2012年10月30日火曜日

アトリエダンカン/デラシネラプロデュース「日々の暮らし方」

2012年10月27日 18時開演 池袋あうるすぽっと
原作:別役実
脚本:きたむらけんじ
構成・演出:小野寺修二
出演:南果歩、中山祐一朗、山田悠介、河合ロン、藤田桃子、矢沢誠、吉村和顕、小野寺修二
2週間以上続いた現場がいったん終わり、久しぶりの休みに見に行きましたが、全く集中できず、舞台を見ていても知らないうちに目を閉じて意識を失っていることがたびたびありました。
舞台は、芝居+ダンスという形で、ある日突然失踪すると夫に宣言された妻の意識と行動が展開されているようなのですが、ダンスがそれを説明するような、イメージを膨らませているような形で展開されているようでした。「ようでした。」と言うのは、私には全くそれが理解できず、ダンスになる必然性も感じられなかったからです。
私自身の疲れのせいか、感受性のなさのせいかわかりませんが、久しぶりに、全くおもしろくない舞台となってしまいました。
小野寺修二の名前は、首藤康之の「ジキルとハイド」の振付監修や、「叔母との旅」のステージングでよい評判を聞いて、期待して見に行ったのに残念です。

2012年10月14日日曜日

ブス会「女の道2012」

2012年10月11日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:ペヤンヌマキ
出演:安藤玉恵、もたい陽子、髙野ゆらこ、松本まりか、内田滋、尾倉ケント、仗桐安
とあるAVの撮影現場。その昔は、SMの求道者として知られていたが、こどもができて以来、金のために仕事をこなす三代目リカコ。昔のリカコを忘れられず尊敬するカエデ。巨乳と自在に操れるセルフ潮吹きを武器に業界を渡り歩くルミ。30歳にして、カムバックしたカスミ。今日の撮影の主役で、元アイドルのマリナ。
撮影が長引く中、女達の本音が次々と明らかになり、様々な人生模様が明らかになっていく。
ラストで、あくまでロリキャラを貫いたマリカが27歳の子持ちであることが明らかになる。もっともしたたかだったのが、ロリキャラでたよりなげだったマリカだったというオチ。
よくあるストーリー展開とはいえ、そこそこおもしろかったのですが、私が舞台で見たいものはなにかということを考えて直してしまう芝居でした。
私が舞台で見たいものは、たとえて言えば、フルスイングなんだと思います。その結果、ホームランなら万々歳。豪快な三振でも、まぐれの振り逃げでもかまわない。まず、フルスイングありきで、結果はまた、別の話だと思います。
この芝居のように、技巧的にファールで粘ったり、セーフティーバントで出塁を狙うようなやり方は好みではありませんでした。

2012年10月8日月曜日

鹿殺し「田舎の侍」

21012年10月7日 19時開演 下北沢駅前劇場
作:丸尾丸一郎
演出:菜月チョビ
出演:オレノグラフティ、丸尾丸一郎、菜月チョビ、山岸門人、橘輝、傳田うに、円山チカ、坂本けこ美、山口加菜、水野加奈子、鷺沼恵美子、浅野康之、峰ゆとり、近藤茶、丸山厚人、山本光二郎、美津乃あわ
この前に見た子供鉅人と同じ大阪出身の劇団で、きしくも演目も同じ時代劇。でも、この圧倒的なおもしろさの差は、何が違うのだろう。
相変わらずの、あふれんばかりのサービス精神。そして、それを確実に観客に伝えるノウハウ。殺陣もちゃんと振り付けて、あらん限りの力で演じる。そこがすがすがしく、おもしろい。初主演のオレノグラフティは、1本調子だが、ライバル役の山岡門人の屈折した役とあわせてみていれば、飽きることはない。
ゲストのコンドルズの山本光二郎は生臭坊主の役がぴったりだが、ダンスシーンで神妙にバレー風の振りで踊るのもおかしい。
いつもより、かぶり物が少なかったような気がするが、キンキラキンの大仏様のコスプレが妙にセクシーだったのでよしとしよう。

岩井秀人「ヒッキー・ソトニデテミターノ」

21012年10月7日 14時開演 渋谷パルコ劇場
作・演出:岩井秀人
出演:吹越満、古舘寛治、チャン・リーメイ、有川マコト、占部房子、小河原康二、田村健太郎、金原祐三子、岸井ゆきの
初めてハイバイ以外での彼の作・演出の芝居を見て、改めて彼の才能の素晴らしさに驚嘆しました。
昔、平田オリザの作品を青年団と、プロデュース公演で続けてみたことを思い出しました。青年団では、「東京ノート」と、「S高原から」、プロデュース公演は、円形劇場の「女子高生」と、今はなきシードホールで行われた題名も忘れてしまいましたが、緑魔子主演の芝居でした。結果は、プロデュース公演の圧倒的な勝ちでした。芝居の完成度、感動の深さ、一言で言えば、とてもおもしろい芝居だったのです。
特に「女子高生」は、現役女子高生を1ヶ月のワークショップの後、それを元に芝居を作るという試みで、その生々しくもすがすがしい等身大の女子高生の芝居に感動したことを今でも覚えています。
自分のホームである劇団の芝居よりも、外部であるプロデュース公演の方がよい芝居ができるのが不思議で先輩に尋ねたところ、「長くやっている劇団では、いろいろしがらみが生じて、それが芝居の足を引っ張ることがある。」と、言われました。今考えると、配役に関して言えば、劇団という狭い範囲での配役よりも、プロデュースでの方がよりベターな配役ができる可能性が高いと言うことでしょうか?
個人的なしがらみの少ない、役にあった役者を集めて、プロフェッショナルに演出して行ければ、よりよい芝居ができるということでしょか?
現実にはプロデュース公演にも、様々な問題があることはわかっていますが、この芝居はうまくいった例だと思います。ハイバイでは見えにくかった岩井秀人の考えや、感性がくっきり見えてきました。
岩井秀人は、引きこもりも、その家族も、きわめて客観的にどちらかに肩入れすることなく描いています。そのクールな台本を、おのおのの役者が、素直に、奇をてらうことなく演じていくことで、各自の苦悩や希望が明確に浮き彫りにされていく。素晴らしい舞台でした。
一つ残念なのは、主役の吹越満で、彼はこまかい動作(鼻をかく、うつむく、口に手を添える、など)をさも意味ありげに行う達人で、それがこの芝居では人物像をぼんやりさせるだけで、時には邪魔になっていたことでした。

2012年10月7日日曜日

子供鉅人「幕末スープレックス」

2012年10月4日 19時30分開演 阿佐谷ザムザ阿佐谷
作・演出:益山貴司
出演:億なつき、キキ花香、小中太、影山徹、益山寛司、益山貴司、林祐介、大歳芽里、ミスター、益山U☆G、一川幸恵、岡野一平、尾場瀬華子、ぎぃ子、クールキャッツ高杉、小嶋海平、小林欣也、小林紀貴,永沼伊久也、東ゆうこ、三ツ井秋、山田春江
自分の芝居に関する趣味趣向の限界を思い知らされた芝居でした。たとえば、次郎のラーメンは一部の人にとっては最高のラーメンであったとしても、私にとっては料理以前のものであり、味云々の前に下ごしらえもされていなくて、金を払って食べる気がしないものであるように、子供鉅人の芝居も、楽しむ気もしないタイプの芝居でした。
おのおのの役者の演技力はもちろんへたくそなものでしたが、情熱や、一生懸命さはわかります。しかし、それをうまく観客に伝えられない演出には、大いに問題があると思います。作・演出の益山貴司も役者として舞台に登場しますが、自分がやっていることに照れや、恥じらいがあるように見えました。それが悪い方に影響して、舞台の爆発力をなくしているようでした。
もちろん、私が年を取ったせいであのような舞台をおもしろいと感じなくなったこともあるでしょう。40年前なら、おもしろいと思ったかもしれません。
残念な出逢いだったと言うしかありません。

2012年10月4日木曜日

劇団本谷有希子「遭難」

2012年10月3日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:本谷有希子
出演:菅原永二、美波、佐津川愛美、松井周、片桐はいり
黒沢あすかの病気降板に伴い、主役が女優から男優(菅原永二)に変更されるという大胆きわまりない交代劇のあった「遭難」を見ました。情報不足で、交代自体も劇場でもらったパンフレットを読むまで知りませんでしたし、黒沢あすかについても全く知らなかったので、彼女が演じていたらどんな芝居になったのか、想像することもできません。
本谷有希子は、この芝居で新しい悪人を描きたかったのだと思います。自分が大好きで、自分の気に障るものは、盗聴や盗撮、ストーカー行為をしてでも排除していく。その行動が、周りの普通の人々の悪意を引きずり出していく。そんな極悪人を演じるには、菅原永二は優しすぎるというか線が細すぎると思います。
ラストシーンはすべての悪事がばれ、自殺未遂の生徒に電話越しに謝らせられた(具体的な台詞は聞こえません)のち、一人残って、隠し持っていたお菓子を食べるというものですが、ここで、「それでも私は今まで通り生きていく。」というふてぶてしさが見えれば、世界が一挙に広がったと思うのですが、私が感じたのは、そのまま死んでしまいそうな弱さだけでした。
たぶん、菅原永二の本来の人の良さが裏目に出たのだと思います。

2012年10月3日水曜日

はえぎわ「ライフスタイル体操第一」

2012年10月2日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:ノゾエ征爾
出演:滝寛式、川上友里、笠木泉、本多力、竹口龍茶、富川一人、踊り子あり、高松呼志響、鈴真紀史、町田水城、鳥島明、金珠代、井内ミワク、山口航太、萩野肇、竹田邦彦、加藤素子、佐藤賀数江、阪口美由紀、高山久子、美恵サンダ、渡邊敦子、宇津木昆台、立堀貴子、うちやまきよつぐ、石原裕鵬、ノゾエ征爾
「起きる、食べる、排泄する、寝る。これが人生の基本動作、これ以外に何をするかが人生。」と、結構、大上段に振りかぶったテーマの今回の芝居ですが、大上段に見えないところが、はえぎわの芝居のよいところだと思います。人生の何かが、様々なエピソードとして語られていき、それをつなぐように、おばあさんがバイクを押して歩いて行きます。そのすべてが、さらりと、優しく描かれていく。優しい風のような舞台でした。
今回の芝居には、公募した60歳以上の方が、多数出ていました。一部、埼玉ゴールドシアターや、楽塾に所属されている方もいるようですが、ほとんどは素人です。彼らをうまく誘導して、彼ら自身の人生がさりげなく舞台に現れるように構成したノゾエ征爾の演出力は、たいしたものだと思います。
公募グループの魅力に勝てなかったのか、出番が多くなった分だけ、芝居のテンポが遅くなり2時間が長く感じられたのは、少し残念ですが、それも許容範囲でしょう。
次回作もぜひ、見たいです。

2012年10月2日火曜日

音楽劇「ファンファーレ」

2012年10月1日 19時30分開演 三軒茶屋シアタートラム
脚本・演出:柴幸男
音楽・演出:三浦康嗣
振付・演出:白神ももこ
出演:坂本美雨、今井尋也、今村洋一、初夏、大柿友哉、北川結、重岡佐都子、清水久美子、名児耶ゆり、西尾大介、bable、柳瀬大輔、
前回芝居を見てから、2週間以上間が空いてしまったので、その間に勝手な期待が膨らんでしまっていました。Twitterに時々上がってくる稽古の進行状況などを見るたびに、何か素晴らしいものが見られるのではないかと、妄想を楽しむ自分がいました。
しかし、現実はそう甘くもなく、結構、残念な結果に終わってしまいました。
物語は、ファーレという「ファ」と「レ」しか歌えない女の子の成長の話。孤児のファーレは両親を見つけるため、うたうたいになるべく養い親のレッサーパンダ先生の元を飛び出し、音盗人として暮らすうちオーディションに参加する。やがて、そのオーディションの審査員のアロンアルファと結婚し、両親がすでになくなっていることを知るという、3幕ものです。
各幕ごとに違う女優が、ファーレを演じるのですが、幕が進むごとに魅力が半減してていくのがわかります。特に、第3幕は、歌手の坂本美雨がつとめるのですが、近くで見ると結構ブスで、芝居もできるわけでもなく、存在感がとても薄いです。
一番残念なのは、テーマソングで、ファーレが歌う都合上ファとレの2音で主旋律ができており、魅力的な歌とはとても思えません。
全体のアレンジは、ニューフォニュームなどを生かして、とても魅力的にできているのですが、そのアレンジ力をもってしても、テーマ曲の残念さは救えませんでした。
最後に、音響が台詞の時にリバーブをかけ過ぎて、台詞が聞き取りにくいのがとても気になりました。