2019年2月26日火曜日

OM-2「OPUS-10 アノ時のこと、そしてソノ後のこと」

2019年2月22日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
構成・演出:真壁茂夫
出演:佐々木敦、芝崎直子、金原知輝、ポチ、田仲ぽっぽ、辻渚、細谷史奈、高橋あきら、風祭右京、ふくおかかつひこ、坂口奈々、鐸木のりす、高松章子、梨本愛
ダンボール箱が積み上がった壁の前で本を読む少女。やがてダンボールの壁は大音響と共に吹き飛び、中から現れたのは、床も壁も真っ白な空間にロッカー、長机、パイプイスの更衣室のようなセット。その前で太った男が父親殺しの話を延々と喋り続ける。後ろでは、白塗りのコロスがうごめく。やがて白壁は崩れ、その後ろには憲法を墨書きした木パネルと、「平和憲法を守れ」と訴える群衆の姿が現れる。ラストは、降ってきた大量の血糊で全身真っ赤に染まる男。
これは私が40年前にわけもわからずに見ていたアングラ演劇そのものだ。確かに、映像など技術的にはアップデートされているが、手法としては全く変わっていない。「ストーリーを説明する演劇よりも、感情を爆発させる舞台を」というコンセプトはわかるが、私の中では、その段階を経て新たなストーリーを獲得するように進化してきたと思っていたので、いまさらアングラ演劇を見せられたことがショックだったし、若いときの自分を見せられたようで恥ずかしいような気持ちにもさせられた。

2019年2月19日火曜日

サファリ・P「悪童日記」

2019年2月17日 14時開演 横浜美術館レクチャーホール
原作:アゴタ・クリストフ『悪童日記』
訳:堀 茂樹(ハヤカワ文庫)
構成・演出:山口茜
出演:高杉征司、日置あつし、芦谷康介、達矢、佐々木ヤス子

アゴタ・クリストフの傑作小説『悪童日記』の舞台化作品です。小説の中のいくつかのシーンを抜粋して、5人の役者が台詞とストリートダンス的な動きで見せていくのですが、私は事前に小説を読んでいたのでストーリーがわかりましたが、読んでいない人は切れ切れのシーンの連続としか思えなかったに違いありません。
この小説の面白さは、戦時下のヨーロッパの片田舎で徹底的にリアリスティックに生き抜く双子と言うところにあるのに、それが全く見えてきません。
チラシの中の推薦文で誰かが、「これをアゴタ・クリストフに見せたい。絶対、喜んでくれるに違いない」と書いていましたが、私は見せない方がよいと思いました。

世田谷シルク「春夏秋冬」

2019年2月17日 11時30分開演 YCC ヨコハマ創造都市センター
構成・演出・振付 堀川 炎
出演:佐藤優子、武井希未(以上、世田谷シルク) 、石井 維、上田茉衣子、大竹ココ(□字ック/ユトサトリ)、大原富如(ユトサトリ)、柿の葉なら、佐々木実紀、新屋七海、中原百合香、平井絢子、堀内 萌(キリグス)、牧野栞奈、宮﨑優里
名前だけは前から知っていましたが、見るのは初めてです。勝手に「梅棒」の女性版をイメージしていましたが、「梅棒」よりはシリアスよりでした。「春夏秋冬」になぞらえて女性の一生を正面からとらえて、台詞とダンスでみせるというものでした。全員、白い着物に白い編み笠で、固有の役を演じるときだけ編み笠を取っていました。
印象的なのは、一生の中で恋愛も結婚もするのですが、相手役の男はいっさい登場しません。「男に左右されない女の一生」に対する強いこだわりを感じます。ラストは、80歳以上の主人公が冬の富士山に一人で登り、頂上で亡くなるというシーンで、痛快でした。

贅沢貧乏『わかろうとはおもっているけど』

2019年2月16日 14時30分開演 横浜BUKATSUDO HALL
作・演出:山田由梨
出演:島田桃子、山本雅幸、田島ゆみか、大竹このみ、青山祥子
「贅沢貧乏」というのは素敵な名前だと思います。また、一軒家やアパートで長期公演をするなど、芝居を演じる場所に対しても問題意識を持っているラディカルな集団という印象もあります。初めて見たときは、そんなラディカルな集団なのに芝居の中身は結構普通じゃないかという印象でした。
今回は、半分同棲しているような男女が妊娠をきっかけに、二人の意識の違いが表面化していくストーリーです。よくある話ですが、後半、男女の立場が逆転し、男が妊娠したという設定にするっと入れ替わり、前と同じ台詞を男女が入れ替わって言い合うというかたちになります。すると、前半で男が戸惑いながらも女のためを思っていっていた言葉がいかに空々しいものであったかと言うことが明白になります。前半の最後の男は、狭いところに閉じこもって、うじうじとパズルをやり続けるのに比べ、ラストの女はいったん蹲るものの、すっと立ち上がってリンゴをかじりながら外に出て行きます。今の時代にふさわしいエンディングでした。
多分、タイトルの「わかろうとはおもっているけど」の後に続く言葉は、「だめでも私は一人で行く」なのでしょう。

岡崎芸術座「いいかげんな訪問者の報告」

2019年2月15日 17時開演 横浜CASACO
作・演出・出演:上里雄大
レクチャーパフォーマンスということなので、いわゆる演劇の公演とは違います。2014年と2016年の2回の南米訪問の報告会というかたちで、映像を交えながら日系移民の歴史や現在の姿が話されます。上里自身も、ペルー生まれであり、幼い頃に親の仕事の都合で日本に来てそのまま日本で育ったようです。現在でも祖母をはじめ、多くの親戚が南米で暮らしています。
その中の一人の遠い親戚の男性に会い、たまたま同い年だったこともあり、強いシンパシーを感じて、「ひょっとしたら、自分がこの男性だったかもしれない。日本でなく、南米で暮らしていたかもしれない」と思います。
この感覚が上里雄大の魅力だと思います。日本人でありながら日本人からはみ出した感性を持ち、それを肯定的にとらえている。今までよくわからなかった、岡崎芸術座の不思議な魅力の源を見たような気がしました。

2019年2月18日月曜日

ハイドロブラスト『幽霊が乗るタクシー』

2019年2月11日 14時開演 トーキョーアーツアンドスペース本郷
脚本・演出:太田信吾
出演:川﨑麻里子、宍泥美、森準人、椎橋綾那、昇良樹、大山実音
脚本・演出の太田省吾は映画監督で、チェルフィッチュの芝居に役者として出ていました。
「スーパープレミアムソフトWバニラリッチ」にでていたそうですが、どんな人だったか覚えていません。
東日本大震災の被災地石巻で、ゆうれいを乗せたタクシー運転手や、娘を亡くした母親などへのインタビュー映像とその再現ドラマで構成されていますが、テレビドキュメンタリーとしてもできの悪い作品でしかなく、演劇作品としては成立さえしていないように見えます。
現実としての映像と、それを昇華してイメージを膨らませるべきドラマの部分が単なる再現にしか見えなくて、やってる意味が理解できません。

隣屋「あるいはニコライ、新しくてぬるぬるした死骸」

2019年2月10日 20時開演 横浜STスポット
原案:レフ・トルストイ「光は闇の中に輝く」(訳:米川正夫)
脚本・演出:三浦雨林(隣屋/青年団)
出演:永瀬泰生(隣屋)、杉山賢(隣屋)、藤谷理子、宮本悠加
隣屋のWebサイトによれば、

レフ・トルストイ『光は闇の中に輝く』を原案に、新しい宗教と誰もいなくなった土地を描く。音楽と身体表現による生理的な感覚へのアプローチを試みる。2016年に短編として発表した作品をフルサイズで再演。

『光は闇の中に輝く』
大農園の主人ニコライはある日新しい宗教を求め、地位も金も家族も捨て始める。やがて生きるための全てをも打ち捨てようとする彼を、妻と僧侶が説き伏せようとするが…。
(レフ・トルストイ「光は闇の中に輝く」(訳:米川正夫))

ということのようだが、私にはよくわからなかった。劇中でお告げを聞くように携帯に耳をあてるシーンがあったが、あれが新しい宗教なのだろうか。
音楽というのは、俳優の一人がずっとキーボードやバイオリン、パーカッションなどで、BGMやSEのような音を出していたが、あれをさすのだろうか。
身体表現というのは、女優の一人がずっと踊っていたが、あれのことだろうか。
音楽は芝居の一部として理解できたが、踊りは芝居との関わりがよく理解できなかった。

2019年2月12日火曜日

お布団「破壊された女」

2019年2月10日 14時開演 横浜長者スタジオ
作・演出:得地弘基(お布団/東京デスロック)
出演 緒沢麻友(お布団)
キャラクターと称して、初音ミクのようなバーチャルアイドルやバーチャルユーチューバーのようなものにに扮した女優が、人間と架空のキャラクターの異差について喋りまくる一人芝居でした。
無意識のうちに架空のキャラクターというものが人間の延長線上にあるものだと思っていましたが(例えば、初音ミクはアイドルの1バリエーションだと思う)、ここでは人間と対立するもの、人間と異なるものと設定されていて、キャラクターの方から人間を問う構造になっています。ただ、キャラクターとして「私」といい、人間としても「私」と称するので、時々どちらの話をしているのか混乱します。
また、場面によってはプロジェクターで短い質問などのテキストを投影することがあるのですが、それが結構効いていて、質問することで相対化され空間が広がるような効果がありました。

国際共同制作『RE/PLAY Dance Edit』東京公演

2019年2月9日 19時開演 吉祥寺シアター
演出: 多田淳之介
振付:きたまり
出演:きたまり、岩渕貞太、Aokid、斉藤綾子、シェリダン・ニューマン(シンガポール)、ソポル・ソー(カンボジア)、カリッサ・アデア(フィリピン)、ジョン・ポール・オルテネロ(フィリピン)
今年に入ってから、集中力の低下が著しく、どの芝居を見ても芝居にピントが合うのに時間がかかってしょうがない。ひどいときにはピントが合う前に終わってしまうことさえある。
この『RE/PLAY Dance Edit』も最初はわけがわからない状態だったが、一人のダンサーに集中することで面白さがわかってきた。私が注目したのは岩渕貞太、舞踏というか武術の型のような動きをするダンサーで、ある意味わかりやすい。
8人のダンサーはそれぞれ違った動きをする。曲にあわせて動き、自分の振りが終わったところで倒れる。やがて起き上がり、同じ振りを始める。曲は繰り返され、繰り返すたびにだんだん音量が上がっていく。
ダンサーは国籍もダンスのルーツもばらばらで、それぞれの振りもバラエティに富んでいて、見ていて飽きない。曲が繰り返されるたび、繰り返される振りと変化していく振りができてくる。曲の音量に合わせて振りが変化していくのを見ていると、不思議な興奮を感じていく。
2015年に「快快」が岩井秀人の演出でオリジナルバージョンを上演したのを見ているが、その時のブログを読み返してみると、全く理解できなくて戸惑っているのがよくわかる。
オリジナルバージョンでは、役者が同じように動き回っていたのだが、その動きのパターンがわかりにくく、混乱しか感じられなかったのだと思う。
この Dance Editでは、各々のダンサーの出自による動き(舞踏、ストリートダンス、モダンダンス、カンボジアの民族舞踊、バレエなど)のバラエティが豊富で見ていてあきないし、わかりやすい。
ひとしきり踊った後、稽古後の雑談のていで、ダンサーたちの会話が始まる。その中で、各自のダンスのルーツ、夢、この演目への関わりなどが語られていく。やがて、また音楽が始まり踊り出すのだが、各自の振りにまるでカーテンコールのように客席に向かって直立する振りが加わっている。
ひとしきり踊り、そして本当に終わる。
オリジナルバージョンにダンスという要素を付け加えることで明確な切り口ができ、様々な国で繰り返し上演されてきたことで、普遍性が上がってきたのだと思う。ダンスが苦手な私にもとても面白い体験だった。

2019年2月9日土曜日

かもめマシーン「しあわせな日々」

2019年2月8日 19時開演 横浜 The Cave
作:サミュエル・べケット
翻訳:長島確
演出:萩原雄太
出演:清水穂奈美、伊藤新(ダミアン)
空間デザイン:白鳥大樹
美術:横居克則、山城裕美
私が一番好きな戯曲はサミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」なんですが、他のベケットの戯曲も観てみたいと思い、見にいきました。
ビルの地下にある会場のThe Caveは、普段はバーかカフェであろう、コンクリート剥き出しの空間にバーカウンターだけが設置してあるところで、その真ん中に現代美術的な鉄の半球が設置してあり、その上に役者が腰まで埋まってうつぶせに倒れています。やがて、非常ベルが鳴り、芝居が始まり、役者が喋りだします。どんどん、喋ります。なぜ、腰まで埋まってしまうことになったのかは一切わかりません。しかし、彼女はそれを嘆くことなく、この現状は「悪くない」と繰り返し話します。時々、その地面の下に住んでいるらしいウイリーという男に話しかけます。男は時々地面から出てきて新聞の求人欄を読み上げます。ウイリーは出てきても彼女の背後に位置し、彼女からは見えません。
やがてウイリーはいなくなります。彼女はそれに気づいているのかいないのか、どんどん喋ります。
一度暗くなりまた明るくなると、彼女は首まで埋まっています。それでも彼女は喋り続け、現状を「悪くない」と言い続けます。
ラストはウイリーが手の力だけで這って入ってきて悪戦苦闘の後、彼女のほほに手を触れるところで終わりです。
役2時間、ほとんど一人で喋り続ける役者の技量と集中力はたいしたものです。
しかし下世話に考えると、定年で一日中家にいる亭主に対して一方的に喋り続ける女房と生返事しかしない亭主のようにも見えます。
喋り続ける女房に愛想を尽かして亭主は出て行きますが、紆余曲折の果て、やはり古女房のもとに帰ってくる。
そんなストーリーに見えなくもありません。

2019年2月3日日曜日

はえぎわ「桜のその薗」

2019年2月1日 19時開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:ノゾエ征爾
出演:井内ミワク、町田水城、鈴真紀史、滝寛式、竹口龍茶、踊り子あり、茂手木桜子、中薗菜々子、川上友里、鳥島明、富川一人、山口航太、ノゾエ征爾
周年記念公演で新作となると、面白くなりにくいというイメージがあります。その上、内容が脚本家の書けない悩みとなると、一層面白くなさそうです。
はえぎわの芝居は好きで何本か観ているつもりでしたが、細かいところはほとんど覚えていないので私の勝手な想像ですが、これまでの作品の様々な場面をつなぎ合わせて川上友里を狂言回しの役にして一本にまとめたのだと思います。20周年記念にふさわしいと言えば言えなくもありませんが、苦し紛れの感は否めません。
ただ、懐かしの名場面集というよりも各役者の現状が透けて見えるような気がするのは気のせいでしょうか。
役者で印象的だったのは、ストーリーを進めるために登場して用が済むとすぐに忘れられるとつぶやく、「脇役」をやった井内ミワクでした。

2019年1月29日火曜日

鳥獣戯画「三人でシェイクスピア」

2019年1月28日 19時開演 池袋シアターグリーン Box in Box Theatre
作: Jess Winfield,Adam Long,and Daniel Singer
訳:小田島雄志、長谷川仰子
演出: 知念正文
出演:赤星昇一郎、石丸有里子、ちねんまさふみ
劇団鳥獣戯画が17年以上にわたって、飛び飛びロングランと称して断続的に公演を行っている「三人でシェイクスピア」を観ました。300回以上、同じメンバーで上演しているそうで、さすがに手慣れた芝居になっていました。
キャッチフレーズは、「3人で、90分で、シェイクスピアの全37作品を上演する」と言うことですが、頭に「ハムレット」をさらっとやって、途中は演じると言うよりはおもしろおかしく説明するだけです。「真夏の夜の夢」などの喜劇16本はストーリーが皆同じとしてまとめるし、リチャード3世などの歴史劇は王様の形態模写だけで済ますなど。時短の為の工夫が一杯です。
ラストに「ハムレット」を持ってきて、オフェーリアのフロイト的分析と称して客を巻き込んで、イド、エゴ、スーパーエゴをやったりして、終わるという構成でした。
とにかく脚本がよくできています。客を飽きさせないように、しかもしっかり見たという満足感も与えるように、とてもよく考えられています。また、ヒロイン、ジュリエットやオフェーリア、クレオパトラに至るまで、演じるのが怪優赤星昇一郞というのも大きなポイントで、とにかく出てくれば「つかみはオーケー」なのも、大きいです。
やはり恋いったパロディ物は、欧米の方がおもしろいものがあるような気がします。400年以上のシェイクスピアをやり続けてきた、厚みと裾野の広がりのなせる技でしょうか。


2019年1月27日日曜日

CHAiroiPLIN 踊るシェイクスピアII 「TIC-TAC~ハムレット~」

2019年1月26日 13時開演 新大久保東京グローブ座
原作:W.シェイクスピア
振付・構成・演出:スズキ拓朗
出演:●エリザベス・マリー、清水ゆり、ジョディ、ジントク、増田ゆーこ、スズキ拓朗(CHAiroiPLIN )
ゲスト出演:柏木俊彦 、鳥越勇作、NIWA、野坂弘、福島梓、碧さやか、青木萌 、浅井裕子、岡村樹、小川しおり、折浜かじき、、小林らら、鈴木彩乃、多賀栞里、中井沙織、長岡ありさ、ニノ戸新太、葉月娃伊、松下高士、みぞぐちあすみ、森陽菜、伊藤凜音、飯塚 シオン、小口響郁、内山日奈加、白井安美、仲本詩菜、塚越光、吉田裕貴
香取直登(コンドルズ)山本光二郎(コンドルズ)
特別映像出演:近藤良平(コンドルズ)
久しぶりのCHAiroiPLINの公演はシェイクスピアのハムレットでした。歌と映像でストーリーの説明をして、心象風景をダンスで表すという構成でした。後半になるほどシリアスさがまして、いつものCHAiroiPLINの軽やかさが薄くなっていったのが残念です。シリアスになればなるほど、群舞のレベル差が目立ったのも気になりました。

2019年1月24日木曜日

コンプソンズ「ぶっ飛ぶ夢をしばらく見ない」

2019年1月23日 19時開演 下北沢OFFOFFシアター
脚本・演出:金子鈴幸
出演:金子鈴幸、星野花菜里、細井準、大宮二郎、宝保里実、鈴木啓佑、つかさ、善長まりも、シオザキ、並木雅浩
つかさと善長まりもはダブルキャスト
久しぶりに自分が理解できる芝居だったので、安心してみられました。理解できたからといって面白かったわけではなく、逆にだめなところが目につきました。もっとも気になったのは、のべつ幕なしに繰り広げられるギャグというか、だじゃれです。いっている本人も自信がないのか、突然早口の大声でだじゃれが挟まります。そのリアクションを受けるまもなく何事もなかったかのように芝居は続いていきます。衝撃的と言えば衝撃的ですが、それが続くと単にうるさいだけのノイズです。脚本に扇子は感じられる野ですが、その扇子を生かす方法を追求する前に、思い切りよく捨ててしまっていることが残念です。物語の多重構造を台詞で説明しすぎだと思います。それを減らせば、スマートに上演時間も短くできると思います。

2019年1月23日水曜日

どらま館ショーケース 2019

2019年1月21日 15時開演 早稲田どらま館
ゆうめい「粘土ごと」
脚本:池田亮
 作・演出・出演・美術:新井秀幸、池田亮、五島ケンノ介、小松大二郎、関彩葉、田中祐希、的場裕美、山﨑洋司

スペースノットブランク「共有するビヘイビア」
演出・出演:小野彩加、古賀友樹、中澤陽

関田育子「柊魚」
作・演出:関田育子
出演:青谷奈津季、黒木小菜美、小久保悠人、長田遼、我妻直弥

様々な芝居をサンプル的にみせていくイベントです。2017年から始まっているそうなので、今回で3回目のはずです。
全体の印象としては、「創作の途中」を見せられている感じです。3本ともオチがないというか、まだまだ成長途中というか、観ていて落ち着きません。
ゆうめい「粘土ごと」は教授のパワーハラスメントを告発している芸大の学生と、告発におびえ酩酊してお漏らしをしてしまう教授を並べることで、観念と実体の位相の差を明らかにして見せたところは面白かったです。
2本目のスペースノットブランク「共有するビヘイビア」は、あるダンスの振付稽古を再現するというかたちで、ダンスと芝居の融合のかたちをかんがえるというような趣旨に見えました。試みとして面白かったし、観ていて退屈するようなところもありませんでしたが、演出の言葉がペダンチックすぎて少々、恥ずかしかったです。
最後の関田育子「柊魚」は、最近観た「新聞家」にも通ずるような、「台詞に付随する動きや感情を極力排除して、言葉を裸にする」試みに見えました。ゆっくりと反復する動きとともに発せられる台詞は、確かに今までとは違った装いを見せます。しかし、私が面白かったのは、時々はさまる急激な動き、「素早く移動する」、「振り向く」といった動きとともに発せられる台詞は、普通に演劇的感情が入ってしまうところでした。



2019年1月20日日曜日

Ping Chong’s ドキュメンタリー・シアター Undesirable Elements「生きづらさを抱える人たちの物語」

2019年1月19日 14時開演 東京芸術劇場シアターイースト
脚本:Ping Chong(ピン・チョン)
演出:Ping Chong(ピン・チョン)
出演:岩本陽、大橋ひろえ、JuliaOlson、成田由利子、西村大樹、HARMY
今まで70本以上のドキュメンタリー演劇を作ってきたピン・チョン氏の公演ということで見にいきました。
ドキュメンタリー演劇といえば、何年か前に東京芸術劇場で観たリミニ・プロトコルが構成・演出した「100%東京」という演目がとても面白くて、それがドキュメンタリー演劇を観た最初だと思います。
オーディションで選ばれた6人の「生きづらさを抱えた人」が舞台に登場し、年代順に構成された自分の人生を語っていきます。台詞は慎重に並べられ、飽きないよう、だれないよううに演出されています。また、日本語と英語の字幕、手話通訳、手話で話す演者のためにそれを朗読する通訳までいました。
それで立ち上がってきた6人の人生は確かに感動的で、涙も出ました。
しかし、観ているだけの無責任な観客としては、そこからさらに一歩進めてさらなるドラマが見たいとも思いました。
「100%東京」の時には、それは「今の東京」のイメージでした。それに相当するような物が見たかったです。

Theatre Moments「PANIC/遺すモノ~楢山節考より~」

2019年1月17日 19時開演 上野ストアハウス
『PANIC』マレーシア×日本cast 上演時間約40分 英・中・日 字幕
原作:安部公房
構成・演出:佐川大輔
出演:Rorn Liew、Yiky Chew、Syafiq Syazimと、中原くれあ、佐川大輔

『遺すモノ~楢山節考より~』日本cast  上演時間約60分 英・中 字幕
原作:深沢七郎
構成・演出:佐川大輔
出演:青木まさと、今野健太、関谷美香子、ちょびつき雨宮、豊田可奈子、廣瀬正仁、中原くれあ
劇団Webサイトより引用

2018年12月5日~2019年1月6日
THEATRE MOMENTS初のアジアツアー公演決定!

作品は2013年せんがわ劇場演劇コンクールにてグランプリ・オーディエンス賞・演出賞を受賞した【パニック】。
マレーシアのONZ Productionに招聘され、
マレーシアの俳優3名とTHEATRE MOMENTS主宰の佐川&中原でのコラボ公演!
ツアー地は、クアラルンプール⇒マカオ⇒香港⇒ペナン!

引用終了

アジア4都市でのツアーを受けて、東京凱旋公演としている。
「パニック」は原作を読んだことがないのでどの程度脚色されているかわからないが、極めて寓話性の高い仕上がりになっています。アジアの都市ならどこでも当てはまりそうです。
面白かったのは、使用言語が日本語、英語、中国語、マレーシア語の4言語で、役者が喋った以外の3カ国語の訳が字幕としてでるすが、日本語が喋られていてその意味も理解していても、字幕にでないと「日本語訳がない」一瞬、戸惑ってしまうことでした。字幕込みで芝居だと認識しているようで、いつもは「字幕があると集中できない」と思っていたのに、びっくりしました。
演出は海外進出のお手本のようで、シンプルでわかりやすい台詞と、動きが大きく誰にでも理解できる身振り、手振りを使い、細かいニュアンスを伝えるよりはメインの考え方を伝えるようにできています。
そうなると私がいつも見ている海外進出など考えていない小劇場とは、微妙なラインの差ができて、そこに違和感を感じます。どちらが良い悪いではないのですが、「和」すなわち日本というものを意識的に考えているかどうかの差だと思います。


2019年1月12日土曜日

2018年観劇総括

1月(3本)
 12日 ロロ「マジカル肉じゃがファミリーツアー」
 17日 福原充則演出「秘密の花園」
 31日 泥棒対策ライト「夕暮れメトロノーム」

2月(3本)
 6日 青蛾館「宝島」
 15日 お布団「アガメムノン」
 20日 ハイバイ「ヒッキー・ソトニデテミターノ」

3月(3本)
 3日 烏丸ストロークロック『まほろばの景』
 9日 ガレキの太鼓「地上10センチ」
 15日 Mrs. fictions「再生ミセスフィクションズ2」

4月(3本)
 23日 ままごと「ツアー」
 25日 梅棒「Shuttered Guy」
 25日 CHAiroiPLIN「ERROR」

5月(17本)
 10日 Newyork 2018 Vol.6 BERNADETTE PETERS IN HELLO, DOLLY!
 11日 Newyork 2018 Vol.8 ESCAPE TO MARGARITAVILLE
 12日 Newyork 2018 Vol.9 CINDERELLA BY COMPANY XIV
 14日 Newyork 2018 Vol.10 ME AND MY GIRL
 15日 Newyork 2018 Vol.12 Dear Evan Hanson
 16日 Newyork 2018 Vol.13 COME FROM AWAY
 17日 Newyork 2018 Vol.14 Mean Girl
 18日 Newyork 2018 Vol.16 CAROUSEL
 19日 Newyork 2018 Vol.17 FROZEN
 20日 Newyork 2018 Vol.18 The Band's Visit
 21日 Newyork 2018 Vol.19 Once On This Island
 22日 Newyork 2018 Vol.20 SpongeBob SquarePants Broadway
 23日 Newyork 2018 Vol.21 Harry Potter and the Cursed Child Part1 & 2
 24日 Newyork 2018 Vol.22 Hamilton
 25日 Newyork 2018 Vol.23 My Fair Lady
 26日 Newyork 2018 Vol.24 THE BEAST IN THE JUNGLE
 27日 Newyork 2018 Vol.25 SWEENEY TODD

6月(7本)
 11日 モダンスイマーズ『悲しみよ、消えないでくれ』再演
 14日 地点「山山」再演
 20日 東葛スポーツ 『12時17分、土浦行き』
 20日 モメラス「青い鳥完全版」
 21日 地点「忘れる日本人」再演
 25日 Serial Number「Next Move」
 26日 「スワン666」

7月(6本)
 2日 東京デスロック+第12言語演劇スタジオ 『가모메 カルメギ』
 2日 Kawai Project 「ウィルを待ちながら──歯もなく目もなく何もなし」
 12日 成河一人芝居「フリー・コミティッド FULLY COMMOTED」
 17日 劇団献身 『死にたい夜の外伝』
 26日 昇悟と純子「Last Scene」
 31日 ゲキバカ「Death of a Samurai」

8月(10本)
 6日 CHAiroi PLIN 踊る童話「THE GIANT PEACH」
 6日 ロロいつ高シリーズvol.6『グッド・モーニング』
 9日 イデビアン・クルー「排気口」
 10日 阿佐ヶ谷スパイダース「MAKOTO」
 14日 したため「文字移植」
 15日 NICE STALKER「ロリコンのすべて」
 22日 大人の麦茶 第25杯目公演 「おしり筋肉痛」
 23日 劇団☆新感線「メタルマクベス Disc1」
 27日 入江雅人「ゾンビフェスTHE END OF SUMMER 2018」
 28日 ヤリナゲ「みのほど」

9月(1本)
 16日 東葛スポーツ「カニ工船」

10月(3本)
 4日 ゴールド・アーツ・クラブ「病は気から」
 12日 宮部と宮部ら「『お見合い』ーそこに愛はあるのかなー」
 25日 かわいいコンビニ店員飯田さん 第7回公演 『 手の平 』

11月(7本)
 1日 SPAC「授業」
 14日 good Morning No.5「看護婦の部屋~白の魔女~」
 14日 good Morning No.5「祝杯ハイウエイ」
 18日 長塚圭史演出「セールスマンの死」
 26日 ロロいつ高シリーズ vol.7「本がまくらじゃ冬眠できない」
 28日 ノゾエ征爾演出「命売ります」
 29日 シアタートラム ネクスト・ジェネレーション vol.11らまのだ『青いプロペラ』

12月(6本)
 4日 うさぎストライプ『空想科学Ⅱ』
 6日 城山羊の会「埋める女~私は正しい~」
 18日 風姿花伝プロデュース「女中たち」
 20日 地点「グッドバイ」
 21日 東葛スポーツ「平成のいちばん長い日」
 27日 梅棒「超ピカイチ」

2018年の観劇数はBroadway Musical 17本を含めて69本でした。国内に限れば52本と少なくなりました。これは仕事が忙しかったせいもありますが、新しい知らない劇団に対する興味が薄れたことも大きな原因だと思います。新しい劇団を見てもまた見たいと思えるような芝居になかなか出会えない。下手でも面白いと思える芝居がない。というか、へたくそな劇団は少なくなりましたが、だからといって面白い芝居ができるわけでもない、と言うことだと思います。
夏過ぎぐらいまで、個々の芝居の印象メモもほとんど書いてありませんでした。それらの多くは、今では内容も思い出せません。
そんな中で、新規で見て印象に残ったのは、
・烏丸ストロークロック『まほろばの景』
・東京デスロック+第12言語演劇スタジオ 『가모메 カルメギ』
・イデビアン・クルー「排気口」
・宮部と宮部ら「『お見合い』ーそこに愛はあるのかなー」
くらいでしょうか。
特に、宮部純子のくだらなさと不安な表情は心に残りましたし、イデビアン・クルーの振りを信じていないような感じは、梅棒のような情熱を前面に出してくるダンスが好きな私には衝撃的でした。多分、「振りを信じていない」というよりはダンサーのテクニックが素晴らしくて、全員が振付を客観視できているという事だと思うのですが、クールに踊りまくるという事ができるということを教えてくれた舞台でした。
同じダンスのグループで言うと、残念だったのは梅棒でした。今年の2作品はどちらも面白いものではありませんでした。というか、「GLOVER」があまりにも面白い感動的な舞台だったのでそれ以降がつまらなく見えてしまいます。ひょっとしたら「GLOVER」は奇蹟の舞台だったのかもしれません。
2018年の新しい傾向としては、現代演劇の古典の作品を見にいくようになったことがあります。イヨネスコの「授業」、アーサー・ミラーの「セールスマンの死」、ジャン・ジュネの「女中たち」の3本だけですが、何十年も生き残ってきただけの理由がそれぞれの戯曲にあるわけで、それと才能ある演出がうまくかみ合うと面白い舞台ができあがる確率はかなり高いものになります。





























コムルナカ「俳優たちの夜」

2019年1月11日 19時30分開演 原宿VACANT
原作:ミハイル・ゾーシチェンコ
出演:石村みか(てがみ座)、遠藤昌宏、大石貴也、近藤彩香(泥棒対策ライト)、桜一花、友野翔太、中井奈々子、野口卓磨、福原冠(範宙遊泳)、松浦佐知子(FMG)、三橋俊平、森一生(阿佐ヶ谷スパイダース)
野口卓磨、近藤彩香、大石貴也の3人の発案から始まった12人の役者、ダンサーの集団創作による公演というのが一番簡単な概要です。
「コムルナカ」というのは、1920年代のソビエト革命により始まった、都市部への爆発的な人口流入に対応する為のシェアハウスのようなもので、それまでのブルジョアのアパートを細かく区切り台所、風呂、トイレなどは共同で使用する生活形態です。
この共同生活を自分たちの集団創作になぞらえて「コムルナカ」と名付けたようです。
ミハイル・ゾーシチェンコはソビエトの風刺作家で、このコムナルカについて多くの短編を書いた作家です。
公演はこのミハイル・ゾーシチェンコの短編を元にした短いシーンと、皆で作ったダンスや詩の朗読を組み合わせた80分ほどのものでした。
嬉々として演じる役者たちを見ながらずっと考えていたのは、「この人たちはどこに向かおうとしていて、どこにいるのだろう」ということです。
その答えは最後の「めんどくさいゲーム」と名付けられたシーンにありました。これは、芝居の稽古の最初によくおこなわれるお互いをよく知るための「順番に指さしながら、相手の名前を呼び合う」という稽古そのものでした。
そのため全体の印象は、「ああ、この人たちは芝居の稽古場にいて、稽古をしている。ミハイル・ゾーシチェンコの短編もエチュードのための題材に過ぎない」というように見えます。全員がとてもリラックスして演じている様や、転換、音響操作、照明操作も役者自身がおこなっているのもその印象を強めます。
嬉しそうに演じている役者たちはとても好感が持てるものでしたが、芝居の稽古だけを金を取って見せられてもなあという想いも捨てきれない一夜でした。


2019年1月7日月曜日

これは演劇ではない This is not the Theater.新聞家「遺影」

2019年1月6日 19時30分開演 こまばアゴラ劇場
作・演出:村社祐太朗
出演:花井瑠奈、横田僚平
プロンプター:内田涼
「これは演劇ではない This is not the Theater.」という挑発的なタイトルに惹かれて、とりあえず時間の合う新聞家を見ました。
二人の俳優が順番にぼそぼそと切れ切れに言葉を発する。その言葉は文章のようでもあり、イメージの羅列のようでもある。ただ、地点のような独自の発声のメソッドがあるようにもみえず、平文に近いと思います。Twittwerなどによると、その内容はある結婚式について語られたものらしいのだが、私の理解できる範囲ではそのような言葉はなかったと思います。全く集中力のない私には、向いていない演目だと言うことはよくわかりました。公演は25分ほどの短いもので、役者の「ありがとうございました」という言葉で唐突に終わります。
その後、質問会という観客からの質問に答える時間が設けられているのですが、そこでの質問を聴いていると驚いたことにこの演目を成立しているものとして全面的に受け入れて、その上でプロンプターの存在、不在とか、小道具のハンドクリームについてとか細かい質問がされていることでした。
私にとっては、何を意図してこのようなかたちでの公演がなされているのか、何を目的としているのか全く理解できませんし、「何がなされているのかわからないが、面白い」とも言いがたい状況でした。