2012年4月27日金曜日

毛皮族「演劇の耐えられない軽さだネッ Wの喜劇」

2012年4月26日 19時30分開演 スタジオイワト
作・演出:江本純子
出演:江本純子・金子清文・高野ゆらこ・高田郁恵・柿丸美智恵・延増静美
江本純子は、青木さやかに似ている。顔つきも、「どこ見てんのよ!」と世間にけんかを売っているような雰囲気もそっくりだ。
物語は「Wの悲劇」のパロディのような筋立てで、役者が大げさに演じる「女優」を江本が、突っ込んだり、ぼけたりして進めていくが、全体の構成が結構ラフなので、そのまま流れてしまうシーンも多く見られた。
芝居のできがどうのこうのというよりは、江本純子の「どこ見てんのよ!」という姿勢の裏側にある怒りや悲しみ、あきらめこそがおもしろい舞台でした。
次回公演は、余裕があれば見たいと思います。

2012年4月26日木曜日

Phoebe Snow

4月26日で、大好きだったフィービー・スノウが亡くなって1年がたちます。
初めてフィービー・スノウを聞いたのは、ファーストアルバムの「フィービー・スノウ Phoebe Snow」でした。どんな歌手か全く知らなかったのですが、バックにベースのチャック・イスラエルやズート・シムス、テディ・ウィルソンなどジャズ畑の人が入っているので、それに惹かれてLPを買いました。まだ、CDではありませんでした。
一曲目を聞いて、その声に一発で惚れました。元来、マリア・マルダーや、リタ・クーリッジなどの少しハスキーで太めの声が大好きだったので、即、マイフェイバリットシンガーの仲間入りです。
初期に、2回来日した記憶があります。1回目は読売ホールで私はいけなかったのですが、行った人の話では、かわいそうなほどお客が入っていなかったそうです。2回目は、私も横浜県民ホールに見に行きました。ギタリストがフィービーのギターのチューニングを時々直してあげていたのが、ほほえましかったことを覚えています。お客の入りも8割くらいは入っていて、これなら3度めの来日もあるだろうと安心したことを覚えています。
しかし、その後生まれた赤ちゃんに障害があることがわかり、育児に専念するためにツアー活動をやめるという記事を雑誌で読んでがっかりしました。
ツアーに出ないでスタジオでコーラスの仕事やコマーシャルソングを歌っていたようです。そういえば、パティ・オースティンもお母さんの体が弱くて、鳴り物入りでデビューしたのツアーに出ないで、スタジオワークだけにしぼり、一部で「コマーシャルソングの女王」と呼ばれたりしてましたね。
その後は、新しいアルバムが出たのがわかれば買う程度だったのですが、2回、生のフィービーを見損ねた想い出があります。
両方ともニューヨークに遊びに行っていたときのことですが、一度は、チケットエージェントのホームページを見ていたときにニュージャージーの野外劇場で、フィービーのコンサートがあることを知りました。場所が鉄道とバスを乗り継いで行かなければ行けないようなところで、コンサート後、深夜にマンハッタンに戻ってこれるかどうかわからなくて、あきらめました。
2回目は、オープン間もないB・B・キングクラブのスケジュールボードを見たら、次の週にフィービー・スノウの名前があったのです。そのときは急いでいたので、次の日にお金を持って行ってみたら、もうキャンセルになっていました。
最近は、新しいアルバム「ナチュラル・ワンダー」もだし、少しづつ露出も増えてきたので、これは来日もあるかもと期待していたところに、入院、訃報の知らせで残念でなりません。
Youtubeで検索すると、ポール・サイモンやリンダ・ロンシュタット、スティリーダンのコンサートで歌っているフィービー・スノウを見ることができます。
元々、神経質な人のようで、ライブでは緊張しているのか声が固く、CDで聞く方が柔らかくて豊かな声が楽しめます。
代表的なCDはほとんど持っていると思いますが、CD化されていないビリー・ジョエルのバックバンドとやった「ROCK AWAY」は聞いたことがありません。
どこか、CD化してくれないかなあ。
未CD化といえば、ジョー・コッッカーがスタッフをバックに歌っている「スティングレイ」も、CDになっていませんね。これも是非聞いてみたい一枚です。
そのうち、ジョー・コッカーについてもかいてみたいと思っています。

2012年4月25日水曜日

チェルフィッチュ「現在地」

2012年4月24日 19時30分開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
作・演出:岡田利規
出演:山崎ルキノ・佐々木幸子・伊東沙保・南波圭・安藤真理・青柳いづみ・植村梓
「絶頂マクベス」に続き女優だけの芝居でした。
まるで物語を語るように全員同じようなトーンでゆっくり語られていく、寓話のようなお話でした。
3月11日の大震災後の日本の現状を色濃く反映した内容だったと思います。とくに、ラストの「そして村は何事もなかったように、穏やかな日々を取り戻しました。」という台詞とともに、客電がつき、舞台もフラットに明るくなる演出に、作者の考えがはっきりと現れていました。
淡々と進んでいく芝居、全員が同じような形の台詞回しの中で、2時間休憩なしの舞台を飽きさせないで見せる構成力、演出力はすごいと思いましたが、次回もみるかと言えば、微妙です。

2012年4月21日土曜日

Levon Helm

Twitterで、4月19日にLevon Helmが亡くなったことを知りました。好きで、今でもiPhoneに入れてよく聞いているミュージシャンが、また一人行ってしまいました。
Levon Helmの最大の想い出は、RCOオールスターズでの初来日です。今はなき久保講堂と日比谷野音でのコンサートに仕事でつきました。1978年のことです。
今から考えてもメンバーがすごくて、Levon Helm,Steve Cropper,Donald Duck Dunnがいました。そういえば、Satday Night LiveのハウスバンドやブルースブラザースのバンドにいたTom Maloneもいましたね。
最高におかしかったのは、Dr. Johnがメンバーに同行していてコンサート会場にも毎回きていたのに、一回も歌わずに帰ってしまったことでした。スタッフ一同、是非とも彼の歌を聴いてみたいと熱望していたのですが。今から考えれば、レコード会社との契約の問題があったのかもしれません。
私は、このコンサートで初めてパーライトとロックボードを見ました。野音の昼間でシュートしても当たりがわかる、色が見えることや、ロックボードの無限とも思える点滅パターンに感激したことを覚えています。
何よりびっくりしたのは、パーライトの軽さと明るさでした。それまでの野音の仕込といえば、3Kwや5Kwのソーラーやサンスポットを汗をかきかきイントレの上に担ぎ上げ、夕方を待って無理矢理シュートして、照明がきき始める頃にはコンサートが終わるという状態でしたから、ひとりで何台も持てるパーライトが、真っ昼間からシュートできるくらい明るいというのは革命的でした。
私をはじめてパーライトと出逢わせてくれたLevon Helmに感謝、そして合掌。

2012年4月18日水曜日

柿食う客 女体シェイクスピア「絶頂マクベス」

2012年4月17日19時30分開演 吉祥寺シアター
原作:W.シェイクスピア 脚色・演出:中屋敷法仁
出演:深谷由梨香、内田亜希子、荻野友里、我妻三輪子、葛木英、佃井皆実、小野ゆり子、斎藤淳子、藤沢玲花、葉丸あすか、渡邊安理、岡田あがさ、七味まゆ味、新良エツ子、きたまり
初めての柿食う客観劇。女優だけのシェイクスピア。休憩なしの90分バージョンなので、多くの場面が、役者の一人台詞で語られる。メリハリのきいた台詞回しと、細かいポージングの切替は、宝塚を思わせるものがありました。この記事を書くに当たり、ネットで柿食う客を検索していたら、中屋敷法仁さんのインタービューがあり、その中でも、台詞回しとポージングについて言及がありましたから、中屋敷さんの演出方法なのかもしれません。
女優はみんなかわいくて、好感が持てるのですが、演出の中で踊っているだけのような気がします。一人でも、その枠から飛び出してくるような人がいれば、さらにおもしろくなったような気がします。
次回は、男優も交えた芝居がみてみたいです。
是非、次回作も見に行きます。

追記(2012/4/21)
その後、Ustermで、すべての配役を入れ替えた乱痴気公演を見ました。といっても、気づくのが遅くて、ラストの30分だけでしたが。
確かマクベスをやったのは。七味まゆ味さんだったと思いますが、本公演の深谷由梨香さんにルックスでは負けていましたが、マクベスの狂気という点では優れていました。
全体のバランスでは本公演、マクベスに関しては乱痴気公演のほうが上という感じでした。

2012年4月17日火曜日

2012年第一四半期観劇の総括


20121月から3月の間に見た芝居は、16本でした。

114日 アイガットマーマン
121日 劇団鹿殺し「青春漂流記」
131日 ハイバイ「ある女」

22日 下谷万年町物語
210日 ぬいぐるみハンター「愛はタンパク質で育ってる」
211日 地点「トカトントンと」
2月20日 角角ストロガノフ「昆虫美学」
2月21日 劇団MONO「少しはみ出したら殴られた」
2月28日 KAKUTA「分岐点」

3月6日 あひるなんちゃら「まあまあだったね」
3月7日 「すばらしい一日」
3月10日 加藤健一事務所「ザシェルター」「寿歌」
3月14日 FUKAIPRODUCE羽衣「耳のトンネル」
3月15日 「黄色い月」
3月28日 MODE「満ちる」
3月30日 キティフィルム「破壊ランナー」

月平均5本強、何十年かぶりに芝居を見始めたにしては、まあまあいいペースなのではないかと思います。
この中で、ベスト3を選ぶならば、

ハイバイ「ある女」
劇団MONO「少しはみ出したら殴られた」
FUKAIPRODUCE羽衣「耳のトンネル」

の、3本です。
ハイバイ「ある女」は岩井秀人の芝居がおもしろく、劇団MONO「少しはみ出したら殴られた」は人間の弱さ、ずるさをさらりと日常のなかで描いたのに好感が持てました。FUKAIPRODUCE羽衣「耳のトンネル」は力一杯明るく楽天的で楽しい芝居でした。
次点としては、

劇団鹿殺し「青春漂流記」
ぬいぐるみハンター「愛はタンパク質で育ってる」
KAKUTA「分岐点」

の、3本を選びたいと思います。
劇団鹿殺し「青春漂流記」は、ゲスト出演の高田聖子だけがおもしろいという残念な結果でしたが、あの過剰なサービス精神は素晴らしいものがありますし、ぬいぐるみハンター「愛はタンパク質で育ってる」の若さあふれるスピード感もおもしろかったです。KAKUTA「分岐点」は劇団15周年記念公演で、3章の芝居を別々の演出で見せるというごちゃごちゃになりそうな芝居をシンプルにまとめ上げた劇団の力量に感心しました。
すべて、次回公演も見たいと思わせるに十分な内容だったと思います。

第一四半期全体を振り返ってみると、私の好きな芝居の傾向がかなりはっきりしてきました。
第一に、大きな劇場で有名な役者が出ている演目に、あまり好感を持っていない。1万円以上も払って見に行く気になかなかなれない。チケットが取りにくいせいもありますが。
第二に、シリアスなテーマを大上段に振りかぶって、正面から攻めるタイプは苦手。
第三に、基本、笑わせてくれる芝居がすき。
こんなところでしょうか。
4月以降も、がんばって芝居を見たいと思います。

2012年4月13日金曜日

劇団離風霊船「SUJBJECTION」

21012年4月12日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:大橋泰彦
出演:伊東由美子、松戸俊二、山岸諒子、小林裕忠、倉林えみ、橋本直樹、江頭一晃、竹下智雄、神谷麻衣子、瀬戸純也、大矢敦子、鈴木紀江、柳一至、栗林恵美子、祥子、相川倫子、平石祥子、長橋佳奈
劇団名と、おもしろいという評判は昔から知っていましたが、なぜかチャンスがなく、初めての観劇でした。一言で言えば、評判通りおもしろい。
一つの舞台に二つの芝居が存在するというアイディア、そのかみ合い方やかみあわなさ加減の妙。個々の役者の演技の質の高さ。すべてが好ましいものでした。
一つ残念なのは、ラストの終わり方がおとなしすぎることです。何かばしっと決まる演出があれば、もっと締まったのにと思ってしまいます。
とはいえ、もっと前から見ていれば、私の観劇ライフもより豊かなものだったかもしれないと思わせる芝居でした。
次回公演も、是非見に行きたいです。

2012年4月7日土曜日

リジッター企画「もしも、シ」

2012年4月7日 14時開演 王子小劇場
作・演出 中島庸介
出演:工藤理穂、芦沢統人、川上ルイベ、石澤希代子、津和野諒、マリカ、丸石彩乃、中島康介、沖山麻生、西川康太郎、森脇洋平
大人計画の当日券の電話があまりにもつながらないのであきらめ、同時期に公演していたこの芝居を予約してみました。
物語は、「1995年1月17日、フルサトという名の少女が死んだ。その15年後、東京。舞台はテレマーケティング事業部。今日も主任のタカラとアルバイト達は電話の仕事をしていた。そんな中、嫌われ者のハジメは謎の少年と出逢う。少年に名はなく、心臓は止まっていた。ハジメは言う。『君は見えちゃまずい奴なんじゃないか?』その出逢いによって、ある記憶が蘇ったハジメは、ピストルを持ってタカラの元へ向かうのだった。タカラとハジメの過去とは。そしてその少年の望みとは。」(公演チラシの裏面より)
まあ、こういったストーリーが華麗なレトリックに満ちた台詞で語られるわけです。私は、若い頃見た寺山修司を思い出しました。もっと若い人なら、野田秀樹みたいと言うかもしれません。
でも、その華麗なレトリックに満ちた台詞の洪水の果てにくる結論は、「フルサト/故郷を忘れるな」というあまりにもストレートなわかりやすいものなのです。その結論なら、もっとふさわしい演出、演技があったと思います。華麗なレトリックに満ちた台詞の芝居のエンディングは、華麗に決めていただきたいものです。
この芝居を見て、なぜ寺山修司があまり好きでなかったのか思い出しました。それは、「華麗なレトリックに満ちた台詞」が成立するにはそれを支える役者の肉体が必要なのに、当時の天井桟敷の役者はへたくそでみていて恥ずかしくなるほど空回りしているだけだったからです。役者が台詞を理解しているとはとうてい思えず、役者の演技をすべて無視し、台詞の意味だけに集中して寺山修司のイメージを追いかけていたような気がします。
この芝居の役者達は、昔の天井桟敷よりははるかにうまく、決められた動きを無難にこなし、指示された感情で台詞を言って、芝居をしていました。でも、それがかえって操り人形のように見えて、うすら悲しい気持ちにさえなりました。
この団体の次回公演を見に行く気にはならないと思います。
「チャレンジ観劇シリーズ」第九弾も、残念な結果となりました。