2013年2月28日 14時開演 すみだパークスタジオ
原作:つかこうへい
脚本・演出:横内謙介
つかこうへいさんとは、つかさんが有名になる前、早稲田の劇団と一緒にやっている時に、その劇団に参加していた高校の同級生の誘いで手伝いに行ったのが、最初の出会いでした。まだ、「熱海殺人事件」の前で、「郵便屋さん、ちょっと」をやっている頃でした。それがきっかけで、私は、舞台照明の世界に足を踏み入れました。途中、いろいろ回り道をしたけれど、今、また、照明の仕事をしています。つかさんとその劇団の人々には、芝居について色々教えてもらいました。
その後、仕事が忙しくなってつかさんの舞台を見ることもなく、今日、40年以上ぶりにつかさんの芝居と再会しました。
40年ぶりのつか芝居は、思っていた以上に面白く楽しいものでした。年をとったせいで、役者や観客のエモーションを無理やり高めるために大音量で鳴り響く音楽は、少々辛いものがありましたが、あっという間の2時間15分でした。現代にあのような形でつか芝居を再現できた横内謙介の才能はたいしたものです。
つかさんの芝居は、「やせ我慢の美学」だと思います。惚れた女のためにすべてを打ち捨てて討ち入りにいく。忠臣蔵では、討ち入りを企むものとして井原西鶴と中村座の座長七五郎が描かれていますが、討ち入りを悪用する黒幕というより、討ち入りの動機を説明するという役目にしか見えません。つかさんの力点は、「やせがまん」におかれています。
他に面白かった点としては、井原西鶴役の役者が、どう見ても漫画美味しんぼの「海原雄山」にしか見えなかったこと。本人も完全に意識していると思います。また、殺陣が、すごく良くできていて、様式美の領域まで達しているように思えました。最近見た殺陣の中では、秀一でした。
前から思っていたことですが、つかさんのあの長台詞のルーツは、大衆演劇の「見得」にあることを、再確認しました。逆説的にいえば、長台詞を成立させるために、日本人の共通の美学である「やせ我慢」を持ち出し、それを煽るために大音量の音楽を流すと言えるかもしれません。
これだけ楽しかったのですが、、もっとつかさんの芝居が見たいとはあまり思いませんでした。昔のガールフレンドに久しぶりに再会して楽しかったが、よりを戻したいとは思わなかっということなのかもしれません。
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