていたとはいえましょう。
この芝居は、主役の木村伝兵衛が強面やしおらしさやずるがしこいときなどをめまぐるしく変えていくことで緩急をつけ、話を進めていく構造なので、野口もはちゃめちゃよりは、しっかり芝居をして主役のつとめを果たしていました。それはそれで面白かったのですが、私が見たい野口かおるとは違ったようです。はちゃめちゃなまま、危うい綱渡りで話が進んでいく。そのスリルこそが野口かおるだと思うのです。あの芝居なら、もっとうまくやれる役者がきっといることでしょう。そうではなく、野口かおるにしかできない木村伝兵衛が見たかったのに少し残念です。
植木潤は絶妙な距離感を保って、はげでホモの警官を演じていました。それに比べて、なだぎ武は芝居が堅く、一本調子なのが気になりました。なだぎと野口の距離がもっと柔軟であれば、野口の芝居ももっと面白くなったと思います。

2013年11月6日水曜日

鳥公園「甘露」

2013年10月29日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:西尾佳織
出演:浅井浩介、鳥島明、笹野鈴々音、武井翔子、森すみれ、伊藤俊輔、実近順次
忙しくて鳥公園の芝居を見てから感想を書くまでに、かなり間が空いてしまいました。暇があるときには、内容を思い出して括弧とを頭の中でまとめていたつもりでしたが、時とともに、ここ最近見た若手の女性脚本・演出家の作品との比較で考えるようになりました。いわゆる芝居に一番こだわっているのが、シンクロ少女、芝居から距離があるのが、快快、鳥公園はその間にいるような気がします。
その感覚は特に舞台美術によく表れていて、舞台美術家の考えたエッシャーの階段のように見せたかったであろう舞台美術のシンクロ少女は、成功しているとはいえませんが、十分芝居の範疇にあると思われます。6畳間を四方の上から見下ろすという環境を設定することが一番の目的だと思われる舞台美術の快快は、芝居的な感覚よりも現代美術の日常の中に非日常を持ち込んで、そのインパクトを得ることに満足する感覚に非常に近い気がします。鳥公園の舞台美術は、奈落をセットの一部として使うためにわざわざ通常の客席と舞台を逆転させて使い、パイプ組の二階屋を立てて、その奥の客席部分は公演という感じでベンチと街灯を配するというものでした。セットの考え方は芝居的でしたが、出入り口の処理をしないとか客席壁面がそのままであるなど、ディティールの処理に気がゆかないところは、舞台的というより
美術的な感じがしました。