2012年12月27日木曜日

中野茂樹+フランケンズ「ナカフラ演劇展」


2012年12月20日 20時開演 横浜STスポット
「聞いてごらんよ、雲雀のこえを」
原作:シング「谷の陰を」より
誤意訳・演出:中野茂樹
出演 : 村上聡一、福田毅、洪雄大、斎藤淳子

「家族でお食事ゆめうつつ」
原作:ワイルダー「ロング・クリスマス・ディナー」より
誤意訳・演出:中野茂樹
出演 : 村上聡一、福田毅、洪雄大、斎藤淳子
海外の多分小説であろう作品を翻訳、構成した短い芝居の二本立て。
一本目は、人里離れた谷間に住む夫が若い妻の不貞を疑って死んだふりをして、それを暴くというストーリー。正直、あまり面白くなかったです。一方的に責め立てる夫の言葉を誰も受け止めようとせず、虚しく時間だけがすぎていく。そんな感じでした。
二本目は、90年の家族の歴史を40分にまとめて、語ってしまうという壮大な試みでしたが、こちらはかなり面白かったです。
クリスマスディナーの席に限定して、時間の流れに沿って、家族が増え、子供達が成長して行き、それぞれに旅立って行き、孫まで生まれてくるという歴史が、淡々と描かれていきます。起伏の少ない台詞回しと、記号化されているかのような細やかな動きが時間の流れを邪魔することなく作用して、落ち着いた気持ちで見ていられました。
ただ、すべてが終わってから、初演の時に作ったというオリジナルソングを歌ったのは、余計だと思いました。どうしても歌いたければ、芝居の中に組み込む工夫があるべきだと思います。
次回作を見に行くかどうかは、微妙です。

劇団ロロ「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三小学校」


2012年12月17日 19時30分開演 新宿眼科画廊
作・演出 : 三浦直之
出演 : 亀島一徳、島田桃子、篠崎大悟、森本華、小橋れな、崎浜純、板橋瞬谷、望月綾乃、北村恵、大石貴也
当日パンフレットを見たら、今回が3回目の公演で、初演は恥ずかしい台詞を恥ずかしげもなくやり、再演では恥ずかしくないようにやり、今回は、恥ずかしいままに演じましたと、書いてありました。確かに、恥ずかしい台詞満載の1時間でしたが、にもかかわらず、ロロらしい爽やかな舞台でした。
成功の第一の原因は、本当に狭い新宿眼科画廊にあったと思います。手を伸ばせば役者に触れる、汗が飛んできても避けられないような近いところで、真剣に愛について語られたら、感動しないわけにはいきません。これがスズナリのような舞台と客席川kれている普通の小劇場だったら、随分印象が違ったものになっていたでしょう。
劇中で胸板と呼ばれていた役者とその相手役の女の子は、必要なかったと思います。また、空の抜け殻と称するマスクと、陽炎が亡くなるシーンの電源コードも、説明のし過ぎだと思います。
もう一つ不思議なのは、配役表にあった大石貴也が登場しなかったことです。何らかの配役変更があったとしても、事前に説明もありませんでした。大石貴也とは、誰だつたのでしょう。

城山羊の会「あの山の稜線が崩れていく」



2012年12月5日 19時30分開演
作・演出:山内ケンジ
出演 : 岸井ゆきの、石橋けい、古屋隆太、岡部たかし、永井若葉、本村荘平、猪野学、
また、面白いのか面白くないのか、判断に困る芝居に遭遇しました。東京乾電池の芝居に続いて今年2回目です。
普通芝居を見ると、最初に面白いか面白くないかの判断があって、次にどこが面白いのか、何が面白くないのかの、具体的な理由に進んでいくのですが、この芝居は面白くないわけではないが、何が面白いのかよくわからないのです。慌てて、ネットで観劇記や、劇評を探したら、シュールなコメディとか、不条理な喜劇というような言葉が並んでいました。
これが正しければ、不条理劇だということになりますが、私のイメージする不条理劇とはずいぶん感じが違います。私の知っている不条理劇は、不条理自体は見えないもので、登場人物は、その周りを手探りで進みながら、あるかないかわからない不条理について語っていくというようなイメージだったのですが、この芝居では、最初から不条理がゴロンとそこにあるような感じなのです。登場人物達はそれに多少の抵抗はするものの、最終的には押し流されてしまいます。
ストーリーは、平和な3人家族の家に突然。隣の弁護士夫婦が訪ねてきて、娘の本当の父親が出所してきて、妻と娘を引き取りたいといっていると言い出す。そこへ、とうの父親も現れ、強引に連れて行ってします。妻と娘は、多少抵抗するも最終的には一緒に出て行ってします。孤軍奮闘、腕力までふるった父親は、一人残され、偶然居合わせた娘の家庭教師を、娘に見立てて、ビールを飲むところで終わる。
私のこんなことはあり得ないという常識的な気持ちが、どこがおもしろいのかわからないという気持ちの根底にあるような気もするのですが、ラストシーンの家庭教師とビールを飲むところは、あきらめなのか、ささやかな抵抗なのかもよくわかりませんでした。

2012年12月5日水曜日

8割世界「ガラクタとペガスス」

2012年12月4日 19時30分開演 八幡山ワーサルシアター
作:石原美か子 演出:鈴木雄太
出演 : 佐倉一芯、白川哲次、日高ゆい、中村匡亮、木原敦子、小林肇、石田依己架、橘未佐子、亀山浩史、原裕香、小早島モル、井上千裕、斎藤晴久、鈴木雄太
劇的につまらなかった劇団鋼鉄村松の芝居の中で、唯一おもしろかったアフタートークのゲストが、この8割世界主宰の鈴木雄太でした。
そのせいで、見てみようという気になったのですが、結果は結構、残念なものでした。
開場時に、主宰の鈴木雄太と役者の一人が場を暖めようとしてか、前説のようなおしゃべりをしているのですが、芸があるわけでもなく、話術のスキルがあるわけでもないので、場内が暖まると言うよりは、気まずい雰囲気が漂うだけでした。
話は、いわゆるベタなコメディで、途中で多少笑わせて、ラストで涙腺が緩むという定石の構成です。この手の芝居を見ると、どうしても、もっとうまい役者がやれば、もっとおもしろくなるはずなのに、という気持ちがわいてきて気持ちが冷めてしまうのです。ベタなコメディをおもしろくやれるほど、経験もキャラクターもない小劇団なら、それに変わる飛び道具が必要だと思います。飛び道具を潔しとせず、正攻法でいくのなら、それはそれで結構ですが、経験を積んでおもしろくなるまで見続けようと思うほど、シンパシーが感じられる劇団ではありませんでした。
唯一よかったのは、役者の声がでかいことでした。前日の鳥山フキの芝居が全員声が小さかったので、その落差もあって、声のでかさには驚きました。


2012年12月4日火曜日

鳥山フキ個人企画「Rのお出かけ」

2012年12月3日 19時30分開演 新宿眼科画廊地下
作・演出:鳥山フキ
出演 : 北村恵、菅谷和美、南綾希子、黒木絵美花、松木美路子、狗丸トモヒロ、渡邊とかげ、
公演チラシの裏に、最近気になる演出家の一人であるノゾエ征爾が推薦文を書いていたので、見てみる気になりました。推薦文で知った「鳥山フキは、ノゾエ征爾と大学の劇研で同期だった」ということ以外何も知りませんでした。
公演を見終わった今も、実は、ワワフラミンゴという劇団を主宰している。今回は、劇団とは別の鳥山フキ個人の企画公演である。ということが追加の知識として加わったくらいです。
ストーリーは、二人の女の子はなぜか殺し屋で、今度、スペインに行って誰かを殺すように依頼を受けます。資料や、地図、室内の見取り図などを検討すると、かなり手強そうなので、同じアパートに住む住民の中から、助手を選ぶために面接をする。というようなものだと思うのですが、ストーリーは全然重要ではないのかもしれません。それより、あげたあめ玉を手から離すまいとする気持ちとか、水草の培養を趣味とする男とのデートの話とか、少し不思議でシュールな感覚の方が重要なのかもしれません。
残念ながら、私は結構ハードで長く続いた現場が終わった次の日で、体力も、集中力もない状態で見てしまったので、舞台に集中できず、(なにしろ、全く声を張り上げることもなく、ほとんど座ったままで話すので動きもほとんどないので集中するのも難しい)約70分の短い芝居にもかかわらず、何度も寝てしまいました。
できれば、このようなタイプの芝居は、疲れていなくて優しい気持ちにあふれているときに見たいと思います。環境も、昼日中の自然光にあふれた場所で、静かに始まり、いつの間にか終わっていると最高だと思います。

2012年12月3日月曜日

流山児事務所「地球空洞説」


2012年11月25日 17時開演 豊島公会堂
原作:寺山修司
構成・脚色・演出:天野天街・村井雄・流山児祥
実は39年前の天井桟敷の初演も見ました。道に迷いながらたどり着いた高円寺の公園で、開演直前にもかかわらず、寺山修司がまだ演出していました。内容はあまりにひどかったこと以外ほとんど覚えていません。寺山修司は、短歌や競馬の評論は素晴らしいが、芝居はひどい。書いていることとやっていることが、全く違う。初めての天井桟敷経験がこれだったので、以後、天井桟敷を見るのやめてしまいました。
39年経っての再演は、台詞はちゃんと聞こえるし、唄は音程がずれることもなく、ダンスの振りも全員揃っていましたが、それがどうした、つまらないものはつまらないというのが正直な感想です。
いくらカメハメ波のポーズが完璧にできても、そこに込めるエネルギーがなければ、カメハメ波は、出ません。
流山児祥と大久保鷹が狂言回しとして出ていますが、流山児は相変わらず台詞をかみまくって、そのたびに笑ってしまうし、(それがなぜかとてもいやで、演劇団の芝居を見にいかなくなったのを思い出してしまいました。)
大久保鷹は、劇中、タンスを担いで出てくるという、状況劇場の不忍池水上音楽堂での公演を思い出させるサービスまでしていましたが、あのときの状況が全くない今となっては、モゴモゴと何を言っているかわからないおじいさんでしかありません。

離風霊船「The Thrity」


2012年11月23日 15時開演 大橋編 19時開演 伊東編 中野シアターボンボン
作・演出:大橋泰彦・伊東由美子
劇団30周年記念公演第二弾。同じエレベーター前という設定で、2人の作家が書き競うという、うまくいけば面白くなったかも知れない試みでしたが、結果は残念なものでした。マチネの大橋編は一応まとまってはいたのですが、離風霊船らしい驚かしのシーンも小粒だし、大胆な転換もなしで、肩透かしを食らった感じでした。
伊東編は、さらにひどいありさまでした。途中で書けなくなって、過去の作品の場面の抜粋を強引に繋げただけにしか見えません。脚本として完成しておらず、途中で投げだしたように見えます。前回、初めて離風霊船を見た私にとっては、何が面白いのか全くわかりませんでした。
同じ劇団を何回か続けて見ていくと、無意識のうちにそのたびごとに新しいものを見せてくれることを望むようになる。新しいものが見られれば、おもしろいと思い、それがなければ、つまらないと思いやすいものです。
若い劇団は、路線も固まっていないので新しいことも出やすいが、30年も続いている劇団は、劇団のカラーも定まっているので、そればかりを追い求めてもしょうがないと思います。
ベテランの劇団は、そのカラーをげ「芸」だと思って楽しむ意識が必要だと思います。

イキウメ「The Library of Life まとめ*図書館的人生(上)」


2012年11月22日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:前川知大
事前にオムニバスのストーリーが錯綜してわかりにくいという噂が流れてきたので、少し心配しながら見に行きましたが、幸いなことにその心配は杞憂に終わり、心穏やかに楽しく見られました。
死んだ人間が成仏する前に立ち寄る図書館。ここにはすべての人の前世、現世、来世が書かれた本があるらしい。ただし、目録はなく、ひたすら読みつづけて、探すしかない。自分の来世を知りたい人、愛する人を探す人、様々な人が訪れる。そんなSF的な設定の元、六つのエピソードがイキウメ特有のデリケートなシーンのクロスフェードを繰り返しながら、語られていく。
賽の河原の鬼の話や、万引きのプロと懸賞で暮らしている女性のラブストーリーなど、ひとつひとつが、共感できやすい優しいエピソードに仕上がっている。前作のミッションが、クールでやもすれば突き放した冷たいともとれる印象だったのに比べ、今回の方がはるかに面白い。
イキウメ得意のSF的な設定も嫌いではないし、次回作も見る気になった。
その後、時々読ませていただいている「6号通り診療所長のブログ」の記事によれば、この作品が今までに上演したオムニバス短編集を再構築したもので、「謎の図書館に出入りした人達が、書架の本を開けた時、その本を読む役者以外の全キャストが、その本の内容を演じる。」という構成になっていることを初めて知りました。以前の公演を見ていないので、先入観なく見たのがよかったのかもしれません。

2012年11月25日日曜日

ポツドール「夢の城」


2012年11月21日 19時30分開演 池袋東京芸術劇場シアターウェスト
作・演出:三浦大輔
当日パンフレットに日本人特有の虚無感への言及があったが、舞台装置もそれをストレートに表したものだった。床には万年床がひかれ、えたいの知れないゴミが散らばり、壁はポスターが隙間なく貼られている。天井にまで国旗などが貼られている。ものに溢れた床、壁、天井に囲まれた空間には何もない。肉体すらもない。役者はほとんどの時間を寝そべって過ごし、立ち上がるのは、トイレに行く時か、部屋から出入りする時だけだ。台詞もなく繰り返される動きは、この空間の空虚感を強調するためだけに、おこなわれているようだ。
いろいろなところで書かれている過激な性描写は、出来の悪いエロビデオみたいでいただけない。演出家のサービスだと思うが、悪いサービス休むに似たりというか、邪魔にすらなつていると思う。
岸田戯曲賞授賞後の第一作を、これにした作者の勇気には感心するが、今これを再演することにどれだけ意義があるだろうか。
ポツドールは、この虚無感を抱えてどこに行くのだろうか。

2012年11月21日水曜日

ラッパ屋「おじクロ」


2012年11月16日 19時開演 新宿紀伊國屋ホール
作演出:鈴木聡
一言でいえば、下町人情喜劇。松竹新喜劇や吉本新喜劇でやっても、おかしくないような脚本である。メーカーの事業撤退により倒産の危機に直面した下請の町工場を、社長の幼馴染でもある副社長が、会社の寮として使っていた自宅を売ってとりあえず救う。そして、最後に復活を誓って、ももクロの唄を、歌い踊る。
その踊りは、おじさんとしては、よく訓練されていて、見事なものだったが、なぜかしつくりこなかった。
劇中でいかにももクロが素晴らしいか、おじさんたちの胸をうつかが散々強調されるのだが、ももクロにそんなに思い入れのない私としては、苦笑いするしかなかつた。
そのまま、唄に突入するので、その強引さが、違和感として残るのだと思う。
十分面白かったが、次回は見なくてよい感じだった。

2012年11月16日金曜日

パルコ/キューブプロデュース「こどもの一生」

2012年11月15日 19時開演 渋谷パルコ劇場
作:中島らも
潤色:桝野幸宏
演出:G2
振付:小野寺修二
中島らもの本は、とてもおもしろくて、ラストがSFホラーチックでよくかけているし、演出も的確で破綻がない。役者も谷原章介を除いてみんなうまくて、特に破綻がない。よくできた「お芝居」だが、それだけで、私にとっては、特におもしろいものではなかった。みんな優等生で、スムーズに芝居が流れ、終わっていく。役柄を無難に演じているだけの芝居になんのおもしろみがあるだろうか?
私が見たいのは、役を超えて見えてしまう役者の人間性なのだと思う。小さな劇場で行われる若い劇団の芝居が好きなのは、役を演じきれない役者の苦し紛れの個性がよく透けて見えるからだと思う。
映像を芝居の中で使用するのがはやりのようで、この芝居でも台詞のポイントとなるところを、あたかもプレゼンのように文字で見せたり、殺人のシーンで血しぶきを一瞬見せたりしていたが、一つ一つは的確でも、続くと説明的すぎてくどすぎる。


猫のホテル「峠越えのチャンピオン」


2012年11月15日 14時開演 下北沢ザスズナリ
作・演出:千葉雅子
鋼鉄村松の余りの出来の悪さの反動のせいか、面白く見られました。同じ20年選手なのに、この差は何なんでしょうか?
猫のホテルにしても、気になるところはいろいろありました。特に、議員秘書の向井だけがあまりに一途に描かれているので、薄っぺらに見えて仕方がありません。他の登場人物は、大なり小なりズルくて人間臭くてリアリティがあるのに、向井だけは、深みが感じられません。
それなりに面白かったですが、次回見に行くかどうかは微妙なところです。
いや、次回作は演出が今とても気になるノゾエ征爾なので、とりあえず見に行くでしょう。

2012年11月15日木曜日

ベッド&メイキングス「未遂の犯罪王」

2012年11月13日 19時30分開演 錦糸町済みだパークスタジオ
作・演出:福原充則
高尚な思想や斬新な表現がなくても、おもしろい脚本と的確な演出、よい役者がうまくかみ合えば、おもしろい芝居ができることを証明しているような舞台でした。この前の鋼鉄村松の台本も、ここの役者がやったらおもしろく見られたかもしれません。
私が一番びっくりしたのは、状況劇場的演出、「私のお兄さんを知りませんか」と叫んで、正面向いてミエを切る、すると派手な音楽が大音量でかかり、舞台が真っ赤になる。というような演出が方法論として成立し、それを観客も違和感なく受け入れていることでした。私の中では、そのような演出はそれを支える過剰なロマンチックでファナティックな論理がなければ成立しないという感覚あったので、そのようなバックボーンなしでも成り立っているのを見るのは、軽いショックでした。きっと、この演出家は状況劇場というか、唐十郎が大好きなんだと思います。
役者では、ヒロイン役の野口かおるが素敵でした。泣いたり笑ったり叫んだり、自由奔放に暴れまくって、最後には本物の自動車でセットに突っ込んできました。まるで、可愛いくて若い李麗仙のようでした。他の芝居をするところも見てみたいです。

2012年11月13日火曜日

iPhone5

購入前の楽しい悩みの時期を経て、昨日11月12日ついにiPhone5を購入しました。ついでに、キャリアもソフトバンクからauに変更しました。
iPhone5にした最大の動機は、iOS5からiOS6にしたところ全体の動作が緩慢になって何とするにも1拍待たされるのに耐えきれなくなったことです。
iPhone5にしてみての感想は、
薄い!
軽い!
早い!
綺麗!
ということで、とりあえず満足です。
今後は、iPadのWi-Fi機を購入して、デザリングを試してみるつもりです。

モダンスイマーズ「楽園」

2012年11月12日 19時30分開演 吉祥寺シアター
作・演出:蓬莱竜太
テレビの舞台中継で石田えり主演の芝居を見て、ずいぶん堅い、きっちりした脚本を書く人という印象だった蓬莱竜太でしたが、この芝居はとても柔らかい、やさしいという感じでした。
小学生の頃、男子なら誰でも夢見る「秘密基地」でのごっこ遊び。「いじめ」と「差別」が混在するごっこ遊びの最中に事故が起き、一人の女子の運命が大きく変わってしまう。
そんな物語です。
この芝居の肝は、役者が大人になった衣装で小学生を演じていくところです。台詞と動きは小学生、衣装は大人なっての職業を表す。所々でストップモーションと字幕により、その衣装の謎が明かされていきます。コンビニ店員、プロレスラー、工務店、警察官。この衣装と台詞、動きの異差が微妙なバランスを保って、大人が小学生を演じることの痛々しさから救っていると思いました。
もう一つの、そして最大の肝は、女子小学生役の深沢敦です。彼が出てきてから、それまで多少の不安定感、大人の衣装で小学生を演じることへの違和感は吹っ飛び、物語はいきいきとダイナミックに動き出します。大人なのか、小学生なのかという区別などは関係なくなり、ストーリーの中にぐいぐい引き込まれていきます。チビで、デブで顔もでかいのに、大きくてよく通る声と、演技力で見る者を引きつけてやみません。役者の力のすごさを思い知らされました。
次回作も是非見たいと思います。

鋼鉄村松「高橋ギロチン」

2012年11月9日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:ボス村松
「鋼鉄村松」というふざけた劇団名と、バブルムラマツとか、サラリーマン村松という「劇団名」を名のるというわけのわからないシステムに惹かれて見に行きましたが、始まったとたんに後悔しました。正しくは、前説が始まったとたんに他の芝居を見に行った方がよかったと思いました。
前説は、作・演出のボス村松が何を言っているかわからないラップ調でやったのですが、完全にグダグダで滑りまくり、見かねた劇団員が袖から声をかけてやっと終わるという演出すらも決まらずに滑るという有様でした。
今にして思えば、この前説が芝居のつまらなさを象徴しているようでした。
おもしろい芝居をしたいという意欲があってアイデアも一応あるが、芝居のスキルは低く、戦略や方向性がないので、すべて不発に終わる。その繰り返しに、観客も失笑するしかない。誠に、残念な結果しか残らない。
ストーリーは、秋葉原無差別殺傷事件と死刑廃止論を組み合わせてたもので、犯人像はカミュの「異邦人」そのままという感じでした。
その脚本を、方向性も示さないままもっとおもしろく、もっとおもしろくと攻め続けるだけの稽古をして、その結果、てんでばらばらにオーバーアクションで演じ始める役者達。その交通整理もできないまま本番投入という感じでした。
結果、なぜかオーバーアクションを求められなかったダクト屋の親方、ミニ阿藤海みたいな松井さんと、ダクト職人の多田無情の普通の芝居だけが光って見えるという残念な結果になってしまったように見えました。
しかし、観客は通路までぎっしりの超満員で2時間休憩なしなので、途中で出ることもできず、終演後のアフタートークまで見る羽目になってしまいました。アフタートークの相手は、「8割世界」の主催者の鈴木雄太という人で、芝居のだめ出しと、冒頭シーンの再演出をするという内容でした。
時間的には15分くらいのものでしたが、これが本編よりもおもしろい。観客も一番笑っていました。
こんな芝居を20年以上続けてきたのだとしたら、その意志の強さには感服しますが、次回は見に行かないでしょう。

2012年11月11日日曜日

ハイバイ「霊感少女ヒドミ」


2012年11月9日 16時開演 小竹向原 アトリエ春風舎
作・演出:岩井秀人
映像:ムーチョ村松
全編映像投影の60分。装置は鍵の手になった白パネルに、引戸が一つだけ。
照明は、ネライが2ヶ所のみ。
ほとんどの場面は、フロントブロジェクションのの映像の中、顔が様々な色になってもかまわず演じられる。
「地点」に影響を受けた称する繰り返しがリズミカルなナレーションに、フルシンクロするミッシェルゴンドリーのパクリと豪語する映像が気持ちよい。
ストーリーはど直球の純愛ラブストーリー。ゾンビの、そしてヒドミの片想いがせつなく悲しいが、最後に穏やかなカタルシスが映像とナレーションによりもたらされる。
芝居が映像を取り込む方法の一つの答えがここにある
背景にしてはダメだ。安くなるだけだ。
シンクロしなければ。
上田遥が、ちょっとげすくてかわいい。

2012年11月9日金曜日

アンファンテリブルプロデュース「愛のゆくえ(仮)」

2012年10月30日 15時開演 上野ストアハウス
脚本:前川麻子・高木登
Aプログラム 演出:寺十吾 出演:前川麻子・瀧川英次
一つの脚本を何度かの試演会を重ねて、三つの配役、三つの演出で上演するという試み。3本で一つの世界を表しているような気がして、スケジュールの都合でAプロしか見に行けなかった私は、この覚え書きがかなり書きにくかった。しかし、ネット上の劇評や感想を読んでみると、三つの異なった世界の表現を目指していたようで、やっと、踏ん切りがついて、書いてみる気になった。
ストーリーは、兄と別れ弟と再婚した女が、夫を捜しに兄のアパートに現れるところから始まる。本棚や、テレビが倒れ、乱闘の後が残る室内で慌てて包丁を冷蔵庫に隠す男、乱闘の後を気にもせず、夫のゆくえを訪ねる女。男は、別れた女に未練たらたらで、女もまんざらざらでもない様子。そんな二人の関係が、簡潔な台詞の中で十二分に表されていく。さすがに何度も試演会を繰り返して、練り込まれた脚本、演出だけのことはある。
さらに、兄の弟に対する愛憎入り交じった感情が語られ、ついに弟を殺してばらばらにしたことが語られる。女はさして驚きもせず、死体の処理に協力して必要なものを買いに行く。ラストでは、オープニングでのぞき込んでいたいた押し入れの中から、物音がして実は弟がまだ生きていることが暗示される。
男と女の愛情関係が、狭いアパートの一室で濃密に描かれていた。

2012年10月30日火曜日

アトリエダンカン/デラシネラプロデュース「日々の暮らし方」

2012年10月27日 18時開演 池袋あうるすぽっと
原作:別役実
脚本:きたむらけんじ
構成・演出:小野寺修二
出演:南果歩、中山祐一朗、山田悠介、河合ロン、藤田桃子、矢沢誠、吉村和顕、小野寺修二
2週間以上続いた現場がいったん終わり、久しぶりの休みに見に行きましたが、全く集中できず、舞台を見ていても知らないうちに目を閉じて意識を失っていることがたびたびありました。
舞台は、芝居+ダンスという形で、ある日突然失踪すると夫に宣言された妻の意識と行動が展開されているようなのですが、ダンスがそれを説明するような、イメージを膨らませているような形で展開されているようでした。「ようでした。」と言うのは、私には全くそれが理解できず、ダンスになる必然性も感じられなかったからです。
私自身の疲れのせいか、感受性のなさのせいかわかりませんが、久しぶりに、全くおもしろくない舞台となってしまいました。
小野寺修二の名前は、首藤康之の「ジキルとハイド」の振付監修や、「叔母との旅」のステージングでよい評判を聞いて、期待して見に行ったのに残念です。

2012年10月14日日曜日

ブス会「女の道2012」

2012年10月11日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:ペヤンヌマキ
出演:安藤玉恵、もたい陽子、髙野ゆらこ、松本まりか、内田滋、尾倉ケント、仗桐安
とあるAVの撮影現場。その昔は、SMの求道者として知られていたが、こどもができて以来、金のために仕事をこなす三代目リカコ。昔のリカコを忘れられず尊敬するカエデ。巨乳と自在に操れるセルフ潮吹きを武器に業界を渡り歩くルミ。30歳にして、カムバックしたカスミ。今日の撮影の主役で、元アイドルのマリナ。
撮影が長引く中、女達の本音が次々と明らかになり、様々な人生模様が明らかになっていく。
ラストで、あくまでロリキャラを貫いたマリカが27歳の子持ちであることが明らかになる。もっともしたたかだったのが、ロリキャラでたよりなげだったマリカだったというオチ。
よくあるストーリー展開とはいえ、そこそこおもしろかったのですが、私が舞台で見たいものはなにかということを考えて直してしまう芝居でした。
私が舞台で見たいものは、たとえて言えば、フルスイングなんだと思います。その結果、ホームランなら万々歳。豪快な三振でも、まぐれの振り逃げでもかまわない。まず、フルスイングありきで、結果はまた、別の話だと思います。
この芝居のように、技巧的にファールで粘ったり、セーフティーバントで出塁を狙うようなやり方は好みではありませんでした。

2012年10月8日月曜日

鹿殺し「田舎の侍」

21012年10月7日 19時開演 下北沢駅前劇場
作:丸尾丸一郎
演出:菜月チョビ
出演:オレノグラフティ、丸尾丸一郎、菜月チョビ、山岸門人、橘輝、傳田うに、円山チカ、坂本けこ美、山口加菜、水野加奈子、鷺沼恵美子、浅野康之、峰ゆとり、近藤茶、丸山厚人、山本光二郎、美津乃あわ
この前に見た子供鉅人と同じ大阪出身の劇団で、きしくも演目も同じ時代劇。でも、この圧倒的なおもしろさの差は、何が違うのだろう。
相変わらずの、あふれんばかりのサービス精神。そして、それを確実に観客に伝えるノウハウ。殺陣もちゃんと振り付けて、あらん限りの力で演じる。そこがすがすがしく、おもしろい。初主演のオレノグラフティは、1本調子だが、ライバル役の山岡門人の屈折した役とあわせてみていれば、飽きることはない。
ゲストのコンドルズの山本光二郎は生臭坊主の役がぴったりだが、ダンスシーンで神妙にバレー風の振りで踊るのもおかしい。
いつもより、かぶり物が少なかったような気がするが、キンキラキンの大仏様のコスプレが妙にセクシーだったのでよしとしよう。

岩井秀人「ヒッキー・ソトニデテミターノ」

21012年10月7日 14時開演 渋谷パルコ劇場
作・演出:岩井秀人
出演:吹越満、古舘寛治、チャン・リーメイ、有川マコト、占部房子、小河原康二、田村健太郎、金原祐三子、岸井ゆきの
初めてハイバイ以外での彼の作・演出の芝居を見て、改めて彼の才能の素晴らしさに驚嘆しました。
昔、平田オリザの作品を青年団と、プロデュース公演で続けてみたことを思い出しました。青年団では、「東京ノート」と、「S高原から」、プロデュース公演は、円形劇場の「女子高生」と、今はなきシードホールで行われた題名も忘れてしまいましたが、緑魔子主演の芝居でした。結果は、プロデュース公演の圧倒的な勝ちでした。芝居の完成度、感動の深さ、一言で言えば、とてもおもしろい芝居だったのです。
特に「女子高生」は、現役女子高生を1ヶ月のワークショップの後、それを元に芝居を作るという試みで、その生々しくもすがすがしい等身大の女子高生の芝居に感動したことを今でも覚えています。
自分のホームである劇団の芝居よりも、外部であるプロデュース公演の方がよい芝居ができるのが不思議で先輩に尋ねたところ、「長くやっている劇団では、いろいろしがらみが生じて、それが芝居の足を引っ張ることがある。」と、言われました。今考えると、配役に関して言えば、劇団という狭い範囲での配役よりも、プロデュースでの方がよりベターな配役ができる可能性が高いと言うことでしょうか?
個人的なしがらみの少ない、役にあった役者を集めて、プロフェッショナルに演出して行ければ、よりよい芝居ができるということでしょか?
現実にはプロデュース公演にも、様々な問題があることはわかっていますが、この芝居はうまくいった例だと思います。ハイバイでは見えにくかった岩井秀人の考えや、感性がくっきり見えてきました。
岩井秀人は、引きこもりも、その家族も、きわめて客観的にどちらかに肩入れすることなく描いています。そのクールな台本を、おのおのの役者が、素直に、奇をてらうことなく演じていくことで、各自の苦悩や希望が明確に浮き彫りにされていく。素晴らしい舞台でした。
一つ残念なのは、主役の吹越満で、彼はこまかい動作(鼻をかく、うつむく、口に手を添える、など)をさも意味ありげに行う達人で、それがこの芝居では人物像をぼんやりさせるだけで、時には邪魔になっていたことでした。

2012年10月7日日曜日

子供鉅人「幕末スープレックス」

2012年10月4日 19時30分開演 阿佐谷ザムザ阿佐谷
作・演出:益山貴司
出演:億なつき、キキ花香、小中太、影山徹、益山寛司、益山貴司、林祐介、大歳芽里、ミスター、益山U☆G、一川幸恵、岡野一平、尾場瀬華子、ぎぃ子、クールキャッツ高杉、小嶋海平、小林欣也、小林紀貴,永沼伊久也、東ゆうこ、三ツ井秋、山田春江
自分の芝居に関する趣味趣向の限界を思い知らされた芝居でした。たとえば、次郎のラーメンは一部の人にとっては最高のラーメンであったとしても、私にとっては料理以前のものであり、味云々の前に下ごしらえもされていなくて、金を払って食べる気がしないものであるように、子供鉅人の芝居も、楽しむ気もしないタイプの芝居でした。
おのおのの役者の演技力はもちろんへたくそなものでしたが、情熱や、一生懸命さはわかります。しかし、それをうまく観客に伝えられない演出には、大いに問題があると思います。作・演出の益山貴司も役者として舞台に登場しますが、自分がやっていることに照れや、恥じらいがあるように見えました。それが悪い方に影響して、舞台の爆発力をなくしているようでした。
もちろん、私が年を取ったせいであのような舞台をおもしろいと感じなくなったこともあるでしょう。40年前なら、おもしろいと思ったかもしれません。
残念な出逢いだったと言うしかありません。

2012年10月4日木曜日

劇団本谷有希子「遭難」

2012年10月3日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:本谷有希子
出演:菅原永二、美波、佐津川愛美、松井周、片桐はいり
黒沢あすかの病気降板に伴い、主役が女優から男優(菅原永二)に変更されるという大胆きわまりない交代劇のあった「遭難」を見ました。情報不足で、交代自体も劇場でもらったパンフレットを読むまで知りませんでしたし、黒沢あすかについても全く知らなかったので、彼女が演じていたらどんな芝居になったのか、想像することもできません。
本谷有希子は、この芝居で新しい悪人を描きたかったのだと思います。自分が大好きで、自分の気に障るものは、盗聴や盗撮、ストーカー行為をしてでも排除していく。その行動が、周りの普通の人々の悪意を引きずり出していく。そんな極悪人を演じるには、菅原永二は優しすぎるというか線が細すぎると思います。
ラストシーンはすべての悪事がばれ、自殺未遂の生徒に電話越しに謝らせられた(具体的な台詞は聞こえません)のち、一人残って、隠し持っていたお菓子を食べるというものですが、ここで、「それでも私は今まで通り生きていく。」というふてぶてしさが見えれば、世界が一挙に広がったと思うのですが、私が感じたのは、そのまま死んでしまいそうな弱さだけでした。
たぶん、菅原永二の本来の人の良さが裏目に出たのだと思います。

2012年10月3日水曜日

はえぎわ「ライフスタイル体操第一」

2012年10月2日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:ノゾエ征爾
出演:滝寛式、川上友里、笠木泉、本多力、竹口龍茶、富川一人、踊り子あり、高松呼志響、鈴真紀史、町田水城、鳥島明、金珠代、井内ミワク、山口航太、萩野肇、竹田邦彦、加藤素子、佐藤賀数江、阪口美由紀、高山久子、美恵サンダ、渡邊敦子、宇津木昆台、立堀貴子、うちやまきよつぐ、石原裕鵬、ノゾエ征爾
「起きる、食べる、排泄する、寝る。これが人生の基本動作、これ以外に何をするかが人生。」と、結構、大上段に振りかぶったテーマの今回の芝居ですが、大上段に見えないところが、はえぎわの芝居のよいところだと思います。人生の何かが、様々なエピソードとして語られていき、それをつなぐように、おばあさんがバイクを押して歩いて行きます。そのすべてが、さらりと、優しく描かれていく。優しい風のような舞台でした。
今回の芝居には、公募した60歳以上の方が、多数出ていました。一部、埼玉ゴールドシアターや、楽塾に所属されている方もいるようですが、ほとんどは素人です。彼らをうまく誘導して、彼ら自身の人生がさりげなく舞台に現れるように構成したノゾエ征爾の演出力は、たいしたものだと思います。
公募グループの魅力に勝てなかったのか、出番が多くなった分だけ、芝居のテンポが遅くなり2時間が長く感じられたのは、少し残念ですが、それも許容範囲でしょう。
次回作もぜひ、見たいです。

2012年10月2日火曜日

音楽劇「ファンファーレ」

2012年10月1日 19時30分開演 三軒茶屋シアタートラム
脚本・演出:柴幸男
音楽・演出:三浦康嗣
振付・演出:白神ももこ
出演:坂本美雨、今井尋也、今村洋一、初夏、大柿友哉、北川結、重岡佐都子、清水久美子、名児耶ゆり、西尾大介、bable、柳瀬大輔、
前回芝居を見てから、2週間以上間が空いてしまったので、その間に勝手な期待が膨らんでしまっていました。Twitterに時々上がってくる稽古の進行状況などを見るたびに、何か素晴らしいものが見られるのではないかと、妄想を楽しむ自分がいました。
しかし、現実はそう甘くもなく、結構、残念な結果に終わってしまいました。
物語は、ファーレという「ファ」と「レ」しか歌えない女の子の成長の話。孤児のファーレは両親を見つけるため、うたうたいになるべく養い親のレッサーパンダ先生の元を飛び出し、音盗人として暮らすうちオーディションに参加する。やがて、そのオーディションの審査員のアロンアルファと結婚し、両親がすでになくなっていることを知るという、3幕ものです。
各幕ごとに違う女優が、ファーレを演じるのですが、幕が進むごとに魅力が半減してていくのがわかります。特に、第3幕は、歌手の坂本美雨がつとめるのですが、近くで見ると結構ブスで、芝居もできるわけでもなく、存在感がとても薄いです。
一番残念なのは、テーマソングで、ファーレが歌う都合上ファとレの2音で主旋律ができており、魅力的な歌とはとても思えません。
全体のアレンジは、ニューフォニュームなどを生かして、とても魅力的にできているのですが、そのアレンジ力をもってしても、テーマ曲の残念さは救えませんでした。
最後に、音響が台詞の時にリバーブをかけ過ぎて、台詞が聞き取りにくいのがとても気になりました。

2012年9月23日日曜日

2012年第三四半期観劇のまとめ

21012年7月から9月に見た芝居は以下の通り。
7月3日 ままごと「朝がある」
7月4日 オフィスコットーネプロヂュース「コルセット」
7月5日 可児市文化芸術振興財団「高き彼物」
7月10日 悪い芝居「カナヅチ女、夜泳ぐ」
7月11日 範宙遊泳「東京アメリカ」
7月25日 ハイバイ「ポンポン、おまえの自意識に小刻みに振りたくなるんだポンポン」
7月26日 ナカゴー「黛さん、現る」
7月30日 中屋敷法仁「露出狂」

8月4日 第16次笑いの内閣「非実在少女のるてちゃん」
8月7日 ロロ「父母姉僕弟君」
8月8日 クロモリブデン「進化とみなしていいでしょう」
8月14日 演劇企画集団ガジラ「Happy Days 幸せな日々」
8月24日 ぬいぐるみハンター「ゴミくずちゃん可愛い」
8月29日 バストリオ「Very Story,Very Hungry」

9月3日 ヨーロッパ企画イエティ#6「ウィークポイントシャッフル」
9月4日 北京蝶々「都道府県パズル」
9月6日 風煉ダンス「ゲシュタル島崩壊記」
9月7日 マームとジプシー「ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。」
9月14日 tsumazuki no ishi「HEAVEN ELEVEN OF THE DEAD」
9月14日 柿食う客「無差別」

以上の20本。仕事が忙しくなってスケジュールが合わず、見に行けなかった芝居もありました。
そんな中でのベストスリーは、
ハイバイ「ポンポン、おまえの自意識に小刻みに振りたくなるんだポンポン」
ロロ「父母姉僕弟君」
マームとジプシー「ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。」
の、3本です。
ハイバイは、相変わらず、岩井秀人の演技が魅力的でした。
ロロは、そのさわやかな語り口が印象的でした。
マームとジプシーは、繰り返し語られる台詞のリズムと波及力が新鮮でした。
次点は、ままごと「朝がある」でしょうか。マームとジプシーにも通じるものがある繰り返しの魅力がありました。

柿食う客「無差別」

2012年9月14日 19時30分開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:中屋敷法仁
出演:七味まゆ味、玉置玲央、深谷由梨香、永島敬三、大村わたる、葉丸あすか、中屋敷法仁
中屋敷法仁の作・演出作品を見るのは、「女体マクベス」、「露出狂」に続いて3本目だが、今回の作品が一番おもしろかった。おもしろかった、主な原因は、台詞のスピード。台詞のスピードが少しゆっくりになったことで、台詞同士がかみ合い、芝居の展開がよりはっきり理解できるようになった。
しかし、喋りすぎではないかとは、やはり思う。あんなに喋らなくても伝わるだろうにと、考えてしまう。あの過剰な台詞は、作者の強迫観念なのだろうか。柿食う客には、キャストを総入れ替えして演じられる、オールシャッフル版という日が必ずあるが、次回は、そちらも見てみたい。

P.S.
この日は、マチネ、ソワレと1日に2本の芝居を見たが、この方法は問題がある。今回は、たまたま1本目がおもしろかったので、何とか2本目も見る元気が出せたが、もし、1本目がつまらなかったら、2本目を見る元気は出なかったと思う。できるだけ、2本観劇はやめるべきだと思う。しかし、このところ、仕事が忙しいので、そうも言っていられないかもしれない。

tsumazuki no ishi「HEAVEN ELEVEN OF THE DEAD」

2012年9月14日 14時開演 下北沢ザ・スズナリ
作:スエヒロケイスケ 演出:寺十吾
出演:津村知与支、日暮玩具、亜矢乃、西園泰博、松原正隆、宇鉄菊三、大高洋子、佐藤健、中野麻衣、舞山裕子、岡野正一、寺十吾、柿丸美智恵
死んで、ゾンビになった自分の体を、スマホを使ってコントロールしようとしたり、よりよいコントロールのためには、完全同期が必要だと叫んでみたり、なんといい加減なSF設定だと思いながら見ていたら、最後にはすべて一人の少女の妄想であり、彼女が書いていたストーリーだと言うことがわかって、一応、ツジマジがあうようにはなっている。
その最初はわけのわからない状況の中で、自由に動いて芝居をしている、コンビニの店員二人、津村知与支と日暮玩具、ホームレスの二人、寺十吾と柿丸美智恵がおもしろい。
特に、柿丸美智恵は「Happy Days」のシリアスな役柄より、肩の力が抜けて楽しそうだ。あと、妄想の原因となる少女、ワックンを演じた舞山裕子が可愛い。次回作も見てみたい。

2012年9月8日土曜日

マームとジプシー「ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。」

2012年9月7日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター
作・演出:藤田貴大
出演:伊野香織、石井亮介、萩原綾、尾野島慎太朗、斎藤章子、高山玲子、成田亜祐美、波佐谷聡、召田実子、吉田聡子
独特のアクセントで、台詞を繰り返し繰り返し語っていくことで、独特の感覚を客席まで広げていく感じがとてもおもしろいです。
独特のアクセントを使う劇団は、「地点」とか「チェルフィッチュ」などがあるが、この劇団は、その台詞回しに感情を乗せて、それがどんどんエスカレートしていくところがほかとは違うとことろです。100年続いた祖母の家が、区画整理で取り壊された。自分たちが住んでいた、一度は捨てたと思った家が亡くなることの喪失感、悲しみが台詞が繰り返されるたびにだんだん大きくなり、それが次第に観客にも広がっていく。今までに感じたことのない一体感でした。
次回公演も是非、見たいと思います。

2012年9月7日金曜日

風煉ダンス「ゲシュタル島崩壊記」

2012年9月6日 19時30分開演 調布市せんがわ劇場
作:林周一 演出:笠原真志
出演:河内哲二郎、吉田佳世、田中晶、リアルマッスル泉、吉成淳一、荒井クルミ、松尾容子、溝口明日美、南波トモコ、本山三火、荒巻大道、林周一、有馬則純、笠原真志、関根真理
3本も残念な芝居が続いた後だったので、「劇団名もかっこいいし、結構昔からやってるらしいから」と、勝手に期待して見に行きましたが、結果は、「微妙」というところでしょうか。
手作り感満載の段ボールを素材にした装置、小道具、衣装をはじめとして、いい大人が嬉しそうに装置を作り、稽古をして、やがて初日を迎えて、楽しく舞台の上ではしゃぐ。
とてもほほえましく、温かい気持ちにはなるのですが、私には若干の違和感がありました。芝居をする人は、「わかる人だけがわかればいい。これが俺の表現だ。」と言いつつ、「俺の表現を、すべてにの人に理解してほしい。いや、俺の力で理解させてみせる。」という、欲求があると思います。いわゆるハングリー精神というやつです。それが、技術以上に、舞台を輝かせたり、思わぬ感動を呼んだりすることもあると思います。
風煉ダンスは、もっと大人で、本当に好きな人だけが見に来てくれればいいと思っているようです。余分な欲がないというか、芝居を作る課程を楽しみ、舞台の上でそれをお客さんと共有するを楽しむ。すてきなことだとは思いますが、意地悪く見れば、「大人のお遊戯会」ともいえると思います。
その自己満足さ加減が、今の私に違和感を感じさせる原因だと思います。
次回公演を見に行くかどうかは、微妙です。

2012年9月5日水曜日

北京蝶々「都道府県パズル」

2012年9月4日 14時30分開演 王子小劇場
作:大塩哲史
演出:登米裕一(キリンバズウカ)
出演:八木橋達郎、中田麦平、鶴巻公江、渡辺樹里、鴨下亨、田渕彰展、井ノ本慎平、緒方晋、峰仁志、中村靖、宗像志保、高橋悠、阿久津紀夫、岡本篤、瀬古俊樹、森田祐志、薦田二郎、村上誠基
笑いの内閣と同じように、私の嫌いな政治的な問題をテーマとしてディスカッションするような演劇。
どうして新聞やテレビWEB上で書かれているような討論を、舞台で聞かなくてはいけないのか、それがまず理解できません。ストーリーは、「道州制を周知するためのフェスティバルのの内容を決めるため、各地から選ばれた委員が、イベント運営会社のコントロールや、反対派の意見にも惑わされず、福島を救うためにみんなで考えようとする。」といったものなのですが、政治的な意見はどれももっともらしいだけに、その主張だけが耳に入ってきてうるさいだけです。役者の力量がかなりないと街頭演説と変わりないものにしか聞こえません。主張だけが飛び交って、なんのイメージも膨らまない寂しい舞台でした。
北京蝶々は、二度と見ないと思います。
この芝居を含めて、連続3本外れを引いてしまいました。前評判や、劇評などは当てにしないで自分の勘だけで、予約を入れる。芝居は自分で見るまでわからない。と、信じてきましたが、少し弱気になってきました。
次の劇団に期待です。

ヨーロッパ企画イエティ#6「ウィークポイントシャッフル」

2012年9月3日 19時30分開演 下北沢駅前劇場
作・演出:大歳倫弘
出演:酒井善史、角田貴志、土佐和成、安藤真理、花本有加、福井菜月、向井咲絵
ヨーロッパ企画という名前は、いろいろな芝居で客演している役者の所属先としてよく聞く名前なので、チケットをとってみました。外部から呼ばれることが多い劇団は、たぶんよい芝居をするだろうという読みでした。
残念ながら、その読みは完全に外れました。慌てて調べてみたら、「イエティ」というのは劇団内ユニットで、本体とは別の人が作・演出されているようです。
芝居は、ザット(that)と呼ばれる怪物が怖くて外出できず、通販で暮らしている4人姉妹の家に、謎の男が車が故障したといって現れるところから恥じます。父親はザットに殺され、唯一ピザの配達人だけがいろいろなものを届けてくれる。という導入部分から、シリアスにも、ホラーにも、サスペンスにもいかず、ひたすら緩く通販の商品を喜々として説明しまくる4人姉妹。
しかし、その4人姉妹を演ずる女優がそろいもそろって、ひどくて見ていられない。台詞は、棒読み、体は動かない。ストーリーがどうのこうのいう前に、見る気が全くしないのです。まあ、ストーリーも突っ込みどころ満載ですが、そこまで気が回りませんでした。
ヨーロッパ企画本体の芝居も見てみたいものです。

2012年8月30日木曜日

バストリオ「Very Story,Very Hungry」

2012年8月29日 19時30分開演 横浜 BankArt Studio NYK
作・演出:今野裕一郎
出演:狗丸トモヒロ、橋本和加子、八木光太郎、深川奈緒美、伊藤羊子、平石はと子、秋山莉紗、今野裕一郎、児玉悟之、酒井和哉、石田美生、砂川佳代子、萬州通擴、小林光春
海外で芝居でも見ようと入ったら、それが前衛的な芝居だったりして全く訳がわからず、せめて言葉がわかれば少しは理解できておもしろいかどうかの判断くらいはできるのに、それもかなわず意味不明のまま劇場を後にするという経験が何度かありましたが、日本でも同じ目に会うとは思いませんでした。
もちろん、台詞は日本語なのでいっていることはわかりますが、台詞が理解できたところでおもしろくなるものではないことがよくわかりました。おもしろいと思うことと、台詞の意味が理解できることは、別の次元の話なんですね。
稽古の時に、演出家は役の性格や、位置づけ、なぜこのような台詞の言い方をするのか説明しながら芝居を作っていき、役者はそれを受けて役作りをしていったと思うのですが、舞台に現れたものは、棒読みの台詞と、意味不明の動作、全くつながらず何のイメージも広がらない細切れのシーンの羅列でした。
会場もこの芝居にはよくなかったと思います。昔の倉庫をそのままホールにしたので、コンクリート打ちっ放しの床、壁、柱には「坪荷重 20t」と大きく赤字で書かれている実にリアリティあふれる空間です。ここでは、すべての演技が嘘にしか見えません。普通の劇場でやった方が、まだ意味ありげに見えたかもしれません。実にお尻が痛いだけの90分でした。

2012年8月25日土曜日

ぬいぐるみハンター「ゴミくずちゃん可愛い」

2012年8月24日 14時30分開演 王子小劇場
作・演出:池亀三太
出演:浅利ねこ、満間昂平、川本直人、江幡朋子、佐賀モトキ、富山恵理子、石黒淳士、猪股和麿、平舘宏大、竹田有希子、浅見紘至、工藤史子、橋口克哉
2回目のぬいぐるみハンター観劇。相変わらず、ポップでポジティブ、前向きな作風は好感が持てます。残念だったのは、モノローグがものすごく多くて、それがブレーキとなって、スピード感がなかったことです。モノローグはどうしても説明的になってしまうので、退屈してしまうし、景色が広がらないので苦手です。
役者としては、漫画の「お坊ちゃま君」を彷彿とさせるゴウトクジの浅見紘至や、その秘書クニマツの工藤史子、ボディガードのコムスビ、橋口克哉がおもしろかったです。とくに橋口克哉はその体のでかさで、演技力以前に独特の存在感を醸し出していました。
この劇団の魅力は、ポップ、ポジティブ、スピードだと思うので、そのうちの一つがかけたこの公演は、少々残念です。

演劇企画集団ガジラ「Happy Days 幸せな日々」

2012年8月14日 19時開演 笹塚ファクトリー
作・演出:鐘下辰男
出演:千葉哲也・柿丸美智恵・とみやまあゆむ・皆戸麻衣・山口航太・寺十吾・塩野谷正幸
小劇場界のベテランのがっぷり四つ相撲に若い俳優が力を振り絞って挑む、見応えのある舞台でした。びっくりしたのは、直接的な身体接触(髪の毛を引っぱる、つかみかかる、投げ飛ばす)の多さと、その迫力です。もちろん演技でやっているのでしょうが、その荒々しい迫力は、先日のナカゴーの乱闘シーンがままごとに思えるくらいでした。
演技は楽しめたのですが、ストーリーがいまいちよくわかりませんでした。

2012年8月12日日曜日

クロモリブデン「進化とみなしていいでしょう」

2012年8月8日 19時30分開演 赤坂レッドシアター
作・演出:青木秀樹
出演:奥田ワレタ、ゆにば、久保貫太郎、花戸祐介、佐藤みゆき、武子太郎、手塚けだま、森下亮、幸田尚子、小林義典、渡邊とかげ、金沢涼恵
おしゃれな町赤坂のおしゃれなレッドシアターで、メジャーを目指す気ありありのSFのような芝居でした。自分の空想と現実が入り乱れてドタバタコメディになっていきます。台詞のきれもよく、なかなかおもしろく話は進んでいくのですが、ラストシーンで突然、国家権力による統制社会というイメージが前面に出てきて、それに対するプロテストという感じでかっこよく終わります。
ワタシは、そこで完全にしらけてしまいました。この劇団は、かっこよければ何でもよいような印象を受けたからです。
元々この劇団のメジャー指向に抵抗があったせいもあると思います。私のいうメジャー指向とは、過去作品のDVD販売、Tシャツなどの物品販売に熱心だということを指します。一つの作品から様々な形で収入を得ようとするのは、制作の力があることの印でしょうし、劇団を続けていく上でかなりの助けになることは理解できますが、そこまで気が回らない、もしくはそんなことに興味がない不器用な劇団に好感が持てます。
一回見たら十分という感じで、次回作は見ないと思います。

ハンモック

夏の寝苦しさ対策として、去年から考えていたハンモックを購入しました。最初は単管パイプとジョイント金具でつり枠を作ろうかと考えたのですが、3〜4万円のお金がかかるので、タンスを三つ移動して柱にフックを取り付けました。寝心地は、想像していたものと全く違いました。勝手に、ウォーターベッドのようなふあふあ浮いているような寝心地をイメージしていたのですが、実際には自分の体重でネットが沈み込み、寝返りも簡単にはうてないような状態になります。頭やお尻など体重が重くかかるところは、ネットが深く沈むので、自分でその部分にネットを寄せ集めて沈まないような工夫も必要です。
ハンモックで寝て気持ちがよいのは、ゆっくりとゆりかごのように揺れてくれるところと、敷き布団と触れているところに汗がたまらないところです。

2012年8月8日水曜日

ロロ「父母姉僕弟君」

2012年8月7日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:三浦直之
出演:亀島一徳、島田桃子、望月綾乃、内海正考、田中祐弥、葉丸あすか、多賀麻美、篠崎大悟、山田拓実、小橋れな
前回の笑いの内閣が非常に後味が悪かったので、いっそう魅力的に見えたのかもしれませんが、台詞の一つ一つがさわやかで、とても好感が持てました。
家族という人間関係を再構築するために、忘れたことを思い出したり、再確認したりするストーリーです。
特に、台詞のさわやかというか素直さがすてきでした。
一部,理屈が不明なところもありましたが、それでも素直に聞けたのは、役者の力量と台詞の力だと思います。
残念だったのは、装置が上下の大きなベニヤの東西パネルと正面のベニヤパネルだったのですが、東西パネルに丁番がついているのが見えたりして、ラストにこの東西が閉まって、その間に正面パネルでかくされていたものが現れる大ドンデンがあるだろうことがわかってしまうことでした。
そこは、残念。
次回公演も、是非みたいです。

第16次笑いの内閣「非実在少女のるてちゃん」

2012年8月4日 13時開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:高間響
出演:伊集院聖羅、田中浩之、小林真弓、上蔀優樹、鈴木ちひろ、中西良友、由良真介、眞野ともき、藤井真理、合田団地、浪崎孝二郎、キタノ万里、髭だるマン、柾木ゆう、向坂達矢
始まったとたんに、来たことを公開しました。すぐにでも帰りたかったのですが、狭いアゴラ劇場でお客さんの視線を感じながら退出する勇気もなく、しかたなく最後までいました。
東京都の青少年健全育成条例にに反対することをテーマにした芝居ですが、推進派はヒステリックに、反対派は理路整然と心優しく描かれています。どちらの台詞もすべて、今までどこかで聞いたことがあるものばかり。それが学芸会のような芝居と、へたくそな歌で表されていきます。
本当に私の嫌いなパターンの芝居でした。
いいたいことは様々あるでしょうが、その前に芝居としておもしろくなければ、芝居にする必要があるとは思えません。あれなら、街頭演説でもした方がまだ多くの人に聞いてもらえるだけ、ましなんじゃないでしょうか?
芝居としては見るに堪えないし、プロパガンダだとしたら、多くの人に知られないので失敗だと思います。
見に行ったことを、心から後悔しています。

2012年8月3日金曜日

中屋敷法仁「露出狂」

2012年7月30日 19時開演 渋谷パルコ劇場
作・演出:中屋敷法仁
出演:江本時生、遠藤要、入野自由、玉置礼央、畑中しんじろう、磯村洋祐、板橋瞬谷、稲葉友、孔大維、遠山悠介、長島敬三、松田凌、間宮祥太朗、森崎ウィン
中屋敷法仁演出作品を見るのはこれで2回目ですが、早くも飽きました。ダイヤローグ、モノローグの区別なく、短いセンテンスを早口でしゃべりまくる。衣装は、ユニフォームのようにみんな同じ学生服で、誰が誰だか区別がつきにくい。何かに似ているなあと考えたら、AKB48でした。AKBも同じ衣装で、魅力を感じて中に入り込めば、大島優子だの前田敦子だの区別がつきますが、興味がなくて遠目から見たら誰が誰だか見分けるのは難しいです。今回も学生服で喋りまくられて、見分けがつかない中、一人目立っていたのは、柄本時生でした。「黄色い月」の時はわざとらしく耳障りだった台詞回しが、画一的なしゃべりの中では、魅力的に聞こえます。画一的なかっこよさや、安直な動きの中では、ださい独特な仕草が、とても新鮮に見えます。
柄本時生がうまいのは、自分とそのほかの画一的な役者達とを対立構造に持っていかず、あくまでマイペースで芝居を進めていくところです。それにより、画一の海でふわふわ浮いているように見え、他の役者が柄本を押し上げているように見えます。柄本家の血筋のなせる技でしょうか。
中屋敷演出の魅力は、そのスピードで観客を巻き込み、テーマをぶちこわしていく爽快感にあると思います。前回の「女人マクベス」では、その対象がシェークスピアのマクベスでであったわけで、あの大家の大作を清水もこみちもかくやと思えるスピードであらみじんに切り刻み、新しい料理のように見せました。今回の料理は失敗だと思います。もしくは、私が、その味付けに飽きただけでしょうか。
この芝居を見る前に、9月の「柿食う客」公演のチケットを予約してしまいました。
少し後悔しています。

2012年7月27日金曜日

ナカゴー「黛さん、現る」

2012年7月26日 20時開演 王子小劇場
作・演出:鎌田順也
出演:佐々木幸子、鈴木純子、墨井鯨子、田畑菜々子、鎌田順也、高畑遊、篠原正明、甘粕阿紗子、菊池明明、飯田こうこ
高校時代の友人3人が都電の駅で待ち合わせて、もう一人の友人の家に行こうとしている。
どうもその友人がストーカー被害にあっているらしく、それを助けに行くつもりなのだ。家に着くと、そこには、昔所属していた劇団の仲間(カムヰヤッセンの甘粕阿沙子実名そのまま)もいて、じつはストーカー騒ぎはあっさり解決していたことがわかる。高校時代の話から、同じ美術部で事故でなくなった親友だった子を思いだし、喪失感のあまり海に行って死にたくなる。なぜか全員にそれが感染し、海に行こうとするが、一人夜アルバイトのある子が、正気を取り戻し、金槌を使った大立ち回りで阻止しようとする。
延々と続いた立ち回りの後、全員痛さのあまり正気を取り戻し、悪魔払いをして亡くなった子の記憶を忘れる。
あらすじをまとめてみると、荒唐無稽というか行き当たりばったりというか、何が言いたいのかわかりません。
それよりも気になったのは、最初の駅での会話が、妙に間の悪い訥々とした調子で始まったことでした。
現実の会話は考えながらしゃべるので、おかしなところに間があったり、話が途中で飛んだりしがちなものですが、それを再現したのかもしれませんが、舞台上で聞くとリアルには聞こえず、へたくそに聞こえるだけでした。
金槌の立ち回りまでは、少ししらけた雰囲気が漂いつつ、無理矢理話が進んでいきます。
立ち回りで、一気にヒートアップして、おもしろかったです。
もしかしたら、この立ち回りがやりたかっただけなのかもしれません。
次回公演は、見に行かないと思います。

ハイバイ「ポンポン、おまえの自意識に小刻みに振りたくなるんだポンポン」

2012年7月25日 19時開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:岩井秀人
出演:荒川良々、岩瀨亮、安藤聖、平原テツ、川面千晶、坂口辰平、永井若葉、師岡広明、岩井秀人
「ある女」に続いて2回目のハイバイ観劇。前半が、ファミコンをする子供の話。後半が、うさんくさい劇団の稽古の話。前半の子供パートは、荒川良々の個人芸炸裂。後半は、岩井秀人のあやしい芝居爆発という、一度で二度おいしいともいえる芝居でした。
巷では、ハイバイの傑作といわれているらしいですが、どこが傑作なのかよくわかりませんでした。
私のハイバイの興味は、岩井秀人の演技にあることは変わりませんでした。

2012年7月15日日曜日

範宙遊泳「東京アメリカ」

2012年7月11日 14時開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:山本卓卓
出演:大橋一輝、熊川ふみ、杢本幸良、浅川千絵、斎藤マッチュ、高木健、田中美希恵、福原冠、山脇唯、緑茶麻悠
作・演出の山本卓卓がTwitterで、「芝居の方法論を語るよりも、舞台上で役者がどれだけ生き生きしているかの方が重要だ。」というようなことをつぶやいていたので、見に行きました。本番直前の小劇場演劇の稽古場風景。思いつきのように様々な要求を出す演出家。
理解できないながら何とかそれに応えようとする役者。
なぜか、遅刻ばかりする演出助手。
はたまた、演出家と女優ができていたり、理屈で役柄を理解しようとする新人がいたり。
実は、この芝居を見た後、ある劇団の稽古に立ち会う機会がありました。実際の演出家も、結構、わがままな要求を矢継ぎ早に出していて、おかしかったです。
役者が実名で登場するすることや、演出家役の役者がいることで、現実なのか虚構なのかだんだん曖昧になっていき、降板した役者の代役に海王星人が現れたり、作り物のレーザーガンで人が死んだりします。
現実と虚構の間をぬっていく脚本と演出はうまいと思いました。
しかし、悪い芝居の時に感じたように、「前に見た気がする」感が否めません。
次回公演を見るかどうかは、微妙なところです。

2012年7月11日水曜日

悪い芝居「カナヅチ女、夜泳ぐ」

2012年7月10日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:山崎彬
出演:吉川莉早、呉城久美、植田順平、森井めぐみ、大河原瑞穂、村上誠基、渡邊圭介、、大塚宜幸、池川貴清、畑中華香、山崎彬、宮下絵馬
悪い芝居という魅力的な劇団名に誘われて、観劇しました。芝居をしていない役者も舞台上にいて、必要に応じて様々な役を演じていく形で、芝居は進みます。道具も学校椅子と机が二つくらい。窓や、扉などは、必要なときに役者が持って出てきたりします。
役者の若さとチームワークの良さで、話はテンポよくどんどん進みます。
物語は、河童と人間の合いの子の主人公蛍は、気持ちが高揚すると体が宙に浮いて、空が飛べる。なぜだかわからないが、高校卒業と同時に東京に家出するが、12年ぶりに故郷に帰ってくる。しかし、東京の12年間はおろか、故郷でのこともほとんど記憶がない。親友らの助けを借りて記憶をたどってみると、どうも自分は4年前に自殺したらしい。記憶がないのもそのせいらしい。河童の力で過去に飛んで帰り、自殺しようとしている自分を説得しようとする。
うーん、実に話がめちゃくちゃですね。私が肝心なところを聞き逃していたのか、勢いに乗せられて見過ごしていたのか、よくわかりません。
とにかくラストは、東京に夜行バスで着いたときのモノローグを、テンション高く繰り返して唐突に終わる。
十分楽しかったし、おもしろかったです。しかし、こういう芝居って前に見た気がするんですね。
役者がいつも舞台にいる。(出番でない人が、楽屋に引っ込まない。)
舞台の転換も役者がやることで、芝居の中に積極的に取り込んでしまう。
過去の自分を助けに行く物語。
うまくいったり、いかなかったりしていた芝居を昔、具体的にどれといえないけれど,
さんざん見た気がする。
別に、似ていてもいいんです。でも、そんなことが気にならないくらいおもしろいわけではなかったことが、少し残念です。

2012年7月9日月曜日

可児市文化芸術振興財団「高き彼物」

2012年7月5日 14時開演 吉祥寺シアター
作・演出:マキノノゾミ
出演:石丸謙二郎・田中美里・品川徹・金沢映子・酒井高陽・細見大輔・藤村直樹
人生を生きるということに、正面から取り組んで真摯に考える良質な作品。物語の展開は、ユーモラスで涙もあり、ラストはハッピーエンドで終わる。誰も、なんの文句もつけないような芝居でした。私も感動しましたし、泣きました。
ただ一つ気になるのは、ラストの終わり方です。
昔、TVの中継録画で、マキノノゾミ作・演出、森光子主演で「本郷菊富士ホテル」を見ました。大正から戦前にかけて、いろいろな文豪や哲学者、政治活動家が集まった本郷の菊富士ホテルを切り盛りする女将に森光子が扮して好演しました。また、がらっぱちな伊藤野枝を高畑淳子が演じて、印象に残っています。
この芝居のラストも、終戦後、焼けてしまった菊富士ホテルの跡地の屋台に、森光子が現れて再建を誓うというハッピーエンドでした。その時も、このラストは不必要だ、ない方が芝居の印象がより深まると思った記憶があります。
「高き彼物」でも、主人公が昔、高校教師を辞めた理由(宿直室で寝てしまった男子生徒に欲望を覚えて思わずオナニーをしてしまったことを恥じ、その学生を深く傷つけたことを恥じて退職する。)が、娘の婚約者として現れたその生徒により記憶にもないこと、転校の理由も両親の離婚による物であることがわかり、主人公の暗い噂は打ち消されます。また、肝臓癌だとの思い込みも、膵臓炎であるとわかり、ハッピーエンドを迎えます。
しかし、これはハッピーなことでしょうか?
「自分の過ちを自分の物として、自分の一部として生きる。」が、信条の主人公にとって、自分の一部として10何年一緒に生きてきた想いが、一瞬にしてなくなってしまったのです。これは、かなりの不幸だと思うのですが。

オフィスコットーネプロヂュース「コルセット」

2012年7月4日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:前川麻子
出演:伊佐山ひろ子・明星真由美・松永玲子・有園芳記・白井圭太・十貫寺梅軒
伊佐山ひろ子といえば、40年前の日活ロマンポルノで、おっぱいが小さくてもエロい人はエロいことを教えてくれた人でした。でも、それから40年たっているし、もともと映像の人で舞台経験はほとんどないようですから、大丈夫だろうかと心配しながら見に行きました。
結果は、ぎりぎりセーフという感じでしょうか。緊張のせいか、年のせいか、台詞が落ち着かず、周りに対する反応も鈍いものでした。その分、残りの二人の女優が大車輪の活躍でストーリーを進めていくという感じでした。
話は、新任の美術教師(明星真由美)が生徒と無理矢理関係を持ったという噂が流れ、事実無根にもかかわらず、噂だけがエスカレートして周りが右往左往してしまう。犯人は、中年の国語教師(伊佐山ひろ子)で、関係を持った生徒に捨てられると同僚の英語教師(松永玲子)の息子に手を出したり、美術教師の日記をねつ造して夫に読ませ仲を裂いたり、以前には音楽教師にストーカーしてやめさせたりする、極悪非道ぶり。
でも、舞台上では、我関せずのマイペースを貫くという不思議な感じでした。それを犯人と誤解される美術教師を演じた明星真由美が、思ったことを口にすぐ出す天然が入ったキャラクター全開で演じて、カバーしきっていました。
あて書きの台本だと言うことなので、役者の力量、性格を考えて、この構成になったものと思われますが、この不思議なバランスを作り出した作・演出の前川麻子の才能はたいしたものだと思います。
ぎりぎりセーフな伊佐山ひろ子でしたが、ラストの「愛なんかいらない」という台詞には、ゾクッとする魅力がありました。あれだけでも、伊佐山ひろ子が出てきた価値があると思います。
前川麻子の次回作は、ぜひ、みたいと思いました。

2012年7月4日水曜日

ままごと「朝がある」

2012年7月3日 19時30分開演 三鷹芸術文化センター星のホール
作・演出:柴幸男
出演:大石将弘
チケットを予約した後で、苦手な一人芝居なことに気がつき、キャンセルもできないので気が進まないまま、見に行きました。
課題曲のコンクールを模したような形で、同じ台詞をさまざまなバリエーションで語っていきます。独特なアクセントがリズムを生み、時々挿入される映像や照明がアクセントにになって、飽きさせない工夫がされています。しかし、地味な前半は正直半分寝ていました。後半は、声も振りも音も大きくなり、何とか起きていられました。
そして、最後には歌ってしまうのですが、これが微妙に音程がずれていて、笑っていいのか盛り上がるべきなのか心が迷ってしまいます。
動きもだんだんダンスのようになってくるのですが、発声に従って動きがあるという関係が明確にわかるので、あまり気になりません。しかし、歌は、新しい次元に入ると言うことなので、あの微妙な下手さ加減がとても気になりました。
演劇の枠を広げるのか、演劇を飛び越えた表現をめざしているのかわかりませんが、とても明快な方法論があることはわかります。
それが、どれくらい有効なのかなわかりませんが。
次回公演も、ぜひ、見たいと思います。

2012年第二四半期観劇のまとめ

2012年4月から6月に見た芝居は、以下の通り。
4月7日 リジッター企画「もし、シ」
4月12日 離風霊船「SUBJECTION」
4月17日 柿食う客「絶頂マクベス」
4月24日 チェルフィッチュ「現在地」
4月26日 毛皮族「軽演劇」

5月1日 ナイロン100℃「百年の秘密」
5月2日 サンプル「自慢の息子」
5月15日 桟敷童子「軍鶏307」
5月16日 イキウメ「ミッション」
5月17日 はえぎわ「I'm here」
5月19日 コーヒーカップオーケストラ「チャンス夫妻の確認」
5月25日 バナナ学園純情乙女組「翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)」
5月30日 東京乾電池「恐怖ハト男」

6月1日 温泉キノコ「コアラちゃんの世界」
6月6日 タテヨコ企画「鈴木の行方」
6月13日 五反田団「宮本武蔵」
6月20日 ネオゼネレータープロジェクト「The Icebreaker」
6月21日 長塚圭史「南部高速道路」
6月26日 競泳水着「Goodnight」
6月30日 チャリT企画「12人のそりゃ恐ろしい日本人2012」

の、20本。相変わらずの貧乏の中、よく頑張ったと思います。
この中で、ベスト3は、
離風霊船「SUBJECTION」
サンプル「自慢の息子」
長塚圭史「南部高速道路」
の、3本でした。
離風霊船は、私がよく知っている昭和の小劇団のにおいがする劇団でした。
サンプルは、人間の自立と依存に関して新しい見せ方をしてくれました。
南部高速道路は、劇中の時間の流れがすてきでした。

次点は、柿食う客「絶頂マクベス」、はえぎわ「I'm here」と、バナナ学園純情乙女組「翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)」です。
柿食う客は、登場した女優さんがほとんどかわいかったです。
はえぎわは、よく理解できていないですが、そのさわやかさがすてきでした。
バナナ学園純情乙女組は、あのパフォーマンスをどこまで維持して走り続けられるのか、見届けたいと思います。



2012年7月1日日曜日

チャリT企画「12人のそりゃ恐ろしい日本人2012」

2012年6月30日 14時開演 座高円寺1
作・演出:楢原拓
出演:熊野善啓、松本大卒、内山奈々、雷時雨、前園あかり、川本直人、小杉美香、北側竜二、海原美帆、岡田一博、原扶貴子、浪打賢吾、飯塚克之、大石洋子、おくむらたかし、久保田南美、平田耕太郎、堤千穂、小寺悠介、小見美幸、室田淫人、丸山夏未、津田拓哉、下中裕子
小劇場を見ているとここに所属している役者がよく客演しているので、それなら一度本体を見てみるかと思って、高円寺に足を運びました。
結果は、約2時間の間、全くおもしろくありませんでした。あまりにもおもしろくなかったので、私の見方が間違っているのかと思い、ネット上で劇評を探してみました。この作品の劇評は見つかりませんでしたが、過去の作品の劇評によれば、「前面でコメディを演じつつ、背景にシリアスな問題を展開して作品に深みをもたせる。」のが、この劇団の持ち味のようです。
しかし、私の見たところ、コメディらしい台詞の繰り返しによるギャグはただ叫んでいるだけで少しも笑えないし、背景にあるべきシリアスな問題(今回は、林マスミのヒ素事件から裁判員裁判の問題、ホームレスの派遣村問題、女子高生のいじめ自殺事件など)は、前面に並列に提示されて、芝居がばらばらでまとまっていないことを明確にしているだけでした。
東京乾電池の芝居には、簡単におもしろくないと言わせないようなわけのわからない迫力がありましたが、チャリT企画のこの芝居は簡単におもしろくないと言い切れてしまいます。
次回公演は、絶対見ないと思います。

2012年6月28日木曜日

競泳水着「Good night」

2012年6月26日 14時30分開演 王子小劇場
作・演出:上野友之
皆本朋和、竹井亮介、吉野みのり、黒木絵美花、黒田聡志、澤田慎司、清水遙、篠原彩、皆本亮、瀬川英次、皆本純子、岡田あがさ、藤原けい、川村紗也、堺万里子、阿久澤菜々、平市朗、菅野貴夫、大林つかさ、大川翔子
つぶれかけのレストランで、昔アルバイトで働いていた女の子が転勤で北海道に行くので送別会が行われる。そこに現れるいろいろな人々。けんか別れしたオーナーの弟、兄二人を心配する妹。間違えて誘われた元予備校の講師。融資の返済を催促しにきた銀行員。
水道管の破裂事故が起こり送別会はお流れとなり、みんな様々な思いを抱えて、去ってゆく。
「日常のささやかな出来事を優しくすくい上げて、しっとりと提示してみました。」的な、最近よくある芝居でしたが、年寄りの私には、全く共感できずおもしろくなかったです。
いつも思うのですが、この手の芝居には、役者の力量と、演出のナイーブでしたたかな演出力がないかぎり、おもしろくなるのは難しいのではないでしょうか。
今回の芝居では、間違って呼ばれた元予備校講師が、無駄に明快な発声で現れる様々な問題に解答を与え、ストーリーを展開していくのは、ルール違反という気さえします。
次回公演は、見ないと思います。

2012年6月22日金曜日

長塚圭史「南部高速道路」

2012年6月21日 14時開演 三軒茶屋シアタートラム
原作:フリオ・コルタサル 構成・演出:長塚圭史
出演:安藤聖、植野葉子、梅沢昌代、江口のりこ、黒沢あすか、真木よう子、赤堀雅秋、梶原善、加藤啓、小林勝也、菅原永二、ジョンミョン、横田永司
原因不明の渋滞に巻き込まれ、高速道路の上で立ち往生する人々。なぜか渋滞はいっこうに解消されず、日常から切り離された人々は、高速道路の上で生きていくことを余儀なくされる。四方が客席の真ん中舞台で、美術と言えば、壁面に取り付けられた4本のナトリウム灯だけ。後は、役者が持つ車を表す傘と、バック類だけというほとんど何もない舞台で、繰り広げられる不思議な時間感覚の物語でした。
最初のうちは日常と同じ時間が流れているのに、知らないうちに少しゆっくりなどこか風通しのよいような不思議としか言いようのない時間の流れに、舞台も観客席も巻き込まれていました。それは、あまりにも自然な変化だったので、最後に渋滞が解消されて人々が動き出して、初めて自覚できるような繊細な感覚でした。まるで、うたた寝から覚めて夢を見ていたことに気づくような、少し幸せな感覚。
実におもしろい2時間の演劇体験でした。
長塚圭史、恐るべし。次回の長塚作品も、是非見たいと思います。

2012年6月21日木曜日

ネオゼネレイタープロジェクト2012「THE ICEBREAKER」

2012年6月20日 19時30分開演 下北沢「劇」小劇場
作・演出:大西一郎
出演:石丸だいこ、井上英行、猪股敏明、今井勝法、碓井将仁、木村健三、小林麻子、中山朋文、畑中葉子、保倉大朔、森口美樹、依田朋子
どうも自ら「B級」と名のる芝居とは、相性が悪いような気がする。「あひるなんちゃら」とか「コーヒーカップオーケストラ」と同じように、私には楽しめない芝居だった。
私の中では、「普通の芝居」である。特にうまいわけでもない演技と、普通な演出。私が見たいのは、荒削りかもしれないがそこにしかない個性、発想、情熱なのだと思う。
「普通の芝居」と書いてみたが、「普通の芝居」=「新劇」というイメージが私の中にはあるようだ。しかし、彼らの芝居は「新劇」ではないだろう。
正確には、私の中の「平均点以下の芝居」ということだ。「平均点以下」とは何かと言えば、要するに「おもしろくなかった」と言うことだ。
「B級SFホラー」と称しているが、最後に神様が出てきてオチをつける話は、SFではなくてファンタジーだと思う。
次回公演は、見ないと思う。

2012年6月16日土曜日

五反田団「宮本武蔵」

2012年6月13日 15時開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:前田司郎
出演:大山雄史、小河原康二、萩野友里、金子岳憲、久保亜津子、黒田大輔、前田司郎、岸井ゆきの
この劇団は、別の作品をCSのシアターTVで放映されたものを録画して見たら、全く理解できなかったので、一度、生で見なければいけないと考えたのが動機でした。
誰かが五反田団のことを、「脱力系口語体演劇」と呼んでいましたが、言い得て妙でした。「ぼそぼそといいわけじみたことを頑なにしゃべり続ける。」それが、この劇団の基本であり、すべてです。宮本武蔵も、時代劇であることも、たいした意味はありません。過去の作品も次回作もすべて同じだろうと思えてしまいます。
あの語り口に好感が持てれば楽しいのかもしれませんが、特に興味を持てなかった私には、この1本で十分という感じでした。
次回公演は、見に行かないと思います。