2015年10月26日月曜日

電動夏子安置システム「この中から3つ」

2015年10月21日 19時30分開演 下北沢ステージカフェ下北沢亭
脚本・構成・演出:竹田鉄士
出演:小原雄平、道井良樹、岩田裕耳、横島裕、新野アコヤ、片桐俊次、武川優子、渡辺美弥子
結成15年になる劇団ですが、変わった名前でチラシを見た記憶はあるのですが、それ以外は全く予備知識なしで見にいきました。
当日パンフによると、結成当初脚本の書き方も知らなかった主催者は、辞書から3つの言葉を適当に拾い出して、それを基に物語を作るということをしていたそうです。その無理矢理なストーリーを可能にするための設定や世界観を後付けすることで、変な喜劇ができあがることになったそうです。いってみれば、落語の三題話の演劇版でしょうか。
15周年にあたり、初心に戻って3つの言葉を選んでもらい、それを基に13編のショートストーリーができあがりました。
できあがった物を見てみると、確かに奇妙な設定やゆがんだ世界観を感じるのですが、だからといって面白いかといえば,そうでもない。小器用にまとめるある種の才能はあるとしても、だからといって全て面白くなるものでもない。という、ごく当たり前の結論にいなってしまいます。
役者では、「ある女」シリーズ3本で一人芝居を演じた渡辺美弥子が、見ている者の気をそらさない巧みな話術で面白かったのですが、ワンパターンなので3本も見せられると飽きてきます。

2015年10月20日火曜日

ペテカン「この素晴らしき世界」

2015年10月7日 19時開演 池袋あうるすぽっと
作・演出:本田誠人
出演:濱田龍司、齊田吾朗、四條久美子、羽柴真希、長峰みのり、添野豪、本田誠人、谷部聖子、小林健一、帯金ゆかり、長野真歩、市川喬之、柳家喬太郎、田中真弓、大治幸雄、桑原裕子
結成20周年になる劇団だそうですが、全く知りませんでした。ただ、桑原裕子がでているということで見にいきました。
桑原裕子は奮闘していて面白かったのですが、芝居としては面白くありませんでした。劇団のモットーは、「映画のような芝居を」ということで、これは難しいことはいわないで映画のように喜楽に見に行ける芝居をやりたいということだそうです。
難しいことは言わなくていいから、もっと、もっと面白くしてくれ。この芝居の料金は4000円です。普通の映画は1800円ですから、少なくとも2倍は面白くないと困ります。
だいたい、ラストにうまくもない楽器演奏で、「この素晴らしき世界」を演奏して、大団円と思うような感性は信じられません。
この芝居の収穫は、噺家の柳家喬太郎です。どのような経緯で出演することになったのかはわかりませんが、ひとつの芸を身につけた人の舞台上での存在感は、素晴らしいものがあります。周りがどうであれ、その存在感は揺るがない。古典芸能を身につけた人によく見られるリアリティがありました。
もう一人、動物電気の小林健一は敢闘賞でしょうか。前回見た拙者ムニエルでも敢闘賞もののがんばりを見せていましたが、今回も空回りする元気を面白く演じていました。

ロ字ック「鳥取イブサンローラン」

2015年10月6日 19時30分開演 下北沢シアター711
作・演出:山田佳奈
出演:堂本佳世、小林小倫、小川夏鈴、遠藤留奈、日高ボブ美、山田佳奈、那木慧、鈴木理学、圓谷健太、山田ジェームス武
一番印象的だったのは、ロ字ックの制作によるであろうTwitterのこの芝居の感想のリツィート攻勢でした。こまめにエゴサーチしてリツィートしているらしく,一時期、私のタイムラインは鳥取イブサンローランの感想であふれかえりました。それによると、「女性のいやなところを余すことなくさらけ出し、観劇後も体の震えが止まりませんでした。」とのことで、それだけ読むと大傑作のように思えます。
実際見てみると、それほどのととはないという感じです。確かに、「言いたいことはある。でも、どう言っていいかわからないまま、芝居にしてしまった。」というのが正しいところだと思います。
主人公の女性の「自分の性格のいやなところを考えると、うわーという感じになる。」という台詞などは、私が男だからもしれませんが、「なんじゃ、それ?」という感じにしかなりません。
決定的にまずいのは、手首を切って入院していたチーママ(山田佳奈)が復帰したウエルカムパーティーで、「私はこういう生き方しかできないから」という前置きつきで店の女の子達に「私のお客さんと寝ただろう。」と,問い詰めるシーンです。ここで今まで本音とお愛想が入り混じった生ぬるい空気が、一気に本音同士がぶつかり合う緊迫した空気に転換しなければいけないのに、山田佳奈の芝居が下手すぎてグダグタになり、壁をぶち破る激しい芝居も、段取りにしか見えなくなってしまいました。
当日パンフに作・演出の山田佳奈がご挨拶として、「初演の台本を読み返すと、ハチャメチャだったんだなと思う。行き過ぎた自意識と未熟な技量。パンクだった。自分のことを理解してくれない大人に,唾を吐く気持ちも強かった。でも、今は、そういう感情を忘れつつあるのです。葛藤することはまだまだ絶えないけれど、それでもいろいろ許すことができるようになりました。」と、書いています。
これを読んで芝居を見ると、初演の方が面白かったのではないかとさえ思えてしまいます。言いたいことを表現できる新しい方法論も見つけられないまま、年だけ取ったのかもとも思えます。

木ノ下歌舞伎「心中天の網島」

2015年10月5日 19時開演 こまばアゴラ劇場
作:近松門左衛門
監修・補綴:木ノ下裕一
演出・作詞・音楽:糸井幸之介
出演:伊東沙保、小林タクシー、島田桃子、武谷公雄、西田夏奈子、日高啓介、若松朋茂
洋の東西を問わず、古典を演じるのは難しいことだと実感しました。
杉原邦生があまり好きではないので見にいかなかった木ノ下歌舞伎ですが、今回、演出がFUKAI PRODUCE 羽衣の糸井幸之介であること、伊東沙保が出演していることで見にいきました。
今回の上演では現代語と七五調の台詞、さらに歌まであって、観客を楽しませてくれるのですが、問題は七五調の台詞です。役者に古典の素養があるか、もしくはそれに変わる何かがないと,ただ怒鳴ったり上滑りなったりするだけで、台詞が聞こえてきません。その点、合格なのは伊東沙保と武谷公雄の二人だけでそれ以外は全然だめでした。この差はひとえに役者の技量の差でしょう。
オープニングの歌で、丁稚役の若松朋茂が自分のソロパートの頭で大きく音を外して歌い出したときにはどうなることかと思いましたが、その後は何とか持ち直して進み出したときには、密かにほっと胸をなで下ろしました。
古典では、様々にディフォルメされたキャラクターをリアリティを持って演じることが要求されると思うのですが、七五調と現代語の入り混じったこの形式では、それがいっそう困難になっているようにも感じました。
一部では、この木ノ下歌舞伎の意義を高く評価する動きもあるようですが、私にはあまり意義が感じられませんでした。

清水宏「清水宏の世界で汗をかく!!〜アメリカ・カナダ・エジンバラ コメディーツアー奮闘記」

2015年9月30日 19時開演 渋谷シブゲキ
作・演出:清水宏
出演:清水宏
今年の夏4ヶ月にわたるアメリカ、カナダ、イギリスを股にかけたコメディーツアーの報告ライブでした。前日がアメリカ、カナダ編で、私の行った日はイギリスエジンバラ編でした。
冒頭で、今年からストーリーテリングというスタイルを始めたこと、そのストーリーテリングがアメリカ、カナダでは大受けで,カナダのあるフェスティバルでは賞まで取ったことを話し、エジンバラでの話に移ります。
5年目となるエジンバラでは油断と慢心とチラシの印刷が遅れるというアクシデントに見舞われて,さんざんだったことが延々と語られていきました。
すごいと思ったのは,聞くだけでも辛い話を長々と2時間も話して、悲しい話だけれども笑える話になっている,構成力と話術です。一人で2時間話し続けるだけでもすごいことなのに、山あり谷ありの構成で聞いてて飽きませません。
思いつきで話しているように見えますが、練りに練った台本があるに違いありません。
ラストは長いつきあいの映像作家との仲違いを語り、今後一緒にやっていくかどうかの選択を迫るというドラマチックな形で終わります。単に面白いだけでは終わらない、充実した2時間でした。
しかし、私が本当に好きな清水宏は芝居をしている清水宏です。本人は芝居のことを「愛しているけれども、憎んでもいる。」と言っていました。私にとっては、その芝居の中に完全には同化できないことにいらだちを感じ、また申し訳ないとも思いながら演技している清水宏を見るのが好きです。11月にカムカムミニキーナに客演するので、是非見にいこうと思っています。
最後に、どうでもよいことですが、清水宏は矢沢永吉によく似ています。本人も自覚があると思いますが、ふとした横顔や、しゃべり方がそっくりです。

2015年10月5日月曜日

カタルシツ「語る室」

2015年9月21日 18時開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:前川知大
出演:安井順平、中嶋朋子、盛隆二、大窪人衛、板垣雄亮、浜田信也、木ノ下あかり
イキウメの別働隊、カタルシツの公演を見にいきました。
これまでのカタルシツは一人芝居ばかりやってきて、モノローグの可能性を追求しているのかと思っていましたが、今回は7人が出演する普通にイキウメらしいSF的な設定の芝居でした。
これはイキウメの芝居の弱点、「SF的な設定のため、どうしても劇中で説明することが増えてくる、うまく台詞の中にちりばめられたときはよいが、往々にして説明のための台詞になってしまいしらけてしまう。」を解消するために、カタルシツで得た一人語りのノウハウを使ってみようとしたテスト公演ではないでしょうか。
結果は一定の成功を収めていて、そんなにしらけることもなく、スムーズに芝居は流れていきました。ただ、モノローグの得手不得手はあるようで、安井順平と占い師役の板垣雄亮は問題なくこなしていましたが、盛隆二や浜田信也あたりは少し辛いところもありました。もっとも、一人語りの向き不向き
は役のキャラクター設定とも密接な関係があり、いわゆるクールな性格設定の役は自分を客観視して話しても無理がありませんが、熱中系のキャラクターには無理が見えます。
これで一定の成果を上げたと見えるカタルシツは、今後どうなっていくのでしょうか?
カタルシツの次の公演はないかもしれません。