2012年12月3日月曜日

離風霊船「The Thrity」


2012年11月23日 15時開演 大橋編 19時開演 伊東編 中野シアターボンボン
作・演出:大橋泰彦・伊東由美子
劇団30周年記念公演第二弾。同じエレベーター前という設定で、2人の作家が書き競うという、うまくいけば面白くなったかも知れない試みでしたが、結果は残念なものでした。マチネの大橋編は一応まとまってはいたのですが、離風霊船らしい驚かしのシーンも小粒だし、大胆な転換もなしで、肩透かしを食らった感じでした。
伊東編は、さらにひどいありさまでした。途中で書けなくなって、過去の作品の場面の抜粋を強引に繋げただけにしか見えません。脚本として完成しておらず、途中で投げだしたように見えます。前回、初めて離風霊船を見た私にとっては、何が面白いのか全くわかりませんでした。
同じ劇団を何回か続けて見ていくと、無意識のうちにそのたびごとに新しいものを見せてくれることを望むようになる。新しいものが見られれば、おもしろいと思い、それがなければ、つまらないと思いやすいものです。
若い劇団は、路線も固まっていないので新しいことも出やすいが、30年も続いている劇団は、劇団のカラーも定まっているので、そればかりを追い求めてもしょうがないと思います。
ベテランの劇団は、そのカラーをげ「芸」だと思って楽しむ意識が必要だと思います。

イキウメ「The Library of Life まとめ*図書館的人生(上)」


2012年11月22日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:前川知大
事前にオムニバスのストーリーが錯綜してわかりにくいという噂が流れてきたので、少し心配しながら見に行きましたが、幸いなことにその心配は杞憂に終わり、心穏やかに楽しく見られました。
死んだ人間が成仏する前に立ち寄る図書館。ここにはすべての人の前世、現世、来世が書かれた本があるらしい。ただし、目録はなく、ひたすら読みつづけて、探すしかない。自分の来世を知りたい人、愛する人を探す人、様々な人が訪れる。そんなSF的な設定の元、六つのエピソードがイキウメ特有のデリケートなシーンのクロスフェードを繰り返しながら、語られていく。
賽の河原の鬼の話や、万引きのプロと懸賞で暮らしている女性のラブストーリーなど、ひとつひとつが、共感できやすい優しいエピソードに仕上がっている。前作のミッションが、クールでやもすれば突き放した冷たいともとれる印象だったのに比べ、今回の方がはるかに面白い。
イキウメ得意のSF的な設定も嫌いではないし、次回作も見る気になった。
その後、時々読ませていただいている「6号通り診療所長のブログ」の記事によれば、この作品が今までに上演したオムニバス短編集を再構築したもので、「謎の図書館に出入りした人達が、書架の本を開けた時、その本を読む役者以外の全キャストが、その本の内容を演じる。」という構成になっていることを初めて知りました。以前の公演を見ていないので、先入観なく見たのがよかったのかもしれません。

2012年11月25日日曜日

ポツドール「夢の城」


2012年11月21日 19時30分開演 池袋東京芸術劇場シアターウェスト
作・演出:三浦大輔
当日パンフレットに日本人特有の虚無感への言及があったが、舞台装置もそれをストレートに表したものだった。床には万年床がひかれ、えたいの知れないゴミが散らばり、壁はポスターが隙間なく貼られている。天井にまで国旗などが貼られている。ものに溢れた床、壁、天井に囲まれた空間には何もない。肉体すらもない。役者はほとんどの時間を寝そべって過ごし、立ち上がるのは、トイレに行く時か、部屋から出入りする時だけだ。台詞もなく繰り返される動きは、この空間の空虚感を強調するためだけに、おこなわれているようだ。
いろいろなところで書かれている過激な性描写は、出来の悪いエロビデオみたいでいただけない。演出家のサービスだと思うが、悪いサービス休むに似たりというか、邪魔にすらなつていると思う。
岸田戯曲賞授賞後の第一作を、これにした作者の勇気には感心するが、今これを再演することにどれだけ意義があるだろうか。
ポツドールは、この虚無感を抱えてどこに行くのだろうか。

2012年11月21日水曜日

ラッパ屋「おじクロ」


2012年11月16日 19時開演 新宿紀伊國屋ホール
作演出:鈴木聡
一言でいえば、下町人情喜劇。松竹新喜劇や吉本新喜劇でやっても、おかしくないような脚本である。メーカーの事業撤退により倒産の危機に直面した下請の町工場を、社長の幼馴染でもある副社長が、会社の寮として使っていた自宅を売ってとりあえず救う。そして、最後に復活を誓って、ももクロの唄を、歌い踊る。
その踊りは、おじさんとしては、よく訓練されていて、見事なものだったが、なぜかしつくりこなかった。
劇中でいかにももクロが素晴らしいか、おじさんたちの胸をうつかが散々強調されるのだが、ももクロにそんなに思い入れのない私としては、苦笑いするしかなかつた。
そのまま、唄に突入するので、その強引さが、違和感として残るのだと思う。
十分面白かったが、次回は見なくてよい感じだった。

2012年11月16日金曜日

パルコ/キューブプロデュース「こどもの一生」

2012年11月15日 19時開演 渋谷パルコ劇場
作:中島らも
潤色:桝野幸宏
演出:G2
振付:小野寺修二
中島らもの本は、とてもおもしろくて、ラストがSFホラーチックでよくかけているし、演出も的確で破綻がない。役者も谷原章介を除いてみんなうまくて、特に破綻がない。よくできた「お芝居」だが、それだけで、私にとっては、特におもしろいものではなかった。みんな優等生で、スムーズに芝居が流れ、終わっていく。役柄を無難に演じているだけの芝居になんのおもしろみがあるだろうか?
私が見たいのは、役を超えて見えてしまう役者の人間性なのだと思う。小さな劇場で行われる若い劇団の芝居が好きなのは、役を演じきれない役者の苦し紛れの個性がよく透けて見えるからだと思う。
映像を芝居の中で使用するのがはやりのようで、この芝居でも台詞のポイントとなるところを、あたかもプレゼンのように文字で見せたり、殺人のシーンで血しぶきを一瞬見せたりしていたが、一つ一つは的確でも、続くと説明的すぎてくどすぎる。


猫のホテル「峠越えのチャンピオン」


2012年11月15日 14時開演 下北沢ザスズナリ
作・演出:千葉雅子
鋼鉄村松の余りの出来の悪さの反動のせいか、面白く見られました。同じ20年選手なのに、この差は何なんでしょうか?
猫のホテルにしても、気になるところはいろいろありました。特に、議員秘書の向井だけがあまりに一途に描かれているので、薄っぺらに見えて仕方がありません。他の登場人物は、大なり小なりズルくて人間臭くてリアリティがあるのに、向井だけは、深みが感じられません。
それなりに面白かったですが、次回見に行くかどうかは微妙なところです。
いや、次回作は演出が今とても気になるノゾエ征爾なので、とりあえず見に行くでしょう。

2012年11月15日木曜日

ベッド&メイキングス「未遂の犯罪王」

2012年11月13日 19時30分開演 錦糸町済みだパークスタジオ
作・演出:福原充則
高尚な思想や斬新な表現がなくても、おもしろい脚本と的確な演出、よい役者がうまくかみ合えば、おもしろい芝居ができることを証明しているような舞台でした。この前の鋼鉄村松の台本も、ここの役者がやったらおもしろく見られたかもしれません。
私が一番びっくりしたのは、状況劇場的演出、「私のお兄さんを知りませんか」と叫んで、正面向いてミエを切る、すると派手な音楽が大音量でかかり、舞台が真っ赤になる。というような演出が方法論として成立し、それを観客も違和感なく受け入れていることでした。私の中では、そのような演出はそれを支える過剰なロマンチックでファナティックな論理がなければ成立しないという感覚あったので、そのようなバックボーンなしでも成り立っているのを見るのは、軽いショックでした。きっと、この演出家は状況劇場というか、唐十郎が大好きなんだと思います。
役者では、ヒロイン役の野口かおるが素敵でした。泣いたり笑ったり叫んだり、自由奔放に暴れまくって、最後には本物の自動車でセットに突っ込んできました。まるで、可愛いくて若い李麗仙のようでした。他の芝居をするところも見てみたいです。

2012年11月13日火曜日

iPhone5

購入前の楽しい悩みの時期を経て、昨日11月12日ついにiPhone5を購入しました。ついでに、キャリアもソフトバンクからauに変更しました。
iPhone5にした最大の動機は、iOS5からiOS6にしたところ全体の動作が緩慢になって何とするにも1拍待たされるのに耐えきれなくなったことです。
iPhone5にしてみての感想は、
薄い!
軽い!
早い!
綺麗!
ということで、とりあえず満足です。
今後は、iPadのWi-Fi機を購入して、デザリングを試してみるつもりです。

モダンスイマーズ「楽園」

2012年11月12日 19時30分開演 吉祥寺シアター
作・演出:蓬莱竜太
テレビの舞台中継で石田えり主演の芝居を見て、ずいぶん堅い、きっちりした脚本を書く人という印象だった蓬莱竜太でしたが、この芝居はとても柔らかい、やさしいという感じでした。
小学生の頃、男子なら誰でも夢見る「秘密基地」でのごっこ遊び。「いじめ」と「差別」が混在するごっこ遊びの最中に事故が起き、一人の女子の運命が大きく変わってしまう。
そんな物語です。
この芝居の肝は、役者が大人になった衣装で小学生を演じていくところです。台詞と動きは小学生、衣装は大人なっての職業を表す。所々でストップモーションと字幕により、その衣装の謎が明かされていきます。コンビニ店員、プロレスラー、工務店、警察官。この衣装と台詞、動きの異差が微妙なバランスを保って、大人が小学生を演じることの痛々しさから救っていると思いました。
もう一つの、そして最大の肝は、女子小学生役の深沢敦です。彼が出てきてから、それまで多少の不安定感、大人の衣装で小学生を演じることへの違和感は吹っ飛び、物語はいきいきとダイナミックに動き出します。大人なのか、小学生なのかという区別などは関係なくなり、ストーリーの中にぐいぐい引き込まれていきます。チビで、デブで顔もでかいのに、大きくてよく通る声と、演技力で見る者を引きつけてやみません。役者の力のすごさを思い知らされました。
次回作も是非見たいと思います。

鋼鉄村松「高橋ギロチン」

2012年11月9日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:ボス村松
「鋼鉄村松」というふざけた劇団名と、バブルムラマツとか、サラリーマン村松という「劇団名」を名のるというわけのわからないシステムに惹かれて見に行きましたが、始まったとたんに後悔しました。正しくは、前説が始まったとたんに他の芝居を見に行った方がよかったと思いました。
前説は、作・演出のボス村松が何を言っているかわからないラップ調でやったのですが、完全にグダグダで滑りまくり、見かねた劇団員が袖から声をかけてやっと終わるという演出すらも決まらずに滑るという有様でした。
今にして思えば、この前説が芝居のつまらなさを象徴しているようでした。
おもしろい芝居をしたいという意欲があってアイデアも一応あるが、芝居のスキルは低く、戦略や方向性がないので、すべて不発に終わる。その繰り返しに、観客も失笑するしかない。誠に、残念な結果しか残らない。
ストーリーは、秋葉原無差別殺傷事件と死刑廃止論を組み合わせてたもので、犯人像はカミュの「異邦人」そのままという感じでした。
その脚本を、方向性も示さないままもっとおもしろく、もっとおもしろくと攻め続けるだけの稽古をして、その結果、てんでばらばらにオーバーアクションで演じ始める役者達。その交通整理もできないまま本番投入という感じでした。
結果、なぜかオーバーアクションを求められなかったダクト屋の親方、ミニ阿藤海みたいな松井さんと、ダクト職人の多田無情の普通の芝居だけが光って見えるという残念な結果になってしまったように見えました。
しかし、観客は通路までぎっしりの超満員で2時間休憩なしなので、途中で出ることもできず、終演後のアフタートークまで見る羽目になってしまいました。アフタートークの相手は、「8割世界」の主催者の鈴木雄太という人で、芝居のだめ出しと、冒頭シーンの再演出をするという内容でした。
時間的には15分くらいのものでしたが、これが本編よりもおもしろい。観客も一番笑っていました。
こんな芝居を20年以上続けてきたのだとしたら、その意志の強さには感服しますが、次回は見に行かないでしょう。

2012年11月11日日曜日

ハイバイ「霊感少女ヒドミ」


2012年11月9日 16時開演 小竹向原 アトリエ春風舎
作・演出:岩井秀人
映像:ムーチョ村松
全編映像投影の60分。装置は鍵の手になった白パネルに、引戸が一つだけ。
照明は、ネライが2ヶ所のみ。
ほとんどの場面は、フロントブロジェクションのの映像の中、顔が様々な色になってもかまわず演じられる。
「地点」に影響を受けた称する繰り返しがリズミカルなナレーションに、フルシンクロするミッシェルゴンドリーのパクリと豪語する映像が気持ちよい。
ストーリーはど直球の純愛ラブストーリー。ゾンビの、そしてヒドミの片想いがせつなく悲しいが、最後に穏やかなカタルシスが映像とナレーションによりもたらされる。
芝居が映像を取り込む方法の一つの答えがここにある
背景にしてはダメだ。安くなるだけだ。
シンクロしなければ。
上田遥が、ちょっとげすくてかわいい。

2012年11月9日金曜日

アンファンテリブルプロデュース「愛のゆくえ(仮)」

2012年10月30日 15時開演 上野ストアハウス
脚本:前川麻子・高木登
Aプログラム 演出:寺十吾 出演:前川麻子・瀧川英次
一つの脚本を何度かの試演会を重ねて、三つの配役、三つの演出で上演するという試み。3本で一つの世界を表しているような気がして、スケジュールの都合でAプロしか見に行けなかった私は、この覚え書きがかなり書きにくかった。しかし、ネット上の劇評や感想を読んでみると、三つの異なった世界の表現を目指していたようで、やっと、踏ん切りがついて、書いてみる気になった。
ストーリーは、兄と別れ弟と再婚した女が、夫を捜しに兄のアパートに現れるところから始まる。本棚や、テレビが倒れ、乱闘の後が残る室内で慌てて包丁を冷蔵庫に隠す男、乱闘の後を気にもせず、夫のゆくえを訪ねる女。男は、別れた女に未練たらたらで、女もまんざらざらでもない様子。そんな二人の関係が、簡潔な台詞の中で十二分に表されていく。さすがに何度も試演会を繰り返して、練り込まれた脚本、演出だけのことはある。
さらに、兄の弟に対する愛憎入り交じった感情が語られ、ついに弟を殺してばらばらにしたことが語られる。女はさして驚きもせず、死体の処理に協力して必要なものを買いに行く。ラストでは、オープニングでのぞき込んでいたいた押し入れの中から、物音がして実は弟がまだ生きていることが暗示される。
男と女の愛情関係が、狭いアパートの一室で濃密に描かれていた。

2012年10月30日火曜日

アトリエダンカン/デラシネラプロデュース「日々の暮らし方」

2012年10月27日 18時開演 池袋あうるすぽっと
原作:別役実
脚本:きたむらけんじ
構成・演出:小野寺修二
出演:南果歩、中山祐一朗、山田悠介、河合ロン、藤田桃子、矢沢誠、吉村和顕、小野寺修二
2週間以上続いた現場がいったん終わり、久しぶりの休みに見に行きましたが、全く集中できず、舞台を見ていても知らないうちに目を閉じて意識を失っていることがたびたびありました。
舞台は、芝居+ダンスという形で、ある日突然失踪すると夫に宣言された妻の意識と行動が展開されているようなのですが、ダンスがそれを説明するような、イメージを膨らませているような形で展開されているようでした。「ようでした。」と言うのは、私には全くそれが理解できず、ダンスになる必然性も感じられなかったからです。
私自身の疲れのせいか、感受性のなさのせいかわかりませんが、久しぶりに、全くおもしろくない舞台となってしまいました。
小野寺修二の名前は、首藤康之の「ジキルとハイド」の振付監修や、「叔母との旅」のステージングでよい評判を聞いて、期待して見に行ったのに残念です。

2012年10月14日日曜日

ブス会「女の道2012」

2012年10月11日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:ペヤンヌマキ
出演:安藤玉恵、もたい陽子、髙野ゆらこ、松本まりか、内田滋、尾倉ケント、仗桐安
とあるAVの撮影現場。その昔は、SMの求道者として知られていたが、こどもができて以来、金のために仕事をこなす三代目リカコ。昔のリカコを忘れられず尊敬するカエデ。巨乳と自在に操れるセルフ潮吹きを武器に業界を渡り歩くルミ。30歳にして、カムバックしたカスミ。今日の撮影の主役で、元アイドルのマリナ。
撮影が長引く中、女達の本音が次々と明らかになり、様々な人生模様が明らかになっていく。
ラストで、あくまでロリキャラを貫いたマリカが27歳の子持ちであることが明らかになる。もっともしたたかだったのが、ロリキャラでたよりなげだったマリカだったというオチ。
よくあるストーリー展開とはいえ、そこそこおもしろかったのですが、私が舞台で見たいものはなにかということを考えて直してしまう芝居でした。
私が舞台で見たいものは、たとえて言えば、フルスイングなんだと思います。その結果、ホームランなら万々歳。豪快な三振でも、まぐれの振り逃げでもかまわない。まず、フルスイングありきで、結果はまた、別の話だと思います。
この芝居のように、技巧的にファールで粘ったり、セーフティーバントで出塁を狙うようなやり方は好みではありませんでした。

2012年10月8日月曜日

鹿殺し「田舎の侍」

21012年10月7日 19時開演 下北沢駅前劇場
作:丸尾丸一郎
演出:菜月チョビ
出演:オレノグラフティ、丸尾丸一郎、菜月チョビ、山岸門人、橘輝、傳田うに、円山チカ、坂本けこ美、山口加菜、水野加奈子、鷺沼恵美子、浅野康之、峰ゆとり、近藤茶、丸山厚人、山本光二郎、美津乃あわ
この前に見た子供鉅人と同じ大阪出身の劇団で、きしくも演目も同じ時代劇。でも、この圧倒的なおもしろさの差は、何が違うのだろう。
相変わらずの、あふれんばかりのサービス精神。そして、それを確実に観客に伝えるノウハウ。殺陣もちゃんと振り付けて、あらん限りの力で演じる。そこがすがすがしく、おもしろい。初主演のオレノグラフティは、1本調子だが、ライバル役の山岡門人の屈折した役とあわせてみていれば、飽きることはない。
ゲストのコンドルズの山本光二郎は生臭坊主の役がぴったりだが、ダンスシーンで神妙にバレー風の振りで踊るのもおかしい。
いつもより、かぶり物が少なかったような気がするが、キンキラキンの大仏様のコスプレが妙にセクシーだったのでよしとしよう。

岩井秀人「ヒッキー・ソトニデテミターノ」

21012年10月7日 14時開演 渋谷パルコ劇場
作・演出:岩井秀人
出演:吹越満、古舘寛治、チャン・リーメイ、有川マコト、占部房子、小河原康二、田村健太郎、金原祐三子、岸井ゆきの
初めてハイバイ以外での彼の作・演出の芝居を見て、改めて彼の才能の素晴らしさに驚嘆しました。
昔、平田オリザの作品を青年団と、プロデュース公演で続けてみたことを思い出しました。青年団では、「東京ノート」と、「S高原から」、プロデュース公演は、円形劇場の「女子高生」と、今はなきシードホールで行われた題名も忘れてしまいましたが、緑魔子主演の芝居でした。結果は、プロデュース公演の圧倒的な勝ちでした。芝居の完成度、感動の深さ、一言で言えば、とてもおもしろい芝居だったのです。
特に「女子高生」は、現役女子高生を1ヶ月のワークショップの後、それを元に芝居を作るという試みで、その生々しくもすがすがしい等身大の女子高生の芝居に感動したことを今でも覚えています。
自分のホームである劇団の芝居よりも、外部であるプロデュース公演の方がよい芝居ができるのが不思議で先輩に尋ねたところ、「長くやっている劇団では、いろいろしがらみが生じて、それが芝居の足を引っ張ることがある。」と、言われました。今考えると、配役に関して言えば、劇団という狭い範囲での配役よりも、プロデュースでの方がよりベターな配役ができる可能性が高いと言うことでしょうか?
個人的なしがらみの少ない、役にあった役者を集めて、プロフェッショナルに演出して行ければ、よりよい芝居ができるということでしょか?
現実にはプロデュース公演にも、様々な問題があることはわかっていますが、この芝居はうまくいった例だと思います。ハイバイでは見えにくかった岩井秀人の考えや、感性がくっきり見えてきました。
岩井秀人は、引きこもりも、その家族も、きわめて客観的にどちらかに肩入れすることなく描いています。そのクールな台本を、おのおのの役者が、素直に、奇をてらうことなく演じていくことで、各自の苦悩や希望が明確に浮き彫りにされていく。素晴らしい舞台でした。
一つ残念なのは、主役の吹越満で、彼はこまかい動作(鼻をかく、うつむく、口に手を添える、など)をさも意味ありげに行う達人で、それがこの芝居では人物像をぼんやりさせるだけで、時には邪魔になっていたことでした。

2012年10月7日日曜日

子供鉅人「幕末スープレックス」

2012年10月4日 19時30分開演 阿佐谷ザムザ阿佐谷
作・演出:益山貴司
出演:億なつき、キキ花香、小中太、影山徹、益山寛司、益山貴司、林祐介、大歳芽里、ミスター、益山U☆G、一川幸恵、岡野一平、尾場瀬華子、ぎぃ子、クールキャッツ高杉、小嶋海平、小林欣也、小林紀貴,永沼伊久也、東ゆうこ、三ツ井秋、山田春江
自分の芝居に関する趣味趣向の限界を思い知らされた芝居でした。たとえば、次郎のラーメンは一部の人にとっては最高のラーメンであったとしても、私にとっては料理以前のものであり、味云々の前に下ごしらえもされていなくて、金を払って食べる気がしないものであるように、子供鉅人の芝居も、楽しむ気もしないタイプの芝居でした。
おのおのの役者の演技力はもちろんへたくそなものでしたが、情熱や、一生懸命さはわかります。しかし、それをうまく観客に伝えられない演出には、大いに問題があると思います。作・演出の益山貴司も役者として舞台に登場しますが、自分がやっていることに照れや、恥じらいがあるように見えました。それが悪い方に影響して、舞台の爆発力をなくしているようでした。
もちろん、私が年を取ったせいであのような舞台をおもしろいと感じなくなったこともあるでしょう。40年前なら、おもしろいと思ったかもしれません。
残念な出逢いだったと言うしかありません。

2012年10月4日木曜日

劇団本谷有希子「遭難」

2012年10月3日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:本谷有希子
出演:菅原永二、美波、佐津川愛美、松井周、片桐はいり
黒沢あすかの病気降板に伴い、主役が女優から男優(菅原永二)に変更されるという大胆きわまりない交代劇のあった「遭難」を見ました。情報不足で、交代自体も劇場でもらったパンフレットを読むまで知りませんでしたし、黒沢あすかについても全く知らなかったので、彼女が演じていたらどんな芝居になったのか、想像することもできません。
本谷有希子は、この芝居で新しい悪人を描きたかったのだと思います。自分が大好きで、自分の気に障るものは、盗聴や盗撮、ストーカー行為をしてでも排除していく。その行動が、周りの普通の人々の悪意を引きずり出していく。そんな極悪人を演じるには、菅原永二は優しすぎるというか線が細すぎると思います。
ラストシーンはすべての悪事がばれ、自殺未遂の生徒に電話越しに謝らせられた(具体的な台詞は聞こえません)のち、一人残って、隠し持っていたお菓子を食べるというものですが、ここで、「それでも私は今まで通り生きていく。」というふてぶてしさが見えれば、世界が一挙に広がったと思うのですが、私が感じたのは、そのまま死んでしまいそうな弱さだけでした。
たぶん、菅原永二の本来の人の良さが裏目に出たのだと思います。

2012年10月3日水曜日

はえぎわ「ライフスタイル体操第一」

2012年10月2日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:ノゾエ征爾
出演:滝寛式、川上友里、笠木泉、本多力、竹口龍茶、富川一人、踊り子あり、高松呼志響、鈴真紀史、町田水城、鳥島明、金珠代、井内ミワク、山口航太、萩野肇、竹田邦彦、加藤素子、佐藤賀数江、阪口美由紀、高山久子、美恵サンダ、渡邊敦子、宇津木昆台、立堀貴子、うちやまきよつぐ、石原裕鵬、ノゾエ征爾
「起きる、食べる、排泄する、寝る。これが人生の基本動作、これ以外に何をするかが人生。」と、結構、大上段に振りかぶったテーマの今回の芝居ですが、大上段に見えないところが、はえぎわの芝居のよいところだと思います。人生の何かが、様々なエピソードとして語られていき、それをつなぐように、おばあさんがバイクを押して歩いて行きます。そのすべてが、さらりと、優しく描かれていく。優しい風のような舞台でした。
今回の芝居には、公募した60歳以上の方が、多数出ていました。一部、埼玉ゴールドシアターや、楽塾に所属されている方もいるようですが、ほとんどは素人です。彼らをうまく誘導して、彼ら自身の人生がさりげなく舞台に現れるように構成したノゾエ征爾の演出力は、たいしたものだと思います。
公募グループの魅力に勝てなかったのか、出番が多くなった分だけ、芝居のテンポが遅くなり2時間が長く感じられたのは、少し残念ですが、それも許容範囲でしょう。
次回作もぜひ、見たいです。

2012年10月2日火曜日

音楽劇「ファンファーレ」

2012年10月1日 19時30分開演 三軒茶屋シアタートラム
脚本・演出:柴幸男
音楽・演出:三浦康嗣
振付・演出:白神ももこ
出演:坂本美雨、今井尋也、今村洋一、初夏、大柿友哉、北川結、重岡佐都子、清水久美子、名児耶ゆり、西尾大介、bable、柳瀬大輔、
前回芝居を見てから、2週間以上間が空いてしまったので、その間に勝手な期待が膨らんでしまっていました。Twitterに時々上がってくる稽古の進行状況などを見るたびに、何か素晴らしいものが見られるのではないかと、妄想を楽しむ自分がいました。
しかし、現実はそう甘くもなく、結構、残念な結果に終わってしまいました。
物語は、ファーレという「ファ」と「レ」しか歌えない女の子の成長の話。孤児のファーレは両親を見つけるため、うたうたいになるべく養い親のレッサーパンダ先生の元を飛び出し、音盗人として暮らすうちオーディションに参加する。やがて、そのオーディションの審査員のアロンアルファと結婚し、両親がすでになくなっていることを知るという、3幕ものです。
各幕ごとに違う女優が、ファーレを演じるのですが、幕が進むごとに魅力が半減してていくのがわかります。特に、第3幕は、歌手の坂本美雨がつとめるのですが、近くで見ると結構ブスで、芝居もできるわけでもなく、存在感がとても薄いです。
一番残念なのは、テーマソングで、ファーレが歌う都合上ファとレの2音で主旋律ができており、魅力的な歌とはとても思えません。
全体のアレンジは、ニューフォニュームなどを生かして、とても魅力的にできているのですが、そのアレンジ力をもってしても、テーマ曲の残念さは救えませんでした。
最後に、音響が台詞の時にリバーブをかけ過ぎて、台詞が聞き取りにくいのがとても気になりました。