2012年12月27日木曜日

中野茂樹+フランケンズ「ナカフラ演劇展」


2012年12月20日 20時開演 横浜STスポット
「聞いてごらんよ、雲雀のこえを」
原作:シング「谷の陰を」より
誤意訳・演出:中野茂樹
出演 : 村上聡一、福田毅、洪雄大、斎藤淳子

「家族でお食事ゆめうつつ」
原作:ワイルダー「ロング・クリスマス・ディナー」より
誤意訳・演出:中野茂樹
出演 : 村上聡一、福田毅、洪雄大、斎藤淳子
海外の多分小説であろう作品を翻訳、構成した短い芝居の二本立て。
一本目は、人里離れた谷間に住む夫が若い妻の不貞を疑って死んだふりをして、それを暴くというストーリー。正直、あまり面白くなかったです。一方的に責め立てる夫の言葉を誰も受け止めようとせず、虚しく時間だけがすぎていく。そんな感じでした。
二本目は、90年の家族の歴史を40分にまとめて、語ってしまうという壮大な試みでしたが、こちらはかなり面白かったです。
クリスマスディナーの席に限定して、時間の流れに沿って、家族が増え、子供達が成長して行き、それぞれに旅立って行き、孫まで生まれてくるという歴史が、淡々と描かれていきます。起伏の少ない台詞回しと、記号化されているかのような細やかな動きが時間の流れを邪魔することなく作用して、落ち着いた気持ちで見ていられました。
ただ、すべてが終わってから、初演の時に作ったというオリジナルソングを歌ったのは、余計だと思いました。どうしても歌いたければ、芝居の中に組み込む工夫があるべきだと思います。
次回作を見に行くかどうかは、微妙です。

劇団ロロ「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校」


2012年12月17日 19時30分開演 新宿眼科画廊
作・演出 : 三浦直之
出演 : 亀島一徳、島田桃子、篠崎大悟、森本華、小橋れな、崎浜純、板橋瞬谷、望月綾乃、北村恵、大石貴也
当日パンフレットを見たら、今回が3回目の公演で、初演は恥ずかしい台詞を恥ずかしげもなくやり、再演では恥ずかしくないようにやり、今回は、恥ずかしいままに演じましたと、書いてありました。確かに、恥ずかしい台詞満載の1時間でしたが、にもかかわらず、ロロらしい爽やかな舞台でした。
成功の第一の原因は、本当に狭い新宿眼科画廊にあったと思います。手を伸ばせば役者に触れる、汗が飛んできても避けられないような近いところで、真剣に愛について語られたら、感動しないわけにはいきません。これがスズナリのような舞台と客席川kれている普通の小劇場だったら、随分印象が違ったものになっていたでしょう。
劇中で胸板と呼ばれていた役者とその相手役の女の子は、必要なかったと思います。また、空の抜け殻と称するマスクと、陽炎が亡くなるシーンの電源コードも、説明のし過ぎだと思います。
もう一つ不思議なのは、配役表にあった大石貴也が登場しなかったことです。何らかの配役変更があったとしても、事前に説明もありませんでした。大石貴也とは、誰だつたのでしょう。

城山羊の会「あの山の稜線が崩れていく」



2012年12月5日 19時30分開演
作・演出:山内ケンジ
出演 : 岸井ゆきの、石橋けい、古屋隆太、岡部たかし、永井若葉、本村荘平、猪野学、
また、面白いのか面白くないのか、判断に困る芝居に遭遇しました。東京乾電池の芝居に続いて今年2回目です。
普通芝居を見ると、最初に面白いか面白くないかの判断があって、次にどこが面白いのか、何が面白くないのかの、具体的な理由に進んでいくのですが、この芝居は面白くないわけではないが、何が面白いのかよくわからないのです。慌てて、ネットで観劇記や、劇評を探したら、シュールなコメディとか、不条理な喜劇というような言葉が並んでいました。
これが正しければ、不条理劇だということになりますが、私のイメージする不条理劇とはずいぶん感じが違います。私の知っている不条理劇は、不条理自体は見えないもので、登場人物は、その周りを手探りで進みながら、あるかないかわからない不条理について語っていくというようなイメージだったのですが、この芝居では、最初から不条理がゴロンとそこにあるような感じなのです。登場人物達はそれに多少の抵抗はするものの、最終的には押し流されてしまいます。
ストーリーは、平和な3人家族の家に突然。隣の弁護士夫婦が訪ねてきて、娘の本当の父親が出所してきて、妻と娘を引き取りたいといっていると言い出す。そこへ、とうの父親も現れ、強引に連れて行ってします。妻と娘は、多少抵抗するも最終的には一緒に出て行ってします。孤軍奮闘、腕力までふるった父親は、一人残され、偶然居合わせた娘の家庭教師を、娘に見立てて、ビールを飲むところで終わる。
私のこんなことはあり得ないという常識的な気持ちが、どこがおもしろいのかわからないという気持ちの根底にあるような気もするのですが、ラストシーンの家庭教師とビールを飲むところは、あきらめなのか、ささやかな抵抗なのかもよくわかりませんでした。

2012年12月5日水曜日

8割世界「ガラクタとペガスス」

2012年12月4日 19時30分開演 八幡山ワーサルシアター
作:石原美か子 演出:鈴木雄太
出演 : 佐倉一芯、白川哲次、日高ゆい、中村匡亮、木原敦子、小林肇、石田依己架、橘未佐子、亀山浩史、原裕香、小早島モル、井上千裕、斎藤晴久、鈴木雄太
劇的につまらなかった劇団鋼鉄村松の芝居の中で、唯一おもしろかったアフタートークのゲストが、この8割世界主宰の鈴木雄太でした。
そのせいで、見てみようという気になったのですが、結果は結構、残念なものでした。
開場時に、主宰の鈴木雄太と役者の一人が場を暖めようとしてか、前説のようなおしゃべりをしているのですが、芸があるわけでもなく、話術のスキルがあるわけでもないので、場内が暖まると言うよりは、気まずい雰囲気が漂うだけでした。
話は、いわゆるベタなコメディで、途中で多少笑わせて、ラストで涙腺が緩むという定石の構成です。この手の芝居を見ると、どうしても、もっとうまい役者がやれば、もっとおもしろくなるはずなのに、という気持ちがわいてきて気持ちが冷めてしまうのです。ベタなコメディをおもしろくやれるほど、経験もキャラクターもない小劇団なら、それに変わる飛び道具が必要だと思います。飛び道具を潔しとせず、正攻法でいくのなら、それはそれで結構ですが、経験を積んでおもしろくなるまで見続けようと思うほど、シンパシーが感じられる劇団ではありませんでした。
唯一よかったのは、役者の声がでかいことでした。前日の鳥山フキの芝居が全員声が小さかったので、その落差もあって、声のでかさには驚きました。


2012年12月4日火曜日

鳥山フキ個人企画「Rのお出かけ」

2012年12月3日 19時30分開演 新宿眼科画廊地下
作・演出:鳥山フキ
出演 : 北村恵、菅谷和美、南綾希子、黒木絵美花、松木美路子、狗丸トモヒロ、渡邊とかげ、
公演チラシの裏に、最近気になる演出家の一人であるノゾエ征爾が推薦文を書いていたので、見てみる気になりました。推薦文で知った「鳥山フキは、ノゾエ征爾と大学の劇研で同期だった」ということ以外何も知りませんでした。
公演を見終わった今も、実は、ワワフラミンゴという劇団を主宰している。今回は、劇団とは別の鳥山フキ個人の企画公演である。ということが追加の知識として加わったくらいです。
ストーリーは、二人の女の子はなぜか殺し屋で、今度、スペインに行って誰かを殺すように依頼を受けます。資料や、地図、室内の見取り図などを検討すると、かなり手強そうなので、同じアパートに住む住民の中から、助手を選ぶために面接をする。というようなものだと思うのですが、ストーリーは全然重要ではないのかもしれません。それより、あげたあめ玉を手から離すまいとする気持ちとか、水草の培養を趣味とする男とのデートの話とか、少し不思議でシュールな感覚の方が重要なのかもしれません。
残念ながら、私は結構ハードで長く続いた現場が終わった次の日で、体力も、集中力もない状態で見てしまったので、舞台に集中できず、(なにしろ、全く声を張り上げることもなく、ほとんど座ったままで話すので動きもほとんどないので集中するのも難しい)約70分の短い芝居にもかかわらず、何度も寝てしまいました。
できれば、このようなタイプの芝居は、疲れていなくて優しい気持ちにあふれているときに見たいと思います。環境も、昼日中の自然光にあふれた場所で、静かに始まり、いつの間にか終わっていると最高だと思います。

2012年12月3日月曜日

流山児事務所「地球空洞説」


2012年11月25日 17時開演 豊島公会堂
原作:寺山修司
構成・脚色・演出:天野天街・村井雄・流山児祥
実は39年前の天井桟敷の初演も見ました。道に迷いながらたどり着いた高円寺の公園で、開演直前にもかかわらず、寺山修司がまだ演出していました。内容はあまりにひどかったこと以外ほとんど覚えていません。寺山修司は、短歌や競馬の評論は素晴らしいが、芝居はひどい。書いていることとやっていることが、全く違う。初めての天井桟敷経験がこれだったので、以後、天井桟敷を見るのやめてしまいました。
39年経っての再演は、台詞はちゃんと聞こえるし、唄は音程がずれることもなく、ダンスの振りも全員揃っていましたが、それがどうした、つまらないものはつまらないというのが正直な感想です。
いくらカメハメ波のポーズが完璧にできても、そこに込めるエネルギーがなければ、カメハメ波は、出ません。
流山児祥と大久保鷹が狂言回しとして出ていますが、流山児は相変わらず台詞をかみまくって、そのたびに笑ってしまうし、(それがなぜかとてもいやで、演劇団の芝居を見にいかなくなったのを思い出してしまいました。)
大久保鷹は、劇中、タンスを担いで出てくるという、状況劇場の不忍池水上音楽堂での公演を思い出させるサービスまでしていましたが、あのときの状況が全くない今となっては、モゴモゴと何を言っているかわからないおじいさんでしかありません。

離風霊船「The Thrity」


2012年11月23日 15時開演 大橋編 19時開演 伊東編 中野シアターボンボン
作・演出:大橋泰彦・伊東由美子
劇団30周年記念公演第二弾。同じエレベーター前という設定で、2人の作家が書き競うという、うまくいけば面白くなったかも知れない試みでしたが、結果は残念なものでした。マチネの大橋編は一応まとまってはいたのですが、離風霊船らしい驚かしのシーンも小粒だし、大胆な転換もなしで、肩透かしを食らった感じでした。
伊東編は、さらにひどいありさまでした。途中で書けなくなって、過去の作品の場面の抜粋を強引に繋げただけにしか見えません。脚本として完成しておらず、途中で投げだしたように見えます。前回、初めて離風霊船を見た私にとっては、何が面白いのか全くわかりませんでした。
同じ劇団を何回か続けて見ていくと、無意識のうちにそのたびごとに新しいものを見せてくれることを望むようになる。新しいものが見られれば、おもしろいと思い、それがなければ、つまらないと思いやすいものです。
若い劇団は、路線も固まっていないので新しいことも出やすいが、30年も続いている劇団は、劇団のカラーも定まっているので、そればかりを追い求めてもしょうがないと思います。
ベテランの劇団は、そのカラーをげ「芸」だと思って楽しむ意識が必要だと思います。

イキウメ「The Library of Life まとめ*図書館的人生(上)」


2012年11月22日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:前川知大
事前にオムニバスのストーリーが錯綜してわかりにくいという噂が流れてきたので、少し心配しながら見に行きましたが、幸いなことにその心配は杞憂に終わり、心穏やかに楽しく見られました。
死んだ人間が成仏する前に立ち寄る図書館。ここにはすべての人の前世、現世、来世が書かれた本があるらしい。ただし、目録はなく、ひたすら読みつづけて、探すしかない。自分の来世を知りたい人、愛する人を探す人、様々な人が訪れる。そんなSF的な設定の元、六つのエピソードがイキウメ特有のデリケートなシーンのクロスフェードを繰り返しながら、語られていく。
賽の河原の鬼の話や、万引きのプロと懸賞で暮らしている女性のラブストーリーなど、ひとつひとつが、共感できやすい優しいエピソードに仕上がっている。前作のミッションが、クールでやもすれば突き放した冷たいともとれる印象だったのに比べ、今回の方がはるかに面白い。
イキウメ得意のSF的な設定も嫌いではないし、次回作も見る気になった。
その後、時々読ませていただいている「6号通り診療所長のブログ」の記事によれば、この作品が今までに上演したオムニバス短編集を再構築したもので、「謎の図書館に出入りした人達が、書架の本を開けた時、その本を読む役者以外の全キャストが、その本の内容を演じる。」という構成になっていることを初めて知りました。以前の公演を見ていないので、先入観なく見たのがよかったのかもしれません。