2015年6月17日水曜日

NewYork 2015 No.7 Broadway Musical 「Aladdin」

2015年6月16日 19時開演 New Amsterdam Theatre
ディズニーの最新ミュージカル「アラジン」を見ました。残念ながら魔法のランプの精、ジニーは、2014年のトニー賞、最優秀ミュージカル助演男優賞を獲得したジェームス・モンロー・イングルハートではなく、スタンバイのトレバー・ディオン・ニコラスが演じていました。
このミュージカルの肝は、ジニーとその魔法のシーンで、アラジンに呼ばれて三つの願いをかなえるシーンでは、マジック、様々なスタイルのダンス、花火などを使いまくってこれでもかと言うほど盛り上げます。ただし、一番重要なのはジニー役の演技力で、ここで観客の心をわしづかみにして振り回さないと、後が持ちません。トレバー・ディオン・ニコラスはがんばってはいましたが、少し上滑り気味で残念でした。
マジックカーペットのシーンは、LEDの星空の中、本当にカーペットが浮かんでいるように見えるのですが、アラジンとプリンセスにあたっている照明がカーペット上のコロガシしかなくて、暗くて1曲持たない感じでした。
今までのミュージカルの様々な演出方法を駆使して盛り上げるという点では、「ライオンキング」と共通の考え方を感じますが、ただ、羅列しただけの「アラジン」に比べ、「ライオンキング」では全てを新しい切り口で見せていて,今更ながらその革新性に驚きます。

NewYork 2015 No.6 Broadway Musical 「Clinton The Musical」

2015年6月15日 20時開演 New World Stages 4
軒並みブロードウエイ・ミュージカルが休演の月曜日に、Today Tixで選んだのがこのオフ・ブロードウエイ作品でした。
2012年にロンドンとエジンバラで上演され、2014年のニューヨーク・ミュージカル・フェスティバルでも上演された後、オフ・ブロードウエイに移ってきたようです。
健全で知的な大統領と女好きで魅力的な大統領を二人の男優が演じるのがこの作品の肝で、ほとんどの場面で,二人のクリントンが舞台上にいます。しかし、本当の主役はヒラリー・クリントンで、大統領よりも大統領らしい大統領夫人、本当は自分が大統領になりたかったヒラリーを、2008年にミュージカル「キサナドゥ」でミュージカル主演女優賞にノルミネートされたケリー・バトラーがあざとく演じています。
「あざとさ」がこの作品のキーワードで、モニカ・ルインスキー事件もあざとく演じられます。
ケリー・バトラーは非常に歌がうまい女優だそうですが、熱唱すればするほどあざとく感じられてしまい、かえって損しているようです。
このミュージカルを見る2,3日前に、ヒラリーが正式に2016年の大統領選に出馬することを表明しましたが、その効果は全くなかったようで、今月の21日でクローズだそうです。

2015年6月15日月曜日

NewYork 2015 No.5 Broadway Musical 「Le Miserable」

2015年6月14日 15時開演 Imperial Theatre
この日は見るミュージカルを決めていなかったので、ニューヨークに来てから Today Tixで「Le Miserable」のチケットを取りました。
新しい演出になったことは知っていたので、どうなったのか知りたかったのもありました。とは言え、私が見たのは遙か昔に帝劇で、主演の滝田栄のくさい芝居と,バリケードの迫力以外ほとんど記憶がありません。全体としての印象は、アンサンブルが主役のような芝居で、日本でも見るに耐えるアンサンブルができるのだというのが最大の印象でした。
新演出になっても、昔のことをほとんど覚えていないので比較もできませんが、アンサンブル重視から、主役クラスの歌重視という変更が新演出のポイントだと感じに見えました。
途中休憩を挟むとは言え、3時間以上とにかく歌う、歌う,歌い上げる。オペラのような暗い照明の中で歌い続けて、ラストのコーダでは、必ずバックサスが明るくついてきてポーズの繰り返しで、疲れました。
今はやりのプロジェクションマッピングも取り入れていましたが、全体の照明が暗すぎて、プロジェクションもそれにあわせるため、何が写っているのかよくわからないという状態になりがちでした。ジャベール警視が身投げするところなど、橋の上からパンで橋桁を過ぎて水に入り,水面を下から見るまでをプロジェクションして面白いのですが、いかにせん、光量が抑え気味で迫力がでません。
プロジェクションマッピング前提なら、それに合わせた全体光量を決める必要があるようです。

NewYork 2015 No.4 Broadway Musical 「Finding Neverland」

2015年6月13日 20時開演 Lunt-Fontanne Theatre
「ピーター・パン」のJ. M. バリーの「ピーター・パン」を書き上げるまでを,背景とともに描いたミュージカルです。原作はジョニー・デップ主演の映画だそうですが、そちらは見ていません。
なかなか台本が書けないJ. M. バリーがピーターパンの基になる少年と公園で知り合い、その自由な発想に刺激を受けて「ピーター・パン」を書き上げ、劇場主や役者のクレームをはねのけて、上演までこぎ着ける。19世紀のイギリスの階級社会の重圧の中で、自由を求めた男の話でもあるし、J. M. バリーの半生記でもあります。
主役のJ. M. バリーを務めたのは、テレビ番組「GLEE」で先生役を務めたマシュー・モリソンで、そんなことを知らない私は、彼が最初に現れたときの客席のどよめきと拍手にびっくりしました。歌もうまいし、芝居も達者でただ単に客寄せのためにキャスティングされたのではないことを証明していました。もう一人、相手役の劇場主を演じたのがケルシー・グラマーで、彼は1993年からアメリカの人気テレビ番組「そりゃないぜ!?フレイジャー」で主役を務めた人物で、当時最高額のギャラをもらっていたことで知られていました。彼も初登場の時には、マシュー・モリソンに劣らぬ拍手をもらっていました。相手役がよいと芝居に広がりと深みが出ます。そこが、「Kinkt Boots」との差になって表れていました。
1幕の最後、J. M. バリーの妄想の中でケルシー・グラマーがフック船長となって現れ、大立ち回りから舞台が海賊船に大転換するところなど、最高でした。
演出は、昨年のトニー賞で最優秀ミュージカル演出賞を取ったダイアン・ポーラスで面白くないわけがありません。子供にもわかりやすい小ネタのばらまき方や、スピーディな転換など,見所満載です。
劇中のフライングシーンも,19世紀という時代背景を考えれば当然ですが、人力で,それがかえって新鮮でした。この制作チームは、これがブロードウエイ初作品と言うことで、かなり力が入っており、プロジェクションマッピングの技術の高さも驚くべきものがあります。
2幕のラストでは、風の力だけできらきら光るフェアリー・ダスト(ラメ)とウエンディのナイトガウンが舞い踊り、母親の死を象徴する見事なシーンが見られました。この技術は、「Air Sculptor(空気の彫刻)」という名称で,担当者がクレジットされていました。
今年のトニー賞のミュージカル作品賞を取った「Fun Home」もそうですが、「Rent」以降、「Next To Normal」など、現実を直視したミュージカルが高く評価される傾向があるようですが、私には納得いきません。
ファンタジーが現実を超えないでどうする。ミュージカルはファンタジーであることに価値があると思います。

NewYork 2015 No.3 Broadway Musical 「Kinky Boots」

2015年6月13日 14時開演 Al Hirschfeld Theatre
2013年トニー賞:ミュージカル作品賞、オリジナル楽曲賞を受賞
4月の末に、主役のドラッグ・クィーン,ローラ役のビリー・ポーターが戻ってきた「Kinky Boots」を見ました。
ドラッグクィーンとそのエンジェルスが出てくれば、ミュージカルの盛り上げシーンは問題なしという、うまい構成というか、ずるいというか別にして実にうまくできた脚本で,十分楽しめました。
ローラは、いわゆるテレビなどでよく目にする,周りに遠慮しないでずけずけものを言うステレオタイプのオカマではなく、普通に父親との関係に悩み、周りに気を遣う人間として描かれていて、役柄に深みをもたせているところはよく考えられています。
残念なことに、相手役のチャーリーは、恋人との葛藤や、亡くなった父親が自分が靴工場をつがないことを見越して、工場の再開発(コンドミニアムへのリノベーション)に同意していたことのショック、ドラッグクィーン用ブーツを開発することへの工場従業員の反発など、,様々な困難が襲いかかってくるにもかかわらず、金持ちのボンボンにしか見えない線の細さが問題で、ローラとの友情が今ひとつ盛り上がらない原因です。
シンディー・ローパーの楽曲は、オペレッタらしさのすくないポピューラーミュージックにちかいもので聞きやすいのですが、歌う人のエモーションが如実に表れる欠点もあり、エモーショナルでない人が歌うと、R&Bのテンプレート集のように聞こえることがあるのが、残念でした。
ラストでは、ミラノの見本市でモデルが間に合わず、チャーリー自身がスーツ姿に下半身がパンツひとつにブーツを履いてランウエイでよろめいているところに、なぜかローラとエンジェルスが現れて大盛り上がり、挙げ句の果てには、工場従業員全員がブーツを履いてハッピーエンドというお約束のオチとなりました。
それがお寒いシーンにならないところに、脚本のうまさや役者の実力があると思います。
ラストシーンの振付が、パラパラみたいで、日本人には笑えると思います。

NewYork 2015 No.2 Broadway Musical 「Gigi」

2015年6月12日 20時開演 Neil Simon Theatre
「マイ・フェア・レディ」と同じく、はすっぱな少女が貴婦人になって幸せをつかむというストーリー。主役のGigiを演じるのは、ディズニーの「ハイスクール・ミュージカル」で有名になったらしいバネッサ・ハジェンズなのですが、一応、歌えて,踊れて、芝居もできるようなのですが、いかにせん、底が浅くて終幕になっても貴婦人に見えないところが最大の問題です。相手役のガストンを演じるコーレイ・コットも同じようなレベルなので、話はなかなか盛り上がりません。
そんな中で一人で気を吐くのが、マミータ役のヴィクトリア・クラーク、「ライトインザピアッツァ」でトニー賞を取っただけではある歌と芝居で舞台を持って行きます。彼女がいなかったら、とても退屈な舞台になっていたと思います。
話は違いますが、今回からチケットマスターでチケットを予約すると、海外からのオーダーについては、チケットをプリントアウトするように求められます。というか、それしか選択できません。テレチャージでは、プリントアウトかボックスオフィス預けか選択できるのですが。やってみると、プリントアウトならぎりぎりに劇場に駆け込んでもおーけーなので、おすすめです。

2015年6月13日土曜日

NewYork 2015 No.1 Broadway Musical 「Fun Home」

2015年6月11日 20時開演 Circle in the Square Theatre
2015年トニー賞:ミュージカル作品賞・ミュージカル脚本賞・オリジナル楽曲賞・ミュージカル主演男優賞・ミュージカル演出賞の5部門受賞
ニューヨーク到着3日目の夜でしたがまだ時差ボケが治っておらず、いつにもまして集中力がない状態で見てしまい、まったく理解や共感ができないまま90分が終わってしまいました。せっかく2015年のトニー賞、ベストミュージカル作品なのにもったいないことをしました。
見終わってから慌てて粗筋などを探し回ったら、どうも同名のグラフィック・ノベルを元に制作されたらしく、その本の方の粗筋として、『著者と同名の、片田舎の葬儀屋の長女として育てられたアリソンを通して綴る自伝的グラフィック・ノベル。共に同性愛者で、また文学を愛する者として、共感を覚えながらもすれちがい続けた父と娘。とうとう和解を得ないまま父を喪ってしまったアリソンが、互いをつなぐ微かな糸を手繰る様子を、膨大な文学作品を引用しながら繊細な筆致で描く。』というのが載っていました。
本の方も様々な賞を取った有名な作品らしいです。そんな有名な作品なのに,下調べもしないでぼけっと見るのはいかがなものでしょうか?
見た印象だけで言うと、幼少期のアリソンを演じた子役がなかなかすごい。歌もうまいし、芝居もしっかりしているが、子供らしさを失っていないところに,好感が持てます。
全体としては、音楽が難しすぎて素直に聞けないところが気になりました。

2015年6月10日水曜日

ロロ「ハンサムな大悟」

2015年6月8日 19時30分開演 駒場東大前アゴラ劇場
作・演出:三浦直之
出演:篠崎大悟、板橋駿谷、亀島一徳、望月綾乃、森本華
ロロ名義としては,約10ヶ月ぶりの公演でした。あうるすぽっとプロデュースの「ロミオとジュリエットのこどもたち」からしても、約8ヶ月ぶりになります。
登場人物も5人と、私が見た中では最少人数です。というか、劇団員だけでやると、この5人でおしまいなのです。
主役の篠崎大悟以外の4人は、様々な役をとりかえひっかえこなしながら、大悟の一代記を語っていきます。また、台詞がほとんどモノローグであることも大きな特徴でしょう。会話は最小限で、物語はほとんどモノローグで語られていきます。
役柄の関係性も大悟との関係だけというシンプルさで、そのシンプルさが役者に大きな自由度を与えています。特にその影響が大きかったのが板橋駿谷で、彼のパワフルさが今まで以上に発揮されて、舞台上で輝いていました。また、森本華のかわいらしさも、十二分にでていました。
一番割を食ったのは、主役の篠崎大悟です。ラストの芝居をしめるモノローグで、力不足が現れて、フィニッシュ失敗の感じは免れませんでした。
装置の大転換、落書きのような線路が書いてある黒地がすりをめくり上げてミラーを見せ、大悟の姿をミラーにも写し込んで台詞を補強する仕掛けにもかかわらず、役者の力不足を補うには足らず、不完全燃焼のようなラストでした。

2015年6月8日月曜日

中野坂上デーモンの憂鬱「六月の家族」

2015年6月7日 18時開演 荻窪小劇場
作・演出:松森モヘー
出演:松森モヘー、向井稜太郎、橋田祐理、三森麻美、安達可奈、鈴木はるか、荻野肇、南帆子
はえぎわで演出助手をやっている松森モヘーの劇団と言うことで見にいきましたが、久しぶりに見たことを激しく後悔しました。
あんなに薄汚い芝居を見たのは初めてでした。全員、へたくそなだけでなく芝居が薄汚いのです。なにか悪い思想にでも犯されているのではないかと思えるほどでした。全体のトーンがその薄汚さで統一されているので,あれがあの劇団のカラーということなのでしょうが、私には耐えられませんでした。
ストーリーはそれなりに複雑で入り組んだものだったのですが、その理由がやっつけで全くリアリティがありません。
最後に役者が叫ぶスローガン、「自由と尊厳をはかりにかける、うんぬん」がテーマということなのでしょうが、それまでのぐちゃぐちゃな芝居と関係があるようには見えませんでした。彼らには、「説明するな、芝居しろ」だけ言いたいです。

城山羊の会「仲直りするために果物を」

2015年6月3日 19時30分開演 池袋東京芸術劇場シアターウエスト
作・演出:山内ケンジ
出演:吉田彩乃、遠藤雄弥、岡部たかし、岩谷健司、東加奈子、松井周、石橋けい
第59回の岸田戯曲賞受賞後の第1作目にあたる作品なので、結構楽しみにして見にいきました。
しかし、残念ながらあまり面白くありませんでした。やってることは受賞作の「トロワグロ」と同じで、ふとした言葉をきっかけに各々の欲望があらわになっていき、えげつない結幕を迎える。しかも今回はえげつなさの究極ともいえる殺人という形で終わる。
でも面白くないのは、きっかけとなる台詞が無理矢理に聞こえるからだと思います。うまくいくときは、その言葉から派生して事態が転がり出し、雪だるま式に膨らんで破滅があるという形がうまく作れているのですが、今回は殺人という結果に向けて無理矢理進んでいこうとするのがあからさまで、面白くありませんでした。
「効率の優先」の時もそうですが、岩谷健司と石橋景のセックスシーンがある芝居は面白くないという印象ができました。

2015年5月30日土曜日

イキウメ「聖地X」

2015年5月29日 19時30分開演 三軒茶屋シアタートラム
作・演出:前川知大
出演:伊勢佳世、安井順平、浜田信也、盛隆二、岩本幸子、森下創、大窪人衛、橋本ゆりか、揮也
途中、カタルシツの「地下生活者の手記」の再演や、KAATでの「暗いところからやってくる」の再演はあったものの、約1年ぶりのイキウメでした。
この芝居も再演だそうですが、初演は見ていないのでわかりません。
ドッペンゲルガー現象という一人の人間が二人に分裂する話なのですが、難しいことを考えなくても素直に楽しめました。
イキウメの場合、設定がSF的なのでそれを説明することがどうしても必要になってきます。その説明がうまく流れに乗ってくれば楽しく見られるのですが、少しでも説明くさくなると、途端に興味をそがれてしまいます。この芝居は、ぎりぎりセーフといったところでしょうか。とは言え、結構楽しく見れました。
オープニングで、装置の一部が動いて壁面に照明が広がっていくシーンは、原理がわかれば単純な仕掛けなのですが、とても印象的でした。

「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」

2015年5月27日 19時30分開演 下北沢OFFOFFシアター
作:トム・ストッパード
演出:鵜山仁
出演:浅野雅博、石橋徹郎
私も名前だけは知っていた「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」を見ました。出演者二人のプロデュース公演とのことですが、二人につての知識は全くありませんでした。調べたら、浅野雅博はわかぎふえの玉造小劇店「洋服解体新書」に出演していたようですが、全く記憶にありません。
有名なハムレットの端役、ローゼンクランツとギルデンスターンを主役にしてハムレットを裏側から描いた作品と言うよりは、周りに翻弄されてなすすべもなく、なんとか軽口や冗談でその場の正気を保とうとする、極めて「ゴドーをまちながら」的な作品でした。トム・ストッパードの戯曲は実によく書けていて、ゴドー好きな私には、ぴったりでした。
主人公が若い分、生きたいという想いが楽天的に表されていますが、根本はウラジミールとエストラゴンのペシミズムと同じです。
今回は二人芝居と言うことで、本来なら出てくるはずの他の登場人物、ハムレットやクローディアス、オフェーリアなどは、二人が扮装して映像での登場となり、重要な旅役者の座長は、人形を黒子が操作するという形になったのも、「ゴドーを待ちながら」的な印象を強めて効果的でした。
お二人とも20年くらいのキャリアがある文学座所属の役者で、台詞や動きに雑音が少なく、実に見やすい芝居でした。
それにしても、あの翻訳劇特有の台詞は何とかならないものなのでしょうか。日本語ではそんな言い方はしないでしょうという気持ちが、どうしてもしてしまいます。それとも、翻訳劇を見慣れれば、気にならなくなるのでしょうか。

岩井秀人×快快「再生」

2015年5月26日 19時30分開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
原案:多田淳之介
演出:岩井秀人
プロデュース:北川陽子
出演:大道寺梨乃、野上絹代、山崎皓司、天野史朗、後藤剛範、テンテンコ、岡田智代(中林舞休演につき、代役)
戯曲についてなんの知識もないまま見て、びっくりしました。暗い中から立ち上がり、大音量の音楽がかかる中、時々叫び声を上げながら動き回る。曲が変わるたびに,動き方も変わり、それぞれにクライマックスらしきものを迎えますが、最後には全員倒れ込んで終わります。そして、それが3回繰り返されます。それが全てです。意味のわかる台詞はひとつもなく、意味があると思える動きもありませんでした。始まって5分過ぎたあたりから少し不安になってきて、どんなタイミングで意味がわかる形にきりかわるのか心配し始めました。2回目の途中あたりで、これはこのまま最後まで行くであろうことがわかり、1ルーティンが約30分だから、上演時間から計算して、3回繰り返して終わるのだろうことが理解できました。
帰ってから少し調べたら、2006年の東京デスロックの初演の時は、最後に集団自殺するという設定で同じように繰り返していたようですが、2011年の再演時には集団自殺という設定も明示されないような演出になっていたようです。繰り返しについては、「始まったら終わる」という演劇の形に疑問を持ってのことのようです。本来なら永遠に続けたいが,役者の体力の限界で3回の繰り返しを決めたと言うことでしょうか。
振付というか役者の動きにも聞いてみれば意味があると思うのですが、見てわからなければ無駄な動きにしか見えません。理解できないのは、多分、私の感性が悪いと言うことなのでしょう。
それにしても、元々の台本(もし、あればですが)がどんなもので、それをどのように演出したらあのような舞台になるのかは知りたいところです。
2013年に「6畳間ソーキュート社会」を見たときには、美大生の思いつきパフォーマンスみたいで初々しさのようなものを感じたのに、2年経ったら自分の観念に凝り固まったおばさんのようで、少し悲しいです。

2015年5月26日火曜日

入江雅人グレート5人芝居「デスペラード」

2015年5月20日 19時開演 赤坂レッドシアター
作・演出:入江雅人
出演:水野美紀、オクイシュージ、野口かおる、入手杏奈、入江雅人
前回の清水宏とのグレート二人芝居「狼たち」があまり二人がかみ合っていなくて,今回もどうしようか悩んだのですが、私の気になる女優の一人である野口かおるが出演するというので、アンサンブルもよくなっているであろう楽日に見にいきました。
結論から言うと、前回よりは面白かったけれど、次も見にいくかと言えば、いかなくてもよいかなと言う感じです。
積極的にシュールにボケまくるオクイシュージと、芝居の受け方がシュールすぎる野口かおるがいて、全体をまとめて進行する入江雅人とその妻役の水野美紀は割とまとも、ただし、水野は隙があるとマメにボケる。全体のバランスは悪くありませんでした。
しかし、進行役がほぼ入江一人に限られるのでストーリーの展開がワンパターンになりがちで、なかだるみも生じていました。
野口かおるのシュールさは、今回のようにほかに強力なキャラクターがあれば、そんなに浮いた印象もなく、存分に楽しめました。

ままごと「わが星」

2015年5月19日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:柴幸男
音楽:三浦康嗣
振付:白神ももこ
出演:大柿友哉、黒岩三佳、斉藤淳子、寺田剛史、永井秀樹、仲島佳子、端田新菜、山内健司
柴幸男の代表作、「わが星」を見ました。再再演だそうです。地球の誕生から消滅までを小さな女の子に擬人化して語る、一種の寓話のようなようなストーリーです。その中で
、ひとの出会い、別れ、生と死について,淡々と語られていきます。
時報の音をテンポマーカーとして,リズミカルに話は進んでいき、飽きさせません。
まんが日本昔ばなしでの常田冨士男が屈指の「語り部」だったように、脚本・演出においても,「語り部」としての才能が存在すると確信できる作品でした。
なかなか東京での公演の少ないままごとですが、次回も是非見たいと思います。

2015年5月10日日曜日

渡辺源四郎商店「海峡の7姉妹」

2015年5月4日 19時開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:畑澤聖悟
出演:工藤由佳子、三上晴佳、山上由美子、奥崎愛野、音喜多咲子、夏井澪菜、我満望美、北魚昭次郎、佐藤宏之、工藤良平
毎年ゴールデンウィークにスズナリで公演している青森の劇団、渡辺源四郎商店をやっと、見ることができました。
いわゆる地域劇団の中では、全国的な知名度を持つ老舗の劇団です。
ストーリーは、戦後すぐから青函トンネルができるまで運行していた青函連絡船の歴史を通して、高度成長期の日本を描くものでしたが、舟のかぶり物をした七人の女優さんが七隻の青函連絡船を演じる、その演出自体があまりにもドンピシャリで、ずるいとまで感じさせるものでした。
青森という地方で芝居をすると言うことのけなげさと、高度経済成長に合わせて一日何十往復もする連絡船のけなげさ、それもトンネルの開通にあわせて廃止されてしまう無情さ、それが地域劇団の現状と重なって収支、涙なくしては見られない者となっていました。
芝居自体がうまいわけでないのですが、涙なくしては見られない。これをずるいといわないで、どうしましょうか。

CHAiroiPLIN「FRIEND」

2015年5月3日 14時開演 六行会ホール
原作:安部公房
構成・演出:スズキ拓朗
出演:池田仁徳、加藤このみ、増田ゆーこ、NIWA、長嶺安奈、本山三火、鳥越勇作、柏木俊彦、荒木亜矢子、まひる、今井夢子、ジョディ、スズキ拓朗、清水ゆり
2014年の若手演出家コンクールの受賞作品であり、今回はその再演と言うことである。昨年の秋に見た「マッチ売りの少女」は、踊る戯曲シリーズの2作目であり、最初の踊る戯曲はこの作品と言うことになる。
戯曲を踊ると、言葉は粗筋だけになります。台詞は踊る肉体に入れ替わります。ただ、この作品は最初と言うこともあり,踊りが当て振りの段階にとどまっている箇所も多く、完成度としては「マッチ売りの少女」の方が高いと言えます。
「さくらんぼ」を見た後だと、あの荒唐無稽さをダンスが体現していたのに比べて、シリアスさに負けて、イメージが広がっていかなかったのが残念です。

突劇金魚「ゆうれいを踏んだ」

2015年4月27日 19時30分開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:サリngROCK
出演:片桐慎和子、有北雅彦、山田まさゆき、大畑力也、sun!!、ののあざみ、殿村ゆたか
子供鉅人が東京に進出して以降の大阪の希望の星であると、どこかで書いてあったような気がする劇団です。
幽霊を踏んだら頭から桜の木が咲いたという,落語の頭山と同じ設定のストーリーですが、落語と違い頭に木が生えた状態の自分を受け入れてくれる場所を探す女性と,それを追いかける男の話が主眼となっています。
設定のキテレツさの割にまともな自分探しという内容に違和感がないところは、うまくまとめてきた感じですが、登場人物の過激さの割に毒が感じられないのが残念です。

2015年4月27日月曜日

ONEOR8「ゼブラ」

2015年4月22日 19時30分開演 新宿Space雑遊
作:田村孝裕
演出:伊藤俊輔
出演:富田直美、枝元萌、椿弓里奈、鈴木朝代、恩田隆一、生津徹、松本亮、遠藤隆太、笹野鈴々音、伊藤俊輔、山口森広、田口朋子
自分の浮気が原因で夫に逃げられ、女手ひとつで四人の姉妹を育て上げ、呆けたあげく死んでしまった母親の葬式前後のお話。
主人公はその四姉妹で、母親似の長女、のんびり屋の次女、可愛い振りして結構したたかな三女、意固地すぎて自分でもそれをもてあましている四女、特に四女にフォーカスして話は進んでいきます。
脚本がよく書けていて、四姉妹の性格のかき分けとか、その周りの男たちのあり方もよく考えられていました。また演出も笑いの要素が多いとは言え、基本的にオーソドックスで、気になる破綻もありません。そうなると、きになってくるのは役者の力量です。どうしてももっと力のある役者がやれば,格段に面白くなるのにと思わずに入られません。
一見、ラストに向けて解決していくように見える各々の問題、長女の夫の浮気、次女のマリッジブルー、三女の夫のパチンコ狂い、四女の意固地さは、実は全く解決しているわけではないのです。結構、シリアスで深い問題を抱えた戯曲ですが、それを役者が十分に体現できていたとは思えません。

2015年4月19日日曜日

拙者ムニエル「わくわくステーション」

2015年4月18日 19時30分開演 下北沢駅前劇場
作・演出:村上大樹
出演:加藤啓、千代田信一、澤田育子、山岸拓生、寺部智英、伊藤修子、村上大樹、小林健一、浅野千鶴
割と気に入っているGood morning No.5の澤田育子が所属する劇団拙者ムニエルの芝居を見にいきました。劇団としては6年ぶりの公演だそうで、もちろん私は初めてです。
内容は、「まあくだらない」の一言に尽きます。40歳にもなろうかとういう中年の男女が、わくわくを求めて芝居をする。しかも、内容は一切ない。その振り切れ具合が、素晴らしいです。向かう方向性に違いはあるものの、東葛スポーツに共通するものを感じます。
次の公演がいつになるかわかりませんが、また、見たいと思います。

2015年4月18日土曜日

極東退屈道場「タイムズ」

2015年4月17日 19時30分開演 座・高円寺
作:林真一郎
演出・美術:佐藤信
振付:原和代
出演:猿渡美穂、小笠原聡、あらいあら、石橋和也、後藤七重、船戸香里、井尻智絵、中元志保
いつもスケジュールが合わず見に行けない劇団のひとつであった極東退屈道場をやっと見にいきました。第20回OMS戯曲賞の特別賞を受賞した作品らしいです。OMS戯曲賞自体よく知りませんが、大阪の戯曲賞で、この作品の稽古も大阪で行われた模様です。
コインパーキングに来る人のモノローグを間に挟みながら、フェイクガールズという4人娘の時空を超えた旅の話です。ほとんど道具を使わずに体だけで表現されていくのですが、変にストイックにならず、その点は好感が持てました。途中、国性爺合戦がでてきて妙に知的レベルの高い芝居でした。何を言いたいのかは全くわかりませんが、戯曲と役者の演技には好感が持てました。
しかし、佐藤信の演出を見るといつも思うのですが、「俺は全てわかっている。それを理路整然と展開してやるから、心してみろ。」といわれているようで
、凡人の私には違和感しか感じらません。

東葛スポーツ「ラッパー・イン・ザ・ダーク」

2015年4月16日 20時開演 3331 Arts Chiyoda/1F・ギャラリーB
構成・演出・DJ:金山寿甲
出演:佐々木幸子、森本華、牛尾千聖、宮部純子、村野瑞希、唐鎌将仁
入場時に延々と東京裁判の記録映像が流されていて、いったいどんな芝居が始まるのかとどきどきしましたが、始まった芝居は一切関係なく、「ヒップホップ演劇」もしくは、「ヒップホップミュージカル」をやりたいという女の子のお話でした。
というか、ビョークの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と映画「桜の園」から、色々なシーンを抜き出してきて、映画の登場人物と会話をしたり、映画のシーンをまるまる流したり、それが終わると決してうまいとは言えないヒップポップを歌ったりするという、パクリというか、オマージュというか、コラージュのような90分でした。
なにしろ、オープニングシーンが「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の花びらが降りかかる中でビョークがDJをするシーンの再現なのですが、花びらを降らせるのは脚立に乗った
白タキシードに蝶ネクタイでタップシューズを履いた謎の男だし、サスは懐中電灯だし、少女が操っているのはオモチャのポータブルプレーヤーだというチープにして謎ばかりという有様でした。
その謎の男は、小道具を出したり、掃除をしたり、幕の開閉をしたりという裏方的な動きをするのですが、チラシをみると出演者としてカウントされていました。これも謎です。
ヒップホップのシーンになると、スクリーンに歌詞がスーパーインポーズされるのですが、そのタイミングをしょっちゅう間違えるのです。早かったり、遅かったり、映画のストップモーションも間違えるし、多分、主宰の金山寿甲が自ら操作しているのだと思うのですが、まあ、見事な間違えっぷりでした。装置も、上下からレールで緞帳代わりの幕と牢屋のシーンで使われるパイルが斜め前に手動で出てくるのですが、何しろそのレールが家庭用のカーテンレールを天井からバインド線で吊しただけなので、見事に動かないのです。牢屋のパイプは下手側が出ても来ませんでしたし、カーテンコールの時には同じく下手側の幕が全く開かず、役者が手で開けながらお辞儀をするという有様でした。
なのに、いやだからこそ、全体の印象は非常によいものでした。思わず笑ってしまう、面白いと言っていいでしょう。
昨年見たハリケーンディスコも、自分たちがやりたいことをやって何が悪いという態度でしたが、そこには虚勢をはっているというか、無理をしているという印象があったのですが、この東葛スポーツにはその頑なさはなく、あっけらかんと著作権も気にしないで、自分たちのやりたいことを自分たちの力でやるという、一種のすがすがしささえ感じました。
これがプロの大道具が仕込んだレールでスムーズに開閉したり、DJ/VJのオペレーターもプロでとちらなかったりしていたら,多分、面白さも半減していたと思うのです。へたくそな歌に感動することがあるようにへたくそな芝居に感動することもあるのだと、改めて思いました。
トラブルの多くはたまたま私が見た回に限って起きたことかもしれません。でも、その根本は東葛スポーツの基本的な考え方から来ていると思います。そして、その考え方は決して嫌いではありません。
スケジュールが合わず、なかなか見られなかった劇団ですが、次回を是非見たいと思います。


Monophonic Orchestra「さよなら、三上くん」望郷編

2015年4月15日 19時30分開演 千歳船橋APOCシアター
作・演出:須貝英
出演:大石憲、葛堂里奈、今泉舞、森崎健吾、今井端、伊藤安那、中田麦平、渡邊とかげ
全く知識のないまま、劇団名のかっこよさに惹かれて見にいきました。後で調べたところ、主宰の須貝英は元箱庭円舞曲のメンバーでした。30 Years Godo Projectの「ゴドーを待ちながら」に役者として出ていました。全く印象に残っていません。
芝居は別の劇団に書いたものの再演だそうですが、今回はその当時の話とその6年後の同じ高校の話という2バージョンになり、私が見たのは6年後の話という「望郷編」でした。
6年前に中止となった文化祭を復活させようとする元生徒会長と4人の生徒、顧問の先生で話が始まり、芝居が進んでいくにつれ文化祭が中止となった理由が明らかになっていくというストーリーですが、その中止の原因の一端をになった生徒が今その高校に教師として在籍しているという設定に無理を感じます。一応、教育委員会やPTAまで巻き込んだ騒動となった訳ですから、学校側もその教師自身も赴任してくることに抵抗があるのが普通だと思います。
その6年前の騒ぎを起こす動機になったのは好きだった三上という生徒の退学らしいのですが、ラストでその三上が現れたことを暗示して終わるのですが、それも唐突で納得がいきません。なにか、あまりできのよくないテレビドラマを見ているようでした。

2015年4月15日水曜日

マームとジプシー「ヒダリメノヒダ」

2015年4月9日 19時30分開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
作・演出:藤田貴大
出演:石井亮介、尾野島慎太朗、川崎ゆり子、仲島広隆、波佐谷聡、吉田聡子
ゲスト:山本達久/ドラマー
系統としては、「モモノパノラマ」に連なるような藤田貴大の自伝的な要素の強い作品でした。最近、私がマームとジプシーを好きなのは、単純に「センチメンタル」なところだと思うようになりました。その「センチメンタル」が、少し湿り気があって心地よいと言うことだと思います。その観点からしても、今回の芝居は、今ひとつだと思えました。このところ青柳いずみの主演が続いていて,彼女のちょっと不思議ちゃん系の語り口で物語られると、物語の出来不出来とは別に「少し湿り気のあるセンチメンタル」が十分に成立してある種の感動がありました。今回、青柳いずみは出演せず、その役割は吉田聡子に回ってきました。吉田聡子も湿っぽくならないセンチメンタルを目指してがんばったのだと思いますが、結果、ナイーブなヤンキーのようにしか見えませんでした。多方面から同じことを繰り返して語るという独特な手法も、当事者とその他の人々というようなざっくりとした分け方で語られて、その有効性を発揮できていませんでした。
「COCOON」で私小説作家から抜け出したと思われた藤田貴大ですが、明らかに後退してしまったに見えます。

はえぎわ「飛ぶひと」

2015年4月8日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:ノゾエ征爾
出演:町田水城、川上友里、岡部たかし、山本圭祐、滝寛式、山口航太、恋塚祐子、竹口龍茶、鳥島明、鈴真紀史、富川一人、中前夏来、井内ミワク、踊り子あり、松田七美、松森モヘー、萩野肇、橋口勇輝、ノゾエ征爾、中川綾子
地点の「三人姉妹」を見てからの芝居が全て面白くなかったので、「これはひょっとしたら、地点病ではないか。あのひりひりするような緊張感がないと、面白く見られなくなったのではないか。」と心配していたのですが、この芝居を見てそうではないことがわかり、安心しました。
一見緊張感とは無縁な感じで、短いエピソードを暗転でつないでストーリーは進行していきます。何回も繰り返される暗転が、ゆったりとしたリズムを刻んで不思議に飽きさせません。自分の運転時の不注意で妻を死なせた男が、半年ぶりに引きこもりから脱出しようと車を直して旅に出ます。でも、すぐに事故って,色々なひとを同乗させることになるという、ロードムービーのような話です。当然、同乗してくる人々は一癖あるのですが、GPSドローイングで全国に親切の絵を描こうと試みるヒッチハイカー、子供の頃の勇者ストーリーを信じて正義を貫こうとするドジな婦人警官、その弟でバービー人形とだけ話すひきこもり、それぞれ笑わせてくれます。特に、引きこもりの弟を演じた山口航太のラップは、今まで聴いた中で一番不器用なラップでしたが、思い切り笑わせてもらいました。
この芝居を見て、緊張感とは無縁に見えても面白い芝居はあるのだと、再確認できました。

Pebble

2015年4月9日
世の中、アップルウォッチの発売で騒がしい中、スマートウォッチのPebbleを買いました。
iPhoneで音楽を聴くときに、早送りが一発で決まらずにイライラしていたので,その解消が主な目的です。
最初は、C-SHOCKのBluetooth搭載のモデルを考えていたのですが、実物を見たところあまりのデザインの悪さにびっくりして、その線は消えました。
私がスマートウォッチでしたいことは、
1. iPhoneの音楽プレーヤーの操作をしたい。
2. 聞いている音楽の曲名、プレーヤーを知りたい。
3. メールや電話の着信を知りたい。
4. バッテリーが長持ちする。
この4点を満たすスマートウォッチを探していたところ、丁度Pebbleが新しい「Pebble TIME」という新機種をクラウドファンヂングで資金集めをしていて話題になり、WEBサイトにいったところ、現行機種でも私の要求を満たしてくれそうだったので、早速オーダーしてしまいました。
何しろ、99ドルなので、現在の為替レートでも12000円くらいしかしません。最も、
一刻も早く手に入れたくてDHLオーダーしたので、25ドル余計にかかってしまいましたが。
オーダーから3日ほどで到着しました。使い出して3週間くらいになりますが、ほぼ満足しています。充電したのは今日で3回目で、公称どおり満タンで1週間は持つようです。
1.と2.と4.については、100%満足しています。3.については、着信をバイブレーションで知らせてくれるのですが、その時間が少し短いと思います。
また、ウォッチフェイスのどれを選んでも、視認性がよいとは言えません。
思わぬ弱点は、iPhoneの方に現れました。Pebbleのために、Bluetoothと位置情報を「ON」にしているのですが、その分バッテリーの持ちが悪くなりました。
今までは、帰宅時に40%程度残っていたバッテリーが、20%を切る日も珍しくなくなりました。
今後の課題は、バッテリー内蔵のケースにすることと、イヤフォンをワイヤレスにすることです。
新しい「Pebble TIME」が7月に発売されますが、よっぽど新しい機能がない限り買い換えることはないと思います。

2015年3月31日火曜日

MU「少年は銃を抱く」

2015年3月30日 19時30分開演 下北沢駅前劇場
作・演出:ハセガワアユム
出演:小沢道成、斉藤マッチュ、青木智哉、古屋敷悠、佐々木ふみな、古市海見子、小園茉奈、鳴海由莉、真島一歌、久保亜津子、森久憲生、岡山誠、山崎カズユキ、宮田智香、菅山望、大塚尚吾、ししどともこ、友松栄、佐野功、成川智也、小野塚老
偶然にも2本続いての学園物になりましたが、2本続いての外れともなりました。
「不登校生にお守りとして銃をくばり、配られた男女の心の変化を描く」というテーマがどうのこうのという前に、何しろ役者の演技が酷い。それは役者が悪いとというよりも、演出が悪いと思います。小劇場なのに、大劇場のように芝居させてどうするつもりなのかという問題だと思います。ある程度完成された役者が出演する大劇場なら、演出が役者の演技の質にまでだめ出しするすることが難しいことはわかりますが、より濃密な関係性が求められる小劇場で、しかも未熟な若い役者に好き勝手に芝居させてどうするつもりなのかという問題です。役者は真面目に芝居しているのでしょうが、小劇場ならではの空間を作るのは演出の仕事だと思います。この芝居はそれに見事に失敗しています。

アガリスクエンターテイメント「紅白旗合戦」

2015年3月25日 19時30分開演 新宿サンモールスタジオ
作・演出:富坂友
出演:塩原俊之、加藤隆浩、菊池奈央、ボス村松、斉藤コータ、川添美和、鹿島ゆきこ、熊谷有芳、沈ゆうこ、津和野諒、前田有里子、野澤太郎、浅越岳人
単純にタイトルに興味を引かれて見にいきました。
卒業式における「国旗掲揚」と「国歌斉唱」の取り扱いをネタにした芝居ですが、思想とか人権の問題を扱ったものではなく、あくまでもそれをネタにしたシチュエーションコメディです。それが証拠に、劇中で唯一、思想を表明する、ボス村松演ずる社会科教師はずいぶんとカリカチュアされていました。
こういったコメディと称する芝居を見るたびに思うのですが、コメディにはなによりも演出や役者にコメディのセンスが必要とだということです。間の取り方とか台詞の言い回しに独特のセンスが必要で、それができていないと観客は苦笑いしかできないという事態に陥ります。
この芝居ではラストのオチの付け方が無理すぎて、合意のための合意というか単なるツジマジあわせすぎて、笑うに笑えません。まるで途中打ち切りの連載漫画のラストのようでした。作者としては生徒自治原理主義者の生徒会長だけが賛成しないことで、バランスを取ったつもりかもしれませんが、全くそうなっていなくてやっつけ仕事とにしか見えませんでした。

2015年3月25日水曜日

鹿殺し「横浜アンダーグラウンド」

2015年3月24日 19時開演 横浜 yoshidamachi Lily
作・演出:劇団鹿殺し&丸尾丸一郎
1. 「濁乱水晶」作:鷺沼恵美子 出演:鷺沼恵美子、中島雄太
2. 「ヒッキーの手記」作:峰ゆとり 出演:浦上裕輔、木村綺那、今藤茶
3. 「RED FOOD FABLE」作:近藤茶 出演:清川果林、浅野康之、松尾珠花、峰ゆとり
4. 「206で」作:木村綺那 出演:妻鹿益己、安井直美、松尾珠花、中島雄太
5. 「魂のコリドー」 作:丸尾丸一郎 出演:美津乃あわ、傳田うに
いわゆる若手公演というやつで、若手が書いた4本の短編と、丸尾丸一郎の1本をまとめて上演するというカタチでした。短編どおしにつながりはなく完全に独立したカタチとなっています。
当日パンフレットによれば、「劇団創立当時のぎらぎらした感覚を若手に伝えたい」と考えて企画された公演のようです。
結論から言えば、若手の作品からは初めて脚本を書いたその稚拙さは脇に置いたとしても、「なにかぎらぎらしたもの」は感じられず、真面目に芝居するだけでは超えられない壁があることを感じさせました。やはり、鹿殺しには葉月チョビの野望が必要なのかもしれません。現在の鹿殺しは、葉月チョビの野望と劇団の実力が低いレベルで釣り合っている状態だと思います。劇団のレベルが急激に上がることは考えにくいので、チョビの野望がさらに膨らむこと以外に面白くなる道はないと思います。

ハツビロコウ「セルロイド」

2015年3月18日 19時30分開演 新宿スペース雑遊
作:鐘下辰男
演出:船岩祐太
出演:岩野未知、松本光生、内田健介、吉田裕貴
日本では珍しい「血」と「暴力」のにおいのする脚本家鐘下辰男と、他の小劇場とひと味違う演出家の船岩祐太の組み合わせと言うことで、役者についてはなんの知識もないまま見にいきました。
芝居は近親相姦と嬰児殺しを正面から扱った超シリアスなもので、ストイックに時には暴力的に進んでいきます。引きこもりの女とその父親と兄、なぜか町で拾ってきた若い男という関係の中で会話が進んでいく前半はまだよいのですが、後半になって全てが女の妄想であり、父と兄はもう死んでおり、町で拾ってきたと思っていた若い男は、自分で殺した赤ん坊であることがわかってくると、岩野未知の力量ではそれを支えきれず、どんどん尻つぼみになってしまいました。実に残念です。
これが旗揚げ公演だそうですが、もう一度見るかどうかは、次回の演目次第というところです。

2015年3月18日水曜日

地点「三人姉妹」

2015年3月17日 19時30分開演 神奈川芸術劇場中スタジオ
原作:アントン・チェーホフ
演出:三浦基
出演:石田大、伊東沙保、阿部聡子、窪田史恵、河野早紀、小河原康二、小林洋平、岸本昌也、田中祐気
一部では「地点語」と呼ばれているらしい独特のイントネーションで台詞を語ることを唯一の武器として、生身のからだひとつで演劇に立ち向かう現場を見た思いです。これを見ると他の芝居がいかに様々なものに守られていたのかきづかされます。どちらがより良いという問題ではありませんが、ひょっとしたらここに今の演劇の最前線があるのかもしれません。
見終わって最初に思ったのは、チベット仏教の五体投地という言葉でした。全身を投げ出して聖地に向かう過酷な修行ですが、同じことを芝居においてしているのではないかという思いがしました。
この修行の先に新しい演劇があるのか、それとも袋小路なのか、まだわかりませんが、注意深く見守っていきたいと思います。

2015年3月17日火曜日

CHAiroiPLIN「さくらんぼ」

2015年3月13日 19時30分開演 下北沢「劇」小劇場
原作:落語「さくらんぼ」
振付・構成・演出:スズキ拓朗
出演:NIWA、池田仁徳、加藤このみ、清水ゆり、ジョディ、千葉りか子、福島梓、増田ゆーこ、まひる、本山三火、スズキ拓朗
落語の「さくらんぼ」,一般的には「頭山」として知られるものをダンスにする試みですが、かなりうまくいっていたと思います。
「頭山」という話は、けちな男がもったいないからと、サクランボを種ごと食べたところ、頭から桜の木が生えてきて、皆がお花見をするものだからうるさくてかなわない。怒ってその桜を抜いてたところ、大きな穴ができてそこに雨水がたまり、皆が水浴びに来るので、やはりうるさい。世をはかなんで、その池に身を投げて死んでしまうという、荒唐無稽な話なんですが、その荒唐無稽さを人力のチープな仕掛けを駆使して、ダンスにしてしまう。ひとつ間違えば、目も当てられないしらけた舞台になりそうなところを、ユーモアと人徳で見事にカバーして、面白い舞台でした。
スズキ拓朗の演出は、狭い舞台でも大きな舞台でもそれなりに見せられる柔軟さが魅力のひとつだと思います。

サンプル「蒲団と達磨」

2015年3月12日 19時開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
作:岩松了
演出:松井周
出演 : 古館寛治、安藤真理、辻美奈子、奥田洋平、野津あおい、古屋隆太、田中美希恵、松澤匠、三浦直之、新名基弘、大石将弘、松浦祐也
岩松了の岸田戯曲賞受賞作をサンプルの松井周が演出するというので、楽しみに見に行きましたが、結果は残念なものに終わりました。
松井周はある暗黙の了解の元に成り立っている集団がふとしたきっかけで崩壊していく、というような話が多いですが、今回のような普通の家庭の崩壊を演出するとっかかりを見つけられなかったのではないかと思います。
娘の結婚式が終わった夫婦の寝室、二人で静かに話そうとするのですが、なぜか様々な人がやってきて様々な話が膨らんでゆく。主役の古館寛治は、色々と立派そうなことを言っていても布団の下には山ほどエロ本を隠している、どうしようもない普通の男をうまく演じていたのですが、その妻役の安藤真理がどうもいけません。近くにアパートを借りて、一人の時間を持ちたいと思っている、夫に対してもうそんなに関心がないのだけれど、無視するほど冷たくもなれない、中年の女性という役をうまくこなせていないので、登場、退場のたびに前後のつながりが切れてしまい、話がよく見えなくなります。他の役は、ワンポイントリリーフだったり、その他大勢のガヤだったりするので、夫婦の関係性がはっきりしないと、今ひとつ面白くなりません。

カタルシツ「地下室の手記」

2015年3月2日 18時30分開演 赤坂レッドシアター
原作:ドストエフスキー
脚本・演出:前川知大
出演 : 安井順平
2013年の「地下室の手記」の再演です。今回は、娼婦役の女優もなしの完全一人芝居になり、より主人公のだめさ加減がはっきりと現れていました。ニコニコ生放送で自分の半生を振り返り、語っていく。それに対する突っ込みがスクリーンにだらだらと流れていく。きわめて現代的ともいえるし、妄想の極地とも考えられる。そんな1時間40分でした。

箱庭円舞曲「必要とされている、と思う病気」

2015年2月23日 18時30分開演 下北沢駅前劇場
作・演出:古川貴義
出演 : ザンヨウコ、前田有貴、白勢未生、岡田一博、清水大将、内田悠一、石松太一、大塚宜幸、家田三成、深澤千有紀、松本寛子
作者が本当に結核になって入院したことにインスパイアされて書かれた芝居で
した。とはいえ、結核の悲惨さを訴えようという芝居ではなく、社会から隔離されたことにより実感する「自分は誰からか必要とされているのか」という疑問や、「自分がいなくても世界は回っていく」という寂しさについての芝居です。
隔離病棟の患者が疑問を持つものと寂しさを感じるものにわかりやすく分けられていたのが、気にかかりました。

趣向「解体されてゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話」

2015年2月26日 19時開演 三軒茶屋シアタートラム
作:オノマリコ
演出:稲葉賀恵
出演 : 清水葉月、藤井有里、稲継美保、深谷美歩、前東美菜子、朝比奈かず、増岡裕子、窪田優、上田桃子
KAATでの「奇跡の年」が面白かったので、見に行きました。相変わらずの言葉の美しさに加えて、力強さが加わっていて感動しました。
消えていったもの、やがて消えていくものに対する愛情がベースにあるのですが,それがすべて言葉として表現されているので朗読劇のような印象を持ちます。演出は,それを阻止するために役者を色々と動かすのですが、時としてうるさく感じました。




追記1
清水葉月は、蒼井優に似た雰囲気なのですが、それよりレベルが低いので、ぶすに見えます。蒼井優がぶすに見えないぎりぎり最低レベルだということがわかりました。
追記2
40年以上ぶりに、「インターナショナル」を聞きました。しかし、メロディラインや歌詞が私が覚えていたものとは、少し違いました。インターナショナル」には様々なバリエーションがあるそうなので、劇中で歌われたものは、戦前のバージョンなのかもしれません。

マームとジプシー「カタチノチガウ」

2015年2月19日 20時開演 原宿VACANT
作・演出:藤田貴大
出演 : 青柳いづみ、川崎ゆり子、吉田聡子
1年半ぶりのマームのとジプシーでした。本来なら、スケジュールの都合で1月のVACANT公演、2月の横浜公演ともいけない予定だったのですが、青柳いづみの体調不良により公演をキャンセルしたため、追加公演が決定して見ることができました。
今までのマームとジプシーと少しちがう印象を受けました。今までだと、ストーリーを役者によって少しずつ角度の違うリフレインによって語っていったのに対して、今回は、三人ということもあるのか、ほとんど青柳いずみ一人でストーリーを語り、残りの二人は自分たちの印象を述べるだけで終わっている感があります。そのためか、いつものならリフレインが物語に広がりを与えるのにくらべ
、今回は物語はそこに積み重なっていく印象が強く残りました。

岡崎藝術座「+51アビシオン、サンバルハ」

2015年2月18日 19時30分開演 横浜STスポット
作・演出・美術:神里雄大
出演 : 小野正彦、大村わたる、児玉麿利
岡崎藝術座は1年半ぶりの観劇になりました。かなり間が空いたので以前のことはほとんど忘れてしまっていますが、基本的な印象まで変わったような気がします。私の岡崎藝術座の印象は、「なんだかわからないものに触っている。もしくは、なんだかわからないものの周りをぐるぐる回っている。」というものでした。ここの芝居を見続けると、その「なんだかわからないもの」の正体が少しだけでも見えてくるのではないか。そんな期待を抱かせてくれるところが魅力でした。
しかし、今回は最初こそ、神里雄大の分身であろう演出家と、戦前の労働者演劇の演出家であり、ソビエトからメキシコに渡った佐野碩二人の時空を超えたやりとりがあるものの、後半に行けば行くほど神里のルーツ
であるペルーへの旅行記になっていき、そのまま終わってしまうという、なんとも尻つぼみな感じでした。そこには、「なんだかわからないもの」は、影さえ見えませんでした。
神里が私が言うところの「なんだかわからないもの」に対して、どれだけ自覚的なのかもわかりませんが、私にとっては、岡崎藝術座の魅力はほとんどなくなったに等しいです。

風琴工房「PENALTY KILLING」

2015年2月17日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:詩森ろば
振付:加藤沙希
出演:粟野史浩、筒井俊作、大石憲、金丸慎太郎、久保雄司、酒巻誉洋、杉木隆幸、野田裕貴、三原一太、森下亮、朝倉洋介、岡本篤、金成均、後藤剛範。佐野功、五十嵐結也、岡本陽介、草刈奨悟
風琴工房の公演を見るのも3回目です。「PROOF/証明」、「わが友ヒットラー」とシリアスな芝居が続いていたのでそれが持ち味かと思っていましたが、今回はいい意味で裏切られました。アイスホッケーというマイナーなスポーツを題材に、加藤沙希のダイナミックな振付に助けられたとはいえ、実に面白い2時間を作り出した詩森ろばの力量はたいしたものです。
成功の最大の原因は、あの狭いスズナリにアイスホッケーリンクと観客席、総勢18名の役者を無理矢理押し込めたことです。狭い空間の押し込められた役者のエネルギーが、試合前の選手の雄叫びとなって爆発する。面白くないわけがありません。
もう一つの成功の要因は、選手が大人として描かれていることです。スポーツ選手は本来子供っぽいものだと思います。ましてや、プロになろうとする人は子供の頃からスポーツし
かやってきていないのですから、一般的な意味で常識ある大人になるのは難しいと思います。それをそのまま舞台にのせてしまうと、見る方としてはうんざりしてしまうのは火を見るより明らかです。しかし、ここでは、各選手が自分を客観視できる大人として描かれており、ラストの試合に絡めての15名にも及ぶモノローグも,見せ方の演出的な工夫と相まって、心を揺さぶるものになっていました。

鵺的「丘の上、ただひとつの家」

2015年2月16日 14時30分開演 SPACE雑遊
作・演出:高木登
出演:奥野亮子、高橋恭子、平山寛人、宍戸那恵、古屋敷悠、生見司織、井上幸太郎、安元遊香
なぜかスケジュールが合わなくて見られない劇団のひとつだった鵺的を見ました。当日パンフレットによると、結成してから6年ということですが、6年間何をやってきたのかという感じでした。近親相姦というタブーをキーワードに家族とは何かを考えることがテーマだと言うことですが、テーマ以前に全てが表面的な記号にしか見えません。真面目に生きようとする人々がよく言えば端正で押さえた演技で、人生を刹那的に生きる人がラフでカジュアルな物言いをする、その基本的な演出自体が表面的すぎてみていられません。
転換も暗転つなぎばかりで、決まり台詞を言う、そして暗転。その繰り返しで、すぐ飽きてしまいます。これではテーマ自体も単なる記号にしか見えません。
脚本も演出ももう少し突き詰めてほしいものです。

2015年2月3日火曜日

敦-杏子 Produce URASUJI 2015「綱渡り」

2015年2月2日 19時開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:松村武
出演:杏子、深沢敦、岩崎大、西村直人、池田有希子、草野とおる、森貞文則、中野順一朗、藤田記子、吉田晋一、内藤大希、佐藤恭子、亀岡孝洋、中川浩行、村田穣、高祖正浩、羽場涼介、ちゃこ、松田凌、俵木藤太、小川菜摘
演奏:山田晃士、十倉綾子
面白い舞台ではあったのですが、今ひとつ心から楽しめはしなかったというのが、正直な感想です。現代の怪女優の一人である深沢敦と、今や歌が少しうまいハスキーボイスのおばさん杏子の共同プロデュースによる芝居ですが、ストーリーは「必殺仕事人」を完全にパクリ、随所で歌いまくり、踊りまくるという構成でした。いってみれば、芸達者な人のカラオケを聴いているような感覚で面白いのですが、芝居としたら物足りない感じが否めません。唯一、絵島役の俵木藤太が生真面目な役のまま、歌い踊ったシーンには感動しました。

モダンスイマーズ「悲しみよ、消えないでくれ」

2015年1月29日 19時開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:蓬莱竜太
出演:古山憲太郎、津村知与支、小椋毅、西條義将、生越千晴、今藤洋子、伊東沙保、でんでん
同棲中の女性を土砂災害で亡くして以来、その女性の実家である山小屋に居候している小説家志望の男と、その山仲間が二周忌に集まってくる。小説家志望の男は全くのだめ人間であり、同棲中だった女性を偲ぶと言いながら、歩荷の人妻に手を出したり、まともに仕事もできない。山仲間も実社会でまともに生きているようでありながら,だんだんとだめ人間ぶりが明らかになっていく。だめ人間のオンパレードが笑いあり、シリアスなところありで展開していく。その中で、山小屋の主人であるでんでんだけが,まともである。これは芝居の質も関係していると思うのだが、でんでんの決してうまいとは言えない,古くさい芝居が周りの芝居との対比で、素直にものを言う裏表のない実直な人柄を表して、とてもおもしろい。この劇団は、「楽園」の深沢敦の時もそうだったが、キャスティングが絶妙にうまい。

2015年1月30日金曜日

親族代表「親族旅行記」

2015年1月26日 20時開演 下北沢駅前劇場
作:
1 小林賢太郎「影響を受けた男とその友人と友人」
2 故林広志「シンラバンバンバン・ショー」
3 ブルー&スカイ「野間口徹と・・・」
4 岩井秀人「コンビニ(あるいは謝罪について)」
5 故林広志「詫びる男」
6 福原充則「We are the world」
7 嶋村太一「三つ巴マン」
8 ケラーノ・サンドロヴィッチ「三人で死ぬ」
演出:福原充則
出演:嶋村太一、竹井亮介、野間口徹
観客の人気投票も参考にした今までのコントの再演集でした。作家が全員芝居の脚本家なので芝居っぽいですが、やはり芝居とは少し違うような気がします。
芝居と違うのは、笑いを目的としていること、比較的短いなど色々あると思いいますが、一番違うのは、登場人物の性格付けのやり方だと思います。芝居と違い、そのコントに必要な役割をキャラクターとして演じると言えばよいのでしょうか、基本はあくまでもその役者の地であって、そこに役がプラスされている感じがします。

劇団鹿殺し「ランドスライドワールド」

2015年1月15日 19時開演 下北沢本多劇場
作:丸尾丸一郎
演出:葉月チョビ
出演 : 丸尾丸一郎、オレノグラフィティ、木村了、山岸門人、今奈良孝行、円山チカ、鷲沼恵美子、坂本けこ美、橘輝、傳田うに、美津乃あわ、浅野康之、近藤茶、峰ゆとり、有田杏子、浦上祐輔、木村綺那、清川果林、寺戸真里菜、中島雄太、松尾珠花、妻鹿益己、安井直美
1年間のカナダ留学を終えた演出の葉月チョビの復活公演なので、見に行きました。また、チョビが出演しない初めての公演でもあったそうです。そのせいか、いままでになく舞台の隅々まで演出の行き届いた芝居ではありました。しかし、私の好きだった鹿殺しはもうそこにはありませんでした。私にとっての鹿殺しの魅力は、有名になりたいという気持ちが恥ずかしげもなく前面にでていて、そのために技量が伴わなくてもあらゆることをやる。それがコスプレだったり、着ぐるみショーとなって舞台に現れる。その技量のなさを補おうとするエネルギーこそが魅力でした。しかし、回を重ねるたびにそれなりにテクニックがつき、破綻は少なくなってきました。するとそこに残ったものは、そんなに芝居のうまくない普通の小劇団でした。
今回の芝居も、田舎の狭い地域に閉じ込められてそこから出たいという思いもありつつ、出て行けない人々を描いて、劇団のジレンマと重なるところも多いのですが、ヘビーメタルを取り入れたり、ノーベル文学賞をとった「蝿の王」のモチーフを取り込んだり、いろいろな試みをしているのですが、それらが何となくきれいにまとまってしまうことこそが、鹿殺しの今の問題だと思います。

趣向「奇跡の年」

2015年1月11日 14時開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
作:オノマリコ
演出:扇田拓也
ムーブメント:小林真梨恵
出演 : 和田華子、井内勇希、斎藤まりえ、芝博文、桑原史香、こいけけいこ、和田真季乃、大川翔子、吉田能、笹野鈴々音、扇田森也、池田朋子、関森絵美
当日パンフレットで作者の名前が「オノ マリコ」ではなく、「オノマ リコ」であることを知りました。そんなことは関係なく、言葉の美しい戯曲でした。演出もその言葉の美しさを生かした端正な手法で好感が持てます。物語は、翻訳家で小説家の男とその編集者の話と、その小説家によって書かれたいくつかの物語が、単独で、あるときは絡まり合って進んでいきます。面白いのは、そのどれかに力点が置かれるのではなく、ショーケースのように同じようなバランスで現れてくるところです。そのバランスの取り方が、端正で澄み切った美しさを生んでいました。
一つ残念だったのは、ダンス的な動きが多いので、舞台上下に置かれたSSを多用するのですが、それが空間の緊張感をかなり損なっていることでした。SSの必要性はわかるのですが、袖パネルを立てるなど隠すことが出来ればもっとよくなる気がします。

南河内万歳一座「ジャングル」

2015年1月9日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:内藤裕敬
出演 : 河野洋一郎、鴨鈴女、藤田辰也、荒谷清水、三浦隆志、木村基秀、福重友、皆川あゆみ、鈴村貴彦、松浦絵里、谷奥弘貢、内藤裕敬、小池裕之、吉井希、和田亞弓、ことえ、駒野侃、村上陸、本木香吏
1980年から続く老舗の小劇団で、大阪が本拠地にもかかわらず東京でも年1,2回の公演をうつという驚異の持続力は、それだけでも賞賛に値すると思います。
いままでも、何回も見に行こうとしたのですが、なかなかスケジュールがあわず、このたび、新年最初の芝居としてみることが出来ました。
老舗らしく、観客層も観客層も幅広く、若い人からわたしのような年寄りまで満員でした。
芝居は、「古き良き昭和の小劇団」そのもので、大変面白かったのですが、離風霊船のときと同じように、最初は懐かしさもあり面白いのですが、回を重ねると飽きてくる恐れがあります。まあ、まなじりを決して「見なければならない」と考えるような芝居でもないので、ぼちぼち、スケジュールがあえば見に行きたいと思います。

2014年12月18日木曜日

チェルフィッチュ「スーパープレミアムソフトWバニラリッチ」

2014年12月18日 19時30分開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
作・演出:岡田利規
出演 : 矢沢誠、足立智充、上村梓、鷲尾英彰、淵野修平、太田信吾、川崎麻里子
チェルフィッチュの芝居を見るのは、2012年4月の「現在地」から約1年半ぶりでした。あいかわらずモノローグ主体の芝居ですが、前回に比べると、台詞の相手が舞台上にいて明確に見えること、BGMのバッハの音楽に合わせた体操ともダンスともつかない動きがあることなどが相まって、わかりやすいものでした。
岡田利規の芝居は、現在をすぱっと切って,その断面を見せるというようなところが持ち味だと思うのですが、その切り口がなんなのかわかれば面白いし、よく見えないと退屈するしかないような気がします。

2014年12月17日水曜日

アナログスイッチ「ツチノコ in escaping'14」

2014年12月17日 20時開演 下北沢OFFOFFシアター
作・演出:佐藤慎哉
出演 : 渡辺伸一朗、廣野喬介、藤木陽一、山本沙羅、秋本雄基、雨宮沙月、板橋優里、浦嶋健太、古崎彩夏、木幡雄太、坂爪葉子
チラシによると2012年に旗揚げした東洋大学出身の劇団だそうです。出身ということは、もう学生ではないということだと思うのですが、内容は学生演劇そのものでした。(悪い意味で)
自分たちが面白いと思うことを,客観的に見ることもなくそのまま舞台にかけているだけです。観客は劇団の身内でもない限り、置いてけぼりにされて行くばかりです。「大学の部室の中で、賞金のかかったツチノコをさがしまわる。」という単純明快なシチュエーションコメディなので、うまい役者とツボを押さえた演出があれば、いくらでも面白くなるのに、ダラダラとテンポも間も悪いまま進んでいくので、苦笑するしかありません。
2014年に福岡県で行われた国際コメディ演劇フェスティバルで、2014ベストコメディアワードを受賞したそうですが、この公演を見た限り、フェスティバルのグレードが心配になりました。

2014年12月10日水曜日

ロ字ック「媚微る」

2014年12月10日 19時30分開演 下北沢小劇場 B1
作・演出:山田佳奈
出演:片桐はづき、川本ナオト、榊菜津美、笹木皓太、小野寺ずる、日高ボブ美、猪俣三四郎、松本亮、泉佑里奈、佐藤英美、サトエ、矢野昌幸、山田佳奈
スケジュールがなかなか合わず見に行けなかった劇団のひとつ、ロ字ックを見にいきました。チラシのイメージからは、若い女性の感性を過激に全面に押し出した芝居かと思い、内心びくびくしながら行ったのですが、見てみると結構普通の芝居で拍子抜けしました。
内容は自分中心的な人々の中で、内気で自分に自信が持てない女性がおどおどと暮らしていると、そこに破壊衝動のある悪賢い女性が入ってきて内気な女性を操り、とりあえず収まっていた人間関係をぶちこわす。そんな話です。
悪賢い女性が内気な女性を操るところが、何となく演出家と役者の関係に見えて勝手に笑っていました。
チラシの印象と実際の芝居をあわせて考えると、「つぱっているが、案外正統派」という感じでしょうか?
このところ、私がよくわからなくて悩んでいる鳥公園や、ワウフラフラミンゴの方が、印象が柔らかいだけ,たちが悪いのかもしれません。

2014年12月5日金曜日

城山羊の会「トロワグロ」

2014年12月5日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:山内ケンジ
出演:石橋けい、古屋隆太、平岩紙、岡部たかし、岩谷健司、師岡広明、橋本淳
「効率の優先」があまり面白くなかったので、今回はどうかなと半信半疑で見に行きましたが、期待以上に面白かったです。普通のホームパーティーのはずが、些細な一言が思わぬ展開を呼び、各々の欲望をむき出しになっていく。洒落た大人の会話劇というには少々えげつない、セクハラ、不倫、夫婦不和、ホモセクシャルまで何でもありで、笑わせてもらいました。最後に死んでしまう太っていた方の斎藤さんは、なぜ、あんなにしてまでパーティーにいたかったのか、それが謎です。
当日パンフレットのプロデューサーの方の文章で、城山羊の会の名前の由来が少しわかりました。プロデューサーの城島和加乃と主宰の山内ケンジから一文字ずつ取って、「城山」、すると残りの「羊」は公演のたびに集められてくる役者たちのことでしょうか?
チャンスがあったら知りたいものです。
来年からは、年二回公演しくれると言うことなので、楽しみです。