2012年11月25日日曜日

ポツドール「夢の城」


2012年11月21日 19時30分開演 池袋東京芸術劇場シアターウェスト
作・演出:三浦大輔
当日パンフレットに日本人特有の虚無感への言及があったが、舞台装置もそれをストレートに表したものだった。床には万年床がひかれ、えたいの知れないゴミが散らばり、壁はポスターが隙間なく貼られている。天井にまで国旗などが貼られている。ものに溢れた床、壁、天井に囲まれた空間には何もない。肉体すらもない。役者はほとんどの時間を寝そべって過ごし、立ち上がるのは、トイレに行く時か、部屋から出入りする時だけだ。台詞もなく繰り返される動きは、この空間の空虚感を強調するためだけに、おこなわれているようだ。
いろいろなところで書かれている過激な性描写は、出来の悪いエロビデオみたいでいただけない。演出家のサービスだと思うが、悪いサービス休むに似たりというか、邪魔にすらなつていると思う。
岸田戯曲賞授賞後の第一作を、これにした作者の勇気には感心するが、今これを再演することにどれだけ意義があるだろうか。
ポツドールは、この虚無感を抱えてどこに行くのだろうか。

2012年11月21日水曜日

ラッパ屋「おじクロ」


2012年11月16日 19時開演 新宿紀伊國屋ホール
作演出:鈴木聡
一言でいえば、下町人情喜劇。松竹新喜劇や吉本新喜劇でやっても、おかしくないような脚本である。メーカーの事業撤退により倒産の危機に直面した下請の町工場を、社長の幼馴染でもある副社長が、会社の寮として使っていた自宅を売ってとりあえず救う。そして、最後に復活を誓って、ももクロの唄を、歌い踊る。
その踊りは、おじさんとしては、よく訓練されていて、見事なものだったが、なぜかしつくりこなかった。
劇中でいかにももクロが素晴らしいか、おじさんたちの胸をうつかが散々強調されるのだが、ももクロにそんなに思い入れのない私としては、苦笑いするしかなかつた。
そのまま、唄に突入するので、その強引さが、違和感として残るのだと思う。
十分面白かったが、次回は見なくてよい感じだった。

2012年11月16日金曜日

パルコ/キューブプロデュース「こどもの一生」

2012年11月15日 19時開演 渋谷パルコ劇場
作:中島らも
潤色:桝野幸宏
演出:G2
振付:小野寺修二
中島らもの本は、とてもおもしろくて、ラストがSFホラーチックでよくかけているし、演出も的確で破綻がない。役者も谷原章介を除いてみんなうまくて、特に破綻がない。よくできた「お芝居」だが、それだけで、私にとっては、特におもしろいものではなかった。みんな優等生で、スムーズに芝居が流れ、終わっていく。役柄を無難に演じているだけの芝居になんのおもしろみがあるだろうか?
私が見たいのは、役を超えて見えてしまう役者の人間性なのだと思う。小さな劇場で行われる若い劇団の芝居が好きなのは、役を演じきれない役者の苦し紛れの個性がよく透けて見えるからだと思う。
映像を芝居の中で使用するのがはやりのようで、この芝居でも台詞のポイントとなるところを、あたかもプレゼンのように文字で見せたり、殺人のシーンで血しぶきを一瞬見せたりしていたが、一つ一つは的確でも、続くと説明的すぎてくどすぎる。


猫のホテル「峠越えのチャンピオン」


2012年11月15日 14時開演 下北沢ザスズナリ
作・演出:千葉雅子
鋼鉄村松の余りの出来の悪さの反動のせいか、面白く見られました。同じ20年選手なのに、この差は何なんでしょうか?
猫のホテルにしても、気になるところはいろいろありました。特に、議員秘書の向井だけがあまりに一途に描かれているので、薄っぺらに見えて仕方がありません。他の登場人物は、大なり小なりズルくて人間臭くてリアリティがあるのに、向井だけは、深みが感じられません。
それなりに面白かったですが、次回見に行くかどうかは微妙なところです。
いや、次回作は演出が今とても気になるノゾエ征爾なので、とりあえず見に行くでしょう。

2012年11月15日木曜日

ベッド&メイキングス「未遂の犯罪王」

2012年11月13日 19時30分開演 錦糸町済みだパークスタジオ
作・演出:福原充則
高尚な思想や斬新な表現がなくても、おもしろい脚本と的確な演出、よい役者がうまくかみ合えば、おもしろい芝居ができることを証明しているような舞台でした。この前の鋼鉄村松の台本も、ここの役者がやったらおもしろく見られたかもしれません。
私が一番びっくりしたのは、状況劇場的演出、「私のお兄さんを知りませんか」と叫んで、正面向いてミエを切る、すると派手な音楽が大音量でかかり、舞台が真っ赤になる。というような演出が方法論として成立し、それを観客も違和感なく受け入れていることでした。私の中では、そのような演出はそれを支える過剰なロマンチックでファナティックな論理がなければ成立しないという感覚あったので、そのようなバックボーンなしでも成り立っているのを見るのは、軽いショックでした。きっと、この演出家は状況劇場というか、唐十郎が大好きなんだと思います。
役者では、ヒロイン役の野口かおるが素敵でした。泣いたり笑ったり叫んだり、自由奔放に暴れまくって、最後には本物の自動車でセットに突っ込んできました。まるで、可愛いくて若い李麗仙のようでした。他の芝居をするところも見てみたいです。

2012年11月13日火曜日

iPhone5

購入前の楽しい悩みの時期を経て、昨日11月12日ついにiPhone5を購入しました。ついでに、キャリアもソフトバンクからauに変更しました。
iPhone5にした最大の動機は、iOS5からiOS6にしたところ全体の動作が緩慢になって何とするにも1拍待たされるのに耐えきれなくなったことです。
iPhone5にしてみての感想は、
薄い!
軽い!
早い!
綺麗!
ということで、とりあえず満足です。
今後は、iPadのWi-Fi機を購入して、デザリングを試してみるつもりです。

モダンスイマーズ「楽園」

2012年11月12日 19時30分開演 吉祥寺シアター
作・演出:蓬莱竜太
テレビの舞台中継で石田えり主演の芝居を見て、ずいぶん堅い、きっちりした脚本を書く人という印象だった蓬莱竜太でしたが、この芝居はとても柔らかい、やさしいという感じでした。
小学生の頃、男子なら誰でも夢見る「秘密基地」でのごっこ遊び。「いじめ」と「差別」が混在するごっこ遊びの最中に事故が起き、一人の女子の運命が大きく変わってしまう。
そんな物語です。
この芝居の肝は、役者が大人になった衣装で小学生を演じていくところです。台詞と動きは小学生、衣装は大人なっての職業を表す。所々でストップモーションと字幕により、その衣装の謎が明かされていきます。コンビニ店員、プロレスラー、工務店、警察官。この衣装と台詞、動きの異差が微妙なバランスを保って、大人が小学生を演じることの痛々しさから救っていると思いました。
もう一つの、そして最大の肝は、女子小学生役の深沢敦です。彼が出てきてから、それまで多少の不安定感、大人の衣装で小学生を演じることへの違和感は吹っ飛び、物語はいきいきとダイナミックに動き出します。大人なのか、小学生なのかという区別などは関係なくなり、ストーリーの中にぐいぐい引き込まれていきます。チビで、デブで顔もでかいのに、大きくてよく通る声と、演技力で見る者を引きつけてやみません。役者の力のすごさを思い知らされました。
次回作も是非見たいと思います。

鋼鉄村松「高橋ギロチン」

2012年11月9日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:ボス村松
「鋼鉄村松」というふざけた劇団名と、バブルムラマツとか、サラリーマン村松という「劇団名」を名のるというわけのわからないシステムに惹かれて見に行きましたが、始まったとたんに後悔しました。正しくは、前説が始まったとたんに他の芝居を見に行った方がよかったと思いました。
前説は、作・演出のボス村松が何を言っているかわからないラップ調でやったのですが、完全にグダグダで滑りまくり、見かねた劇団員が袖から声をかけてやっと終わるという演出すらも決まらずに滑るという有様でした。
今にして思えば、この前説が芝居のつまらなさを象徴しているようでした。
おもしろい芝居をしたいという意欲があってアイデアも一応あるが、芝居のスキルは低く、戦略や方向性がないので、すべて不発に終わる。その繰り返しに、観客も失笑するしかない。誠に、残念な結果しか残らない。
ストーリーは、秋葉原無差別殺傷事件と死刑廃止論を組み合わせてたもので、犯人像はカミュの「異邦人」そのままという感じでした。
その脚本を、方向性も示さないままもっとおもしろく、もっとおもしろくと攻め続けるだけの稽古をして、その結果、てんでばらばらにオーバーアクションで演じ始める役者達。その交通整理もできないまま本番投入という感じでした。
結果、なぜかオーバーアクションを求められなかったダクト屋の親方、ミニ阿藤海みたいな松井さんと、ダクト職人の多田無情の普通の芝居だけが光って見えるという残念な結果になってしまったように見えました。
しかし、観客は通路までぎっしりの超満員で2時間休憩なしなので、途中で出ることもできず、終演後のアフタートークまで見る羽目になってしまいました。アフタートークの相手は、「8割世界」の主催者の鈴木雄太という人で、芝居のだめ出しと、冒頭シーンの再演出をするという内容でした。
時間的には15分くらいのものでしたが、これが本編よりもおもしろい。観客も一番笑っていました。
こんな芝居を20年以上続けてきたのだとしたら、その意志の強さには感服しますが、次回は見に行かないでしょう。

2012年11月11日日曜日

ハイバイ「霊感少女ヒドミ」


2012年11月9日 16時開演 小竹向原 アトリエ春風舎
作・演出:岩井秀人
映像:ムーチョ村松
全編映像投影の60分。装置は鍵の手になった白パネルに、引戸が一つだけ。
照明は、ネライが2ヶ所のみ。
ほとんどの場面は、フロントブロジェクションのの映像の中、顔が様々な色になってもかまわず演じられる。
「地点」に影響を受けた称する繰り返しがリズミカルなナレーションに、フルシンクロするミッシェルゴンドリーのパクリと豪語する映像が気持ちよい。
ストーリーはど直球の純愛ラブストーリー。ゾンビの、そしてヒドミの片想いがせつなく悲しいが、最後に穏やかなカタルシスが映像とナレーションによりもたらされる。
芝居が映像を取り込む方法の一つの答えがここにある
背景にしてはダメだ。安くなるだけだ。
シンクロしなければ。
上田遥が、ちょっとげすくてかわいい。

2012年11月9日金曜日

アンファンテリブルプロデュース「愛のゆくえ(仮)」

2012年10月30日 15時開演 上野ストアハウス
脚本:前川麻子・高木登
Aプログラム 演出:寺十吾 出演:前川麻子・瀧川英次
一つの脚本を何度かの試演会を重ねて、三つの配役、三つの演出で上演するという試み。3本で一つの世界を表しているような気がして、スケジュールの都合でAプロしか見に行けなかった私は、この覚え書きがかなり書きにくかった。しかし、ネット上の劇評や感想を読んでみると、三つの異なった世界の表現を目指していたようで、やっと、踏ん切りがついて、書いてみる気になった。
ストーリーは、兄と別れ弟と再婚した女が、夫を捜しに兄のアパートに現れるところから始まる。本棚や、テレビが倒れ、乱闘の後が残る室内で慌てて包丁を冷蔵庫に隠す男、乱闘の後を気にもせず、夫のゆくえを訪ねる女。男は、別れた女に未練たらたらで、女もまんざらざらでもない様子。そんな二人の関係が、簡潔な台詞の中で十二分に表されていく。さすがに何度も試演会を繰り返して、練り込まれた脚本、演出だけのことはある。
さらに、兄の弟に対する愛憎入り交じった感情が語られ、ついに弟を殺してばらばらにしたことが語られる。女はさして驚きもせず、死体の処理に協力して必要なものを買いに行く。ラストでは、オープニングでのぞき込んでいたいた押し入れの中から、物音がして実は弟がまだ生きていることが暗示される。
男と女の愛情関係が、狭いアパートの一室で濃密に描かれていた。