2015年10月20日火曜日

木ノ下歌舞伎「心中天の網島」

2015年10月5日 19時開演 こまばアゴラ劇場
作:近松門左衛門
監修・補綴:木ノ下裕一
演出・作詞・音楽:糸井幸之介
出演:伊東沙保、小林タクシー、島田桃子、武谷公雄、西田夏奈子、日高啓介、若松朋茂
洋の東西を問わず、古典を演じるのは難しいことだと実感しました。
杉原邦生があまり好きではないので見にいかなかった木ノ下歌舞伎ですが、今回、演出がFUKAI PRODUCE 羽衣の糸井幸之介であること、伊東沙保が出演していることで見にいきました。
今回の上演では現代語と七五調の台詞、さらに歌まであって、観客を楽しませてくれるのですが、問題は七五調の台詞です。役者に古典の素養があるか、もしくはそれに変わる何かがないと,ただ怒鳴ったり上滑りなったりするだけで、台詞が聞こえてきません。その点、合格なのは伊東沙保と武谷公雄の二人だけでそれ以外は全然だめでした。この差はひとえに役者の技量の差でしょう。
オープニングの歌で、丁稚役の若松朋茂が自分のソロパートの頭で大きく音を外して歌い出したときにはどうなることかと思いましたが、その後は何とか持ち直して進み出したときには、密かにほっと胸をなで下ろしました。
古典では、様々にディフォルメされたキャラクターをリアリティを持って演じることが要求されると思うのですが、七五調と現代語の入り混じったこの形式では、それがいっそう困難になっているようにも感じました。
一部では、この木ノ下歌舞伎の意義を高く評価する動きもあるようですが、私にはあまり意義が感じられませんでした。

清水宏「清水宏の世界で汗をかく!!〜アメリカ・カナダ・エジンバラ コメディーツアー奮闘記」

2015年9月30日 19時開演 渋谷シブゲキ
作・演出:清水宏
出演:清水宏
今年の夏4ヶ月にわたるアメリカ、カナダ、イギリスを股にかけたコメディーツアーの報告ライブでした。前日がアメリカ、カナダ編で、私の行った日はイギリスエジンバラ編でした。
冒頭で、今年からストーリーテリングというスタイルを始めたこと、そのストーリーテリングがアメリカ、カナダでは大受けで,カナダのあるフェスティバルでは賞まで取ったことを話し、エジンバラでの話に移ります。
5年目となるエジンバラでは油断と慢心とチラシの印刷が遅れるというアクシデントに見舞われて,さんざんだったことが延々と語られていきました。
すごいと思ったのは,聞くだけでも辛い話を長々と2時間も話して、悲しい話だけれども笑える話になっている,構成力と話術です。一人で2時間話し続けるだけでもすごいことなのに、山あり谷ありの構成で聞いてて飽きませません。
思いつきで話しているように見えますが、練りに練った台本があるに違いありません。
ラストは長いつきあいの映像作家との仲違いを語り、今後一緒にやっていくかどうかの選択を迫るというドラマチックな形で終わります。単に面白いだけでは終わらない、充実した2時間でした。
しかし、私が本当に好きな清水宏は芝居をしている清水宏です。本人は芝居のことを「愛しているけれども、憎んでもいる。」と言っていました。私にとっては、その芝居の中に完全には同化できないことにいらだちを感じ、また申し訳ないとも思いながら演技している清水宏を見るのが好きです。11月にカムカムミニキーナに客演するので、是非見にいこうと思っています。
最後に、どうでもよいことですが、清水宏は矢沢永吉によく似ています。本人も自覚があると思いますが、ふとした横顔や、しゃべり方がそっくりです。

2015年10月5日月曜日

カタルシツ「語る室」

2015年9月21日 18時開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:前川知大
出演:安井順平、中嶋朋子、盛隆二、大窪人衛、板垣雄亮、浜田信也、木ノ下あかり
イキウメの別働隊、カタルシツの公演を見にいきました。
これまでのカタルシツは一人芝居ばかりやってきて、モノローグの可能性を追求しているのかと思っていましたが、今回は7人が出演する普通にイキウメらしいSF的な設定の芝居でした。
これはイキウメの芝居の弱点、「SF的な設定のため、どうしても劇中で説明することが増えてくる、うまく台詞の中にちりばめられたときはよいが、往々にして説明のための台詞になってしまいしらけてしまう。」を解消するために、カタルシツで得た一人語りのノウハウを使ってみようとしたテスト公演ではないでしょうか。
結果は一定の成功を収めていて、そんなにしらけることもなく、スムーズに芝居は流れていきました。ただ、モノローグの得手不得手はあるようで、安井順平と占い師役の板垣雄亮は問題なくこなしていましたが、盛隆二や浜田信也あたりは少し辛いところもありました。もっとも、一人語りの向き不向き
は役のキャラクター設定とも密接な関係があり、いわゆるクールな性格設定の役は自分を客観視して話しても無理がありませんが、熱中系のキャラクターには無理が見えます。
これで一定の成果を上げたと見えるカタルシツは、今後どうなっていくのでしょうか?
カタルシツの次の公演はないかもしれません。

2015年9月21日月曜日

風琴工房「無頼茫々」

2015年9月16日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:詩森ろば
出演:板倉チヒロ、吉増裕士、金成均、杉木隆幸、永山智啓、荒木秀智、栗原茂、酒巻誉洋、桑原裕子、今藤洋子、とみやまあゆみ、川村紗也、たなか沙織
前作「Plenty Killing」で痛快にして密度の濃い傑作を上演した風琴工房の次回作は、一転して社会派ドラマでした。再演だそうですが、当然、私は前回の公演を見ていません。
安保関連法案が成立しそうな時期で、国会前には連日大勢のデモ隊が押し寄せています。そんなときに、大正時代の言論の自由をめぐる芝居を上演するのは、タイムリーと言えばタイムリーなもかもしれません。
Twitterの感想で、誰かが「教科書を読むような」というようなことをつぶやいていましたが、問題はそこにあるように思えます。日本の芝居でこのような理念に関することを扱うと、台詞が具体的なことを語っているにもかかわらず、すべて説明的に聞こえてきます。これは、日本が理屈を述べるのに向いていないためか、役者の力量不足なのか、よくわかりませんが、延々と理屈を説明されている印象だけが残ります。
この芝居でもそうでした。本文にあたる部分では丁寧に具体的事実とそれに対する人々の気持ちを語り、転換では一転して音楽に合わせて楽しく,スピーディに進めて、メリハリをつけるという工夫にもかかわらず、残った印象は、2時間オーバーの説明大会というものでした。
イギリスやフランスの演劇では、「舞台で哲学や思想を語る」ことが好まれ、それを可能にする文学的な蓄積があるのですが、日本文学は情緒や叙情を語ることには長けていても、理論の語る歴史はあまりありません。そこら辺の差が、こういう芝居にも如実に表れているようです。

2015年9月17日木曜日

「PIPPIN」

2015年9月16日 14時開演 渋谷東急オーブ
S席で13000円という高額なチケットにかなり迷ったのですが、色々調べてみると結構よいメンバーで来日しそうなことや、今まで見たブロードウエイミュージカルの中でも、10本の指に入るほどの傑作を、もう一度見たいという想いが高まって行くことに決めました。
最後の決め手は、最前列のほぼセンターの席が取れたことです。
勢いついでに、出演者を知るために1800円も出してプログラムまで買ってしまいました。
プログラムによると、半数以上が2013年のブロードウエイ再演に出演経験者であり(さすがに、オリジナルキャストはいませんでしたが)チャールズを演じたジョン・ルービンスタインは、なんと初演のピピン役のオリジナルキャストでした。
2013年版のプロデューサー陣にキョードー東京が参加しており、思えばこの日本公演を見据えての出資だったのでしょう。
私がブロードウエイで見たのが2014年の10月で、どうしてもその時の印象と比べてしまうのですが、アクロバットやダンスなど、言葉によらない表現は気にならないのですが、言葉を使う芝居の部分が弱いと感じました。これは、字幕が出るために、どうしてもそちらを見てしまい、舞台に集中できないという状況のせいもあると思いますが、それだけではないと思います。
このミュージカルの一応の主役であるピピンは、一座の新人役者であるという設定があるのでカリスマ性や高度な演技力をそれほど要求されません。代わりに、リーディングプレイヤーにお話しを引っ張っていくだけの魅力が必要となり、それを支えるために緻密なアンサンブルがアクロバットプレーヤーも含めて必要になってきます。そのアンサンブルが弱くて、その分、個人技が悪目立ちしがちでした。特に、リーディングプレイヤーはブロードウエイでは小悪魔的な魅力に溢れて魅力的でしたが、日本版は小悪魔と言うよりは口うるさい女教師のようで、後半のキャサリンへのだめ出しが本当はピピンへのいらだちの表れであるはずなのに、単なる下手なキャサリン役者へのいじめのように見えてしまうとろなどがあり、少々、残念でした。
とはいえ、傑作ミュージカルであることは変わりありません。
機会があれば、また、是非みたいです。

2015年9月12日土曜日

表現さわやか「TanPenChu−」

2015年9月7日 19時開演 赤坂レッドシアター
作・演出:池田鉄洋
出演:鈴木砂羽、岩崎う大、槇尾ユウスケ、梅船椎永、浅野千鶴、大夢、佐藤真弓、いけだしん、岩本靖輝、池田鉄洋
Good Morning No.5と同じ年一興行の表現さわやかを見にいきました。クリエの公演の時も思ったのですが、池田鉄洋という人は、結構器用というか頭のいい人で、会場や出演者に合わせて、見せ方をうまく変えて演出できるところに感心しました。基本の、実にくだらないことはしっかり守りながら、少し味付けを変えて上品そうに見せる。表現さわやかを知っている人には基本は全く変わってなくてくだらないまま、ゲスト出演の多い今回や、いつもと違うクリエのお客さんにも、そんなに抵抗なく笑ってもらえる、そこら辺のさじ加減が実にうまいです。描くシーンのコントの寄せ集めでありながら、何となくストーリーがつながっているように見えるのも、飽きなくていいです。

Good morninng No.5「世界征服ナイト」

2015年9月5日 19時開演 下北沢OFFOFFシアター
作・演出:澤田育子
出演:岸本卓也、塩田康平、白柏寿大、藤田記子、澤田育子、境秀人、石田周作、稲垣潤一、佐藤貴史
Good morninng No.5の年一興行の二本目は、珍しく藤田記子、澤田育子の二人以外は男優7人で繰り広げられるドタバタコメディでした。
作品的にはこちらの方がはるかに楽しめました。ストーリーはあってなきがごとしで、そのシーン、そのシーンの役者の立ち振る舞いを単純に楽しめばよい、という感じでしょうか。私のイメージするGood morninng No.5らしいと言うことだと思います。
限られた時間で日本の演目をやるのは、時間的にも体力的にも難しいと思います。
片方は、芝居としてやり、もう片方をバラエティ的にやるという方針は、わからないでもありませんが、私的には、両方バラエティでいって欲しかったです。

Good morninng No.5「breakfast, kani」

2015年9月5日 14時開演 下北沢OFFOFFシアター
作・演出:澤田育子
出演:藤田記子、澤田育子、久保田南美、佐々木彩、MINAKO
年に一度のGood morninng No.5の公演、今年は2本立てでした。一本目は、女優5にんによる「breakfast, kani」でしたが、残念ながらあまり面白くありませんでした。私がGood morninng No.5で楽しみにしているのは、芝居が役柄に収まりきらず、素が時々見えてしまうところです。それからいうと、この演目はお芝居お芝居しすぎていて、あまり楽しめませんでした。
「高校時代、女優倶楽部というわけのわからない遊びをしていた二人が、卒業後、いじめていた方は売れないピン芸人になり、いじめられていた方がその専属作家になる。やがて、作家hネタにつまって書けなくなり、偽装自殺を図る。」
うまくひねりを加えたらいくらでも面白くなりそうな設定も、ストレートにやってしまっていて、ピン芸人役の藤田記子のがんばりが痛々しいだけに終わってしまっているのが残念でした。

2015年9月7日月曜日

サムゴーギャットモンティブ「さよならサムゴー〜いつかはギャットモンテイブ」

2015年9月3日 19時30分開演 新宿SPACE雑雄
作・演出:山並洋貴
出演:石川いつろう、片腹年彦、川上ルイベ、近藤丼、杉田有司、田島慶太、福田神德、安田侃司、吉成豊、石原みゆき、木野真白、佐野恭代、澤崎妙、篠原希帆、高橋エリカ、田島冴香、田中渚、中村倫子、永山千晶、年代果林、三澤久美、関大輔
劇団名(正しくは山並洋貴の個人ユニットのようですが)のおもしろさと、下ネタ満載というチラシの文句に惹かれて見にいきました。
ちなみに、サムゴーギャットモンティブというのはキックボクサーの名前からきているようです。
22名の高校生の夏休みのさまざまなエピソードが語られていきます。他愛のないもの、シリアスなもの、ドラマティックなもの、最初はさりげなく、話が進むにつれて演出的にも盛り上がる形で展開していき、その筆力、演出力はかなりのものです。しかし、役者が下手では話になりません。そこいらの安い学園ドラマをみているような気になります。演出を考える前に役者の演技力を何とかして欲しい、そこにこそ力を注ぐべきではないかと思ってしまいます。まあ、劇団ではない個人ユニットでは限界があるのかもしれませんが。
話を盛り上げてうまくまとめる力はあるのですが、安いテレビドラマではないなにかがないと舞台では面白いとは言えないと思います。もしかしたら、それが下ネタ満載だったのかもしれませんが、今回は下ネタらしい下ネタもなく、決定力不足ということでしょうか。

2015年9月3日木曜日

「転校生」

2015年9月1日 19時開演 六本木ZEPPブルーシアター
作:平田オリザ
演出:本広克行
出演:逢沢凜、秋月三佳、芦那すみれ、生田輝、石山蓮華、石渡愛、伊藤優衣、伊藤沙莉、今泉玲奈、折館早紀、川面千晶、堺小春、坂倉花奈、桜井美南、清水葉月、多賀麻美、永山香月、藤松祥子、南佳奈、森郁月、吉田圭織
客席に入ると、舞台にはスクール机と椅子が並び、正面奥には役者達が座っている控え椅子がずらりと並んでいました。その上には大きなスクリーン、上下にも一回り小さなスクリーンがぶら下がっています。舞台前方には白い窓枠が上下にひとつづつ吊られていました。見た途端にいやな印象を持ちましたが、始まるとそれは最悪の形で現実の物となりました。なんと、正面スクリーンには一部では有名なあの平田オリザの3段台本が投影され続けるのでした。ご丁寧に今喋っているところが、明るくなってどの台詞をいっているのかすぐにわかる工夫までされていました。上下のスクリーンには、上袖、下袖のカメラからのアップがずっと映されていました。
確かに平田オリザの3段台本は会話同士が重なることがよくあり、台詞が聞き取れないこともあります。その対策としての親切心からの演出なのかもしれませんが、私は最後まで舞台に集中できず、最悪の観劇経験になりました。
できることなら、演出の本広克行に詰め寄って釈明を求めたいほどです。
21年前の初演も見ているのですが、会話がかぶって聞き取れないことなど全く気にならず、彼女たちと一緒の教室にいて微妙な心境の変化をともに感じ、ラストシーンの触れるか触れないかぎりぎりの指先に将来への不安を感じて涙したのに、今回のようにがっちり握手されて、その上それを天井からのカメラでクローズアップにされては台無しです。
KAATの大石さんが言っていたように、「映画監督が舞台の演出をすると、絵に落とし込んで解決しようとする。」、その最悪の例がこの芝居だと思います。
1400名あまりが参加したオーディションを勝ち抜いてきた21名の若い女優にとっても、不幸な出来事と言うしかありません。

2015年9月2日水曜日

泥棒対策ライト「みぞおちララバイ」

2015年7月31日 14時開演 上野ストアハウス
作・演出・振付:下司尚美
出演:金川周平、川尻麻美夏、近藤彩香、佐々木富貴子、野口卓磨、萩原亮介、的場祐太、下司尚美
ダンスの公演が苦手な私が積極的に見に行こうと考える梅棒と、もうひとつの泥棒対策ライトの公演を見にいきました。前回は、結構シリアスよりな内容で困りましたが、今回も後半シリアスで疲れました。
前半は、コントというか小さな芝居とそれから派生するダンスという構成で、面白かったのですが、後半はダンスの連続で,私の集中力が続きませんでした。
きっと、根が真面目な下司直美が、余裕がなくなって地の真面目さが露骨にでてしまったのでしょう。
次回公演を見にいくか簿妙なところです。

梅棒「クロスジンジャーハリケーン」

2015年8月29日 19時15分開演 俳優座劇場
作・総合演出:伊藤今人
脚本助手:梅澤裕介
振付・監修:梅棒
出演:遠山晶司、天野一輝、大村紘望、塩野拓矢、遠藤誠、鶴野輝一、飯野高拓、櫻井竜彦、梅澤裕介、伊藤今人
オープニングのDJのお悩み相談のはがきが妙にシリアスで、どうなることかと少し心配しましたが、場面が進むごとにネタが炸裂する怒濤の展開で笑わせていただきました。「内容は一切ないがただただ面白い」ことは現代の日本では貴重な集団だと思います。
要するに、「JAZZ DANCEによる大衆演劇」とでも呼べばよいと思います。この先も息切れしないで、少しでも長く続いてくれることを祈るばかりです。

KUNIO12「TATAMI」

2015年8月29日 14時開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
作:柴幸男
演出:杉原邦生
出演:森下亮、武谷公雄、大石将弘、亀島一徳
「わが星」という傑作を書いた柴幸男の新作脚本と言うことで見にいきました。演出の杉原邦生にに関しては、木ノ下歌舞伎の演出を何本もやっていて古典を現代風に演出する人という程度の認識しかありませんでした。実は、何年の前のT-PAMで演出した作品につきあっているのですが、その時の印象は、「乱雑、うさんくさい」というようなあまりいいものではありませんでした。
そのため、ほとんど期待しないで見にいったのですが、おもいもかけず面白いものでした。
ただ、その面白さの大部分は、柴幸男の脚本と主人公のタタミ屋を演じた武谷公雄の演技力によるものです。杉原邦生自身による美術や演出は、全てをたたんで何もなくなった情景を表すのに,わざわざバトンに大きな白布を吊して見せたり、声をたたんだ主人公の内面の声を聞かせるために小さなスピーカーを寝ている主人公の上に下ろして見せたりするようなあざといものが目立ち、芝居の邪魔をしているようにさえ見えました。
極めつけは、ラストシーンで息子が天から降ってきたロープを引くと金ラメが降ってくる演出で、完全にいらないシーンでした。

DULL-COLORED POP「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」

2015年8月29日 10時開演 王子スタジオ1
作・演出:谷賢一
出演:大原研二、東谷英人、堀奈津実、深沢未来、塚越健一、渡邊りょう、中村梨那、百花亜希
今まで谷賢一の作・演出の芝居を何本か見てきましたが、一番面白かったです。
家族のためを思ってがみがみ言ってきたお母さんが、お父さんの突然の事故死をきっかけにその欺瞞と矛盾が表面化して,心身症すれすれになっていく。そのおかあさんの心情を黒猫とベージュ猫が無邪気な形で語っていく。どこの家庭でもありそうな風景がリアルにくっきりと浮かび上がります。ひとつ残念なところは、お母さん役の大原研二ががんばりすぎで、お母さんの存在の痛々しさなのか、演技のがんばりすぎの痛々しさなのかよくわからなくなるところでしょうか。

「気づかいルーシー」

2015年8月26日 19時開演 東京芸術劇場シアターイースト
原作:松尾スズキ
脚本・演出:ノゾエ征爾
音楽:田中馨
出演:岸井ゆきの、栗原類、山中崇、小野寺修二、川上友里、山口航太
松尾スズキの絵本を基にノゾエ征爾が脚本・演出した一応子供向けの芝居ですが、残念ながら失敗作と言わざるをえません。岡田利規の「わかったさんのクッキー」の時にも思ったことですが、子供に対して礼儀正しすぎるのだと思います。
子供向けと思われるデフォルメされたキャラクターを役者たちは一生懸命演じているのですが、その演じているというところがネックになって子供たちの心に響いていかないように見えました。逆に最初の栗原類の登場は皆の期待を集めた大きなバルーンという扮装で、全く意味のない演技に終始して面白かったです。その栗原類も、王子の皮を被ったおじいさんという設定になると,普通に演技し始めて面白くなくなります。
子供とその付き添いの大人両方にわかる芝居をと考えてのかもしれませんが、結果、虻蜂取らずになってしまいました。

子供鉅人「真昼のジョージ」

2015年8月22日 14時開演 新宿サンモールスタジオ
作・演出:益山貴司
出演:影山徹、益山寛司、億なつき、キキ花香、山西竜矢、ミネユキ、益山U☆G、益山貴司、吉田カルロス、小林義典、久保田武人、岩坪成美、新藤江里子
大道具、小道具、かつら、衣装の一部まで全てダンボールでつくるという思いきった試みでしたが、残念ながら失敗作と言わざるをえない結果となりました。
表に荒野の絵、裏面にダンボール工場の絵を描いた切り出しをはじめ全てが説明でしかなく、予算節約のためにダンボールを採用したとしか思えませんでした。説明台詞の異常な多さもあいまって、うるさすぎる舞台は全く耳に入ってきません。
前回見た「ハローヘル」のようなぶっ飛んだ発想も陰を潜めて、金の切れ目がアイディアの切れ目と言う感じです。ダンボールのセットが悪いわけではなく、ダンボールを使う必然が全く感じられませんでした。

砂地「唄わない冬」

2015年8月21日 19時開演 新宿Space雑遊
作・演出:船岩祐太
出演:小瀧万梨子、今國雅彦、梅村綾子、井手麻渡、松本光生
劇団のTwitterに「今日からミザン稽古です。」というつぶやきがありました。「ミザン」という知らない言葉を検索してみたところ正しくは「ミザンセーヌ」というフランス語で、ウィキペディアによれば「演劇界および映画界において用いられる表現であり、おおまかに「作品の筋、登場人物を作り出すこと」を表す語である。「演出」の訳語があてられる。もとは演劇から発生した言葉であり、字義通り訳せば「舞台に置くこと putting on stage」の意である。」と言うことでした。これを信じれば、「演出稽古」と言うことになりますが、そのほかの検索結果もふまえて考えると、役者の立ち位置などを整理して演出意図を明確にする稽古のようです。
この芝居は登場人物5人のうち3人が死んでしまっているところから始まります。芝居の流れは現実どうり未来に向かっていく流れと、過去にさかのぼっていく流れが交互に現れます。死んでいる3人には死者のポジションとでも言うべき立ち位置が壁際に各々あり、基本的に喋らないときはその場所にいます。それが芝居の構造を明確にするのにかなり役立っていますが、それがミザン稽古の成果でしょうか。
この芝居のポイントは、死んでしまう主人公の女の心の空虚さです。その空虚さを埋めるため自分勝手に他人を引きずり込んだり、過度に他人に依存したりしていきます。結局、その空しさは埋まることなく死んでいくことになります。
砂地の芝居の魅力は、演劇の理論的な研究から来る折り目正しさだと思います。その折り目正しさが、他の小劇場演劇とは全く違う肌触りとして一種独特の雰囲気を醸し出しています。

2015年8月12日水曜日

鉄割アルバトロスケット「HODOCHICCHI」

2015年8月10日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作:戌井昭人
演出:牛島みさを
出演:戌井昭人、奥村勲、中島朋人、中島教知、村上陽一、マークス雅楽子、向雲太郎、南辻史人、松原東洋、渡部真一、東陽片岡、山本ロザ、池間由布子、横山智輝、古澤裕介
最近、過剰なものを求めている私ですが、「謎のパフォーマンス集団」鉄割アルバトロスケットでは、少しもの足らないようです。名前の面白さにつられて前々からみたいとおもっていましたが、いざ見てみるとそのオフビートなオチの付け方には興味をそそられるものの、全体の緩さについて行けませんでした。2時間半の中に37ものコントのようなものが詰め込まれていて、ほとんどの演目は残念ながら面白くありませんでした。
となりの何回か見ているらしい人も、「今回はあまり面白くない。前回は、・・・・・」とガールフレンドらしき女性に一生懸命言い訳をしていましたから、出来不出来が激しいのかもしれません。ただ、かかる音楽は、私の趣味と似ていて面白いものが多かったです。

土田英生セレクション「算段兄弟」

2015年8月9日 15時開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:土田英生
出演:村岡希実、竹井亮介、尾方宣久、渡辺啓太、高橋明日香、もたい陽子、七味まゆ味、土田祐太、大村わたる、石丸奈菜美、本多力、土田英生
土田英生セレクションというのは、過去の土田英生の脚本を彼の望む配役で再演出するというシリーズで、「算段兄弟」で3回目だそうです。
脚本は、「しらふな顔でしれっとシュールなことを言い放つ。」という土田の特色がよくでた面白い物でしたし、役者もそれなりに適材適所でうまい人がそろっていました。全体の印象としては中の中という感じで、過剰な物が見たいという私の最近の気持ちからすると、あまり面白いとは言えない物でした。
一番気になったのは、男優陣がデフォルメされた極端な性格を演じていたのに比べ、女優陣はおしなべてノーマルな性格を演じていたのが気になりました。
ラストで女性だけが死んだ父親の家に集まって、いわゆる女子会を開くという設定から逆算されたものだとは思いますが、そこに行くまでは、結構違和感がありました。

東葛スポーツ「ニューヨーク、ニューヨーク」

2015年8月1日 21時開演 3331 Arts ChiyodaギャラリーB
構成・演出・DJ:金山寿甲
出演:古関昇悟、牛尾千聖、金山寿甲
前回、あまりのとちりの多さに妙に感動した東葛スポーツをまた見てきました。今回は、上演時間1時間、登場人物も3人だけでしかも再演ということで、前回あんなに多かったとちりも目立った物は1回だけというスムーズな展開でした。しかし、そのとちりの少なさに正比例して面白さも半減していました。
今回は、Nasの「illmatic」というヒップホップのCD制作のドキュメンタリーらしい映像をバックにこたつにはいった男女がお互いにdisりあうという構成でしたが、そのラップの歌詞もその場でスーパーインポーズするのではなく、あらかじめ制作された歌詞つきの映像を流すなど、進化していました。しかしスムーズに行けば行くほど、面白くはなくなります。
ラストも、ニューヨークに行きたいと願う女は実は下半身麻痺で、男の助けがなければトイレにも行けないという妙にウェットなオチで終わります。内容もなければ、それほど面白くもないというないないづくしの芝居でした。
やはり、前回の面白さはあまりのとちりの多さに笑ってしまうしかないという面白さだったようです。

ハイバイ「ヒッキー・カンクーントルネード」

2015年8月1日 14時開演 小田原市民会館
作・演出:岩井秀人
出演:田村健太郎、岡田瑞穂、後藤剛範、平原テツ、チャン・リーメイ
なかなか見ることのできなかったハイバイの代表作「ヒッキー・カンクーントルネード」を小田原まで出かけてみることができました。
2012年にパルコ劇場で、「ヒッキー・ソトニデテミターノ」を見て面白かったことは覚えているのですが、「ヒッキー・カンクーントルネード」はたびたび再演されているにもかかわらず、スケジュールが合わずに見逃していました。それでこのたび思いきって、チケット代金と同額の交通費2500円を払って,小田原まで見にいったわけです。
小田原市民会館に入ってみると、舞台の上手半分が客席、下手半分に黒パンチがひいてあって舞台というしつらえになっていました。道具もダイニングテーブルとイス、カーペットとハイバイオリジナルの2つのどこでもドアなど簡素な物だけで、運搬もハイエース1台で済むのではないかと思えるほどでした。
さて肝心の芝居ですが、これは感心はするが感動はしないという結果となりました。主役の引きこもりである登美雄の演技のせいか,私の年のせいか一切感情移入できず、お母さん役の平原テツの演技に感心するばかりとなりました。平原テツの女形を見るのは初めてでしたが、無理に女性に寄せようとはせず、いつものまま、台詞だけ女性言葉にしてあるだけという思い切りの良さが,リアリティを増していました。登美男は何を言っているのかよくわからず、最後までなにをいっているのかわからないままでした。

2015年7月23日木曜日

ベッド&メイキングス「墓場、女子高生」

2015年7月21日 19時開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:福原充則
出演:清水葉月、根本宗子、青山美郷、望月綾乃、山田由梨、杉ありさ、葉丸あすか、佐藤みゆき、猫背椿、竹森千人、中山祐一朗、富岡晃一郎
ひさしぶりに本当にいい芝居を見て,幸せな気持ちになれた一夜でした。カリスマ性にあふれた作家、演出家、役者が現れにくい今の時代ですが、才能がある人がいないわけではなく、全員で力を合わせて自分たちの特徴を突き詰めていけば,なでしこジャパンのようによい芝居を作れるのだということを実感しました。
まず第一に,本と演出が素晴らしい。当日パンフによると福原充則がこの芝居を演出するのは4回目と言うことで、手慣れた感じで役者の個性を引き出しつつ、物語を進めていきます。その上に乗っかって、役者陣が自由に演じている感じがびしびし伝わってきます。
ある日突然自殺してしまう主人公を演じた清水葉月は,見た目と演技はちょっと劣化した蒼井優のようですが、透明感のあるみずみずしい芝居で全体を引っ張っていきます。ひとつ間違えるとイタイ発言を連発する不思議ちゃんになりそうですが、そうならないようせりふは注意深くコントロールされていました。
次に、大人サイドを一人でしょって立ち、見事にその大役を果たした猫背椿も素晴らしかったです。女子高生7人を相手に一人で大人のだめさ加減を十二分に発揮して見事でした。
「南の島に雪が降る」では、サイドストーリーでの登場で印象が弱かったですが、今回はその実力を見せていただきました。何しろもう一人の大人サイドのサボってばかりいるサラリーマンの富岡晃一郎は、「大人なのに、社会のルールがわかりません。」などとほざいている中途半端な設定なので、猫背椿ががんばるしかないのです。というか、今回の富岡晃一郎は完全に猫背椿の引き立て役で、その意味では実に好演していました。
びっくりしたのは、根本宗子でした。以前、彼女が主宰する「月刊根本宗子」の芝居を見にいったことがあるのですが、肩肘張った物言いが目立つ言動の割に芝居は面白くない、よくあるパターンの演劇人だと思っていましたが、今回の彼女は違いました。自殺した清水葉月を生き返らせようと、必死で訳のわからない呪文を唱え続けるうぶで真面目でかわいい女子高生を熱演していました。なにしろ、赤い鳥居を背負い,鳥居のペンダントをぶら下げたセーラー服で登場するのですから、笑ってしまいます。演出家によって役者が見違えるよい例だと思います。
残念だったのは、清水葉月、根本宗子以外の女子高生がみんな足が太くて女子高生に見えなかったことです。逆に根本宗子は中学生くらいにしか見えませんでした。

さんぴん「NEW HERO」

2015年7月17日 19時30分開演 東京芸術劇場アトリエイースト
作・演出:さんぴん
演出監修:三浦直之
出演:板橋駿谷(ロロ9,北尾亘(Baobab),永島敬三(柿食う客)、福原冠(範宙遊泳)
色々な劇団に所属する若手男優が4人集まって、一般の人々にインタビューをし、それを自分たちなりに構成・演出して物語るという試みでした。なぜ彼らがそんなことを思いつき、実行に移したのかはわかりませんが、面白い試みだとは思います。
一般の人々とは言え、その中には彼らの肉親も(主に、祖父や祖母)含まれるため、その距離感が露骨に話し方に反映されてしまいます。知らない人に聞いた話は結構客観的に再構成されて聞きやすいのに、肉親の話は情に流されて聞きにくいところが多々ありました。その揺らぎと、話をまとめなければいけないという意識が、スケールを小さくしているように見えました。どちらかに振り切って進まないと、進路は見えてこないと思います。
客観的に進むなら誰か第三者の脚本家が必要だと思いますし、情にながされるなら、集団演出は難しいと思います。(悪のりという形で、一気にエスカレートする可能性はありますが、持続はできないと思います。)
役者としては、板橋駿谷が目につきました。筋トレ好きなのは知っていましたが、4人の中で際立った肉体を持っているのに、不器用で板橋駿谷以外を演じられないところに好感が持てます。他の3人が結構小器用に役を演じ分けてくるので、その不器用さがいっそう目立ちます。できれば、この不器用さのまま、成長していってほしい物です。

2015年7月17日金曜日

長塚圭史「かがみのかなたはたなかのなかに」

2015年77月11日 17時開演 新国立劇場小劇場
作・演出:長塚圭史
振付:近藤良平
出演:首藤康之、近藤良平、長塚圭史、松たか子
2013年と同じ座組で、いちおう子供向けの企画ですが、子供より大人の方が楽しめる仕上がりでした。首藤康之と近藤良平、松たか子と長塚圭史がペアで,鏡のこちらと向こうの人物を演じるという設定で、タイトルもそれに準じたアナグラムになっています。設定、ストーリーともに前回よりスマートになっており、それは進歩だと思うのですが、そのため菊花(仮)が少なく、私には前回の方が楽しめました。鏡の世界なので、ミラー振りとでも言うのでしょうか、二入が鏡のこちらと向こうのように左右対称に踊る場面が何度かかるのですが、どうしても相手の動きを意識して踊らざるをえないので、いつもの伸びやかな,自由な感じがなくなっていたのが残念でした。
今回の最大の収穫は、長塚圭史の女装でしょうか、あれだけ背の高い人が女装すると、あんなに悲惨なことになるという見本です。

悪い芝居「キスインヘル」

2015年6月29日 19時開演 赤坂レッドシアター
作・演出:山崎彬
出演:横田美紀、渡邊りょう、田中良子、土屋シオン、山崎彬、中西柚貴、長南洸生、植田順平、岡田太郎、畑中華香、四万十川友美、北岸淳生、呉城久美
悪い芝居ならぬひどい芝居を見てしまいました。現代の純愛を描こうとして、最初に真逆の恋愛感情を利用して商品を売りつけることを仕事としている人々と、愛なんかない、精子と卵子の結合こそが全てだと主張する原理主義者を出してきて、その人々が純愛に目覚める逆転劇にしようとしたのだと思うのですが、肝心の純愛がうまく表現できず、バンド演奏で無理矢理盛り上げて終わるという,演劇としては最低の終わり方でした。舞台上での生演奏が妙にうまくて、多分、ミュージッシャンに芝居を教えたのだと思うのですが、それがまた妙に通り一遍の芝居を小器用にこなす結果となり、この芝居の失敗の一因になっているような気がします。
ラストの演奏中、することもなく舞台に佇む原理主義者の役者が,脚本家としての山崎彬に見え、無理矢理盛り上げようとマイクで客をあおり、客席を駆け回る山崎本人は演出の焦りと絶望感そのものでした。

2015年6月27日土曜日

NewYork 2015 No.14 Broadway Musical 「On The 20th Century」

2015年6月21日 14時開演 American Airlines Theatre
約40年ぶりの再演になるミュージカル・コメディで、「On The Town」などと同じ時代の作品です。典型的なミュージカル黄金時代の作品で、絵に描いたような要素がちりばめられていました。ショー・ビジネスのバック・ステージ物で、はったり屋の落ち目のプロデューサー、頭の弱い女優、怪演をきわめる老女優などなど、面白さてんこ盛りなのですが、新しい物はひとつもないのが残念です。それが気になります。リバイバルといえども、新しい切り口がな寝れば、面白いとはいえなのではないでしょうか。

NewYork 2015 No.13 Broadway Musical 「The King And I」

2015年6月20日 20時開演 Vivian Beaumont Theater
2015年のトニー賞のミュージカル主演女優賞を受賞したケリー・オハラが出演している「King And I」を見ました。受賞直後ということもあるのか、彼女が登場しただけで拍手がおきるほどで、彼女の人気がうかがえます。何度もノミネートされた末の受賞ですから、本人もさぞ嬉しかったことでしょう。
日本人としての興味はどうしても、王様役の渡辺謙の演技ですが、これは微妙なものがあります。シャムの王様といえば、日本人にとってもエキゾチックな物だと思うのですが、渡辺謙の演技は、けしてうまいとはいえない英語を喋りながらくさい芝居をしているとしか見えません。しかし、ケリー・オハラとのダンスシーンはとても素敵だったので結果、よかったのではないでしょうか。
芝居のラスト近くで、シャムの補佐役が苦々しくつぶやく、「She destryed KIng」という台詞に象徴しているように、この芝居には西洋文明が東洋を滅ぼしていくというストーリーが基本的に流れています。そしてそれを肯定しています。初演当時はそれでよかったのかもしれませんが、現代に上演するときにはそれでよいのでしょうか?
同じリンカーン・センターのリバイバル・シリーズとして上演された「南太平洋」の人種差別の扱い方の時も感じたのですが、さしたる反省もなくそのまま上演する体制は疑問が残ります。

2015年6月23日火曜日

NewYork 2015 No.12 Broadway Musical 「aladdin」 again!

2015年6月20日 14時開演 New Amsterdam Theatre
16日に見た「Aladdin」ですが、トニー賞ミュージカル助演男優賞の実力が見たくて、急遽,チケットを予約して見にいきました。ジェームス・モンロー・イングルハートが出演するかどうかもわからないのに、プレミヤム・チケットに300ドル以上も払って、賭にでました。公演日まで日にちがなくてe-Ticketsしか選択できず、慌ててGoogle翻訳を駆使して説明を繰り返し読み、、iPhoneに新しいアプリを入れたりなどして、焦りました。
当日は早めに行って恐る恐るプレイビルを開け、今日の出演者一覧の紙を見ると、そこにはジェームス・モンロー・イングルハートの名前がありました。愛でたし、愛でたし。
当然のことながら、スタンバイの人と台詞も同じ、やる小ネタも同じですが、会場に流れる空気が微妙に違います。ジェームスが会場をコントロールしていることがかっきりまかります。観客も安心してその流れに乗って楽しんでいることがよくわかりました。どこが違うとは言えませんが、明らかに違う。それが実力の差なのでしょう。
前から3列目のほぼセンターという至近距離でしたが、マジックカーペットの仕掛けはわかりませんでした。ただ、カーテンコールのスタンバイのため、カーペットが下手から上手に移動するのが文字の隙間から見えたので、基本的には吊っているのだとは思います。

写真は開演前の緞帳です。ここから、少し透けてから振り落とされると、砂漠の真ん中にジニーが立っていて,始まり始まりです。

2015年6月21日日曜日

NewYork 2015 No.11 Broadway Musical 「An American In Paris」

2015年6月19日 20時開演 Place Theatre
1951年のジーン・ケリー主演の映画を基に作られたミュージカルで,今年のトニー賞に12部門でノミネートされました。結局、受賞したのは、振付、編曲、装置デザイン、照明デザインの4部門でした。
何しろ主役の二人とも現役のバレー・ダンサーで、男性のリチャード。フェアチャイルドは、ニューヨーク・シティ・バレーのプリンシパル、女性のレニー・コープはロイヤルバレエ団所属なのですから、最初から最後まで踊る、踊る、芝居があって普通なら歌い出すところで、踊り出すという感じです。そのかわり、芝居と歌はそこそこというかんじでしょうか。ダンス好きならたまらない作品と言えるでしょう。ダンスが今ひとつ苦手な私には、純粋なダンス作品よりは見やすかったですが、今ひとつな感じでした。
この作品で特筆すべきは、最近はやりのプロジェクションマッピングの技術の高さです。
単純にプロジェクションするのではなく、わざわざ建物の切り出しパネルに投影して、後ろの空のプロジェクションと遠近感を見せたり、パースの奥の方の絵をボケ気味に暗く映してパース感を補強したりして、プロジェクションマッピングの最大の欠点、どうしても平面的に見えることをうまくカバーしていました。また、主人公が画家なので、プロジェクションの開始をスケッチ風の輪郭線から始めて、次第に色がついてくことで転換時間を持たせる工夫など、トニー賞に選ばれるにふさわしいと思えました。
ただ、ラストの15分にも及ぶバレー・シーンは、ダンスの質は別にして、モンドリアン風の衣装と装置は,今となってはレトロモダンなだけでいかがな物でしょう。映画に習ったなら、仕方がないのかもしれませんが、もう少しやり方があったような気がします。

NewYork 2015 No.10 Broadway Musical 「Book Of Mormon」

2015年6月18日 19時開演 Eugene O'Neill Theate
2011年度のトニー賞ミュージカル作品賞を始め、9部門を受賞したミュージカルです。モルモン教というキリスト教系の新興宗教を徹底的に茶化した内容で、よくも教団側がオーケーを出したと思うのですが、「宣伝になる」と一発オーケーだったそうです。この辺はアメリカ的功利主義の現れだと思います。
内容は、モルモン教の宣教師になる訓練センターをダントツの成績で卒業した男が、なぜかだめな嘘つき男と組まされてアフリカはウガンダに派遣されることになります。到着してみると、先輩宣教師たちの成績はゼロ。しかし、嘘つき男が適当なことを言って,村人に洗礼を受けさせることに成功してしまいます。知らせを受けた本部の監督官が喜んで視察に来た,その目の前で、村人たちが著しく曲解したモルモン教の教えを芝居仕立てで披露してしまいます。当然、布教所は即閉鎖、宣教師たちには帰国命令が出ます。しかし、アフリカへの愛に目覚めた宣教師と村人は,新しい宗派を開き布教活動を始めて、愛でたし、愛でたし。
このミュージカルの原案者はアニメ「サウス・パーク」の制作者で、それからすれば、この内容もさもありなんというところでしょう。また、「茶化しはすれど、否定はしない」、このレベルがアメリカにおける表現行為の限界でもあるのでしょう。
このミューカルの演出・振付をしたキャシー・ニコローは、ディズニーの「Aladdin」の演出・振付も担当しました。そういえば、ここぞというところで、あらゆるアイディア、手法を放り込んでくるスタイルはそっくりです。
私が見た日は、平日のソワレにもかかわらず、嘘つき男の役がアンダー・スタディでした。アンダー・スタディの出番は、水曜マチネーのみという不文律があったような記がすすのですが、今ではなくなったのでしょうか。

2015年6月20日土曜日

NewYork 2015 No.9 FUERZA BRUTA 「WAYRA」

2015年6月17日 20時開演 Daryl Roth Theatre
昨年のニューヨークの時にも見たFUERZA BRUTAですが、再び見にいきました。私としては珍しいことです。有名な人がでているわけでもなく、大きな場所でやっているわけでもありませんが、長年のロングランはすごいことだと思います。
一言で言えば、パワープレイ系のシルク・ドゥ・ソレイユとでもいいましょうか、高い身体能力と技術で超人的な技をいとも簡単に決めてくるシルク・ドゥ・ソレイユに比べて、一般人に近い俳優が体力と勢いだけを頼りにパフォーマンスする舞台だと思います。
パーフェクトに近いシルク・ドゥ・ソレイユにはほとんど興味を引かれませんが、FUERZA BRUTAは大好きです。きっと、あの必死さに惹かれるのだともいます。

NewYork 2015 No.8 Broadway Musical 「Something Rotten!」

2015年6月17日 14時開演 St. James Theatre
最近の人気ミュージカルのパロディを詰め込んだ抱腹絶倒のミュージカル・コメディというイメージで見にいきましたが、私の英語力ではほとんど理解できず、いつもながら
パロディ物を見るのは、難しいことを痛感しました。
しかし、曲の中に一節づつ有名ミュージカルのメロディを混ぜたり、同じ振付を一瞬だけ見せたりするのは、パロディと言えるのでしょうか?
著作権にうるさい昨今では、あれが限界なのかもしれません。
ストーリーは、ご都合主義の塊で、いっそ気持ちがよいくらいです。そんなことは気にせず、ただただ笑い飛ばすための芝居なのだと思います。
話は変わりますが、このSt. James Theatreは行きの飛行機の中で見た「バードマン」で、エオワード・ノートンとエマ・ストーンが屋上から見下ろしていた劇場です。ということは、彼らがいた劇場はMajestic Theatreだということになります。バード満の劇場は客席数800という設定ですから、ロケーションの良さから選ばれただけでしょうが。

2015年6月17日水曜日

NewYork 2015 No.7 Broadway Musical 「Aladdin」

2015年6月16日 19時開演 New Amsterdam Theatre
ディズニーの最新ミュージカル「アラジン」を見ました。残念ながら魔法のランプの精、ジニーは、2014年のトニー賞、最優秀ミュージカル助演男優賞を獲得したジェームス・モンロー・イングルハートではなく、スタンバイのトレバー・ディオン・ニコラスが演じていました。
このミュージカルの肝は、ジニーとその魔法のシーンで、アラジンに呼ばれて三つの願いをかなえるシーンでは、マジック、様々なスタイルのダンス、花火などを使いまくってこれでもかと言うほど盛り上げます。ただし、一番重要なのはジニー役の演技力で、ここで観客の心をわしづかみにして振り回さないと、後が持ちません。トレバー・ディオン・ニコラスはがんばってはいましたが、少し上滑り気味で残念でした。
マジックカーペットのシーンは、LEDの星空の中、本当にカーペットが浮かんでいるように見えるのですが、アラジンとプリンセスにあたっている照明がカーペット上のコロガシしかなくて、暗くて1曲持たない感じでした。
今までのミュージカルの様々な演出方法を駆使して盛り上げるという点では、「ライオンキング」と共通の考え方を感じますが、ただ、羅列しただけの「アラジン」に比べ、「ライオンキング」では全てを新しい切り口で見せていて,今更ながらその革新性に驚きます。

NewYork 2015 No.6 Broadway Musical 「Clinton The Musical」

2015年6月15日 20時開演 New World Stages 4
軒並みブロードウエイ・ミュージカルが休演の月曜日に、Today Tixで選んだのがこのオフ・ブロードウエイ作品でした。
2012年にロンドンとエジンバラで上演され、2014年のニューヨーク・ミュージカル・フェスティバルでも上演された後、オフ・ブロードウエイに移ってきたようです。
健全で知的な大統領と女好きで魅力的な大統領を二人の男優が演じるのがこの作品の肝で、ほとんどの場面で,二人のクリントンが舞台上にいます。しかし、本当の主役はヒラリー・クリントンで、大統領よりも大統領らしい大統領夫人、本当は自分が大統領になりたかったヒラリーを、2008年にミュージカル「キサナドゥ」でミュージカル主演女優賞にノルミネートされたケリー・バトラーがあざとく演じています。
「あざとさ」がこの作品のキーワードで、モニカ・ルインスキー事件もあざとく演じられます。
ケリー・バトラーは非常に歌がうまい女優だそうですが、熱唱すればするほどあざとく感じられてしまい、かえって損しているようです。
このミュージカルを見る2,3日前に、ヒラリーが正式に2016年の大統領選に出馬することを表明しましたが、その効果は全くなかったようで、今月の21日でクローズだそうです。

2015年6月15日月曜日

NewYork 2015 No.5 Broadway Musical 「Le Miserable」

2015年6月14日 15時開演 Imperial Theatre
この日は見るミュージカルを決めていなかったので、ニューヨークに来てから Today Tixで「Le Miserable」のチケットを取りました。
新しい演出になったことは知っていたので、どうなったのか知りたかったのもありました。とは言え、私が見たのは遙か昔に帝劇で、主演の滝田栄のくさい芝居と,バリケードの迫力以外ほとんど記憶がありません。全体としての印象は、アンサンブルが主役のような芝居で、日本でも見るに耐えるアンサンブルができるのだというのが最大の印象でした。
新演出になっても、昔のことをほとんど覚えていないので比較もできませんが、アンサンブル重視から、主役クラスの歌重視という変更が新演出のポイントだと感じに見えました。
途中休憩を挟むとは言え、3時間以上とにかく歌う、歌う,歌い上げる。オペラのような暗い照明の中で歌い続けて、ラストのコーダでは、必ずバックサスが明るくついてきてポーズの繰り返しで、疲れました。
今はやりのプロジェクションマッピングも取り入れていましたが、全体の照明が暗すぎて、プロジェクションもそれにあわせるため、何が写っているのかよくわからないという状態になりがちでした。ジャベール警視が身投げするところなど、橋の上からパンで橋桁を過ぎて水に入り,水面を下から見るまでをプロジェクションして面白いのですが、いかにせん、光量が抑え気味で迫力がでません。
プロジェクションマッピング前提なら、それに合わせた全体光量を決める必要があるようです。

NewYork 2015 No.4 Broadway Musical 「Finding Neverland」

2015年6月13日 20時開演 Lunt-Fontanne Theatre
「ピーター・パン」のJ. M. バリーの「ピーター・パン」を書き上げるまでを,背景とともに描いたミュージカルです。原作はジョニー・デップ主演の映画だそうですが、そちらは見ていません。
なかなか台本が書けないJ. M. バリーがピーターパンの基になる少年と公園で知り合い、その自由な発想に刺激を受けて「ピーター・パン」を書き上げ、劇場主や役者のクレームをはねのけて、上演までこぎ着ける。19世紀のイギリスの階級社会の重圧の中で、自由を求めた男の話でもあるし、J. M. バリーの半生記でもあります。
主役のJ. M. バリーを務めたのは、テレビ番組「GLEE」で先生役を務めたマシュー・モリソンで、そんなことを知らない私は、彼が最初に現れたときの客席のどよめきと拍手にびっくりしました。歌もうまいし、芝居も達者でただ単に客寄せのためにキャスティングされたのではないことを証明していました。もう一人、相手役の劇場主を演じたのがケルシー・グラマーで、彼は1993年からアメリカの人気テレビ番組「そりゃないぜ!?フレイジャー」で主役を務めた人物で、当時最高額のギャラをもらっていたことで知られていました。彼も初登場の時には、マシュー・モリソンに劣らぬ拍手をもらっていました。相手役がよいと芝居に広がりと深みが出ます。そこが、「Kinkt Boots」との差になって表れていました。
1幕の最後、J. M. バリーの妄想の中でケルシー・グラマーがフック船長となって現れ、大立ち回りから舞台が海賊船に大転換するところなど、最高でした。
演出は、昨年のトニー賞で最優秀ミュージカル演出賞を取ったダイアン・ポーラスで面白くないわけがありません。子供にもわかりやすい小ネタのばらまき方や、スピーディな転換など,見所満載です。
劇中のフライングシーンも,19世紀という時代背景を考えれば当然ですが、人力で,それがかえって新鮮でした。この制作チームは、これがブロードウエイ初作品と言うことで、かなり力が入っており、プロジェクションマッピングの技術の高さも驚くべきものがあります。
2幕のラストでは、風の力だけできらきら光るフェアリー・ダスト(ラメ)とウエンディのナイトガウンが舞い踊り、母親の死を象徴する見事なシーンが見られました。この技術は、「Air Sculptor(空気の彫刻)」という名称で,担当者がクレジットされていました。
今年のトニー賞のミュージカル作品賞を取った「Fun Home」もそうですが、「Rent」以降、「Next To Normal」など、現実を直視したミュージカルが高く評価される傾向があるようですが、私には納得いきません。
ファンタジーが現実を超えないでどうする。ミュージカルはファンタジーであることに価値があると思います。

NewYork 2015 No.3 Broadway Musical 「Kinky Boots」

2015年6月13日 14時開演 Al Hirschfeld Theatre
2013年トニー賞:ミュージカル作品賞、オリジナル楽曲賞を受賞
4月の末に、主役のドラッグ・クィーン,ローラ役のビリー・ポーターが戻ってきた「Kinky Boots」を見ました。
ドラッグクィーンとそのエンジェルスが出てくれば、ミュージカルの盛り上げシーンは問題なしという、うまい構成というか、ずるいというか別にして実にうまくできた脚本で,十分楽しめました。
ローラは、いわゆるテレビなどでよく目にする,周りに遠慮しないでずけずけものを言うステレオタイプのオカマではなく、普通に父親との関係に悩み、周りに気を遣う人間として描かれていて、役柄に深みをもたせているところはよく考えられています。
残念なことに、相手役のチャーリーは、恋人との葛藤や、亡くなった父親が自分が靴工場をつがないことを見越して、工場の再開発(コンドミニアムへのリノベーション)に同意していたことのショック、ドラッグクィーン用ブーツを開発することへの工場従業員の反発など、,様々な困難が襲いかかってくるにもかかわらず、金持ちのボンボンにしか見えない線の細さが問題で、ローラとの友情が今ひとつ盛り上がらない原因です。
シンディー・ローパーの楽曲は、オペレッタらしさのすくないポピューラーミュージックにちかいもので聞きやすいのですが、歌う人のエモーションが如実に表れる欠点もあり、エモーショナルでない人が歌うと、R&Bのテンプレート集のように聞こえることがあるのが、残念でした。
ラストでは、ミラノの見本市でモデルが間に合わず、チャーリー自身がスーツ姿に下半身がパンツひとつにブーツを履いてランウエイでよろめいているところに、なぜかローラとエンジェルスが現れて大盛り上がり、挙げ句の果てには、工場従業員全員がブーツを履いてハッピーエンドというお約束のオチとなりました。
それがお寒いシーンにならないところに、脚本のうまさや役者の実力があると思います。
ラストシーンの振付が、パラパラみたいで、日本人には笑えると思います。

NewYork 2015 No.2 Broadway Musical 「Gigi」

2015年6月12日 20時開演 Neil Simon Theatre
「マイ・フェア・レディ」と同じく、はすっぱな少女が貴婦人になって幸せをつかむというストーリー。主役のGigiを演じるのは、ディズニーの「ハイスクール・ミュージカル」で有名になったらしいバネッサ・ハジェンズなのですが、一応、歌えて,踊れて、芝居もできるようなのですが、いかにせん、底が浅くて終幕になっても貴婦人に見えないところが最大の問題です。相手役のガストンを演じるコーレイ・コットも同じようなレベルなので、話はなかなか盛り上がりません。
そんな中で一人で気を吐くのが、マミータ役のヴィクトリア・クラーク、「ライトインザピアッツァ」でトニー賞を取っただけではある歌と芝居で舞台を持って行きます。彼女がいなかったら、とても退屈な舞台になっていたと思います。
話は違いますが、今回からチケットマスターでチケットを予約すると、海外からのオーダーについては、チケットをプリントアウトするように求められます。というか、それしか選択できません。テレチャージでは、プリントアウトかボックスオフィス預けか選択できるのですが。やってみると、プリントアウトならぎりぎりに劇場に駆け込んでもおーけーなので、おすすめです。

2015年6月13日土曜日

NewYork 2015 No.1 Broadway Musical 「Fun Home」

2015年6月11日 20時開演 Circle in the Square Theatre
2015年トニー賞:ミュージカル作品賞・ミュージカル脚本賞・オリジナル楽曲賞・ミュージカル主演男優賞・ミュージカル演出賞の5部門受賞
ニューヨーク到着3日目の夜でしたがまだ時差ボケが治っておらず、いつにもまして集中力がない状態で見てしまい、まったく理解や共感ができないまま90分が終わってしまいました。せっかく2015年のトニー賞、ベストミュージカル作品なのにもったいないことをしました。
見終わってから慌てて粗筋などを探し回ったら、どうも同名のグラフィック・ノベルを元に制作されたらしく、その本の方の粗筋として、『著者と同名の、片田舎の葬儀屋の長女として育てられたアリソンを通して綴る自伝的グラフィック・ノベル。共に同性愛者で、また文学を愛する者として、共感を覚えながらもすれちがい続けた父と娘。とうとう和解を得ないまま父を喪ってしまったアリソンが、互いをつなぐ微かな糸を手繰る様子を、膨大な文学作品を引用しながら繊細な筆致で描く。』というのが載っていました。
本の方も様々な賞を取った有名な作品らしいです。そんな有名な作品なのに,下調べもしないでぼけっと見るのはいかがなものでしょうか?
見た印象だけで言うと、幼少期のアリソンを演じた子役がなかなかすごい。歌もうまいし、芝居もしっかりしているが、子供らしさを失っていないところに,好感が持てます。
全体としては、音楽が難しすぎて素直に聞けないところが気になりました。

2015年6月10日水曜日

ロロ「ハンサムな大悟」

2015年6月8日 19時30分開演 駒場東大前アゴラ劇場
作・演出:三浦直之
出演:篠崎大悟、板橋駿谷、亀島一徳、望月綾乃、森本華
ロロ名義としては,約10ヶ月ぶりの公演でした。あうるすぽっとプロデュースの「ロミオとジュリエットのこどもたち」からしても、約8ヶ月ぶりになります。
登場人物も5人と、私が見た中では最少人数です。というか、劇団員だけでやると、この5人でおしまいなのです。
主役の篠崎大悟以外の4人は、様々な役をとりかえひっかえこなしながら、大悟の一代記を語っていきます。また、台詞がほとんどモノローグであることも大きな特徴でしょう。会話は最小限で、物語はほとんどモノローグで語られていきます。
役柄の関係性も大悟との関係だけというシンプルさで、そのシンプルさが役者に大きな自由度を与えています。特にその影響が大きかったのが板橋駿谷で、彼のパワフルさが今まで以上に発揮されて、舞台上で輝いていました。また、森本華のかわいらしさも、十二分にでていました。
一番割を食ったのは、主役の篠崎大悟です。ラストの芝居をしめるモノローグで、力不足が現れて、フィニッシュ失敗の感じは免れませんでした。
装置の大転換、落書きのような線路が書いてある黒地がすりをめくり上げてミラーを見せ、大悟の姿をミラーにも写し込んで台詞を補強する仕掛けにもかかわらず、役者の力不足を補うには足らず、不完全燃焼のようなラストでした。

2015年6月8日月曜日

中野坂上デーモンの憂鬱「六月の家族」

2015年6月7日 18時開演 荻窪小劇場
作・演出:松森モヘー
出演:松森モヘー、向井稜太郎、橋田祐理、三森麻美、安達可奈、鈴木はるか、荻野肇、南帆子
はえぎわで演出助手をやっている松森モヘーの劇団と言うことで見にいきましたが、久しぶりに見たことを激しく後悔しました。
あんなに薄汚い芝居を見たのは初めてでした。全員、へたくそなだけでなく芝居が薄汚いのです。なにか悪い思想にでも犯されているのではないかと思えるほどでした。全体のトーンがその薄汚さで統一されているので,あれがあの劇団のカラーということなのでしょうが、私には耐えられませんでした。
ストーリーはそれなりに複雑で入り組んだものだったのですが、その理由がやっつけで全くリアリティがありません。
最後に役者が叫ぶスローガン、「自由と尊厳をはかりにかける、うんぬん」がテーマということなのでしょうが、それまでのぐちゃぐちゃな芝居と関係があるようには見えませんでした。彼らには、「説明するな、芝居しろ」だけ言いたいです。

城山羊の会「仲直りするために果物を」

2015年6月3日 19時30分開演 池袋東京芸術劇場シアターウエスト
作・演出:山内ケンジ
出演:吉田彩乃、遠藤雄弥、岡部たかし、岩谷健司、東加奈子、松井周、石橋けい
第59回の岸田戯曲賞受賞後の第1作目にあたる作品なので、結構楽しみにして見にいきました。
しかし、残念ながらあまり面白くありませんでした。やってることは受賞作の「トロワグロ」と同じで、ふとした言葉をきっかけに各々の欲望があらわになっていき、えげつない結幕を迎える。しかも今回はえげつなさの究極ともいえる殺人という形で終わる。
でも面白くないのは、きっかけとなる台詞が無理矢理に聞こえるからだと思います。うまくいくときは、その言葉から派生して事態が転がり出し、雪だるま式に膨らんで破滅があるという形がうまく作れているのですが、今回は殺人という結果に向けて無理矢理進んでいこうとするのがあからさまで、面白くありませんでした。
「効率の優先」の時もそうですが、岩谷健司と石橋景のセックスシーンがある芝居は面白くないという印象ができました。

2015年5月30日土曜日

イキウメ「聖地X」

2015年5月29日 19時30分開演 三軒茶屋シアタートラム
作・演出:前川知大
出演:伊勢佳世、安井順平、浜田信也、盛隆二、岩本幸子、森下創、大窪人衛、橋本ゆりか、揮也
途中、カタルシツの「地下生活者の手記」の再演や、KAATでの「暗いところからやってくる」の再演はあったものの、約1年ぶりのイキウメでした。
この芝居も再演だそうですが、初演は見ていないのでわかりません。
ドッペンゲルガー現象という一人の人間が二人に分裂する話なのですが、難しいことを考えなくても素直に楽しめました。
イキウメの場合、設定がSF的なのでそれを説明することがどうしても必要になってきます。その説明がうまく流れに乗ってくれば楽しく見られるのですが、少しでも説明くさくなると、途端に興味をそがれてしまいます。この芝居は、ぎりぎりセーフといったところでしょうか。とは言え、結構楽しく見れました。
オープニングで、装置の一部が動いて壁面に照明が広がっていくシーンは、原理がわかれば単純な仕掛けなのですが、とても印象的でした。

「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」

2015年5月27日 19時30分開演 下北沢OFFOFFシアター
作:トム・ストッパード
演出:鵜山仁
出演:浅野雅博、石橋徹郎
私も名前だけは知っていた「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」を見ました。出演者二人のプロデュース公演とのことですが、二人につての知識は全くありませんでした。調べたら、浅野雅博はわかぎふえの玉造小劇店「洋服解体新書」に出演していたようですが、全く記憶にありません。
有名なハムレットの端役、ローゼンクランツとギルデンスターンを主役にしてハムレットを裏側から描いた作品と言うよりは、周りに翻弄されてなすすべもなく、なんとか軽口や冗談でその場の正気を保とうとする、極めて「ゴドーをまちながら」的な作品でした。トム・ストッパードの戯曲は実によく書けていて、ゴドー好きな私には、ぴったりでした。
主人公が若い分、生きたいという想いが楽天的に表されていますが、根本はウラジミールとエストラゴンのペシミズムと同じです。
今回は二人芝居と言うことで、本来なら出てくるはずの他の登場人物、ハムレットやクローディアス、オフェーリアなどは、二人が扮装して映像での登場となり、重要な旅役者の座長は、人形を黒子が操作するという形になったのも、「ゴドーを待ちながら」的な印象を強めて効果的でした。
お二人とも20年くらいのキャリアがある文学座所属の役者で、台詞や動きに雑音が少なく、実に見やすい芝居でした。
それにしても、あの翻訳劇特有の台詞は何とかならないものなのでしょうか。日本語ではそんな言い方はしないでしょうという気持ちが、どうしてもしてしまいます。それとも、翻訳劇を見慣れれば、気にならなくなるのでしょうか。

岩井秀人×快快「再生」

2015年5月26日 19時30分開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
原案:多田淳之介
演出:岩井秀人
プロデュース:北川陽子
出演:大道寺梨乃、野上絹代、山崎皓司、天野史朗、後藤剛範、テンテンコ、岡田智代(中林舞休演につき、代役)
戯曲についてなんの知識もないまま見て、びっくりしました。暗い中から立ち上がり、大音量の音楽がかかる中、時々叫び声を上げながら動き回る。曲が変わるたびに,動き方も変わり、それぞれにクライマックスらしきものを迎えますが、最後には全員倒れ込んで終わります。そして、それが3回繰り返されます。それが全てです。意味のわかる台詞はひとつもなく、意味があると思える動きもありませんでした。始まって5分過ぎたあたりから少し不安になってきて、どんなタイミングで意味がわかる形にきりかわるのか心配し始めました。2回目の途中あたりで、これはこのまま最後まで行くであろうことがわかり、1ルーティンが約30分だから、上演時間から計算して、3回繰り返して終わるのだろうことが理解できました。
帰ってから少し調べたら、2006年の東京デスロックの初演の時は、最後に集団自殺するという設定で同じように繰り返していたようですが、2011年の再演時には集団自殺という設定も明示されないような演出になっていたようです。繰り返しについては、「始まったら終わる」という演劇の形に疑問を持ってのことのようです。本来なら永遠に続けたいが,役者の体力の限界で3回の繰り返しを決めたと言うことでしょうか。
振付というか役者の動きにも聞いてみれば意味があると思うのですが、見てわからなければ無駄な動きにしか見えません。理解できないのは、多分、私の感性が悪いと言うことなのでしょう。
それにしても、元々の台本(もし、あればですが)がどんなもので、それをどのように演出したらあのような舞台になるのかは知りたいところです。
2013年に「6畳間ソーキュート社会」を見たときには、美大生の思いつきパフォーマンスみたいで初々しさのようなものを感じたのに、2年経ったら自分の観念に凝り固まったおばさんのようで、少し悲しいです。

2015年5月26日火曜日

入江雅人グレート5人芝居「デスペラード」

2015年5月20日 19時開演 赤坂レッドシアター
作・演出:入江雅人
出演:水野美紀、オクイシュージ、野口かおる、入手杏奈、入江雅人
前回の清水宏とのグレート二人芝居「狼たち」があまり二人がかみ合っていなくて,今回もどうしようか悩んだのですが、私の気になる女優の一人である野口かおるが出演するというので、アンサンブルもよくなっているであろう楽日に見にいきました。
結論から言うと、前回よりは面白かったけれど、次も見にいくかと言えば、いかなくてもよいかなと言う感じです。
積極的にシュールにボケまくるオクイシュージと、芝居の受け方がシュールすぎる野口かおるがいて、全体をまとめて進行する入江雅人とその妻役の水野美紀は割とまとも、ただし、水野は隙があるとマメにボケる。全体のバランスは悪くありませんでした。
しかし、進行役がほぼ入江一人に限られるのでストーリーの展開がワンパターンになりがちで、なかだるみも生じていました。
野口かおるのシュールさは、今回のようにほかに強力なキャラクターがあれば、そんなに浮いた印象もなく、存分に楽しめました。

ままごと「わが星」

2015年5月19日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:柴幸男
音楽:三浦康嗣
振付:白神ももこ
出演:大柿友哉、黒岩三佳、斉藤淳子、寺田剛史、永井秀樹、仲島佳子、端田新菜、山内健司
柴幸男の代表作、「わが星」を見ました。再再演だそうです。地球の誕生から消滅までを小さな女の子に擬人化して語る、一種の寓話のようなようなストーリーです。その中で
、ひとの出会い、別れ、生と死について,淡々と語られていきます。
時報の音をテンポマーカーとして,リズミカルに話は進んでいき、飽きさせません。
まんが日本昔ばなしでの常田冨士男が屈指の「語り部」だったように、脚本・演出においても,「語り部」としての才能が存在すると確信できる作品でした。
なかなか東京での公演の少ないままごとですが、次回も是非見たいと思います。

2015年5月10日日曜日

渡辺源四郎商店「海峡の7姉妹」

2015年5月4日 19時開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:畑澤聖悟
出演:工藤由佳子、三上晴佳、山上由美子、奥崎愛野、音喜多咲子、夏井澪菜、我満望美、北魚昭次郎、佐藤宏之、工藤良平
毎年ゴールデンウィークにスズナリで公演している青森の劇団、渡辺源四郎商店をやっと、見ることができました。
いわゆる地域劇団の中では、全国的な知名度を持つ老舗の劇団です。
ストーリーは、戦後すぐから青函トンネルができるまで運行していた青函連絡船の歴史を通して、高度成長期の日本を描くものでしたが、舟のかぶり物をした七人の女優さんが七隻の青函連絡船を演じる、その演出自体があまりにもドンピシャリで、ずるいとまで感じさせるものでした。
青森という地方で芝居をすると言うことのけなげさと、高度経済成長に合わせて一日何十往復もする連絡船のけなげさ、それもトンネルの開通にあわせて廃止されてしまう無情さ、それが地域劇団の現状と重なって収支、涙なくしては見られない者となっていました。
芝居自体がうまいわけでないのですが、涙なくしては見られない。これをずるいといわないで、どうしましょうか。

CHAiroiPLIN「FRIEND」

2015年5月3日 14時開演 六行会ホール
原作:安部公房
構成・演出:スズキ拓朗
出演:池田仁徳、加藤このみ、増田ゆーこ、NIWA、長嶺安奈、本山三火、鳥越勇作、柏木俊彦、荒木亜矢子、まひる、今井夢子、ジョディ、スズキ拓朗、清水ゆり
2014年の若手演出家コンクールの受賞作品であり、今回はその再演と言うことである。昨年の秋に見た「マッチ売りの少女」は、踊る戯曲シリーズの2作目であり、最初の踊る戯曲はこの作品と言うことになる。
戯曲を踊ると、言葉は粗筋だけになります。台詞は踊る肉体に入れ替わります。ただ、この作品は最初と言うこともあり,踊りが当て振りの段階にとどまっている箇所も多く、完成度としては「マッチ売りの少女」の方が高いと言えます。
「さくらんぼ」を見た後だと、あの荒唐無稽さをダンスが体現していたのに比べて、シリアスさに負けて、イメージが広がっていかなかったのが残念です。

突劇金魚「ゆうれいを踏んだ」

2015年4月27日 19時30分開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:サリngROCK
出演:片桐慎和子、有北雅彦、山田まさゆき、大畑力也、sun!!、ののあざみ、殿村ゆたか
子供鉅人が東京に進出して以降の大阪の希望の星であると、どこかで書いてあったような気がする劇団です。
幽霊を踏んだら頭から桜の木が咲いたという,落語の頭山と同じ設定のストーリーですが、落語と違い頭に木が生えた状態の自分を受け入れてくれる場所を探す女性と,それを追いかける男の話が主眼となっています。
設定のキテレツさの割にまともな自分探しという内容に違和感がないところは、うまくまとめてきた感じですが、登場人物の過激さの割に毒が感じられないのが残念です。