21012年10月7日 14時開演 渋谷パルコ劇場
作・演出:岩井秀人
出演:吹越満、古舘寛治、チャン・リーメイ、有川マコト、占部房子、小河原康二、田村健太郎、金原祐三子、岸井ゆきの
初めてハイバイ以外での彼の作・演出の芝居を見て、改めて彼の才能の素晴らしさに驚嘆しました。
昔、平田オリザの作品を青年団と、プロデュース公演で続けてみたことを思い出しました。青年団では、「東京ノート」と、「S高原から」、プロデュース公演は、円形劇場の「女子高生」と、今はなきシードホールで行われた題名も忘れてしまいましたが、緑魔子主演の芝居でした。結果は、プロデュース公演の圧倒的な勝ちでした。芝居の完成度、感動の深さ、一言で言えば、とてもおもしろい芝居だったのです。
特に「女子高生」は、現役女子高生を1ヶ月のワークショップの後、それを元に芝居を作るという試みで、その生々しくもすがすがしい等身大の女子高生の芝居に感動したことを今でも覚えています。
自分のホームである劇団の芝居よりも、外部であるプロデュース公演の方がよい芝居ができるのが不思議で先輩に尋ねたところ、「長くやっている劇団では、いろいろしがらみが生じて、それが芝居の足を引っ張ることがある。」と、言われました。今考えると、配役に関して言えば、劇団という狭い範囲での配役よりも、プロデュースでの方がよりベターな配役ができる可能性が高いと言うことでしょうか?
個人的なしがらみの少ない、役にあった役者を集めて、プロフェッショナルに演出して行ければ、よりよい芝居ができるということでしょか?
現実にはプロデュース公演にも、様々な問題があることはわかっていますが、この芝居はうまくいった例だと思います。ハイバイでは見えにくかった岩井秀人の考えや、感性がくっきり見えてきました。
岩井秀人は、引きこもりも、その家族も、きわめて客観的にどちらかに肩入れすることなく描いています。そのクールな台本を、おのおのの役者が、素直に、奇をてらうことなく演じていくことで、各自の苦悩や希望が明確に浮き彫りにされていく。素晴らしい舞台でした。
一つ残念なのは、主役の吹越満で、彼はこまかい動作(鼻をかく、うつむく、口に手を添える、など)をさも意味ありげに行う達人で、それがこの芝居では人物像をぼんやりさせるだけで、時には邪魔になっていたことでした。
0 件のコメント:
コメントを投稿