2013年6月26日水曜日

2013年第二四半期観劇のまとめ

4月3日 テアトル・ド・アナール「従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ攻勢の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行“─およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない”という言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか?という語り得ずただ示されるのみの事実にまつわる物語」テアトル・ド・アナール「従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ攻勢の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行“─およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない”という言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか?という語り得ずただ示されるのみの事実にまつわる物語」
4月4日 ブルドッキングヘッドロック「少し静かに」
4月10日 犬と串「左の頬」
4月17日 Straw&Berry 「マリア」
4月22日庭劇団ベニノ「大きなトランクの中の箱」
4月23日水素74%「半透明のオアシス」
4月24日 「レミング」
4月25日  泥棒対策ライト「あーあ」

5月8日ミームの心臓プロデュース公演「focus」
5月9日 少年社中「ラジオスターの悲劇」
5月14日 酒とつまみ「もうひとり」
5月15日イキウメ『獣の柱 ~まとめ*図書館的人生(下)~』
5月20日 離風霊船「マインド2013」
5月21日ハイバイ「て」
5月22日 いやむしろわすれて草
5月24日 ポップンマッシュルームチキン野郎「仏の顔も三度までと言いますが、それはあくまで仏の場合ですので」
5月25日 トリのマーク「湖畔の探偵全6話」
5月27日 ロロ「ミーツ」

6月10日 千葉雅子×土田英生 舞台製作事業「姐さん女房の裏切り」
6月11日 はえぎわ「ガラパコスパコス」
6月12日 城山羊の会「効率の優先」
6月12日 おぼんろ「ビョードロ」
6月19日 岡崎藝術座「(飲めない人のための)ブラックコーヒー」
6月20日 こゆび侍「きれいなお空を眺めていたのに」

4月から6月の観劇本数は、24本でした。
その中のベストスリーは、青山円形劇場の「いやむしろ忘れて草」、ロロの「ミーツ」、はえぎわの「ガラパゴスパコス」でしょうか。結構ナイーブに人間の情感を描いた作品が心に残っています。
次点としては、テアトル・ド・アナール、庭劇団ベニノ、イキウメなどの、少し癖のある硬派な芝居が気になりました。
この1年間以上、「自分の知らない小さな劇団の芝居を見に行く」ことを、大きなポリシーとしてきましたが、ここにきて少しくたびれてきたようです。全く知らない芝居を見に行って、その出来が残念だっったときのショックが結構大きく響きます。このままでは、芝居を見にいかなくなる恐れも出てきそうです。
7月からは、少し方針を変えて、明確に見たい理由がある芝居を中心に見ていこうと考えています。

こゆび侍「きれいなお空を眺めていたのに」

2013年6月21日 14時開演 王子小劇場
作・演出 : 成島秀和
出演:日暮玩具、佐藤みゆき、小野寺ずる、勢古尚行、墨井鯨子、廣瀬友美、白川哲次、小園茉奈、富山恵理子、鳥口綾、近藤茶、篠原彩
前日に見た岡崎藝術座に比べるとずいぶんオーソドックスな芝居でした。世界の終わりがくるという予感の中で、本当に大切なものは何かということを探るということがテーマでした。それを見つけたところで、本当に終わりがくるという結末なのですが、私たちは、3.11以降世界に終わりがこない、どんなにひどいことが起きても世界は続いていくということを思い知らされたのだと思います。それは、ひょっとしたら終わりがあるよりもさらにひどいことなのかもしれません。その認識がないところが、この芝居が今ひとつ響いてこない原因のような気がします。

岡崎藝術座「(飲めない人のための)ブラックコーヒー」

2013年6月20日 19時30分開演 北品川フリースペース楽間
作・演出 : 神里雄大
出演:鷲尾英彰、稲継美保、小野正彦、藤井咲有里、大村わたる
この芝居で一番気になったのは、役者による照明のつけ消しでした。どのシーンも役者が幾つかぶら下がっている照明のどれかのスイッチを引いて始まり、そのシーンが終わると再度スイッチを引いて照明を消すということの繰り返しが基本でした。なぜそうなってしまったかというのは、この公演が始まる前に照明デザイナーと話す機会があって、地方公演があること、それらが通常の劇場空間ではないこと、予算のことなどで、照明がついていかなくても仕込めて、オペレートできるような形にする必要があることなどは知っていましたが、いざ、本番を見てみると文章上に無駄に多くの鍵カッコ「」があるようで、とても気になりました。もっとも、そんなことを気にするのは、照明家だけかもしれません。
岡崎藝術座は、2,3年前に「リズム三兄弟」の公演の仕込とリハに付き合ったことがあって、その時の印象は、「日本語の解体と、再構築により新しい文体を創り出す。」ことを目指しているのかなというものでした。その後の公演はすべてスケジュールが合わず、本当に久しぶりの観劇でした。
今回の内容は、アガサクリスティの「ブラックコーヒー」と、少女誘拐監禁事件と、ボストンマラソンテロ事件を下敷きにしたもので、特徴的なのは、すべて当事者ではなく、その周りの人々の証言という形で構成されていることです。その結果、浮かび上がってくるのは言葉の暴力性や、人間関係の暴力性です。それらの言葉は、時には力強く、時にはいやらしく観客に迫ってくるのですが、どうも演劇の言葉ではないような気がします。脚本を購入して読み込んだ方がより良いのではないのかという気がしてなりません。

2013年6月14日金曜日

おぼんろ「ピョードロ」

2013年6月12日 19時30分開演 日暮里d-倉庫
脚本・演出 : 末原拓馬
出演:末原拓馬、わかばやしめぐみ、高橋倫平、さひがしジュンペイ、林勇輔
今時珍しい丁寧な前説から始まるファンタジーでした。ストレートな愛の物語で、そのストレートさ加減も今時珍しいものでした。丁寧な前説と言い、わかりやすいラブストーリーといい、あまり芝居を見たことのない若い女性客をターゲットにしているように見えます。
しかし、段ボールやペットボトルで手作りした装置を自ら自慢するのはどうでしょう。自虐的すぎて、引いてしまうお客さんもいそうです。
目標は、観客動員を5万人にしてシアターコクーンで1ヶ月公演することだそうですが、頑張ってくださいとしか言いようがありません。

城山羊の会「効率の優先」

2013年6月12日 15時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出 : 山内ケンジ
出演:金子岳憲、松本まりか、岡部たかし、松澤匠、白石直也、吉田彩乃、石橋けい、鈴木浩介、岩谷健司
前回の公演「あの山の稜線が崩れていく」を見た時には、結構骨太の不条理劇という印象だったのですが、今回の芝居は不条理劇としては、線が細すぎて納得できるものではありませんでした。その主な原因は、演技の質にあると思います。登場人物たちの演技が弱くてリアリティが感じられません。それが不条理を成立させていない一番の原因だと思います。あれでは、「なんだかなあ。」という感想が浮かぶだけで、不条理劇特有の不気味な肌触りは、生まれてきません。
いや、ひょっとすると、あれは不条理劇ではなかったのかもしれません。少しづつおかしい登場人物たちが、会社での「仕事」と、個人的な恋愛感情の間で揺れ動いて殺人を冒してしまう。それだけの話なのかもしれません。それにしても、女部長役の芝居が弱すぎて、納得がいきません。そして、ラストのセックスシーン、あれは何だったのでしょうか。舞台であんなに生々しいセックスシーンは始めて見ました。あの演出は何だったのでしょうか。あれこそが不条理です。

はえぎわ「ガラパコスパコス」

2013年6月11日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出 : ノゾエ征爾
出演:柴幸男、井内ミワク、滝寛式、鳥島明、川上友里、踊り子あり、笠木泉、町田水城、ノゾエ征爾、たにぐちいくこ、新名基浩、鈴真紀史、山口航太、竹口龍茶、金珠代、松森モヘー、萩野肇
当日パンフによれば、はえぎわはここ4年間ほど老人ホームでの芝居公演を定期的に行っているようです。その経験がこの芝居の基本的な部分や、前回の公演を見た時に感じた「視線の公平さ」を生み出してるようです。「老い」というものを見つめて、そのまま受け入れるということは実践することも、表現することもかなり難しいですが、この芝居での基調音となってすべてをまとめていいるようでした。
それにしても、「チョークとそれで描ける壁面さえあれば、演劇はできる」という芝居は、初めて見ましたが、実に面白いものでした。徐々にへたうまな絵や、言葉で埋め尽くされて行く壁面が、芝居全体に一種寓話的な雰囲気を与えて面白い効果を与えていました。
ラストの主人公が引きこもりから世の中に出て行く決心をして、ピエロの衣装からスーツにネクタイに着替えるシーンでのボレロの音楽と振りは、ほぼ完全に映画「愛と喝采の日々」のラストシーンでの20世紀バレー団のパクリで、ノゾエ征爾が素直なだけでなく、結構図太い神経の持ち主であることが覗き見えて面白かったです。

2013年6月11日火曜日

千葉雅子×土田英生舞台制作事業「姐さん女房の裏切り」

2013年6月10日 19時30分開演 小竹向原サイスタジオコモネ
原案・出演:千葉雅子
作・演出・出演:土田英生
MONOの土田英生と、猫のホテルの千葉雅子による新ユニット。当日パンフなどを読んでみると、どうも二人芝居を継続的に続けて行くつもりのようです。
それにしても、土田の千葉に対する優しさに溢れた脚本には、少しびっくりさせられました。元々達者な脚本家だとは思っていましたが、対象が一人に絞られるとここまで優しくなれるのかと驚きました。優しすぎて、少し説明しすぎな感じもあったのは、残念です。
千葉は、20年以上自分のせいで隠れて暮らすこととなった年下のダメ男を憐れに思って尽くすが、ある日、ほとほと愛想が尽きる年上女房を頑張って演じていましたが、元々の資質にないのか、あっさりしすぎの感は否めませんでした。それに比べて、土田は、悪人顔なのに中身は全くの子供で相手の気持ちがわからないダメ男を演じて生き生きとしていました。
せっかく始めた新規事業なので、二人芝居の限界を打ち破るような企画に挑戦してもらいたいものです。

ロロ「ミーツ」

2013年5月27日 19時30分開演 こまばアゴラ劇場
作・演出 : 三浦直之
出演:板橋駿谷、亀島一徳、望月綾乃、伊東沙保、工藤洋崇、小橋れな、水越朋
ロロとか、はえぎわで気に入っているところは、語り口の爽やかさだと思います。ロマンチックのふりをして、少しおセンチ、結論があってもなくてもすんなり終わる。そのキレの良さが魅力だと思います。
一部では、ロロらしくないという評判らしい伊東沙保の缶コーヒーを積み上げながらの長セリフも、私には十分素敵でした。しかし、そのシーンのBGMが中島みゆきなのには少しびっくりしました。
テーマは、どなたかがTwitterに書いていた「逢いたいけれど逢えない誰かを想像する(と居る(みたいな気がする)」ということでしょう。
人と人の出逢いというテーマの周りをぐるぐるまわって、様々なアプローチをしているように見えます。そのアプローチが、どれも私にとっては好ましかったり、微笑ましかったりするのが魅力です。

2013年5月26日日曜日

トリのマーク(通称)「湖畔の探偵 全六話」

2013年5月25日 16時開演
台詞・演出 : 山中正哉
出演:柳澤明子、原田優理子、大畑麻衣子、藤田早織、小田さやか、山中正哉
チラシの「シュールな話」という言葉と、マークだけで、呼び方がなく、通称トリのマークと呼ばれているという劇団名に惹かれて見に行きました。
結果は、あまりにシュール(?)で、理解も何もできませんでした。
話はどうやら、依頼を受けた探偵とマスコットらしいぬいぐるみのギロンが、湖畔の駅に到着するところから始まるようなのですが、探偵が二人いたり、マスコットが二つあったり、不動産屋らしい2人組がいたりするのですが、それらが出たり入ったりするだけで、何かが始まる前に終わってしまった感じです。何がしたいのか、何が面白いのか全くわかりませんでした。
お手上げです。

ポップンマッシュルームチキン野郎「仏の顔も三度までと言いますが、それはあ くまで仏の場合ですので」

2013年5月24日 19時30分開演 新宿サンモールスタジオ
作・演出 : 吹原幸太
出演:サイショモンドダスト★、吹原幸太、今井孝祐、小岩崎小恵、仁田原早苗、CR岡本物語、井上博之、加藤慎吾、小田伸泰、太田守信、高橋ゆき、青山雅士、杉岡あきこ、NPO法人、横尾友幸、橘麦、野口オリジナル、増田赤カブト、跳川雄大、渡辺祐太
ど派手なメイクのチラシに惹かれて、見に行きましたが、「ふざけた名前の劇団の芝居は面白くない。」という法則がまた、当てはまってしまいました。
思いついた面白そうなことを脈絡なくぶち込んだごった煮のような芝居で、そのごった煮が美味しければ結果オーライなのですが、けしてオーライになっておらず、しょぼい決幕を迎えるという情けない状態でした。妖怪たちの着ぐるみも、頑張っているのですが相乗効果をもたらすこともなく、不発に終わっていました。あまりにも、御都合主義なストーリーは苦笑するしかありません。
次回は、見ないと思います。

「いやむしろわすれて草」

2013年5月22日 19時開演 青山円形劇場
作・演出 : 前田司郎
出演:満島ひかり、伊藤歩、福田麻由子、菊池亜希子、大山雄史、能島瑞穂、黒田大輔、志賀廣太郎
前田司郎の芝居は五反田団の公演を2本ほど見て、これはどれを見てもみんな同じだと感じて、あまり触手が動かなかったのですが、「100万回生きた猫」で好演した満島ひかりが主演ということで、円形劇場に足を運びました。
病気がちの三女三樹(満島ひかり)を中心に、四姉妹の交流がさりげない日常の会話を通して静かに描かれて行きます。単に仲の良いだけでない、死をみじかに感じて相手を思いやる気持ちからかえってギクシャクする関係が、リアリティを持って心に迫ってきました。
この芝居が成功した主な要因は、キャスティングにあると思います。一見、バランスの悪そうな四姉妹の役者が微妙な距離感を、見事に表していました。
五反田団とは全く違う演出で、前田司郎の才能を再認識しました。

ハイバイ「て」

2013年5月21日 19時30分開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出 : 岩井秀人
出演:猪股俊明、岩井秀人、平原テツ、佐久間麻由、富川一人、上田遥、永井若葉、高橋周平、奥田洋平、小熊ヒデジ、青野竜平、用松亮
Twitterでの評判では、「岩井秀人の自伝的戯曲にして、最高傑作。何度見ても号泣。」「どうしてこの戯曲で岸田戯曲賞が取れなかったのか。」などと書かれていますが、私には今ひとつピンときませんでした。どうも私は、この戯曲や、「ポンポン………」などよりも、「霊感少女ヒドミちゃん」や、「ある女」のような映像を使ったポップな作品の方が好みのようです。
話は、久しぶりに全員集まった家族が前半は次男の視点から、後半は母親の視点から描かれています。舞台上のレイアウトもそれに合わせて、180度ひっくり返ります。同じ話が視点を変えることで、違った側面を見せることになるという演出は面白いのですが、別にそれで謎解きになるというわけでもなく、それがどうしたという印象は拭えません。
確かにリアルなんでしょうけれども、カタルシスを感じられないところが、納得いかないのだと思います。

離風霊船「マインド2013」

2013年5月20日 19時30分開演 下北沢ザスズナリ
作・演出 : 大橋泰彦
出演:伊東由美子、松戸俊二、倉林えみ、江頭一晃、柳一至、栗林みーこ、祥子、松延春季、生津徹、川崎蘭子、沙織、秋月愛
4回目の離風霊船の芝居ですが、最初の新鮮さが薄れて普通の芝居に感じました。
2本目、3本目の「30」2バージョンが結構残念な出来だったので、「貴方はもっとできる子のはず」と勝手に期待して見に行ったのですが、残念ながら贔屓の引き倒しだったようです。
話は、ある日、珍しく早く帰ってきたお父さんの様子が少し変です。家庭に波風を立てるのを恐れるあまり、昇進を断ってきたと嬉しそうに話します。びっくりしている家族の前に、さらに3人のお父さんが帰ってきます。博愛精神にあふれ、2リットルも献血したり、もっているお金をすべて募金したりするお父さん。目の前の欲望に忠実に、食べたいウナギやトンカツをすべて買ってくるお父さん。ずる賢くて、銀行強盗をするお父さん。どうやら、満員電車の中で足を踏まれ続けたショックで、4人に分裂してしまったようです。
自分達が良しとする提案を勝手にしまくるお父さん達に、混乱する家族。ドタバタあって、結局今のお父さんを選ぶ家族に、選ばれなかったお父さんたちは自分たちの原点、子供の頃に帰ります。そこに、選ばれた今のお父さんも現れるのですが、自ら全く覚えがない(なぜなら、子供の頃には、現れていない資質だから)と言っている場所になぜもどってくることができたのでしょうか。
不思議です。
子供の頃の母親とのやり取りを見て色々思い出すが、結局、今更かんたに変えられないと呟いて、芝居は終わります。
正直な結末だとは思いますが、今、再演するならそれを突き抜けたところまで行って欲しかったです。それとも、これが年を取るということなのでしょうか。

2013年5月21日火曜日

イキウメ『獣の柱 ~まとめ*図書館的人生(下)~』

2013年5月15日 19時30分開演 三軒茶屋シアタートラム
作・演出 : 前川知大
出演:浜田信也、盛隆二、岩本幸子、伊勢佳世、森下創、大窪人衞、加茂杏子、安井順平
前作に続いて、「まとめ図書館的人生」というタイトルがついているので、また、幾つかの作品をつなげたオムニバス的な作品かと思っていたら、丸々一本の作品でした。いわゆる再演ということなのでしょうか?最近になってイキウメを見始めた私にはよくわかりません。
話は、ある日、突然、空から大きな柱が降ってきて、それを見た人間は、意識を失い、硬直してしまう。外部からの刺激がないと目覚めず、目覚めてもその間の記憶がない。ただ、目覚めるととても幸福な気分に襲われる。経済は崩壊し、物流も止まってしまった世界で、人々は何とかそれに適応し、やがて神と崇めるようになる。やがて、何十年もその状況が続くと、柱を見ても気絶しない新しい人間が現れ、自分たちの世界を作るため、旅立っていく。とてもSF的なストーリーでした。その時間お流れと関係性を、プロジェクションで年号を映写することと、同じ役者が自分の子供や孫を演じることで、重層的に表していて面白かったです。
芝居の本質とは全く関係ないことですが、一つとても気になったことがあります。イキウメの一連の作品や、砂地の「disk」の照明デザインは、小劇場の芝居を数多く手がけている松本大介さんがされているのですが、どの芝居も基本的にストイックな芝居で、アクティングエリアを区切ることと、若干の状況的な説明をする照明(夕方とか、夜とか)を組み合わせることで事足りてしまいます。芝居に合わせたストイックな照明と言っていいでしょう。それにフラストレーションを感じるのか、ラストに必ずと言っていいほど、照明的な遊びのあるシーンがありました。「Mission」での虹の七色のビームとか、「disk」でのラストのオーストラリアでのモノローグでの大量の生のライトの方向性で、朝から夕方までを表すシーンとかです。同業者として、気持ちがわかるような気がして、シンパシーを感じてしまいます。

酒とつまみ「もうひとり」

2013年5月14日 15時開演 下北沢 OFF-OFF シアター
作・演出 : 倉持裕
出演:村岡希美、池谷のぶえ
Twitter上での評判は面白かったと思う人しか書き込まないので、当てにならないと重々わかっているのに、ついつい書き込みが多いと気になって見に行ってしまいます。この芝居もそんな気分で予約をいれてしまいました。
Twitterの評判をまとめると、「名女優二人が丁々発止とやりあう報復絶後の爆笑1時間20分」ということになるのですが、そもそも、村岡希美、池谷のぶえの二人が名女優なのかと言われれば、疑問が残ります。確かに芝居はうまいと思いますが、名女優と呼ばれるような女優ならこのような二人芝居で示すであろう「私は名女優なのよ。ほら、こんなに芝居がうまいでしょ。」といういうなケレン味が、あまり見られません。下手をしたら嫌味にしか感じられないような事も、さらりとできる人こそ名女優だと思います。でなければ、時には芝居の枠を外れるくらいの熱演をして欲しいものです。この二人には、残念ながらそれが足りなかったような気がします。全ては想定内の演技といった感じがします。
話は、縁もゆかりもないのになぜかいる居候と、大家という不思議な関係の中年女二人。隣人は大家が洗脳されているのではないかと心配して乗り込んでくるし、大家の婚約者は居候の存在が気になってプロポーズできない。そんな不思議な二人の関係の話でした。
ストーリーで一番気になったのは、途中の居候の息子への電話で明らかになるのですが、どうも、居候の家族は、プロの居候とでもいうべき存在で、本人も夫もその息子も別々の家庭に居候しているらしいということでした。その顛末を芝居にしたら、とても面白そうな気がしました。




2013年5月13日月曜日

iPadでブログ編集その後

iPadでブログ編集をする方法ですが、その後、blogger.comの純正APPを見つけて使って見ました。これを使えば、オフラインでテキストの入力、編集もできますし、Wi-Fiでつながっていれば、公開もできます。今のところの問題は、写真の挿入はできるのですが、位置調整ができません。さらなる研究が必要のようです。
その後、いろいろ調べましたが、位置調整は無理のようです。これでは下書き用にしか使えません。やはり、最終調整はMacからやるしかないようです。

少年社中「ラジオスターの悲劇」

2013年5月9日 15時開演 吉祥寺シアター
作・演出 : 毛利亘宏
出演:森下亮(クロムモリブデン)、堀池直毅、井俣太良、岩田有民、甘浦裕介、加藤良子、杉山未央、山川ありそ、内山智絵、竹内尚文、桂亜沙美、中村龍介、松本寛也、川本裕之、江口愛、大山真絵子
芝居を見ながら、この感じは何処かの劇団と似ているとずっと思っていたのですが、途中で「あっ、キャラメルボックスだ。」と、気がつきました。作風とか、演技の質が同じだとかの話ではなく、両方ともエンターテイメント志向で観客を楽しませることに全力を尽くしている、その姿勢がよく似ているのです。しかし、この芝居をエンターテイメントとして見た場合、私が満足できるレベルには達していないと思います。
まず、ダンスが酷い。基本的に踊り慣れていない人たちのようで、振付は平凡、身体のきれもなく、人様に見せられるレベルではありません。
また、脚本は安物のロールプレイングゲームのシナリオみたいで、悲しい限りです。今時、「夢は諦めなければ必ずかなう。絶対に!」と言い切ってしまうなんて、恥ずかしくないのでしょうか。
ここまで書いてきて、自分のエンターテイメントに対するハードルの高さに気がつきました。これは、古くは藤山寛美の松竹新喜劇や、初期の東京乾電池、最近のシルクドソレイユが基準としてあるからでしょう。それらに無意識に比べているように思います。また、エンターテイメント志向というよりは、各々の現実を引きずり、舞台の上でなんとかそれに対峙しようとしている芝居には、シンパシーを感じて採点が甘くなっていると思います。

2013年5月7日火曜日

ミームの心臓プロデュース公演「focus」

2013年5月8日 15時開演 王子小劇場
ハイブリットハイジ座「皮にパンク」
作・演出 : 天野峻
出演:広井龍太郎、羊、城築創、牧俊平、田中裕子、南美櫻、木村圭介、田中亜紀、町田地獄、来栖玄都、櫻谷翔吾、神山慎太郎

ミームの心臓「東の地で」
作 : 酒井一途、演出 : 岩渕幸弘
出演:浦田大地、小林依通子

四次元ボックス「cicada」
作・演出 : 菊池史恩
出演:森山拳、三品優里子、佐藤修作、山口栞、宮崎卓真、朝戸佑飛、渡辺苑衣、曽我祥之、北川まりえ、菊池史恩
ブリットハイジ座ー早稲田大学、ミームの心臓ー慶応義塾大学、四次元ボックスー日本大学芸術学部、学生劇団3団体による合同公演でした。2500円で各々1時間程度の芝居が3本見られるのはお得でしたが、引き換えにお尻の痛みを我慢するという苦行が待っていました。
全体の印象は、よく出来た学芸会以上のものではありませんでした。しいてあげれば、ハイブリットハイジ座には見せ方の工夫という点で、一日の長がありました。テンポの良い台詞運び、トリッキーな動きには、お客をとりあえず楽しませようという努力が見えますが、それも何処かで見たようなものでしかありませんでした。
ミームの心臓は、いわゆる「イタイ」感覚をそのまま、正面切って展開するような芝居で、今更見せられても感想にも困るような代物でした。二人芝居で、女優の方が存在感を発揮していましたがそれも二人を比較した場合の話で、役者としてどうかといえば、スタートラインに立ったところという感じです。
四次元ボックスは、大学8年生で新入会員が6年間もいないオカルトサークルの部長、原田マサオ役の佐藤修作が唯一舞台の上で存在感を発揮していましたが、他の役者が学芸会レベルで目立っていただけでした。せめて、全体のレベルが佐藤修作程度まで上がってこないと、芝居が始まらないという感じでした。
舞台の上に上がったら、学生も、プロも、アマチュアも関係なく、興味はただ一つ、面白いか面白くないかだけです。突然、面白くなることはないので、学生の皆さんは日々、精進していただきたいと思います。
面白いという噂が広まったら、また、見たいと思います。


2013年4月26日金曜日

泥棒対策ライト「あ~あ」


2013年4月25日 20時開演 吉祥寺キチム
振付・演出 : 下司尚美
出演:大庭裕介、近藤彩香、佐々木冨貴子、白倉裕二、下司尚美
ダンスの公演は、その独特のストイックな雰囲気が苦手で積極的に見にはいかないのですが、この公演は急に入ってきた仕事の都合で、観劇のスケジュールを組み直さなければいけなくなった時に、チラシを見て一発で見に行くことを決めました。「あ~あ」という脱力感満載のタイトルのせいかもしれません。結果はとてもゆったりした気分のまま、楽しく1時間を過ごすことができました。これは、振り付け・演出の下司尚美の肝っ玉母さん的な人柄からくるところが大きいと思います。本人自ら、客入れを行い、トイレの心配をし、前説までして、そのまま、本番になだれ込むという大活躍でした。出演者も、ダンスのトレーニングをしていたのは近藤彩香ただ一人で、残りは、下司を含めて正式なダンスレッスンを受けたこともない役者ばかりでした。ダンサーとしてみると、決してうまくはないが、それぞれの頑張りと解釈で踊っていて、面白かったです。特に、背が小さく手足も短い佐々木富貴子が、踊れていないなりに、がんばって工夫している姿は、面白かったです。また、それを良しとしてうまくまとめた下司の力量はたいしたものです。会場も、劇場ではない地下のカフェで、客とダンサーの距離が近く、それが否応無く一体感を醸し出して、楽しめました。
前日に見た「レミング」が、この何十倍ものコストと人間を動員して出来上がっていたのと比べても、満足度としては、こちらの方が上でした。

「レミング」


2013年4月24日 14時開演 渋谷パルコ劇場
作 : 寺山修司
演出 : 松本雄吉
出演:八嶋智人、片桐仁、常盤貴子、松重豊 他
寺山修司の言葉が未だに古びていないことが確認できた芝居でした。唐十郎の言葉が、まだ見ぬロマンスを語る言葉だとすれば、寺山修司の言葉は、存在しないノスタルジーを語る言葉だと思います。ただ、ロングコートに山高帽で舞台を上下に行進するコロスたちは、その言葉とは明らかに異質でした。維新派の舞台を見たことのある人によれば、あのコロス達は「とても、維新派風」なのだそうです。コロスのストイックな動きは、過剰なまでにロマンチックでノスタルジックな寺山修司のイメージを拡大するためには、決して役立っておらず、静かな異物としてなぜかそこにあるという感じでした。