2012年3月31日土曜日

キティフィルムプレゼンツ「破壊ランナー2012」

2012年3月30日 19時開演 東池袋 あうるすぽっと
作・演出:西田シャトナー
「惑星ピスタチオ」の公演は、一度も見たことがありません。ピスタチオ解散後、どこかの芝居に客演していた腹筋善之介が、自分の持ちネタのような扱いで「パワーマイム」を披露していたのを見て、とてもおもしろかった記憶がありました。その記憶を頼りにこの公演を見に行ったのですが、開始5分で残念な結果に終わることが予想でき、最後までその予想は外れることはありませんでした。
小道具や装置を排除し、すべての状況や状態、心象までを説明しすぎるほどに説明しつつ、大量のギャグをその中に投入するこの芝居には、役者に講談師や、落語家のような「語り」の技術、芸が必要とされると思います。それを、そこいら辺の若い役者に要求するのは無理がありすぎます。結果、何を言っているかわからない場面ばかりの薄ら寒い時間だけが流れていくことになってしまいました。
台本は結構おもしろいし、演出もがんばっている、でも役者がそれに答えられなければ、ろくな舞台にはなりません。
懐かしさから舞台を見に行くのは、やめた方がよいと思いました。昔の戯曲でも、舞台はいつも現在進行形のものなのですから。

2012年3月27日火曜日

MODE「満ちる」

2012年3月26日 19時開演 座・高円寺1
作:竹内銃一郎
演出:松本修
出演:すまけい、小嶋尚樹、中田春介、若松力、岡部尚、山田キヌヲ、大崎由利子、中地美佐子、山田美佳
いつもは「カフカの小説の舞台化」という、あまり私が興味が持てない作業をしているMODEの舞台を見に行く気になったのは、ひとえにすまけいが出演するからでした。私が芝居に関心を持ち始めた30年以上前に、すでに「伝説の役者」だったすまけいは、私が芝居を見始めた頃には、すでに舞台から遠ざかっていて、井上ひさしの芝居で復活したときは、私の方が舞台を見にいく意欲を失っていた時機でした。
初めてのすまけいは、片手片足が不自由で台詞回しも完全とはいえませんでした。芝居後半の娘との二人だけのシーンは、年老いた役者の芝居はこうあってほしいと私が思っていたことを具現したような素晴らしいものでした。森繁久彌や三国連太郎のような妙に偉そうな芝居でなく、どこか悲しくでも誇り高い、人間味あふれる堂々としたものでした。残念ながら、登場人物が増えてくるとまわりのスピードについて行けず、もたもたしてしまうのは残念でした。
何人かの役者が大声で怒鳴ることで怒りを表す芝居をしていましたが、それがうるさく気になりました。
舞台装置として、前面にシネマスクリーンを表す枠がつり下げられ、場面転換の時にフィルムのコマ落としのような効果がほどこされて、全体を映画にみせる演出がされていました。
また、カメラリハーサルのように台詞に詰まる→台本が出てきて段取りの確認→その前からやり直すというようなシーンもありました。これらが、「映画=虚構」を表す演出なのか、すまけいの不自由さ故の方策なのかよくわかりませんでした。

2012年3月24日土曜日

ローチケ

今年に入っていろいろ芝居を見るようになって、劇場に行くたびにくれるチラシを大切に持って帰って、仕事のスケジュールとにらみ合わせて見に行く芝居を決めています。
見に行く芝居が決まったら、次はチケットの予約です。インターネット上のいろいろなチケット予約サービスを使って予約していくわけですが、現在様々な予約サービスがあります。チケットぴあ、イープラス等々。
今回、ローチケというサービスを初めて使ったわけですが、これが実に使いにくいのです。
まず、会員になるときに、いろいろな会員があってどれにしたらいいかわかりにくい。最初に「ローチケWEB」の会員になろうとしたら、ほしくもない「PONTAカード」を作らされそうになって慌ててブラウザ閉じたりしました。
やっとの思いで会員になり、チケットを予約しても、発券がまた実にめんどくさい。
「Lopi」とか言う専用端末に、「会員番号」「予約番号」「暗証番号」をいちいち入力して、あげくに予約に使ったクレジットカードを自分でスワイプしなければいけないのです。最後のとどめは、出てくるのは実券ではなく「引換券」、それを持ってレジに行き、やっとことで、実券を手にできるのです。
なんと回りくどいサービスでしょう。二度と使いたくありません。

パルコプロデュース「テキサス」

2012年3月22日 19時開演 渋谷パルコ劇場
作:長塚圭史 演出:川原雅彦
出演:星野源、木南晴夏、野波麻帆、岡田義徳、福田転球、政岡泰泰志、伊達曉、吉本菜穂子、山岸門人、湯澤幸一郎、川原雅彦、高橋和也、松澤一之
この芝居を見ることに決めたのは、噂だけで見たことがなかった長塚圭史の戯曲を、同じく評判だけ知っていたハイレグジーザスの川原雅彦が演出するからでした。
要するに、今、生きがよいとされている脚本家、演出家がどんなものだか自分で体験したかったのです。
極端な設定(トロッコとロープウェイと称する綱渡りでしかたどり着けないど田舎で、住民は暇つぶしに格安の整形手術を受けて、全く別の顔になっている)を違和感なく見せるのに、けれんみあふれる演出は有効だとは思うのですが、全体の疾走感が全く足りていません。ギャグを一つ言うたびに、役者が「ドヤ顔」を決めているような気すらして、スピードが全く上がっていきません。
疾走感があれば、暇つぶしに整形で別人になってしまう人々のやるせなさまで、明確に観客に伝わったと思います。
殺し屋の役で出てきた川原雅彦之演技はかっこつけてるのが見え見えで、今時、高校の演劇部でもやらないような芝居で、みていられませんでした。

2012年3月16日金曜日

オフィスコットーネプロデュース「黄色い月」

2012年3月15日 15時開演 下北沢ザ・スズナリ
作:デイヴィット・グレッグ 演出:高田恵篤
出演:柄本時生・門脇麦・仲川安奈・下総源太朗
パンフレットにプロデューサーの言葉として、2009年からずっとこの戯曲を上演したくて、やっと今回できたというようなことが書いてありましたが、どこにプロデューサーを引きつけた魅力があったのかわかりませんでした。出演者が、交互にナレーターと役を行き交いながら、ストーリーが進行していきます。ストーリーは、その場の勢いで人を殺してしまった若者が女の子と北に逃げ出し、一時、平和な暮らしを営むが最後に捕まってしまうという、ボニーとクライドのような話です。ナレーションが、背景や登場人物の内面を説明してくれるので、シーンはわかりやすく、テンポよく進んでいきます。しかし、同じ役者が同じようなトーンで台詞もしゃべるので、すべての台詞が説明的に聞こえて、膨らみが全くありません。約75分の芝居なので、あれよあれよという間に終わってしまいますが、あれ以上長かったら、退屈してしまったに違いありません。
現在のイギリス演劇(正確には、スコットランドですが)は、どんなものかという興味から見に行きましたが、残念な結果でした。

2012年3月15日木曜日

FUKAI PRODUCE羽衣「耳のトンネル」

2012年3月14日 19時30分開演 東大駒場前アゴラ劇場
作・演出・音楽:糸井幸之介 
出演:深井順子・日高啓介・鯉和鮎美・高橋義和・寺門敦子・澤田慎司・伊藤昌子・西田夏奈子・加藤律・幸田尚子・並木秀介・金子岳憲
私の大好きな芝居として、「上演中は、笑って笑って笑いが止まらないけれど、劇場を出たらすぐ内容はすっかり忘れてしまい、笑った記憶だけが残る。」というものがあります。その昔、東京乾電池が今はなきジャンジャンで公演していたときに、経験した記憶があります。内容はすっかり忘れてしまったので、題名も覚えていませんが。
FUKAI PRODUCE羽衣の「耳のトンネル」を見て、このことを思い出しました。もしかしたら、私の理想を実現してくれるグループかもしれません。現在のところ、小笑い程度で、大爆笑まではほど遠いのですが。
音楽ライブもやっているらしいので、動向を注意してみていきたいグループです。
そんなことを思った「チャレンジ観劇シリーズ」第八弾でした。

2012年3月10日土曜日

加藤健一事務所「シェルター・寿歌」

2012年3月10日 17時開演 下北沢本多劇場
作:北村想 演出:大杉祐 出演:加藤健一・小松和重・日下由美・占部房子
何よりも、「寿歌」が見たくてチケットを買いました。今年に入って、シスカンパニーが新国立で上演したのですが、スケジュールが合わず見られなかったので、こちらを見ました。
79年に書かれたという、ゆうに30年以上前の戯曲なのに少しも古くないです。核戦争後の世界を、ゲサクとキョウコという二人がいい加減な芸を見せながらさまよい歩くうちにヤスオという男と出会う。どうもヤスオは神様らしいのだが、何もできない。キョウコとヤスオは惹かれあうのだが、最後にはヤスオはエルサレムへ、キョウコとゲサクはモヘンジョダロにいくために分かれてしまう。べたな設定にべたなストーリーなのだが、不思議とイメージが広がり、見た後に様々な言葉にならない感情が残ります。
このブログを書くために、少しインターネットで「寿歌」について検索してみたところ、「六号通り診察所所長のブログ」というところに、「寿歌」の感想があり、なかに「これはゴドーを待ちながらの1バージョンだ」というような文章がありました。実は、私が一番好きな戯曲は「ゴドーを待ちながら」でして、そう言われれば同じにおいがすると、一人で納得しました。
もう一本の「シェルター」は、「ほかの出演者のテンションを軽く受け流す芝居のうまい加藤健一」という構図に飽き飽きするだけでした。唯一の感想は、「加藤健一の声は、江守徹に似ている」というものです。無理に2本立てにしなくてもよかったのではないでしょうか?
加藤健一の芝居はこの公演で十二分に見た気がするので、もう一生見なくても済みそうですが、「寿歌」はいつかどこかで上演されたら、また、是非みたいです。

2012年3月8日木曜日

吉川威史 PRESENTS「素晴らしい1日」

2012年3月7日 19時30分開演 下北沢 駅前劇場
原作:平安寿子 脚本:ブラジリィー・アン・山田 演出:龍川英次
出演:内浦純一・伊勢佳世・宇田川椎子・石澤美和・安藤聖・浅野千鶴
「チャレンジ観劇」シリーズ第七弾。この芝居を見ることに決めたポイントは、チラシの裏にあった原作者の推薦文でした。内容は、ユーモアを交えながらハリウッドでも映画化されるかもしれない(韓国では、映画化された)この小説が、日本ではまったく注目されていないことを嘆いているものでした。それを読んで、見てみたいと思いました。
結果は、中当たりというところでしょうか。脚本、演出、役者、劇場の大きさまで、バランスのよいおもしろい芝居でした。
昔、お金を貸した男を見つけた女がお金を返してもらうため、金を借りて回る男について回るというロードムービーのようなお話なんですが、前半のエピソードが生き生きしているのに比べ、後半の元大女優のエピソードでは、肝心の大女優が大女優に見えないし、婦人警官とシングルマザーを演じた浅野千鶴の芝居が少々ぎこちないのが残念でした。プロデュース公演なので、次回は全く違う配役になるのでしょうが、「吉川威史」の名前は覚えておきたいと思います。

2012年3月6日火曜日

あひるなんちゃら「まあまあだったね。」

2012年3月6日 15時開演 下北沢 OFF-OFFシアター
作・演出:関村俊介
出演:根津茂尚、佐藤遼、渡辺裕也、江崎穣、堀靖明、三枝貴史、永山智啓、澤唯、三瓶大介、関村俊介
「チャレンジ観劇シリーズ」第六弾
この劇団を選んだのは、ひとえに「あひるなんちゃら」という劇団名のせいです。なんていい加減というか、こだわりのない名前なんだろうか。「笑いあり、涙なし」が劇団のモットーだということだし、ひょっとしたら、ひたすらおもしろいだけの芝居を見せてくれるのではないのかと勝手に思って、行ってきました。
結果は、残念ながら、涙はないが笑いもない。できの悪いコントのような台本を、芸もなく、芝居もうまくない役者がテンションまで低く演じるという、苦笑いしかできないような内容でした。アンケートの「芝居の感想」の欄に、「まあまあだったね。という感想だけは勘弁してください。」と書いてありましたが、「まあまあ」以下だったねという感じです。
次回公演を見る気には、なりませんでした。

2012年3月5日月曜日

KAKUTA「Turning Point(分岐点)」

2012年2月28日 19時30分開演 ザ・スズナリ
作:堤泰之・金井博文・桑原裕子
演出:堤泰之・山崎総司・桑原裕子
出演:木下智恵、大枝佳織、武藤心平、熊野善啓、鳥島明、ヨウラマキ、佐賀野雅和、前田勝、原扶貴子、冠仁、野澤爽子、高山奈央子、成清正紀、桑原裕子、若狭勝也、馬場恒行、長尾長幸
「チャレンジ観劇シリーズ」第五弾です。
昨年夏の「ピーターパン」の演出をしたのが桑原裕子さんだと知り、今まで全く知らなかった名前なのでネットで調べたところ、KAKUTAという劇団の方だとわかりました。それ以来、一度芝居を見たいと思っていたのが今回ようやく果たせました。
劇団結成15周年記念公演ということで、芝居のストーリーは、劇団の歴史に重なるような「出発」「決別」「迷路」「対峙」「覚悟」と名付けられたプロローグ、エピローグつきの三つの話からなる二人の女性の物語でした。居場所を探して転々と移動する絵里と一緒にいたいために見当外れの努力をする貴和子。
二人は何度もすれ違い、最後に「全く違う場所にたどり着いて、そこでまた出会った。だったら、そこから、また、始めればいいじゃない。」という結論にたどり着く。最後の結論はあまりにもナイーブすぎるようにも思えますが、彼女たちの心情としては、正直なところなのでしょう。
桑原裕子さんのブログに、今回の公演は「いつもより賑やかで、ガチャガチャしている」という言葉がありましたが、普通のKAKUTAの芝居を知るためにも、次の公演も見たいと思います。