2013年9月24日火曜日

Good Morning No.5「ジャンキ−・ジャンク・ヌードット」

2013年9月23日 18時開演 下北沢駅前劇場
作・演出:澤田育子
出演:藤田記子、MINAKO、佐藤貴史、小椋あずき、野口かおる、佐久間淳也、増野彩夏、大久保見名子、久保田南美、石田周作、脇知弘、澤田育子
実は同じ日のマチネで、「言いたいことを言う。やりたいことをやる。」という、同じような趣旨のメガロザを見ていたのですが、こちらはさすが20年にもなるであろうキャリアのたまもの、同じような趣旨でも、きっちり見られる形にしあげてきたので、1時間半、ほぼ笑いっぱなしでした。もともと、野口かおるめあてで見にいったので、主催者の二人については全く知りませんでした。あとで調べてみたら、拙者ムニエルとカムカムミニキーナの役者で、キャリアも充分、伊達に40歳になっていませんというところでしょうか。ナカミチ円陣の時は、うるさい印象だった小椋あずきも、あのときよりはるかに高いテンションなのに、うるさくなくて面白いし、野口かおるは、女体盛りになるは、芸者髷のカツラに白塗り、衣装はセーラー服で飛ばしまくるはで、大暴れでした。主宰の二人も、負けじと上半身の後ろ姿とはいえ、ヌードになるは、宙づりになるはの、大活躍でした。

メガロザ「アンド ヒア アイム スティル アライブ」

2013年9月23日 15時30分開演 下北沢 OFF- OFF シアター
作・演出:目黒フタエ
出演:田村麻未、岩井由希子、渋谷優史、小田直輝、古澤清貴、加瀬恵、倉垣まどか、大野夏生、太平、目黒フタエ
チラシの裏の推薦文をノゾエ征爾が書いていて、面白そうなので見にいきました。そういえば、鳥山フキの時もノゾエ征爾の推薦文が推薦文がきっかけで見にいって、私には合わないと後悔したことを、観劇後思い出しました。なにげない主催者との関係をさらりと書いて面白そうだと思わせてしまうのはノゾエ征爾の文才であり、その芝居が面白くないのは、ノゾエのせいではありません。
「技術も経験もセンスも関係なく、言いたいことを言おう。やりたいことをやろう。」という趣旨のもと、並べられた寸劇とその間をつなぐ歌や踊りという構成ですが、やはり、言いたいことを言うのには、技術も経験も、そして何よりもセンスが必要なんです。主催者は「キチガイ」を自称していますが、キチガイのふりをしているだけなので、「キチガイの論破できない鉄壁の論理性」はかけらもなく、ただただ、見苦しいだけです。年がもっと近ければ、あのドンキホーテ的な精神に共感できたのかもしれませんが、親子ほど離れていては無理な話です。

遊園地再生事業団「夏の終わりの妹」

2013年9月18日 19時開演 池袋あうるすぽっと
作・演出:宮沢章夫
出演:小浜正寛、松村翔子、やついいちろう、上村聡、牛尾千聖
前々から名前だけは知っていた宮沢章夫の遊園地再生事業団の公演と言うことで、行ってきました。
大島渚の映画「夏の妹」を見て、なぜあんな映画を撮ったのかインタビューしたいと思ったが、住んでいる町にはなぜかインタビュー資格制度があり、それに合格しないと人にものを聞いてはいけない決まりがある。
「3・11以降、みんな聞きたいことがたくさんあるのに、誰もそれに答えてくれない。」という状況をモチーフに、5人の役者がほとんどモノローグで話す舞台でした。
舞台は、縦に五つに分割され、役者は自分のステージから一時的に退場することはあっても、他のステージに移動することはない。ほとんどモノローグで、時々、対話と言うよりは同じ台詞を繰り返すだけ。少々、退屈な舞台でした。
登場人物は、自分自身を演じるという設定なので、4人は、役者らしく自分を客観視して演じていて、すっきりとした雑味のない芝居でしたが、やついいちろうだけはエレキコミックというお笑い芸人なので、自分自身の客観視が甘いというか自分を信じているというのか、なんのてらいもなく喋っていて、その雑音が人物像をより太く、確かな存在としているように見えて、興味深いものがありました。

砂地「Hedda」

2013年9月18日 14時開演 新宿 Space 雑遊
原作 : H・イプセン
構成・台本・演出 : 船岩祐太
出演 :稲葉能敬、小山あずさ、岸田研二、田中壮太郎、小瀧万梨子、如月萌、杉森裕樹
シェイクスピアについで世界中で上演されていると言われるイプセンの戯曲を元に、演出の船岩裕太が構成、台本、演出した舞台でした。元の戯曲は読んでいないので、どのように構成されたのかは全くわかりません。全体の印象としては、イプセンの代表作「人形の家」と同様に、近代の女性の自我の目覚めがテーマのようです。イプセンに全く興味のない私が見にいったのは、前回シアタートラムで見た「disk」が、他の小劇団とは全く肌触りの違う、端正な芝居が気になっていたからでした。今回もその端正さは基本的に変わっていませんでしたが、それよりも、今回の演出の最大のポイントは、「役者の体格」でした。
主役のヘッダを演じる女優は、背も高く、太っていると言うよりもがっしりした体型で厚みもある立派な体格の持ち主でした。それが、ニーハイのハイヒールブーツを履いて、ミニ丈の黒のピーコートを着ているのですから、SMの女王様かと勘違いしてしまいそうです。周りを取り巻く新婚の夫や、昔の恋人は学者で、近代を表していると思われますが、みんな、背が低く、がりがりに痩せていて見るからに頼りない存在です。唯一、ヘッダに対抗できそうな人物は、旧世代を表している判事ですが、体格こそなんとか釣り合っているものの、Tシャツにトレーニングパンツというラフな格好で、ぼんやりした印象が残ります。
話が進んで行くにつれ、体格の差の意味が明確になっていき、なんとわかりやすい演出だろうと思わず、笑ってしまいました。

2013年9月23日月曜日

財団、江本純子「常に最高の状態」

2013年9月17日 20時開演 渋谷ギャラリー  LE DECO 5F
作・演出:江本純子
出演:千葉雅子、松本まりか、佐久間麻由、荻野友里、柿丸美智恵
当日パンフレットに「今回の公園の評判が良くても悪くても、何年か後に再演したい。」書いてありましたが、その言葉の通り、実に良くできた構成の芝居でした。ハッチャケられるベテラン女優と二人と若くて魅力のある若手女優三人がいれば、若手のキャラクター付けさえ間違えなければ、面白く出来上がること間違いなしという芝居でした。
おにぎりの「トークトワミー」の時にも思ったことですが、脚本家としての江本純子は、結構構成力もあり、少し意地悪な人間観察力に裏打ちされた人物像型も面白いのですが、少々、エンディングが弱いのが気になっていました。演出力は、更に雑なところが目につきます。松本まりかの役などは、もう少し整理してあげればさらに面白くなるはずなのに、役者の好きにさせすぎでとっちらかった印象になっていて勿体無いです。佐久間麻由は、普通に可愛くて、個人的には一番好みでした。その分、荻野友里が割を食ったというところでしょうか。
ベテランの千葉雅子と 柿丸美智恵は、さすがの貫禄でこの二人の安定感で若手が多少滑っても全く気になりませんでした。
「ヤバレー」で、私の中ではかなり評価を下げた江本順子でしたが、この芝居を見て毛皮族の次回作も見に行こうかという気になりました。

2013年9月17日火曜日

悪い芝居「春よ行くな」

2013年9月11日 19時30分開演 下北沢駅前劇場
作・演出:山崎彬
出演:呉城久美、池川貴清、大河原瑞穂、大塚宜幸、山崎彬、植田順平、宮下絵馬、北岸淳生、森井めぐみ
父親の蒸発や、恋人がいなくなると言う突然の人間関係の断絶を受け入れずに、前のイメージをキープしようとする物語。やがて、父親が帰ってきた男は、イメージと実際の父親との差に耐えきれず父親を殺してしまい、恋人のイメージを追い続けた女は、昔の恋人を演じてくれる新しい男を見つける。しかし、周囲からその間違いを指摘されると男を殺してしまう。
しかし、私がもっとも気になったのはストーリーではなく、演出としていわゆるチャライ若者のチャライ会話を大幅に誇張して話させ、それにあわせて大げさな身振りをあたかもダンスのように役者にさせていたことだ。それはきっと、昔からある人間関係に新しいアプローチをしてみたいという演出家の思いから出た者だと思うが、それなら、最後までそれを貫いてほしかった。時間が経てば経つほど、単なるシリアスな台詞のやりとりになっていって、見ていてつらいものがあった。
若い劇団を複数回見ていくと、最初は着想のおもしろさや目新しさで興味が持てるのだが、回を重ねるごとに、欠点や演技力の不足が目についてくる。それでも、見続ける魅力を持つには、一貫した方針をもつしかないと思う。それが見えてこない劇団や、揺らいでいる劇団は、やがて見にいかなくなる。

2013年9月11日水曜日

玉田企画「臆病な町」

2013年9がつ9月3日 19時30分開演 三鷹市民藝術センター 星のホール
作・演出:玉田真也
出演:木下崇祥、大山雄史、玉田真也、飯田一期、墨井鯨子、島田桃衣、海津忠、永井秀樹
去年「はえぎわ」や、「マームとジプシー」など面白いラインナップで楽しませてくれた MITAKA NEXT GENERATION SELECTION の今年のシリーズのトップバッターということで見にいきました。
いわゆる「青年団」系のグループで、青年団所属の役者も何人か出ていました。
ストーリーは、中学の卓球部の夏合宿の話なんですが、その中学生を演じる役者の芝居が恥ずかしくてほとんど直視できず、ほとんど下を向いていました。
なかなか断定的な言い方ができず、つい小さな声で相手をうかがうような言い方をしてしまい、改めて言い直す優柔不断な大人達(卓球部顧問の教師や、同棲中の男女など)と、何も考えないでストレートな物言いをする子供(中学生)の対比が芝居の基本構造なのですが、その前に中学生役の演技のひどさにしらけるばかりで、構造のことなど考える気にもなりません。
役者が自分とかけ離れた役を演じるときには、なみはずれた演技力か、モダンスイマーズの「楽園」のときのような演出上の工夫が必要だと思います。

2013年8月29日木曜日

少年王者館「ハニカム狂」

2013年8月26日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作 : 天久聖一
脚色・構成・演出 : 天野天街
出演 : 夕沈、黒宮万里、宮璃アリ、池田遼、小林夢二、織田圭祐、谷宗和、石橋和也、丸山厚人、井村昴
レミングの上演台本を書いた天野天街が主催する少年王者館を見ました。台詞にそこはかとなく感じられる唐十郎の匂いが気になって、観劇後 Web で調べたところ、「小劇場第三世代」と呼ばれている結構古い劇団で、しかも本拠地は名古屋だとのこと、全く知りませんでした。今時珍しいアングラ感いっぱいの舞台は、それなりにおもしろかったのですが、唐十郎を超えようとして考え出されたと思える、「突然のリセットからの芝居の繰り返しの多用」は、「その先にあるのは行き止まりだろう」感も満載で、あらたな地平を感じさせるものではありませんでした。
開演前に行われた「誘導員のかけ声にあわせて、観客が膝半分づつ、真ん中に移動する客席詰め」40年前の人気小劇団では、お約束のように行われていて、観客の一体感を否が応でも高めていたものでしたが、今日では、おとなしく従う客の間には、そんな一体感も特にありませんでした。
いろいろと、昔を思い出させてくれる公演でしたが、今回でしばらくの間は十分という感じでした。

ミクニヤナイハラ プロジェクト「前向き、タイモン」

2013年8月25日 15時開演 駒場東大前アゴラ劇場
作・演出 : 矢内原美邦
出演 : 笠木泉、鈴木将一朗、山本圭祐
第56回の岸田戯曲賞受賞作品ということで、見に行きました。受賞理由として、「止めどなく流れ出る言葉のイメージが、ポジティブに戯曲を成立させている。」というようなことが書かれていたような気がしますが、私の見た限り、止めどなくあふれでる台詞のイメージに役者の肉体がついて行けず、ほとんど息も絶え絶えにもがいているという感じでした。
ポジティブということがキーワードであれば、リンゴ農家役の山本圭祐には、比較的言葉のイメージを膨らましていく余裕があったようですが、タイモン役の鈴木将一朗は、台詞が飛び抜けて多いせいもあってほとんど余裕がなく、喋れば喋るだけ悲観的なイメージだけが感じ取れました。

東京乾電池「真夏の夜の夢」

2013年8月22日 14時開演 浅草5656会館 ときわホール
作 : W・シェイクスピア
演出 : 柄本明
出演 : 西村喜代子、麻生絵里子、宮田早苗、鈴木千秋、田中洋之助、嶋田健太、血野晁修、西本竜樹、沖中千英乃、重村真智子、鈴木美紀、高尾祥子、杉山恵一、岡部尚、高田恵美、吉川靖子、有山尚宏、作間ゆい、飯塚祐介、池口十兵衛、中村真綾、太田順子、島守杏介、深堀絵梨、吉橋航也、川崎勇人、鈴木一希、前田亮輔、松沢真祐美、山口智子、茨木真之介、林摩耶、古屋正明、池田智美、重田未来人、柴田鷹雄、中井優衣、藤森賢治、矢戸一平、井下宣久、宇都宮五月、河野柑奈、川端美郷、庄司知世、本田彰秀、荒川楽、荒川暖
2回目の東京乾電池観劇でした。前回見たときにも思ったのですが、ほとんどおもしろいと思えない芝居なのに、どうしてああも自信たっぷりに演じられるのでしょうか。
なぜか、台詞の頭だけ英語で、そこではづみをつけて、一気に長い台詞をまくし立てる。おかげで、誰が喋っても全く同じに聞こえます。動きも、どたどたと動くだけで、いわゆる洗練されたところは少しもありません。なのに、あそこまで自信たっぷりにやられると、見ている方が間違っているような不思議な気分になってきます。
あれが老舗の力というものでしょうか?
次回作も、積極的に見る気にはなれないけれど、暇があったら見に行ってしまうかもしれません。

2013年8月18日日曜日

七里ガ浜オールスターズ「オーラスライン」

2013年8月16日 20時開演 新宿SPACE雑遊
作:前川麻子
演出:瀧川英次
出演 : 浅野千鶴、森田ガンツ、有川マコト、野口雄介、本井博之、一色洋平、瀧川英次
アンファンテリブルプロデュース「愛のゆくえ(仮)」で好演した瀧川英次が自身の演出で芝居をする、しかも脚本は前川麻子、これは見るでしょうということで見に行きました。
「オーラスライン」というタイトルと、出演者がほとんどおじさんばかりということから、何となく話の内容は見えてきてしまいますが、実際の話もほとんどその通りで、とあるなんとなく劇団四季をおもわせるミュージカルのオーディション会場に、各々勝手な理由で受けに来たおじさん4人と、まじめに受けに来た若い男女。気が弱くて、4年もオーディションを受けているのに,毎回審査前に帰ってしまう少女を励ますため、おじさんたちが自分勝手な動機を話し出す。
たぶん、当て書きであろうよく書けた台本と、おじさんの適度に力の抜けた演技で終始笑わせてもらいました。
残念なのは、まじめな動機で受けに来た若い男を演じた一色洋平で、極端な
な演技をしすぎて、見事に浮いていました。もっと、普通に演技すればふざけたおじさんたちとの対比で、おもしろくなったのに残念です。
おじさんたちの中では、本井博之の傍若無人さが,一番おもしろかったです。

マームとジプシー「COCOON」

2013年8月15日 19時開演 東京芸術劇場シアターイースト
原作:今日マチ子
作・演出:藤田貴大
出演 : 青柳いづみ、伊東茄那、大岩さや、尾崎紅、尾崎桃子、川崎ゆり子、橘高祐奈、菊池明明、小泉まさ、小宮一葉、中前夏来、鍋島久美子、難波有、長谷川洋子、的場裕美、山崎ルキノ、吉田彩乃、吉田聡子、李そじん、石井亮介、尾野島慎太朗
藤田貴大の演出方法「リフレイン」が進化して、新たな表現域に到達したことを感じさせる公演でした。今までの芝居では、一つの事柄についての「リフレイン」が様々な方向から順番に行われ、イメージが多方面から現れていく,どちらかといえば、静かに物事が進んでいく感じだったのが、「COCOON」では時には、「リフレイン」同士がぶつかり合ったり、突然、前の「リフレイン」が現れたりして、そのことが混沌と恐怖を一層強調していました。
独自のアクセントで語るというと、どうしても早稲田小劇場の「劇的なものを巡って」を思い出してしまうのですが、今のマームとジプシーはそんなことは関係ないオリジナリティを手に入れたと思います。
役者で圧巻なのは、やはり、青柳いづみ
でした。彼女が発する台詞は、口から出た瞬間に独自に存在感を獲得して,空間に存在するようでした。ほかの役者の発する台詞が,その体から離れては存在できないのに、彼女だけだが空間に台詞を置くことに成功しています。
実に不思議な存在です。

2013年8月4日日曜日

INGELプロデュース「鮫に食われた娘」

2013年8月3日 18時開演 渋谷シブゲキ
作・演出:ブラジリィー・アン・山田
出演:櫻井智也、朝比奈慧、高山奈央子、諫山幸治、武藤心平、堤千穂、三科嘉代、守田菜生、藤森祐輔、水野裕介、若松健治、野口かおる、清水宏
最近気になる女優、野口かおるめあてで見にいきました。
野口の役がこの芝居の鍵となる役のため、彼女の振れ幅の大きい独特な芝居を堪能できましたし、その相手役の清水宏の、狂気とも思える芝居で野口の倍音成分の多い演技を正面から受け止める力量には、凄みすらおぼえました。
野口めあてという意味では、ここ最近の出演作の中ではぴかいちのできでしたが、それ以外では、プロデュース公演の欠点が目立つ芝居でした。
まず、演技の質がばらばらすぎて見ていてイライラしました。姉役の朝比奈慧は出てきたときから、宝塚の男役みたいだと思っていたら、本当に宝塚出身でした。若手の女優は、3人とも芝居が下手すぎ。演出家にまともに演出してもらってないみたいでした。ライフセーバー役の武藤心平は、海パン一つでの力演が完全に空回りしていて、それを本人も自覚しているようで、時々、部隊の隅で所在なげに立っている姿だけが印象的でした。
主役の櫻井智也はがんばっていましたが、野口の芝居を正面から受けずにすかしているようなところが、私としては不満です。
あと、高山奈央子は、所属劇団の主宰者桑原裕子に芝居がよく似ていて、思わず笑ってしまいました。

カタルシツ「地下室の手記」

2013年8月2日 19時開演 赤坂レッドシアター
原作:ドストエフスキー
脚本・演出:前川知大
出演:安井順平、小野ゆり子
イキウメの別動部隊、カタルシツの旗揚げ公演は、ドストエフスキーでした。時代を現代に置き換えて、起こっていることは原作とほぼ同じですが、インターネットとかニコニコ生放送とか、現代のツールが様々取り込まれています。それも、ただ漫然と使われているわけではなく、安易なカタルシスに水をぶっかけるために有効に使われていて、面白かったです。安井順平の少しとぼけてクールな語り口を聞いているとついつい納得してしまいそうなところに、ニコ生風の書き込み、「GJ !」、「童貞乙!」などがプロジェクションでカーテンに流れると、はっと我に返って思わず笑ってしまう。
前川知大の緻密な演出力はたいしたものです。
出演者は二人ですが、ほぼ、安井の一人舞台でした。他の登場人物は、フィギアやダルマで表されていましたから、娼婦の役も会話の必要がなければ、フィギアになっていたかもしれません。
イキウメと並んで楽しみな集団が増えました。次回がいつになるかわかりませんが、また、見にいきたいと思います。

2013年7月19日金曜日

「ストリッパー物語」

7月18日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作 : つかこうへい
構成・演出 : 三浦大輔
出演 : リリー・フランキー、渡辺真起子、渋川清彦、安藤聖、古澤裕介、新田めぐみ、米村亮太朗、門脇麦、でんでん
この芝居で三浦大輔は、つか演出の定番である「ミエを切り続ける」演技を一切廃して、通常の会話で押し通します。それを可能にしたのは、シゲ役のリリー・フランキーの存在でした。演技しているとは思えない、どちらかといえばボソボソ喋るリリー・フランキーの言葉は、屁理屈ともいえる「ひも道」も、すんなり違和感なく聞けてしまいます。その分割を食ったのはほかの役者で、特にヒロイン明美の「過剰なけなげさ」も印象の薄いものになってしまいました。
つか演出では、「ひも道」を言いつのらなければいられない男の悲しみがクローズアップされてきて、それが観客のカタルシスにつながるのですが、三浦演出では、シゲは最低のゲス野郎で、本人もそれを自覚しており、そこに救いはありません。唯一の救いは、シゲの娘がニューヨークに留学して、待望のミュージカルの主役を獲得して帰国することですが、それもラストで、明美に「まだ、あなたの番じゃない。」と拒絶されます。そこらへんは、ポツドールらしいといえます。
それにしても、リリー・フランキーは、リリー・フランキーを演じさせたら,超一流の役者でした。

おにぎり「トークトワミー」

2013年7月17日 14時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作 : 江本純子
演出 : 千葉哲也
出演 : 市川しんぺー、池谷のぶえ、村木仁
「毛皮族」の江本純子が、外部にはどんな脚本を書くのか、興味があって見に行きました。いつもがさつな言葉をぶつけ合っている中年夫婦と、妹にしょっちゅう金を無心にくる兄の話。ある日、突然女が入院することになり、自分たちの将来に不安を感じながら(不安は,各の妄想として表れる)、相手を思いやる会話を交わすようになる。江本の脚本は、激しい言葉を使いながら、「毛皮族」でのようなアナーキーさは、影を潜めている。もちろん、ある程度は当て書きの部分もあるだろう。経験豊富な役者と、千葉哲也の手堅い演出でよくまとまっている舞台となっていた。特に、池谷のぶえが時々、短い台詞で空間をびしっと締めていたのが印象的だった。
ラストの、夫に燃やされてしまったと思っていた虎の子の100万円が無事であったが、夫のいたずら心で、すべてテレビカードに変えられていたという、あまりできがよいとも思えないオチが、ぴたっと決まったのは、演出と役者の演技力のおかげでしょう。

2013年7月14日日曜日

「盲導犬」

2013年7月8日 19時開演 渋谷シアターコクーン
作 : 唐十郎
演出 : 蜷川幸雄
出演:古田新太、宮沢りえ、小出恵介、小久保寿人、大鶴佐助、松田慎也、堀源起、佐野あい、金守珍、木場勝己、大林素子、ほか
私にとって唐十郎の戯曲は,状況劇場の役者たちと分けがたくつながっているのだということを再認識させられた舞台でした。どの台詞も、李麗仙ならば、不和万作ならば、大久保鷹ならば、全く違って聞こえてきただろうという気持ちが抑えられず、舞台自体を楽しむことが出来ませんでした。この「盲導犬」は、状況劇場で上演されたことは一度もないので、私個人の勝手な思い込みに過ぎないのですが、致し方ありません。
桜社による初演はもちろん、ほかの団体による舞台も見ていないのに、このような感想を抱くのもどうかしていると思うのですが、それだけ、状況劇場のイメージが強いということでしょうか。
唐十郎の戯曲の魅力は、過剰にロマンチックな台詞と共に湧き出してくる雑多なイメージにあると思うのですが、今回の蜷川演出では、台詞のみにこだわってそれに伴うイメージを排除しているように見えました。それが役者の自由さをも封じ込めたため、金切り声の台詞がとびかうだけの寂しい舞台になってしまいました。蜷川演出の肝は、ビジュアルな演出にあると思っていた私には、納得できないものでした。
振り返って見れば、蜷川芝居を見たのは、「身毒丸」、「下谷万年町物語」、そしてこの「盲導犬」の最近の3本だけ、昔の作品は、劇評などから得たイメージだけなのですから、蜷川の変化に勝手に戸惑っているだけなのかもしれません。

FUKAI PRODUCE 羽衣「Still on a roll」

2013年7月12日 19時30分開演 こまばアゴラ劇場
作・演出 : 糸井幸之介
出演 : 深井順子、日高啓介、伊藤昌子、福原冠、澤田慎司、高橋義和、鯉和鮎美、鈴木祐二、新部聖子、森下亮
FUKAI PRODUCE 羽衣の芝居を見るものこれで3本目です。最初は、同じアゴラ劇場で「耳のトンネル」でした。これは、日常的な愛の形がさまざまなイメージに変化し、,最後には大きな愛のイメージが広がるというぶっ飛んだ作品でとてもおもしろく見ました。
2本目は「サロメ VS ヨナカーン」、シアターイーストと会場も少し大きくなって、7組のサロメとヨナカーンによる愛の形をすっきり、整理された形で見せてくれました。3本目の今回は、会場がアゴラ劇場に戻って、対面客席の舞台となりました。そのためか、上下の客席に同じことを繰り返す振付が多くて、あきがきました。また、異常に客席にかける芝居や、振付が多く,少しうんざりです。
3本を通して見ると、最初の「耳のトンネル」が傑作であることがよくわかります。

2013年7月4日木曜日

扉座「アトムへの伝言」

2013年7月3日 19時開演 紀伊国屋ホール
作・演出 : 横内謙介
出演:六角精児、山中崇史、伴美奈子、岡森ねい、鈴木利典、犬飼淳治、高橋麻理、松原海児、松本亮、比嘉奈津子、中原三千代、高木トモユキ、野口かおる、新原武、江原由夏、上土井敦、野田翔太、塩屋愛美
前日に続き昨年秋のベッド&メイキングスでの怪演で私の気になる女優の一人に躍り出た野口かおる狙いで、扉座を見に行きました。
野口かおるは客演なので、客演らしい使われ方、劇中のアクセントというか、鉄砲玉的な使われ方で、お得意のグダグダなアドリブや、女のきたないところも丸ごとさらけ出すような芝居をしていました。しかし、東京初日の緊張からかグダグダアドリブも、「セリフなんか言えなくてもいいのよ。生きてさえいれば。」という域にまではいけず、中途半端なところにとどまっていました。野口かおるを楽しむためには、彼女に余裕ができるであろう後半に行くのが良さそうです。
芝居は落ち目の漫才師とロボットが漫才コンビとして復活するという話なので、劇中、漫才シーンが3回ほどありました。漫才シーンの台本も良くかけているし、テンポ良く喋っているのですが、やはり、漫才と芝居は似ているけれど、違うものだという感を強くしました。芝居では、漫才師の役を演じている役者が漫才をしているのに比べ、漫才師は、半ば無自覚的に自分を演じて漫才をしているのだと思います。その自意識の差が、どうしても越えられない溝として、芝居と漫才を分けているように思えます。

ピチチ5「はぐれさらばが"じゃあね"といった」

2013年7月2日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出 : 福原充則
出演:菅原永二、今野浩喜、野間口徹、植田裕一、三土幸敏、碓井清喜、三浦竜一、広澤草、仁後亜由美、古牟田眞奈、久ヶ沢徹
昨年秋のベッド&メイキングスの公演で、唐十郎ラブな脚本と演出を見せて、今年4月のブルドッキングヘッドロックでは、全体の中心となる主役の演技で芝居をまとめていた福原充則が主宰するピチチ5の芝居を見ました。
三鷹市芸術文化センターの太宰治をモチーフにした演劇シリーズの一環で、私が見るのはままごとの「朝がある」に続いて2本目です。ままごとの場合は、太宰作品の再構成と言った趣でしたが、今回は太宰治本人に注目した作品となっていました。舞台は、太宰が作家デビューする前と、有名になってから一回目の自殺未遂をする前後の2箇所を中心に、様々な時間と空間をシームレスに行ったり来たりします。脚本的にも演出的にも無理なく、わかりやすくシーンがつながって行くのですが、照明が所々つながっていかず、無理な変化をしているのが気になりました。
太宰治も宮沢賢治も、作品の朗読などを絡めて人物像がわかりやすく提示されているのですが、中原中也だけが、人物像が分かり難かったのが残念です。脚本、演出のせいというより演技のせいでしょうか。
出色なのは、貫さんという人物で、造り酒屋の杜氏で象に自分の酒を飲ませるために突進したり、川で鯨を捕まえたりするトリックスター的な人物。太宰治が自分が成りたかった理想像なのでしょう。