2012年7月5日 14時開演 吉祥寺シアター
作・演出:マキノノゾミ
出演:石丸謙二郎・田中美里・品川徹・金沢映子・酒井高陽・細見大輔・藤村直樹
人生を生きるということに、正面から取り組んで真摯に考える良質な作品。物語の展開は、ユーモラスで涙もあり、ラストはハッピーエンドで終わる。誰も、なんの文句もつけないような芝居でした。私も感動しましたし、泣きました。
ただ一つ気になるのは、ラストの終わり方です。
昔、TVの中継録画で、マキノノゾミ作・演出、森光子主演で「本郷菊富士ホテル」を見ました。大正から戦前にかけて、いろいろな文豪や哲学者、政治活動家が集まった本郷の菊富士ホテルを切り盛りする女将に森光子が扮して好演しました。また、がらっぱちな伊藤野枝を高畑淳子が演じて、印象に残っています。
この芝居のラストも、終戦後、焼けてしまった菊富士ホテルの跡地の屋台に、森光子が現れて再建を誓うというハッピーエンドでした。その時も、このラストは不必要だ、ない方が芝居の印象がより深まると思った記憶があります。
「高き彼物」でも、主人公が昔、高校教師を辞めた理由(宿直室で寝てしまった男子生徒に欲望を覚えて思わずオナニーをしてしまったことを恥じ、その学生を深く傷つけたことを恥じて退職する。)が、娘の婚約者として現れたその生徒により記憶にもないこと、転校の理由も両親の離婚による物であることがわかり、主人公の暗い噂は打ち消されます。また、肝臓癌だとの思い込みも、膵臓炎であるとわかり、ハッピーエンドを迎えます。
しかし、これはハッピーなことでしょうか?
「自分の過ちを自分の物として、自分の一部として生きる。」が、信条の主人公にとって、自分の一部として10何年一緒に生きてきた想いが、一瞬にしてなくなってしまったのです。これは、かなりの不幸だと思うのですが。
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