2013年12月30日月曜日

ポップンマッシュルームチキン野郎「銀色の蛸は五番目の手で握手する」

2013年12月27日 19時30分開演 新宿シアターサンモール
作・演出:吹原幸太
出演:加藤慎吾、小岩崎小恵、サイショモンドダスト★、高橋ゆき、野口オリジナル、渡辺裕太、杉岡あきこ、井上ほたてひも、宮原将護、NPO法人、吹原幸太、CR岡本物語、今井孝裕、山口航太、青山雅士、増田赤カブト、横尾下下、加藤チャック、村上亜利沙、仁田原早苗、小林ピヨ美、田坂啓太、辰巳晴彦、内野聡夢
2回目の観劇でした。1回目の観劇記録を読み返したら、「2度と見ない」と書いてありました。それにもかかわらず、見にいったのはチラシに書いてあった「金のコメディフェスティバルで優勝した」という言葉のせいでした。我ながら権威に弱いと思いますが、いつ面白い芝居をするかわからない若い劇団の場合には、プラス要素の評価は積極的に受け入れていかないて見にいかないと、面白い芝居を見逃す恐れが多分にあります。
そう思って2回目を見にいきましたが、結果はやはり残念なものでした。
当日パンフレットを読むと作・演出の吹原幸太はアニメやテレビの脚本、それに小説も書いているようですが、そのせいか、荒唐無稽な設定をうまくまとめる構成力はあるのですが、肝心なテーマ、「自己犠牲」を新しく魅力的に見せるほどの筆力はありませんでした。最近、新しい感性の芝居が見たいという欲求が増している私にとって、見たくない種類の芝居でしかありませんでした。
新しい感性が感じられるか、使い古されたテーマなら、それを面白く見せてくれるだけの演出力、演技力がある芝居を見たいのです。
結局、2回目の観劇後の感想は、「やはり、だめだ。もう見る必要はない。」です。

2013年12月15日日曜日

北村想作「グッドバイ」

2013年12月13日 19時開演 三軒茶屋シアタートラム
作:北村想
演出:寺十 吾
出演:段田安則、蒼井優、柄本佑、半海一亮、山崎ハコ、高橋克実
その昔、傑作戯曲「寿歌」を書いた北村想の新作と言うことで、見にいきました。沙汰ートラムとはいえ、一月公演のなかばだというのに客席は満員なのは蒼井優のおかげでしょうか。
本も役者も特に目立って悪いところない休憩なしの2時間でした。こういう可もなく不可もない芝居を見ると、私が見たい芝居は、「新しい芝居」なんだと気づかされます。「わけはわからないが面白い」、「無我夢中で、我を忘れる」そんな観劇体験をしたいのだと、そんな芝居を求めて、劇場に通っているのです。だからTwitterの「面白い」につい、騙されてしまうのです。そんな反省をさせてくれる芝居でした。

2013年12月13日金曜日

モダンスイマーズ「死ンデ、イル。」

2013年12月12日 19時30分開演 下北沢ザスズナリ
作・演出:蓬莱竜太
出演:古山憲太郎、津村知与支、小椋毅、西條義将、坂田麻衣、松本まりか、西井幸人、宮崎敏行、高田聖子
前作「楽園」からずいぶん間があきましたが、女優を1名、劇団に加えての公演でした。派手なところはないですが、手堅い構成のしっかりした脚本がこの劇団の強みです。
演出面では、主役の新加入女優の台詞をほとんどプロジェクターから投影することで、彼女の負担を減らし、演技の自由さを確保しているように見えました。
その甲斐あってストーリーの流れがスムーズになり、主人公のイメージも十分広がっていました。
いずれにせよこの劇団の肝は、作・演出の蓬莱竜太であることは代わりありません。

2013年12月12日木曜日

官能教育「三浦直之(ロロ)×堀辰雄「鼠」

2013年12月10日 19時30分開演 六本木音楽実験室・新世界
脚本・演出・構成:三浦直之
出演:望月綾乃、三浦直之
その昔自由劇場だった場所が知らないうちに音楽実験室・新世界としてオープンしていました。内装は最小限の改装という感じで、壁、天井を白く塗り、ステージとオケピット、バーカウンターを作っただけでした。全体に天井が高くなっていたので、少し床面を掘り下げたのかもしれません。
そんな新世界でロロの三浦直之による」朗読劇を見てきました。演劇評論家の徳永京子による「官能教育」というシリーズの一環で、演劇人に自分がエロい思う小説を朗読してもらうというモノでした。知らなかったのですが、過去に私のお気に入りのFUKAI Produceの糸井幸介のやっていたようです。
朗読自体は1時間程度で、出演者自らスタンドライトをつけたり、マイクのセットをしたりという手作り感満載のものでしたが、内容はうまく整理できておらずわけのわからないものでした。この公演で一番面白かったのは、produce lab 89.comにのせた三浦直之の「童貞宣言」ともいうべき文章でした。わけがわからないなりに三浦直之が変わろうとしていることだけは、はっきりわかりました。

小松台東「デンギョー」

2013年12月7日 19時30分開演 高田馬場ラビネスト
作・演出:松本哲也
出演:小林俊祐、永山智啓、中田麦平、尾倉ケント、小笠原健吉、塙育大、竹岡真悟、石澤美和、大竹沙絵子、佐藤達、松本哲也、緑川陽介
劇団名は、「こまつだいとう」ではなく、「こまつだいひがし」と読むそうです。
「デンギョー」というタイトルだけで見にいきました。デンギョーとは、電気工事業者の略です。社長が入院している傾きかけた電気工事業者の職人詰め所を舞台に、義理と人情と過酷な競争がリアルに描かれていきます。笑ったのは、オープニングで職人全員が一斉に缶コーヒーを飲むところでした。職人さんは本当に缶コーヒーが好きでよく飲みます。
昔、私が通っていた建築現場では、缶コーヒーのプルリングを集めて、施設に車いすを2台寄付できたほどでした。
電気工事の内情がよくかけているし、職人達の人物像もリアリティにあふれているので、作者は電気工事業で働いていたことがあると思います。
しかし、私にとっては今更こんな芝居を見せられても意味がありませんでした。単なる「あるある」ものを見ているようでした。

ブラジル「性病はなによりの証拠」

2013年12月7日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:ブラジリィー・アン・山田
出演:辰巳智秋、西山聡、諌山幸治、印宮伸二、堀川炎、金沢涼恵、佐々木千恵、小川夏鈴
2012年の吉川威史 PRESENTS「素晴らしい1日」の脚本を書いたブラジリィー・アン・山田自身の劇団での公演を見ました。「素晴らしい1日」の時に脚本が面白いと思って、ずっと、本人の演出も見たかったのです。
結論的にいえば、「本は達者だが、演出はいまいち。」といったところでしょうか。
特に、最後に二人だけが生き残ってからの幻覚シーンはいただけませんでした。うまい
オチが考えつかず、開き直って松田聖子というのがみえみえで残念です。

城山羊の会「身の引きしまる思い」

2013年12月4日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:山内ケンジ
出演:岸井ゆきの、石橋けい、ふじきみつ彦、成瀬正太郎、原田麻由、岩谷健司、島田桃衣、KONTA
最初に城山羊の会を見た時にこれは不条理劇だと書きましたが、それは私の勘違いだったようです。2回、3回と見ていくうちに、山内ケンジが描きたいのは人間の意識がふとずれる、いわゆる「魔が差す」瞬間なのではないのかと思うようになりました。
亡くなった夫を愛していたはずなのに、初めて会った怪しげな男に心を奪われる。そして、結婚までしてしまう。周りからも認めらる常識的な生き方から、突然スイッチが切り替わったように、別の世界にはいってしまう。そんな瞬間を舞台上に表すことに興味があるように見えます。
そんな役目を負わされて舞台に登っている役者たちは、皆少しだけ自信なさげに見えます。ただ、芝居をするだけでは許されないことが、プレッシャーになっているのでしょうか。その不安が周りを探るような芝居として表れ、いわゆる大人の会話的な雰囲気を醸し出して、城山羊の会の芝居らしさを作っているような気がします。
今回の芝居の最大のポイントは、三鷹市芸術文化センター職員の森元さんでした。彼は、前説として現れ、一般的な諸注意を述べた後、実は、城山羊の会の三鷹市芸術文化センターでの最初の公演の時、自分はすぐ殺される夫の役で出演したと話出します。そこに銃声の効果音。森元さんはまたもすぐ殺される役で出演していたの
でした。その上、ラストでは亡霊となって現れ、そのまま終演の挨拶までしました。
最近見た芝居の導入部としては、最も面白いものでした。

2013年12月4日水曜日

リミニ・プロトコル「100%トーキョー」

2013年11月30日 15時開演 池袋東京芸術劇場プレイハウス
作・構成:リミニ・プロトコル(ヘルガルド・ハウグ、シュテファン・ケーギ、ダニエル・ヴェッツェル)
演出:ダニエル・ヴェッツェル
出演:統計に基づき選出された100名の人々
東京都の統計に基づいたいろいろな年齢、性別、国籍、住所の人が100名集められ、「イエス、ノー」で答えられる簡単な質問に答えていくことで、今のトーキョーを浮かび上がらせようとする試み。
世界各国で上演され、様々な反響を巻き起こしてきたそうですが、ここトーキョーではいかに。
結論を言えば、新鮮でとても面白かったです。舞台上で繰り広げられる普通の人々(役者ではない)の生き生きとした様に、涙さえ流しました。
そして、上演中ずっと、日本人と欧米の人の差について考えていました。外国のパフォーマンスアートを(私の場合は、ほとんどアメリカのものですが)見ると、「くどい」、「しつこい」、「このシーンはわかったから早く次のシーンにいってほしい」と思うことがよくあります。なぜあんなにしつこいのか長年疑問だったのですが、この芝居を見て少し理由がわかったような気がします。
日本人は、「一を聞いて十を知る」ことを喜ぶ傾向があると思います。芝居でもそれはよくあって、短い印象的なシーンをつなげて言いたいことを表現しがちだと思います。少し丁寧に追いかけていくと、説明的だと言われたりします。それに比べて、欧米人は、はるかに論理的です。「1+1=2」というような公理から始まって、理屈を組み立て、「だから、結論はこうです」という形が身についているようです。
その過程を日本人の私は、「くどい」、「しつこい」と感じてしまうのでしょう。
今回の公演のポイントは二つです。一つは、統計に基づいて選出されたという客観性(統計学的には、900万人に対して100人では、サンプル数が少なすぎて正しい統計とはいえないと思いますが、これは学問ではなくて演劇なので問題にならないと思います)、もうひとつは選出された人が次の人を紹介していくという関係性。これにより、見ている人は100人の人を一つの集団として見ることがたやすくなります。出演者同士にも連帯感が生まれているようでした。
このように、客観性とシンパシーを与えられた人々に、様々な質問を与え、答えさせる。
あたかも
単純な論理を繋いでゆき、その結果、単純な足し算の結果をはるかに上回る感動を作り上げる。
極めて実験的な作品と言われつつも、実は欧米的な演劇の作り方を忠実に行っていった結果の作品だと思います。


2013年11月30日土曜日

マームとジプシー「モモノパノラマ」

2013年11月29日 19時30分開演 横浜芸術劇場大スタジオ
作・演出:藤田貴大
出演:石井亮介、伊東茄那、荻原綾、尾野島慎太朗、川崎ゆり子、成田亜佑美、中島広隆、波佐谷聡、召田実子、吉田聡子
この劇団独特の語り口も回を重ねていくうちに気にならなくなって、内容がすんなり入ってくるようになりました。又、今回は四方客席のため、同じシーンを視点を変えて繰り返す手法も四方の客へのサービスともなって、有効性が上がっていました。
今回のテーマは「生きる」でした。猫のモモの生涯が周りの人間の生死と平行して語られていきます。けんかしたり、恋愛したり、自殺してしまったりする人間の傍らで、「ただ、生きている。」だけの猫。じんわりと、感動が押し寄せてくるいい作品でした。
少し気になったのは、途中で役者のうちの何人かが感情オーバーになって、涙声になってしまうことでした。個人的には、クールな視点をキープした方がこの演出にはふさわしいという感じがします。前はそれができていたのに、今回できなっかたのはなぜでしょう。演出の考え方に変化があったのか?役者の質の問題でしょうか?
少し、
気になります。

2013年11月29日金曜日

子供鉅人「ハローヘル!!!」

2013年11月28日 19時30分開演 池袋シアターグリーンビッグツリーシアター
作・演出:益山貴司
出演:影山徹、キキ花香、億なつき、益山寛司、小中太、岡野一平、小嶋海平、クールキャッツ高杉、山西竜矢、三ツ井秋、地道元春、山本大樹、小林欣也、益山U☆G、松原進典、ミネユキ、永沼伊久也、花本ゆか、東ゆうこ、藤澤賢明、PIKA☆、呉山夕子、BAB、グレコワ・タテュー、デグルチーニ、益山貴司
前の日に見たトリコロールケーキがあまりにひどかったので、それと無意識のうちに比べてしまうせいか面白く見られました。
初めて見たときは、「芝居が派下手だが、熱意と勢いはある。ただ、その方向がばらばらでうるさいだけだ。」というような印象でしたが、今回は勢いの方向性がそろってきて見やすくなっていました。
前回の記録を読み返してみたら、「まったく、受け付けない。」とまで書いてありました。今回、そんな拒否反応が出なかったのは、脚本、演出が整理されて見やすくなっていたからだと思います。
役者的には、大鬼役のでかい外人のバリトンサックス吹きとサタン役のわけのわからない人(多分、歌手)が、役者には出せない存在感で面白かったです。

2013年11月28日木曜日

トリコロールケーキ「ギョーザ丸、出港す」

2013年11月27日 20時開演 新宿眼科画廊・スペース地下
企画・原案:鳥原弓里江
脚本・演出:今田健太郎
出演:鳥原弓里江、古田彩乃、今田健太郎、藤野帆奈美、河村美沙、川口雅子、長谷川一樹、南綾希子、モリサキミキ
久しぶりに全く面白くない芝居を見てしまいました
。このところ、若手女性作・演出家の芝居で「理解できない」作品が何本か続いていましたが、それらは「何かありそうだが、それがなんなのか私には理解できない=言葉にできない」ものでした。
しかし、この芝居は違います。まったくなにもありません。演技は超へたくそで、高校演劇にも劣るレベルですし、演技の下手さをカバーする熱意も全く感じられません。ストーリーはシュールではなく、単なるご都合主義しかすぎず、そのご都合主義も苦笑すらできないものでした。役者も可愛い女の子やかっこいい男子が一人もいないので、芝居中目を開けていることすら辛い有様でした。
これだけいいところがないと、かえってあっぱれといえるのかもしれません。
私も大きな声で、「二度と見ない。」ときっぱり言い切ることができます。

2013年11月25日月曜日

サンプル「永い遠足」

2013年11月23日 14時開演」にしすがも創造舎
作・演出:松井周
出演:久保井研、野津あおい、羽場睦子、坂倉奈津子、古屋隆太、奥田洋平、稲継美保、坂口辰平
当日パンフレットによると、オイディプス王を下敷きにした家族の変態の物語とのことです。この変態とは、いわゆる異常者のことではなく、周囲の状況により変わっていく人という意味だと思います。母親との間にできた娘は養子に出され、やがてそれを知らされて当然のようにぐれます。何日も家に帰らず、その間売春したりもします。養父母はそんな娘にどう接してよいかわからず、おかしな指導者に言われるままに性転換したり、犬になったりします。ラストで真実を知った父親は、オイディプスの話のとおり自分の両目をつぶしてしまうのですが、この意味が私にはよくわかりません。目をつぶすと言うのは、世界の否定でしかないと思います。オイディプスは世界の汚れを取り除くためと称して様々な悪行をなし、最後に本当の汚れが母親と姦通した自分であることを知るわけです。その自分を否定するのではなく、世界の方を否定するのはなぜでしょう。一度、ちゃんと原作を読まなければいけません。
電気自動車の荷台に張り出し舞台を乗せて、ぐるぐる回りながら転換していく装置は紙芝居みたいで面白かったです。

2013年11月20日水曜日

イキウメ「片鱗」

2013年11月15日 19時開演 青山円形劇場
作・演出:前川知大
出演:ハマダ信也、安井順平。伊勢佳世、盛隆二、岩本幸子、森下創、大窪人衛、清水葉月、手塚とおる
イキウメにおける前川知大のテーマはこのところ一貫して、「集団に異物が入ってくることにより起こる集団の変化」です。その異物が、宇宙人だったり、モノリスだったり、超能力者だったするのですが、焦点は「集団の変化」にあります。そして今回はホラーと言うことで、ゾンビというか化け物が現れ、人にとりつきやがては死んでしまうということになっています。原因は引っ越してきた少女で、彼女の初潮が始まって以来住んでいる町内にゾンビが現れるようになり、それが原因でその家族は引っ越しを繰り返していたのでした。
道具立ては完全にホラーですが、ホラー的な脅かしの演出があるわけではないので少しも怖くありませんし、集団の変化についても町内がゴーストタウン化してしまうだけなので、印象に残るシーンもありませんでした。名前や人間関係、職業などの設定がしっかりしていることからくる構成力はさすがイキウメという感じですが、結果としては不満がのこる舞台でした。
今回、もっとも印象に残ったのは、装置でした。9尺×9尺の4尺高の二重が四つ、3尺ずつ離れておいてあるだけの装置ですが、二重が各家庭の部屋として使われ、間の3尺の通路が人々の行き交う道として設定されていました。各家がどの二重と決めないでシーン、シーンで役者が3尺幅を飛び越えて展開していくスピード感は快感でした。

2013年11月12日火曜日

Carne 「売春捜査官」

2013年11月8日 19時30分開演 下北沢 OFF - OFF シアター
作:つかこうへい
演出:黒川麻衣
出演:野口かおる、なだぎ武、植木潤、宮下雄也
気になる女優の一人である野口かおるが主役の舞台ということで見にいきました。いつものはちゃめちゃさが主役と言うことで、どうなるのかという興味が一番にあったのですが、とりあえず主役の役目は果たしていたとはいえましょう。
この芝居は、主役の木村伝兵衛が強面やしおらしさやずるがしこいときなどをめまぐるしく変えていくことで緩急をつけ、話を進めていく構造なので、野口もはちゃめちゃよりは、しっかり芝居をして主役のつとめを果たしていました。それはそれで面白かったのですが、私が見たい野口かおるとは違ったようです。はちゃめちゃなまま、危うい綱渡りで話が進んでいく。そのスリルこそが野口かおるだと思うのです。あの芝居なら、もっとうまくやれる役者がきっといることでしょう。そうではなく、野口かおるにしかできない木村伝兵衛が見たかったのに少し残念です。
植木潤は絶妙な距離感を保って、はげでホモの警官を演じていました。それに比べて、なだぎ武は芝居が堅く、一本調子なのが気になりました。なだぎと野口の距離がもっと柔軟であれば、野口の芝居ももっと面白くなったと思います。

2013年11月6日水曜日

鳥公園「甘露」

2013年10月29日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:西尾佳織
出演:浅井浩介、鳥島明、笹野鈴々音、武井翔子、森すみれ、伊藤俊輔、実近順次
忙しくて鳥公園の芝居を見てから感想を書くまでに、かなり間が空いてしまいました。暇があるときには、内容を思い出して括弧とを頭の中でまとめていたつもりでしたが、時とともに、ここ最近見た若手の女性脚本・演出家の作品との比較で考えるようになりました。いわゆる芝居に一番こだわっているのが、シンクロ少女、芝居から距離があるのが、快快、鳥公園はその間にいるような気がします。
その感覚は特に舞台美術によく表れていて、舞台美術家の考えたエッシャーの階段のように見せたかったであろう舞台美術のシンクロ少女は、成功しているとはいえませんが、十分芝居の範疇にあると思われます。6畳間を四方の上から見下ろすという環境を設定することが一番の目的だと思われる舞台美術の快快は、芝居的な感覚よりも現代美術の日常の中に非日常を持ち込んで、そのインパクトを得ることに満足する感覚に非常に近い気がします。鳥公園の舞台美術は、奈落をセットの一部として使うためにわざわざ通常の客席と舞台を逆転させて使い、パイプ組の二階屋を立てて、その奥の客席部分は公演という感じでベンチと街灯を配するというものでした。セットの考え方は芝居的でしたが、出入り口の処理をしないとか客席壁面がそのままであるなど、ディティールの処理に気がゆかないところは、舞台的というより
美術的な感じがしました。

2013年10月28日月曜日

Golater

久しぶりに使い込んでみたいと思わされるiPhoneアプリにであったので、メモ代わりに書き残しておきます。
「Golater」はEvernoteのノートのうち行ってみたいと思うところのタグに、「g:/」を頭につけて住所を書いておくと、アプリ内の地図にピンを立ててくれるソフトです。出かけた先でアプリを開くと、近くの行ってみたいところを教えてくれるわけです。
じつは3年ぶりくらいに来年の5月か6月にニューヨークに行ってみようと考えています。その時にこれがあれば、長年集めてきた細かいニューヨーク情報を簡単に活用できると思ったのです。
いざやってみると簡単にはいきませんでした。まず最初に、タグ欄に「g:/」と入力してからそのあとに住所をペーストしていったのですが、Evernoteが勝手にタグを「g:/」と「住所」に分割してくれます。しかも住所の途中にカンマが入っていると、そこでもタグが分割されてしまいます。調子よくコピーペーストを繰り返して、アプリの地図を見てみるとほとんどピンが立っていません。使えないのかと思って、1週間ほどほっておいたのですが、暇なときにピンが立っているノートと立っていないノートののタグを比べて、やっとタグの分割に気がつきました。
仕方がないので、いちいちステッキーズにペーストして頭に「g:/」を付け足してから、タグ欄にペーストしていきました。また、他のタグが悪さをしているようなので、他のタグはすべて削除してみました。ついでにWebで検索して、明らかに閉店している店は省いていきました。
結果、閉店していた店は、130弱。残った店が400弱になりました。この状態で、アプリの地図を開いてみると、立っているピンの数は、わずか40弱です。しかも、明らかに住所とピンの位置がずれているものもあります。落ち着いて、地図の拡大縮小を繰り返していると、表示されるピンの数が変化していました。マンハッタン全体を表示刺せると、赤いピン1本になり、それをクリックすると、113ノートと表示されます。
どうも、現在表示されている範囲の情報だけを表示する仕様のようです。その113のノートのリストを見ると、タグ欄に削除したはずのタグが住所に合成された形で残っているものが、ピンの位置が正しくないようです。
Evernoteのバグなのか、Golaterのばぐなのか暇を見つけて確認していきたいと思います。
iPhoneのアプリは無料のものも多いので、気になったものはちょくちょく落としてみるのですが、ほとんどすぐに使わなくなります。使う機会がないからです。Golaterはつかえれば、ニューヨークで楽しめるので、なんとか使えるように原因を探っていくつもりです。

2013年10月24日木曜日

文学座アトリエの会「未来を忘れる」

2013年10月23日 14時開演 信濃町文学座アトリエ
作:松井周
演出:上村聡史
出演:大滝寛、加納朋之、南拓哉、南一恵、藤崎あかね、増岡裕子
松井周の書き下ろし戯曲と言うことで、普段は見にいかない文学座の芝居を見にいきました。文学座といってもアトリエ公演なので、普段の路線とは違い、新しめの戯曲を上演することが多いようです。つかこうへいさんが有名になるきっかけもこのアトリエ公演の熱海殺人事件でした。
ストーリーは、近未来の日本、行き詰まった人間はゴキブリの遺伝子を取り込むことができるクスリを開発し、それを注射して生き延びるか、このまま人間として死んでいくか、選択を迫られる、という「地下室」に続いての少しグロテスクな話でした。グロテスクではあるが、生きると何かということに向かい合った作品だと思いました。
テーマとは別に私が気になったのは、文学座の芝居の質についてでした。
演出は映像を多用したり様式的な動きを取り入れたりして、新しい戯曲を新しい演出で見せようとがんばっているようでしたが、それが逆目に出て演技が薄っぺらく見えて仕方がありませんでした。
以前、仕事で俳優座のゲネプロについたことがあったのですが、その時は久しぶりに見る新劇の演技が、余計な動きをしない、発声がよくていってることがよくわかることにびっくりして、少々感動したことがありました。今にして思えば、あれは、普通の市民会館のサイズと距離感と芝居の質が合っていたことが主な原因だったのではないかと思われます。文学座アトリエは劇場と言うよりスズナリくらいの小劇場です。そこで、7〜800人以上の会場での芝居をされても、余計な動きが少ない分薄っぺらく見えてしまうのでないでしょうか。

2013年10月20日日曜日

快快「6畳間ソーキュート社会」

2013年10月19日 19時30分開演 トーキョーワンダーサイト渋谷
作・演出:北川陽子
出演:野上絹代、山崎皓司、加藤和也
最近感じていることなのですが、年のせいか私が男性だからなのか若い女性の脚本家、演出家の作る芝居に理解や、共感できなくなっているようです。シンクロ少女の時にも感じたのですが、テーマを日常的な事柄に落とし込む、その回路がよく見えなくて化けた印象しか残らない感じなのです。もともとたいしたことのない私の感性が、ますます鈍くなっていると言うことなのでしょう。
21世紀になって未来への夢が見にくくなっている現代で、未来を夢見るとはどういうことなのか。iPhoneや、お腹の中の子供に未来の夢を見ざるを得ない、少しせつないお話しでした。
当日パンフレットに出演者、演出家のインタビューをまとめた小冊子がついてきて、それを読むと制作過程、この芝居のテーマなどがよくわかるのですが、あとから読んで芝居がわかるというのはどうなんでしょうか?
抽象画を解説してもらってわかった気になるみたいで、いまひとつ納得できませんでした。

2013年10月15日火曜日

表現・さわやか「ストレンジストーリーズ」

2013年10月10日 19時開演 下北沢駅前劇場
作・演出:池田鉄洋
出演:原史奈、佐藤真弓、村上航、いけだしん、岩本靖輝、伊藤明賢、池田鉄洋、大川宗哲
Good Morning No.5を見たときにも思ったのですが、コメディ指向の強い役者はときに全てを忘れて馬鹿に徹した芝居をやりたくなるようです。この芝居も内容は全くなく、ただただコスプレをして馬鹿なことをやり続けるだけです。そしておもしろい。それだけが肝心なことで、残りはどうでもいい。素晴らしいことです。こんな芝居が2,3ヶ月に一度でも見られればとてこ嬉しいのですが、このグループの次回公演は来年だそうで、なかなかうまくはいきません。
モンティパイソンにも影響を受けていそうなこのグループは、大好きです。

2013年10月9日水曜日

鹿殺し「無休電車」

2013年10月9日 19時開演 青山円形劇場
作:丸尾長一郎
演出:菜月チョビ
出演:丸尾長一郎、福田転球、岡田達也、オレノグラフティ、山岸門人、菜月チョビ、美津乃あわ、橘輝、坂本けこ美、円山チカ、傳田うに、山口加菜、鷺沼恵美子、浅野康之、近藤茶、峰ゆとり、有田杏子、越田岬
菜月チョビの海外研修制度による1年間のカナダ留学前の最終公演でした。これをもって鹿殺しは1年間の充電期間に入るそうです。ストーリーは、見ていないのでよくわかりませんが、「電車は血で走っている」の続編のような形で、大阪から出てきて路上パフォーマンスを繰り広げる劇団の話です。ほとんど自分たちのことが元になっていると思われます。
私にとっての鹿殺しの魅力は、今時の若手劇団にしては珍しく上昇志向が強く、それを隠さないところでした。それが着ぐるみショーや、大げさな作り物、むちゃくちゃな殺陣になって現れ、しかも実力が伴わないのでうまくいかない。その意志と実践のギャップが面白かったのです。しかし、この2,3作品では経験を積んだせいか、そこそこうまくいくようになってしまいました。それに比例して、鹿殺しの魅力は薄れていきました。まるで、ひどいブスだけど声だけはチャーミングだった女の子が、整形で顔は美人になったが声の質は普通になってしまったかのようです。しかも、美人としてみるとどう見ても中の下、きれいな人は他にいっぱいいる状況です。
今回の芝居にも、歌舞伎風の派手な衣装で歌い、踊り、殺陣をするシーンがありますが、それならもっとイケメンで歌も踊りもうまい何とかボーイズとかがそこら辺にいそうです。
1年間の充電期間を経て、新しい鹿殺しの魅力を持って帰ってきてほしいものです。