2012年4月7日土曜日

リジッター企画「もしも、シ」

2012年4月7日 14時開演 王子小劇場
作・演出 中島庸介
出演:工藤理穂、芦沢統人、川上ルイベ、石澤希代子、津和野諒、マリカ、丸石彩乃、中島康介、沖山麻生、西川康太郎、森脇洋平
大人計画の当日券の電話があまりにもつながらないのであきらめ、同時期に公演していたこの芝居を予約してみました。
物語は、「1995年1月17日、フルサトという名の少女が死んだ。その15年後、東京。舞台はテレマーケティング事業部。今日も主任のタカラとアルバイト達は電話の仕事をしていた。そんな中、嫌われ者のハジメは謎の少年と出逢う。少年に名はなく、心臓は止まっていた。ハジメは言う。『君は見えちゃまずい奴なんじゃないか?』その出逢いによって、ある記憶が蘇ったハジメは、ピストルを持ってタカラの元へ向かうのだった。タカラとハジメの過去とは。そしてその少年の望みとは。」(公演チラシの裏面より)
まあ、こういったストーリーが華麗なレトリックに満ちた台詞で語られるわけです。私は、若い頃見た寺山修司を思い出しました。もっと若い人なら、野田秀樹みたいと言うかもしれません。
でも、その華麗なレトリックに満ちた台詞の洪水の果てにくる結論は、「フルサト/故郷を忘れるな」というあまりにもストレートなわかりやすいものなのです。その結論なら、もっとふさわしい演出、演技があったと思います。華麗なレトリックに満ちた台詞の芝居のエンディングは、華麗に決めていただきたいものです。
この芝居を見て、なぜ寺山修司があまり好きでなかったのか思い出しました。それは、「華麗なレトリックに満ちた台詞」が成立するにはそれを支える役者の肉体が必要なのに、当時の天井桟敷の役者はへたくそでみていて恥ずかしくなるほど空回りしているだけだったからです。役者が台詞を理解しているとはとうてい思えず、役者の演技をすべて無視し、台詞の意味だけに集中して寺山修司のイメージを追いかけていたような気がします。
この芝居の役者達は、昔の天井桟敷よりははるかにうまく、決められた動きを無難にこなし、指示された感情で台詞を言って、芝居をしていました。でも、それがかえって操り人形のように見えて、うすら悲しい気持ちにさえなりました。
この団体の次回公演を見に行く気にはならないと思います。
「チャレンジ観劇シリーズ」第九弾も、残念な結果となりました。

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