今回のニューヨーク最後のミュージカルは、まだプレビュー中だった「Moulin Rouge! The Musical」でした。プレビュー中の作品については批評を発表しないというのがニューヨークの暗黙の了解だそうですが、もう正式オープンもしたし批評もぼちぼち出ているようなので、もう大丈夫でしょう。
見にいって一番びっくりしたのは、開場を待つお客さんの列の長さです。8th Ave.を1ブロック以上、人が並んでいました。この作品に対する期待の高さを伺わせます。

ムーラン・ルージュのクラブのセットは、全面透かし模様のインドの宮殿風に過剰な電飾がつき、どこかテレビのセットを思わせます。その前で往年のヒット曲がアレンジし直されて次々と流れて、そのたびに客席には軽いショックが流れ、時には笑いが起きます。1幕は明るく楽しい雰囲気で終始しますが、2幕は一転してシリアスになり、セットも書き割りを多用したリアリズムに近いものになり、往年のヒット曲の再アレンジという手法も真面目に愛を歌い上げるというシリアス路線になります。とは言え、主人公たちのアトリエの窓の外には、「ア・ムール」というネオンサインが宙に浮かんでいたりしますが。
この作品の基になったのはガイ・リッチー監督の映画「ムーラン・ルージュ」で、ヒット曲の再アレンジという手法も映画から踏襲しています。これは「Remix」という最近の音楽界で重要な概念を応用したものと考えられますが、「Hadestown」や「Oklahoma!」といった「アメリカーナ」という現在のアメリカの音楽シーンの最重要概念を哲学的に考察して生まれた作品に比べると、底が浅い感じがします。とはいえ、様々な曲を元の曲のニュアンスを残しつつ、作品に合わせて(時には2つの曲をつぎはぎして!)アレンジした才能と労力はすごいものがあります。
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