2013年8月29日木曜日

東京乾電池「真夏の夜の夢」

2013年8月22日 14時開演 浅草5656会館 ときわホール
作 : W・シェイクスピア
演出 : 柄本明
出演 : 西村喜代子、麻生絵里子、宮田早苗、鈴木千秋、田中洋之助、嶋田健太、血野晁修、西本竜樹、沖中千英乃、重村真智子、鈴木美紀、高尾祥子、杉山恵一、岡部尚、高田恵美、吉川靖子、有山尚宏、作間ゆい、飯塚祐介、池口十兵衛、中村真綾、太田順子、島守杏介、深堀絵梨、吉橋航也、川崎勇人、鈴木一希、前田亮輔、松沢真祐美、山口智子、茨木真之介、林摩耶、古屋正明、池田智美、重田未来人、柴田鷹雄、中井優衣、藤森賢治、矢戸一平、井下宣久、宇都宮五月、河野柑奈、川端美郷、庄司知世、本田彰秀、荒川楽、荒川暖
2回目の東京乾電池観劇でした。前回見たときにも思ったのですが、ほとんどおもしろいと思えない芝居なのに、どうしてああも自信たっぷりに演じられるのでしょうか。
なぜか、台詞の頭だけ英語で、そこではづみをつけて、一気に長い台詞をまくし立てる。おかげで、誰が喋っても全く同じに聞こえます。動きも、どたどたと動くだけで、いわゆる洗練されたところは少しもありません。なのに、あそこまで自信たっぷりにやられると、見ている方が間違っているような不思議な気分になってきます。
あれが老舗の力というものでしょうか?
次回作も、積極的に見る気にはなれないけれど、暇があったら見に行ってしまうかもしれません。

2013年8月18日日曜日

七里ガ浜オールスターズ「オーラスライン」

2013年8月16日 20時開演 新宿SPACE雑遊
作:前川麻子
演出:瀧川英次
出演 : 浅野千鶴、森田ガンツ、有川マコト、野口雄介、本井博之、一色洋平、瀧川英次
アンファンテリブルプロデュース「愛のゆくえ(仮)」で好演した瀧川英次が自身の演出で芝居をする、しかも脚本は前川麻子、これは見るでしょうということで見に行きました。
「オーラスライン」というタイトルと、出演者がほとんどおじさんばかりということから、何となく話の内容は見えてきてしまいますが、実際の話もほとんどその通りで、とあるなんとなく劇団四季をおもわせるミュージカルのオーディション会場に、各々勝手な理由で受けに来たおじさん4人と、まじめに受けに来た若い男女。気が弱くて、4年もオーディションを受けているのに,毎回審査前に帰ってしまう少女を励ますため、おじさんたちが自分勝手な動機を話し出す。
たぶん、当て書きであろうよく書けた台本と、おじさんの適度に力の抜けた演技で終始笑わせてもらいました。
残念なのは、まじめな動機で受けに来た若い男を演じた一色洋平で、極端な
な演技をしすぎて、見事に浮いていました。もっと、普通に演技すればふざけたおじさんたちとの対比で、おもしろくなったのに残念です。
おじさんたちの中では、本井博之の傍若無人さが,一番おもしろかったです。

マームとジプシー「COCOON」

2013年8月15日 19時開演 東京芸術劇場シアターイースト
原作:今日マチ子
作・演出:藤田貴大
出演 : 青柳いづみ、伊東茄那、大岩さや、尾崎紅、尾崎桃子、川崎ゆり子、橘高祐奈、菊池明明、小泉まさ、小宮一葉、中前夏来、鍋島久美子、難波有、長谷川洋子、的場裕美、山崎ルキノ、吉田彩乃、吉田聡子、李そじん、石井亮介、尾野島慎太朗
藤田貴大の演出方法「リフレイン」が進化して、新たな表現域に到達したことを感じさせる公演でした。今までの芝居では、一つの事柄についての「リフレイン」が様々な方向から順番に行われ、イメージが多方面から現れていく,どちらかといえば、静かに物事が進んでいく感じだったのが、「COCOON」では時には、「リフレイン」同士がぶつかり合ったり、突然、前の「リフレイン」が現れたりして、そのことが混沌と恐怖を一層強調していました。
独自のアクセントで語るというと、どうしても早稲田小劇場の「劇的なものを巡って」を思い出してしまうのですが、今のマームとジプシーはそんなことは関係ないオリジナリティを手に入れたと思います。
役者で圧巻なのは、やはり、青柳いづみ
でした。彼女が発する台詞は、口から出た瞬間に独自に存在感を獲得して,空間に存在するようでした。ほかの役者の発する台詞が,その体から離れては存在できないのに、彼女だけだが空間に台詞を置くことに成功しています。
実に不思議な存在です。

2013年8月4日日曜日

INGELプロデュース「鮫に食われた娘」

2013年8月3日 18時開演 渋谷シブゲキ
作・演出:ブラジリィー・アン・山田
出演:櫻井智也、朝比奈慧、高山奈央子、諫山幸治、武藤心平、堤千穂、三科嘉代、守田菜生、藤森祐輔、水野裕介、若松健治、野口かおる、清水宏
最近気になる女優、野口かおるめあてで見にいきました。
野口の役がこの芝居の鍵となる役のため、彼女の振れ幅の大きい独特な芝居を堪能できましたし、その相手役の清水宏の、狂気とも思える芝居で野口の倍音成分の多い演技を正面から受け止める力量には、凄みすらおぼえました。
野口めあてという意味では、ここ最近の出演作の中ではぴかいちのできでしたが、それ以外では、プロデュース公演の欠点が目立つ芝居でした。
まず、演技の質がばらばらすぎて見ていてイライラしました。姉役の朝比奈慧は出てきたときから、宝塚の男役みたいだと思っていたら、本当に宝塚出身でした。若手の女優は、3人とも芝居が下手すぎ。演出家にまともに演出してもらってないみたいでした。ライフセーバー役の武藤心平は、海パン一つでの力演が完全に空回りしていて、それを本人も自覚しているようで、時々、部隊の隅で所在なげに立っている姿だけが印象的でした。
主役の櫻井智也はがんばっていましたが、野口の芝居を正面から受けずにすかしているようなところが、私としては不満です。
あと、高山奈央子は、所属劇団の主宰者桑原裕子に芝居がよく似ていて、思わず笑ってしまいました。

カタルシツ「地下室の手記」

2013年8月2日 19時開演 赤坂レッドシアター
原作:ドストエフスキー
脚本・演出:前川知大
出演:安井順平、小野ゆり子
イキウメの別動部隊、カタルシツの旗揚げ公演は、ドストエフスキーでした。時代を現代に置き換えて、起こっていることは原作とほぼ同じですが、インターネットとかニコニコ生放送とか、現代のツールが様々取り込まれています。それも、ただ漫然と使われているわけではなく、安易なカタルシスに水をぶっかけるために有効に使われていて、面白かったです。安井順平の少しとぼけてクールな語り口を聞いているとついつい納得してしまいそうなところに、ニコ生風の書き込み、「GJ !」、「童貞乙!」などがプロジェクションでカーテンに流れると、はっと我に返って思わず笑ってしまう。
前川知大の緻密な演出力はたいしたものです。
出演者は二人ですが、ほぼ、安井の一人舞台でした。他の登場人物は、フィギアやダルマで表されていましたから、娼婦の役も会話の必要がなければ、フィギアになっていたかもしれません。
イキウメと並んで楽しみな集団が増えました。次回がいつになるかわかりませんが、また、見にいきたいと思います。

2013年7月19日金曜日

「ストリッパー物語」

7月18日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作 : つかこうへい
構成・演出 : 三浦大輔
出演 : リリー・フランキー、渡辺真起子、渋川清彦、安藤聖、古澤裕介、新田めぐみ、米村亮太朗、門脇麦、でんでん
この芝居で三浦大輔は、つか演出の定番である「ミエを切り続ける」演技を一切廃して、通常の会話で押し通します。それを可能にしたのは、シゲ役のリリー・フランキーの存在でした。演技しているとは思えない、どちらかといえばボソボソ喋るリリー・フランキーの言葉は、屁理屈ともいえる「ひも道」も、すんなり違和感なく聞けてしまいます。その分割を食ったのはほかの役者で、特にヒロイン明美の「過剰なけなげさ」も印象の薄いものになってしまいました。
つか演出では、「ひも道」を言いつのらなければいられない男の悲しみがクローズアップされてきて、それが観客のカタルシスにつながるのですが、三浦演出では、シゲは最低のゲス野郎で、本人もそれを自覚しており、そこに救いはありません。唯一の救いは、シゲの娘がニューヨークに留学して、待望のミュージカルの主役を獲得して帰国することですが、それもラストで、明美に「まだ、あなたの番じゃない。」と拒絶されます。そこらへんは、ポツドールらしいといえます。
それにしても、リリー・フランキーは、リリー・フランキーを演じさせたら,超一流の役者でした。

おにぎり「トークトワミー」

2013年7月17日 14時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作 : 江本純子
演出 : 千葉哲也
出演 : 市川しんぺー、池谷のぶえ、村木仁
「毛皮族」の江本純子が、外部にはどんな脚本を書くのか、興味があって見に行きました。いつもがさつな言葉をぶつけ合っている中年夫婦と、妹にしょっちゅう金を無心にくる兄の話。ある日、突然女が入院することになり、自分たちの将来に不安を感じながら(不安は,各の妄想として表れる)、相手を思いやる会話を交わすようになる。江本の脚本は、激しい言葉を使いながら、「毛皮族」でのようなアナーキーさは、影を潜めている。もちろん、ある程度は当て書きの部分もあるだろう。経験豊富な役者と、千葉哲也の手堅い演出でよくまとまっている舞台となっていた。特に、池谷のぶえが時々、短い台詞で空間をびしっと締めていたのが印象的だった。
ラストの、夫に燃やされてしまったと思っていた虎の子の100万円が無事であったが、夫のいたずら心で、すべてテレビカードに変えられていたという、あまりできがよいとも思えないオチが、ぴたっと決まったのは、演出と役者の演技力のおかげでしょう。

2013年7月14日日曜日

「盲導犬」

2013年7月8日 19時開演 渋谷シアターコクーン
作 : 唐十郎
演出 : 蜷川幸雄
出演:古田新太、宮沢りえ、小出恵介、小久保寿人、大鶴佐助、松田慎也、堀源起、佐野あい、金守珍、木場勝己、大林素子、ほか
私にとって唐十郎の戯曲は,状況劇場の役者たちと分けがたくつながっているのだということを再認識させられた舞台でした。どの台詞も、李麗仙ならば、不和万作ならば、大久保鷹ならば、全く違って聞こえてきただろうという気持ちが抑えられず、舞台自体を楽しむことが出来ませんでした。この「盲導犬」は、状況劇場で上演されたことは一度もないので、私個人の勝手な思い込みに過ぎないのですが、致し方ありません。
桜社による初演はもちろん、ほかの団体による舞台も見ていないのに、このような感想を抱くのもどうかしていると思うのですが、それだけ、状況劇場のイメージが強いということでしょうか。
唐十郎の戯曲の魅力は、過剰にロマンチックな台詞と共に湧き出してくる雑多なイメージにあると思うのですが、今回の蜷川演出では、台詞のみにこだわってそれに伴うイメージを排除しているように見えました。それが役者の自由さをも封じ込めたため、金切り声の台詞がとびかうだけの寂しい舞台になってしまいました。蜷川演出の肝は、ビジュアルな演出にあると思っていた私には、納得できないものでした。
振り返って見れば、蜷川芝居を見たのは、「身毒丸」、「下谷万年町物語」、そしてこの「盲導犬」の最近の3本だけ、昔の作品は、劇評などから得たイメージだけなのですから、蜷川の変化に勝手に戸惑っているだけなのかもしれません。

FUKAI PRODUCE 羽衣「Still on a roll」

2013年7月12日 19時30分開演 こまばアゴラ劇場
作・演出 : 糸井幸之介
出演 : 深井順子、日高啓介、伊藤昌子、福原冠、澤田慎司、高橋義和、鯉和鮎美、鈴木祐二、新部聖子、森下亮
FUKAI PRODUCE 羽衣の芝居を見るものこれで3本目です。最初は、同じアゴラ劇場で「耳のトンネル」でした。これは、日常的な愛の形がさまざまなイメージに変化し、,最後には大きな愛のイメージが広がるというぶっ飛んだ作品でとてもおもしろく見ました。
2本目は「サロメ VS ヨナカーン」、シアターイーストと会場も少し大きくなって、7組のサロメとヨナカーンによる愛の形をすっきり、整理された形で見せてくれました。3本目の今回は、会場がアゴラ劇場に戻って、対面客席の舞台となりました。そのためか、上下の客席に同じことを繰り返す振付が多くて、あきがきました。また、異常に客席にかける芝居や、振付が多く,少しうんざりです。
3本を通して見ると、最初の「耳のトンネル」が傑作であることがよくわかります。

2013年7月4日木曜日

扉座「アトムへの伝言」

2013年7月3日 19時開演 紀伊国屋ホール
作・演出 : 横内謙介
出演:六角精児、山中崇史、伴美奈子、岡森ねい、鈴木利典、犬飼淳治、高橋麻理、松原海児、松本亮、比嘉奈津子、中原三千代、高木トモユキ、野口かおる、新原武、江原由夏、上土井敦、野田翔太、塩屋愛美
前日に続き昨年秋のベッド&メイキングスでの怪演で私の気になる女優の一人に躍り出た野口かおる狙いで、扉座を見に行きました。
野口かおるは客演なので、客演らしい使われ方、劇中のアクセントというか、鉄砲玉的な使われ方で、お得意のグダグダなアドリブや、女のきたないところも丸ごとさらけ出すような芝居をしていました。しかし、東京初日の緊張からかグダグダアドリブも、「セリフなんか言えなくてもいいのよ。生きてさえいれば。」という域にまではいけず、中途半端なところにとどまっていました。野口かおるを楽しむためには、彼女に余裕ができるであろう後半に行くのが良さそうです。
芝居は落ち目の漫才師とロボットが漫才コンビとして復活するという話なので、劇中、漫才シーンが3回ほどありました。漫才シーンの台本も良くかけているし、テンポ良く喋っているのですが、やはり、漫才と芝居は似ているけれど、違うものだという感を強くしました。芝居では、漫才師の役を演じている役者が漫才をしているのに比べ、漫才師は、半ば無自覚的に自分を演じて漫才をしているのだと思います。その自意識の差が、どうしても越えられない溝として、芝居と漫才を分けているように思えます。

ピチチ5「はぐれさらばが"じゃあね"といった」

2013年7月2日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出 : 福原充則
出演:菅原永二、今野浩喜、野間口徹、植田裕一、三土幸敏、碓井清喜、三浦竜一、広澤草、仁後亜由美、古牟田眞奈、久ヶ沢徹
昨年秋のベッド&メイキングスの公演で、唐十郎ラブな脚本と演出を見せて、今年4月のブルドッキングヘッドロックでは、全体の中心となる主役の演技で芝居をまとめていた福原充則が主宰するピチチ5の芝居を見ました。
三鷹市芸術文化センターの太宰治をモチーフにした演劇シリーズの一環で、私が見るのはままごとの「朝がある」に続いて2本目です。ままごとの場合は、太宰作品の再構成と言った趣でしたが、今回は太宰治本人に注目した作品となっていました。舞台は、太宰が作家デビューする前と、有名になってから一回目の自殺未遂をする前後の2箇所を中心に、様々な時間と空間をシームレスに行ったり来たりします。脚本的にも演出的にも無理なく、わかりやすくシーンがつながって行くのですが、照明が所々つながっていかず、無理な変化をしているのが気になりました。
太宰治も宮沢賢治も、作品の朗読などを絡めて人物像がわかりやすく提示されているのですが、中原中也だけが、人物像が分かり難かったのが残念です。脚本、演出のせいというより演技のせいでしょうか。
出色なのは、貫さんという人物で、造り酒屋の杜氏で象に自分の酒を飲ませるために突進したり、川で鯨を捕まえたりするトリックスター的な人物。太宰治が自分が成りたかった理想像なのでしょう。

2013年6月26日水曜日

2013年第二四半期観劇のまとめ

4月3日 テアトル・ド・アナール「従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ攻勢の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行“─およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない”という言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか?という語り得ずただ示されるのみの事実にまつわる物語」テアトル・ド・アナール「従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ攻勢の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行“─およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない”という言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか?という語り得ずただ示されるのみの事実にまつわる物語」
4月4日 ブルドッキングヘッドロック「少し静かに」
4月10日 犬と串「左の頬」
4月17日 Straw&Berry 「マリア」
4月22日庭劇団ベニノ「大きなトランクの中の箱」
4月23日水素74%「半透明のオアシス」
4月24日 「レミング」
4月25日  泥棒対策ライト「あーあ」

5月8日ミームの心臓プロデュース公演「focus」
5月9日 少年社中「ラジオスターの悲劇」
5月14日 酒とつまみ「もうひとり」
5月15日イキウメ『獣の柱 ~まとめ*図書館的人生(下)~』
5月20日 離風霊船「マインド2013」
5月21日ハイバイ「て」
5月22日 いやむしろわすれて草
5月24日 ポップンマッシュルームチキン野郎「仏の顔も三度までと言いますが、それはあくまで仏の場合ですので」
5月25日 トリのマーク「湖畔の探偵全6話」
5月27日 ロロ「ミーツ」

6月10日 千葉雅子×土田英生 舞台製作事業「姐さん女房の裏切り」
6月11日 はえぎわ「ガラパコスパコス」
6月12日 城山羊の会「効率の優先」
6月12日 おぼんろ「ビョードロ」
6月19日 岡崎藝術座「(飲めない人のための)ブラックコーヒー」
6月20日 こゆび侍「きれいなお空を眺めていたのに」

4月から6月の観劇本数は、24本でした。
その中のベストスリーは、青山円形劇場の「いやむしろ忘れて草」、ロロの「ミーツ」、はえぎわの「ガラパゴスパコス」でしょうか。結構ナイーブに人間の情感を描いた作品が心に残っています。
次点としては、テアトル・ド・アナール、庭劇団ベニノ、イキウメなどの、少し癖のある硬派な芝居が気になりました。
この1年間以上、「自分の知らない小さな劇団の芝居を見に行く」ことを、大きなポリシーとしてきましたが、ここにきて少しくたびれてきたようです。全く知らない芝居を見に行って、その出来が残念だっったときのショックが結構大きく響きます。このままでは、芝居を見にいかなくなる恐れも出てきそうです。
7月からは、少し方針を変えて、明確に見たい理由がある芝居を中心に見ていこうと考えています。

こゆび侍「きれいなお空を眺めていたのに」

2013年6月21日 14時開演 王子小劇場
作・演出 : 成島秀和
出演:日暮玩具、佐藤みゆき、小野寺ずる、勢古尚行、墨井鯨子、廣瀬友美、白川哲次、小園茉奈、富山恵理子、鳥口綾、近藤茶、篠原彩
前日に見た岡崎藝術座に比べるとずいぶんオーソドックスな芝居でした。世界の終わりがくるという予感の中で、本当に大切なものは何かということを探るということがテーマでした。それを見つけたところで、本当に終わりがくるという結末なのですが、私たちは、3.11以降世界に終わりがこない、どんなにひどいことが起きても世界は続いていくということを思い知らされたのだと思います。それは、ひょっとしたら終わりがあるよりもさらにひどいことなのかもしれません。その認識がないところが、この芝居が今ひとつ響いてこない原因のような気がします。

岡崎藝術座「(飲めない人のための)ブラックコーヒー」

2013年6月20日 19時30分開演 北品川フリースペース楽間
作・演出 : 神里雄大
出演:鷲尾英彰、稲継美保、小野正彦、藤井咲有里、大村わたる
この芝居で一番気になったのは、役者による照明のつけ消しでした。どのシーンも役者が幾つかぶら下がっている照明のどれかのスイッチを引いて始まり、そのシーンが終わると再度スイッチを引いて照明を消すということの繰り返しが基本でした。なぜそうなってしまったかというのは、この公演が始まる前に照明デザイナーと話す機会があって、地方公演があること、それらが通常の劇場空間ではないこと、予算のことなどで、照明がついていかなくても仕込めて、オペレートできるような形にする必要があることなどは知っていましたが、いざ、本番を見てみると文章上に無駄に多くの鍵カッコ「」があるようで、とても気になりました。もっとも、そんなことを気にするのは、照明家だけかもしれません。
岡崎藝術座は、2,3年前に「リズム三兄弟」の公演の仕込とリハに付き合ったことがあって、その時の印象は、「日本語の解体と、再構築により新しい文体を創り出す。」ことを目指しているのかなというものでした。その後の公演はすべてスケジュールが合わず、本当に久しぶりの観劇でした。
今回の内容は、アガサクリスティの「ブラックコーヒー」と、少女誘拐監禁事件と、ボストンマラソンテロ事件を下敷きにしたもので、特徴的なのは、すべて当事者ではなく、その周りの人々の証言という形で構成されていることです。その結果、浮かび上がってくるのは言葉の暴力性や、人間関係の暴力性です。それらの言葉は、時には力強く、時にはいやらしく観客に迫ってくるのですが、どうも演劇の言葉ではないような気がします。脚本を購入して読み込んだ方がより良いのではないのかという気がしてなりません。

2013年6月14日金曜日

おぼんろ「ピョードロ」

2013年6月12日 19時30分開演 日暮里d-倉庫
脚本・演出 : 末原拓馬
出演:末原拓馬、わかばやしめぐみ、高橋倫平、さひがしジュンペイ、林勇輔
今時珍しい丁寧な前説から始まるファンタジーでした。ストレートな愛の物語で、そのストレートさ加減も今時珍しいものでした。丁寧な前説と言い、わかりやすいラブストーリーといい、あまり芝居を見たことのない若い女性客をターゲットにしているように見えます。
しかし、段ボールやペットボトルで手作りした装置を自ら自慢するのはどうでしょう。自虐的すぎて、引いてしまうお客さんもいそうです。
目標は、観客動員を5万人にしてシアターコクーンで1ヶ月公演することだそうですが、頑張ってくださいとしか言いようがありません。

城山羊の会「効率の優先」

2013年6月12日 15時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出 : 山内ケンジ
出演:金子岳憲、松本まりか、岡部たかし、松澤匠、白石直也、吉田彩乃、石橋けい、鈴木浩介、岩谷健司
前回の公演「あの山の稜線が崩れていく」を見た時には、結構骨太の不条理劇という印象だったのですが、今回の芝居は不条理劇としては、線が細すぎて納得できるものではありませんでした。その主な原因は、演技の質にあると思います。登場人物たちの演技が弱くてリアリティが感じられません。それが不条理を成立させていない一番の原因だと思います。あれでは、「なんだかなあ。」という感想が浮かぶだけで、不条理劇特有の不気味な肌触りは、生まれてきません。
いや、ひょっとすると、あれは不条理劇ではなかったのかもしれません。少しづつおかしい登場人物たちが、会社での「仕事」と、個人的な恋愛感情の間で揺れ動いて殺人を冒してしまう。それだけの話なのかもしれません。それにしても、女部長役の芝居が弱すぎて、納得がいきません。そして、ラストのセックスシーン、あれは何だったのでしょうか。舞台であんなに生々しいセックスシーンは始めて見ました。あの演出は何だったのでしょうか。あれこそが不条理です。

はえぎわ「ガラパコスパコス」

2013年6月11日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出 : ノゾエ征爾
出演:柴幸男、井内ミワク、滝寛式、鳥島明、川上友里、踊り子あり、笠木泉、町田水城、ノゾエ征爾、たにぐちいくこ、新名基浩、鈴真紀史、山口航太、竹口龍茶、金珠代、松森モヘー、萩野肇
当日パンフによれば、はえぎわはここ4年間ほど老人ホームでの芝居公演を定期的に行っているようです。その経験がこの芝居の基本的な部分や、前回の公演を見た時に感じた「視線の公平さ」を生み出してるようです。「老い」というものを見つめて、そのまま受け入れるということは実践することも、表現することもかなり難しいですが、この芝居での基調音となってすべてをまとめていいるようでした。
それにしても、「チョークとそれで描ける壁面さえあれば、演劇はできる」という芝居は、初めて見ましたが、実に面白いものでした。徐々にへたうまな絵や、言葉で埋め尽くされて行く壁面が、芝居全体に一種寓話的な雰囲気を与えて面白い効果を与えていました。
ラストの主人公が引きこもりから世の中に出て行く決心をして、ピエロの衣装からスーツにネクタイに着替えるシーンでのボレロの音楽と振りは、ほぼ完全に映画「愛と喝采の日々」のラストシーンでの20世紀バレー団のパクリで、ノゾエ征爾が素直なだけでなく、結構図太い神経の持ち主であることが覗き見えて面白かったです。

2013年6月11日火曜日

千葉雅子×土田英生舞台制作事業「姐さん女房の裏切り」

2013年6月10日 19時30分開演 小竹向原サイスタジオコモネ
原案・出演:千葉雅子
作・演出・出演:土田英生
MONOの土田英生と、猫のホテルの千葉雅子による新ユニット。当日パンフなどを読んでみると、どうも二人芝居を継続的に続けて行くつもりのようです。
それにしても、土田の千葉に対する優しさに溢れた脚本には、少しびっくりさせられました。元々達者な脚本家だとは思っていましたが、対象が一人に絞られるとここまで優しくなれるのかと驚きました。優しすぎて、少し説明しすぎな感じもあったのは、残念です。
千葉は、20年以上自分のせいで隠れて暮らすこととなった年下のダメ男を憐れに思って尽くすが、ある日、ほとほと愛想が尽きる年上女房を頑張って演じていましたが、元々の資質にないのか、あっさりしすぎの感は否めませんでした。それに比べて、土田は、悪人顔なのに中身は全くの子供で相手の気持ちがわからないダメ男を演じて生き生きとしていました。
せっかく始めた新規事業なので、二人芝居の限界を打ち破るような企画に挑戦してもらいたいものです。

ロロ「ミーツ」

2013年5月27日 19時30分開演 こまばアゴラ劇場
作・演出 : 三浦直之
出演:板橋駿谷、亀島一徳、望月綾乃、伊東沙保、工藤洋崇、小橋れな、水越朋
ロロとか、はえぎわで気に入っているところは、語り口の爽やかさだと思います。ロマンチックのふりをして、少しおセンチ、結論があってもなくてもすんなり終わる。そのキレの良さが魅力だと思います。
一部では、ロロらしくないという評判らしい伊東沙保の缶コーヒーを積み上げながらの長セリフも、私には十分素敵でした。しかし、そのシーンのBGMが中島みゆきなのには少しびっくりしました。
テーマは、どなたかがTwitterに書いていた「逢いたいけれど逢えない誰かを想像する(と居る(みたいな気がする)」ということでしょう。
人と人の出逢いというテーマの周りをぐるぐるまわって、様々なアプローチをしているように見えます。そのアプローチが、どれも私にとっては好ましかったり、微笑ましかったりするのが魅力です。

2013年5月26日日曜日

トリのマーク(通称)「湖畔の探偵 全六話」

2013年5月25日 16時開演
台詞・演出 : 山中正哉
出演:柳澤明子、原田優理子、大畑麻衣子、藤田早織、小田さやか、山中正哉
チラシの「シュールな話」という言葉と、マークだけで、呼び方がなく、通称トリのマークと呼ばれているという劇団名に惹かれて見に行きました。
結果は、あまりにシュール(?)で、理解も何もできませんでした。
話はどうやら、依頼を受けた探偵とマスコットらしいぬいぐるみのギロンが、湖畔の駅に到着するところから始まるようなのですが、探偵が二人いたり、マスコットが二つあったり、不動産屋らしい2人組がいたりするのですが、それらが出たり入ったりするだけで、何かが始まる前に終わってしまった感じです。何がしたいのか、何が面白いのか全くわかりませんでした。
お手上げです。

ポップンマッシュルームチキン野郎「仏の顔も三度までと言いますが、それはあ くまで仏の場合ですので」

2013年5月24日 19時30分開演 新宿サンモールスタジオ
作・演出 : 吹原幸太
出演:サイショモンドダスト★、吹原幸太、今井孝祐、小岩崎小恵、仁田原早苗、CR岡本物語、井上博之、加藤慎吾、小田伸泰、太田守信、高橋ゆき、青山雅士、杉岡あきこ、NPO法人、横尾友幸、橘麦、野口オリジナル、増田赤カブト、跳川雄大、渡辺祐太
ど派手なメイクのチラシに惹かれて、見に行きましたが、「ふざけた名前の劇団の芝居は面白くない。」という法則がまた、当てはまってしまいました。
思いついた面白そうなことを脈絡なくぶち込んだごった煮のような芝居で、そのごった煮が美味しければ結果オーライなのですが、けしてオーライになっておらず、しょぼい決幕を迎えるという情けない状態でした。妖怪たちの着ぐるみも、頑張っているのですが相乗効果をもたらすこともなく、不発に終わっていました。あまりにも、御都合主義なストーリーは苦笑するしかありません。
次回は、見ないと思います。

「いやむしろわすれて草」

2013年5月22日 19時開演 青山円形劇場
作・演出 : 前田司郎
出演:満島ひかり、伊藤歩、福田麻由子、菊池亜希子、大山雄史、能島瑞穂、黒田大輔、志賀廣太郎
前田司郎の芝居は五反田団の公演を2本ほど見て、これはどれを見てもみんな同じだと感じて、あまり触手が動かなかったのですが、「100万回生きた猫」で好演した満島ひかりが主演ということで、円形劇場に足を運びました。
病気がちの三女三樹(満島ひかり)を中心に、四姉妹の交流がさりげない日常の会話を通して静かに描かれて行きます。単に仲の良いだけでない、死をみじかに感じて相手を思いやる気持ちからかえってギクシャクする関係が、リアリティを持って心に迫ってきました。
この芝居が成功した主な要因は、キャスティングにあると思います。一見、バランスの悪そうな四姉妹の役者が微妙な距離感を、見事に表していました。
五反田団とは全く違う演出で、前田司郎の才能を再認識しました。

ハイバイ「て」

2013年5月21日 19時30分開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出 : 岩井秀人
出演:猪股俊明、岩井秀人、平原テツ、佐久間麻由、富川一人、上田遥、永井若葉、高橋周平、奥田洋平、小熊ヒデジ、青野竜平、用松亮
Twitterでの評判では、「岩井秀人の自伝的戯曲にして、最高傑作。何度見ても号泣。」「どうしてこの戯曲で岸田戯曲賞が取れなかったのか。」などと書かれていますが、私には今ひとつピンときませんでした。どうも私は、この戯曲や、「ポンポン………」などよりも、「霊感少女ヒドミちゃん」や、「ある女」のような映像を使ったポップな作品の方が好みのようです。
話は、久しぶりに全員集まった家族が前半は次男の視点から、後半は母親の視点から描かれています。舞台上のレイアウトもそれに合わせて、180度ひっくり返ります。同じ話が視点を変えることで、違った側面を見せることになるという演出は面白いのですが、別にそれで謎解きになるというわけでもなく、それがどうしたという印象は拭えません。
確かにリアルなんでしょうけれども、カタルシスを感じられないところが、納得いかないのだと思います。

離風霊船「マインド2013」

2013年5月20日 19時30分開演 下北沢ザスズナリ
作・演出 : 大橋泰彦
出演:伊東由美子、松戸俊二、倉林えみ、江頭一晃、柳一至、栗林みーこ、祥子、松延春季、生津徹、川崎蘭子、沙織、秋月愛
4回目の離風霊船の芝居ですが、最初の新鮮さが薄れて普通の芝居に感じました。
2本目、3本目の「30」2バージョンが結構残念な出来だったので、「貴方はもっとできる子のはず」と勝手に期待して見に行ったのですが、残念ながら贔屓の引き倒しだったようです。
話は、ある日、珍しく早く帰ってきたお父さんの様子が少し変です。家庭に波風を立てるのを恐れるあまり、昇進を断ってきたと嬉しそうに話します。びっくりしている家族の前に、さらに3人のお父さんが帰ってきます。博愛精神にあふれ、2リットルも献血したり、もっているお金をすべて募金したりするお父さん。目の前の欲望に忠実に、食べたいウナギやトンカツをすべて買ってくるお父さん。ずる賢くて、銀行強盗をするお父さん。どうやら、満員電車の中で足を踏まれ続けたショックで、4人に分裂してしまったようです。
自分達が良しとする提案を勝手にしまくるお父さん達に、混乱する家族。ドタバタあって、結局今のお父さんを選ぶ家族に、選ばれなかったお父さんたちは自分たちの原点、子供の頃に帰ります。そこに、選ばれた今のお父さんも現れるのですが、自ら全く覚えがない(なぜなら、子供の頃には、現れていない資質だから)と言っている場所になぜもどってくることができたのでしょうか。
不思議です。
子供の頃の母親とのやり取りを見て色々思い出すが、結局、今更かんたに変えられないと呟いて、芝居は終わります。
正直な結末だとは思いますが、今、再演するならそれを突き抜けたところまで行って欲しかったです。それとも、これが年を取るということなのでしょうか。

2013年5月21日火曜日

イキウメ『獣の柱 ~まとめ*図書館的人生(下)~』

2013年5月15日 19時30分開演 三軒茶屋シアタートラム
作・演出 : 前川知大
出演:浜田信也、盛隆二、岩本幸子、伊勢佳世、森下創、大窪人衞、加茂杏子、安井順平
前作に続いて、「まとめ図書館的人生」というタイトルがついているので、また、幾つかの作品をつなげたオムニバス的な作品かと思っていたら、丸々一本の作品でした。いわゆる再演ということなのでしょうか?最近になってイキウメを見始めた私にはよくわかりません。
話は、ある日、突然、空から大きな柱が降ってきて、それを見た人間は、意識を失い、硬直してしまう。外部からの刺激がないと目覚めず、目覚めてもその間の記憶がない。ただ、目覚めるととても幸福な気分に襲われる。経済は崩壊し、物流も止まってしまった世界で、人々は何とかそれに適応し、やがて神と崇めるようになる。やがて、何十年もその状況が続くと、柱を見ても気絶しない新しい人間が現れ、自分たちの世界を作るため、旅立っていく。とてもSF的なストーリーでした。その時間お流れと関係性を、プロジェクションで年号を映写することと、同じ役者が自分の子供や孫を演じることで、重層的に表していて面白かったです。
芝居の本質とは全く関係ないことですが、一つとても気になったことがあります。イキウメの一連の作品や、砂地の「disk」の照明デザインは、小劇場の芝居を数多く手がけている松本大介さんがされているのですが、どの芝居も基本的にストイックな芝居で、アクティングエリアを区切ることと、若干の状況的な説明をする照明(夕方とか、夜とか)を組み合わせることで事足りてしまいます。芝居に合わせたストイックな照明と言っていいでしょう。それにフラストレーションを感じるのか、ラストに必ずと言っていいほど、照明的な遊びのあるシーンがありました。「Mission」での虹の七色のビームとか、「disk」でのラストのオーストラリアでのモノローグでの大量の生のライトの方向性で、朝から夕方までを表すシーンとかです。同業者として、気持ちがわかるような気がして、シンパシーを感じてしまいます。

酒とつまみ「もうひとり」

2013年5月14日 15時開演 下北沢 OFF-OFF シアター
作・演出 : 倉持裕
出演:村岡希美、池谷のぶえ
Twitter上での評判は面白かったと思う人しか書き込まないので、当てにならないと重々わかっているのに、ついつい書き込みが多いと気になって見に行ってしまいます。この芝居もそんな気分で予約をいれてしまいました。
Twitterの評判をまとめると、「名女優二人が丁々発止とやりあう報復絶後の爆笑1時間20分」ということになるのですが、そもそも、村岡希美、池谷のぶえの二人が名女優なのかと言われれば、疑問が残ります。確かに芝居はうまいと思いますが、名女優と呼ばれるような女優ならこのような二人芝居で示すであろう「私は名女優なのよ。ほら、こんなに芝居がうまいでしょ。」といういうなケレン味が、あまり見られません。下手をしたら嫌味にしか感じられないような事も、さらりとできる人こそ名女優だと思います。でなければ、時には芝居の枠を外れるくらいの熱演をして欲しいものです。この二人には、残念ながらそれが足りなかったような気がします。全ては想定内の演技といった感じがします。
話は、縁もゆかりもないのになぜかいる居候と、大家という不思議な関係の中年女二人。隣人は大家が洗脳されているのではないかと心配して乗り込んでくるし、大家の婚約者は居候の存在が気になってプロポーズできない。そんな不思議な二人の関係の話でした。
ストーリーで一番気になったのは、途中の居候の息子への電話で明らかになるのですが、どうも、居候の家族は、プロの居候とでもいうべき存在で、本人も夫もその息子も別々の家庭に居候しているらしいということでした。その顛末を芝居にしたら、とても面白そうな気がしました。




2013年5月13日月曜日

iPadでブログ編集その後

iPadでブログ編集をする方法ですが、その後、blogger.comの純正APPを見つけて使って見ました。これを使えば、オフラインでテキストの入力、編集もできますし、Wi-Fiでつながっていれば、公開もできます。今のところの問題は、写真の挿入はできるのですが、位置調整ができません。さらなる研究が必要のようです。
その後、いろいろ調べましたが、位置調整は無理のようです。これでは下書き用にしか使えません。やはり、最終調整はMacからやるしかないようです。

少年社中「ラジオスターの悲劇」

2013年5月9日 15時開演 吉祥寺シアター
作・演出 : 毛利亘宏
出演:森下亮(クロムモリブデン)、堀池直毅、井俣太良、岩田有民、甘浦裕介、加藤良子、杉山未央、山川ありそ、内山智絵、竹内尚文、桂亜沙美、中村龍介、松本寛也、川本裕之、江口愛、大山真絵子
芝居を見ながら、この感じは何処かの劇団と似ているとずっと思っていたのですが、途中で「あっ、キャラメルボックスだ。」と、気がつきました。作風とか、演技の質が同じだとかの話ではなく、両方ともエンターテイメント志向で観客を楽しませることに全力を尽くしている、その姿勢がよく似ているのです。しかし、この芝居をエンターテイメントとして見た場合、私が満足できるレベルには達していないと思います。
まず、ダンスが酷い。基本的に踊り慣れていない人たちのようで、振付は平凡、身体のきれもなく、人様に見せられるレベルではありません。
また、脚本は安物のロールプレイングゲームのシナリオみたいで、悲しい限りです。今時、「夢は諦めなければ必ずかなう。絶対に!」と言い切ってしまうなんて、恥ずかしくないのでしょうか。
ここまで書いてきて、自分のエンターテイメントに対するハードルの高さに気がつきました。これは、古くは藤山寛美の松竹新喜劇や、初期の東京乾電池、最近のシルクドソレイユが基準としてあるからでしょう。それらに無意識に比べているように思います。また、エンターテイメント志向というよりは、各々の現実を引きずり、舞台の上でなんとかそれに対峙しようとしている芝居には、シンパシーを感じて採点が甘くなっていると思います。

2013年5月7日火曜日

ミームの心臓プロデュース公演「focus」

2013年5月8日 15時開演 王子小劇場
ハイブリットハイジ座「皮にパンク」
作・演出 : 天野峻
出演:広井龍太郎、羊、城築創、牧俊平、田中裕子、南美櫻、木村圭介、田中亜紀、町田地獄、来栖玄都、櫻谷翔吾、神山慎太郎

ミームの心臓「東の地で」
作 : 酒井一途、演出 : 岩渕幸弘
出演:浦田大地、小林依通子

四次元ボックス「cicada」
作・演出 : 菊池史恩
出演:森山拳、三品優里子、佐藤修作、山口栞、宮崎卓真、朝戸佑飛、渡辺苑衣、曽我祥之、北川まりえ、菊池史恩
ブリットハイジ座ー早稲田大学、ミームの心臓ー慶応義塾大学、四次元ボックスー日本大学芸術学部、学生劇団3団体による合同公演でした。2500円で各々1時間程度の芝居が3本見られるのはお得でしたが、引き換えにお尻の痛みを我慢するという苦行が待っていました。
全体の印象は、よく出来た学芸会以上のものではありませんでした。しいてあげれば、ハイブリットハイジ座には見せ方の工夫という点で、一日の長がありました。テンポの良い台詞運び、トリッキーな動きには、お客をとりあえず楽しませようという努力が見えますが、それも何処かで見たようなものでしかありませんでした。
ミームの心臓は、いわゆる「イタイ」感覚をそのまま、正面切って展開するような芝居で、今更見せられても感想にも困るような代物でした。二人芝居で、女優の方が存在感を発揮していましたがそれも二人を比較した場合の話で、役者としてどうかといえば、スタートラインに立ったところという感じです。
四次元ボックスは、大学8年生で新入会員が6年間もいないオカルトサークルの部長、原田マサオ役の佐藤修作が唯一舞台の上で存在感を発揮していましたが、他の役者が学芸会レベルで目立っていただけでした。せめて、全体のレベルが佐藤修作程度まで上がってこないと、芝居が始まらないという感じでした。
舞台の上に上がったら、学生も、プロも、アマチュアも関係なく、興味はただ一つ、面白いか面白くないかだけです。突然、面白くなることはないので、学生の皆さんは日々、精進していただきたいと思います。
面白いという噂が広まったら、また、見たいと思います。


2013年4月26日金曜日

泥棒対策ライト「あ~あ」


2013年4月25日 20時開演 吉祥寺キチム
振付・演出 : 下司尚美
出演:大庭裕介、近藤彩香、佐々木冨貴子、白倉裕二、下司尚美
ダンスの公演は、その独特のストイックな雰囲気が苦手で積極的に見にはいかないのですが、この公演は急に入ってきた仕事の都合で、観劇のスケジュールを組み直さなければいけなくなった時に、チラシを見て一発で見に行くことを決めました。「あ~あ」という脱力感満載のタイトルのせいかもしれません。結果はとてもゆったりした気分のまま、楽しく1時間を過ごすことができました。これは、振り付け・演出の下司尚美の肝っ玉母さん的な人柄からくるところが大きいと思います。本人自ら、客入れを行い、トイレの心配をし、前説までして、そのまま、本番になだれ込むという大活躍でした。出演者も、ダンスのトレーニングをしていたのは近藤彩香ただ一人で、残りは、下司を含めて正式なダンスレッスンを受けたこともない役者ばかりでした。ダンサーとしてみると、決してうまくはないが、それぞれの頑張りと解釈で踊っていて、面白かったです。特に、背が小さく手足も短い佐々木富貴子が、踊れていないなりに、がんばって工夫している姿は、面白かったです。また、それを良しとしてうまくまとめた下司の力量はたいしたものです。会場も、劇場ではない地下のカフェで、客とダンサーの距離が近く、それが否応無く一体感を醸し出して、楽しめました。
前日に見た「レミング」が、この何十倍ものコストと人間を動員して出来上がっていたのと比べても、満足度としては、こちらの方が上でした。

「レミング」


2013年4月24日 14時開演 渋谷パルコ劇場
作 : 寺山修司
演出 : 松本雄吉
出演:八嶋智人、片桐仁、常盤貴子、松重豊 他
寺山修司の言葉が未だに古びていないことが確認できた芝居でした。唐十郎の言葉が、まだ見ぬロマンスを語る言葉だとすれば、寺山修司の言葉は、存在しないノスタルジーを語る言葉だと思います。ただ、ロングコートに山高帽で舞台を上下に行進するコロスたちは、その言葉とは明らかに異質でした。維新派の舞台を見たことのある人によれば、あのコロス達は「とても、維新派風」なのだそうです。コロスのストイックな動きは、過剰なまでにロマンチックでノスタルジックな寺山修司のイメージを拡大するためには、決して役立っておらず、静かな異物としてなぜかそこにあるという感じでした。

水素74%「半透明のオアシス」


2013年4月23日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター
作・演出 : 田川啓介
出演:斎藤淳子、浅野千鶴、兵藤公美、斎田恵子
知人から面白いと噂を聞いて、見に行きました。私の中では、「青年団系」と分類される人のプロデュースユニットです。
見て、なぜ私が「青年団系」の芝居を積極的に見にいかないのか、その理由を再確認しました。
いわゆる「現代口語体演劇」とか、「静かな演劇」と呼ばれる芝居は、一見、素材の味を重視したほとんど調理しない料理のように見えますが、実際には余分な台詞を排除し、なにげない台詞を目的に向かって厳密に並べていくという、かなり高度な脚本力、演出力、役者の演技力が必要となってきます。そのどれかの不足を補おうと自分なりのスパイスを効かせると、ただのよくある芝居になってしまいます。しかも、基本的に抑制された芝居ですから、脚本や演出の意図しない、役からはみ出してしまう役者の個性とか、とちった時の役者の素の部分とかを見る喜びは、ほとんど期待できません。
また、「静かな演劇」では、背景もかなり重要です。その芝居のおかれている社会情勢なり、心理的な背景が見えてこないと、単なる家庭内の愚痴の言い合いにしか見えなくなる危険性が常に存在します。
この水素74%の芝居も、残念ながらそのようなつまらない「現代口語体演劇」の一つでした。

庭劇団ペニノ「大きなトランクの中の箱」


2013年4月23日 19時30分開演 森下スタジオBスタジオ
作・演出・美術:タニノクロウ
出演:山田伊久磨、瀬口タエコ、島田桃依、飯田一期
マンションの一室をアトリエにして様々な作品を作ってきたらしい劇団が、老朽化によるマンション取り壊しに伴い、始めて外部で発表するはこぶね作品(箱舟とはアトリエの名前らしいです)の、第一作ということでした。スズナリの半分程の広さのスタジオに60名分のひな壇客席と、幅二間、高さ9尺ほどの額縁舞台をわざわざ作っての公演でした。額縁にはもちろん目的があって、それは、盆回しで四つの部屋を転換するためでした。しかも、そのうち二つは二階建て。ある意味、驚愕の舞台装置でした。
物語は、エディプスコンプレックスをそのまま芝居にしたようなストーリーで、ペニスのオブジェや、射精を思わせるシーンがふんだんに出てきます。普通の劇場であれば白けてしまうと思われますが、あの狭い空間では観客も共犯意識を知らず知らず持ってしまうので、白けることもありませんでした。
何より面白かったのは、あの空間を選び、執拗なまでにこだわった芝居つくりをした演出家の執念でした。偏執狂とも思えるこだわりは、怖いほどでした。

2013年4月21日日曜日

iPadでブログ編集

iPadを購入した目的の一つは、Macを使わずにiPadだけでブログの編集をすることでした。
買ってすぐにトライしてみましたが、なぜかログインはできるもののその先に進めず、あきらめていました。ところが、先ほど何の気なしにiPadからログインしてみたところ、するすると編集画面までいけてしまいました。前回は、何がいけなかったのでしょう。全くわかりませんが、終わり良ければすべて良し。大きな前進です。
今までのブログ編集の流れは、
1.iPhoneかiPadのメモで,文章を入力。
2.写真は、iPhoneで撮って、iPhotoに保管。
3.Macから、iCloud上のメモにアクセスして、文章をコピーペースト。
4.写真は、Mac上でPhotoshopでトリミングして、アップロード。
というものでした。
下書きはiPadでできるが、編集、アップロードにMacが必要でした。
それができることがわかったので、後はiPhoneからiPadに写真を持ってくる方法だけです。
それもWebで検索したところ、いろいろな方法があることが簡単にわかりました。様々な方法を比べて見ましたが、私の目的にはDropboxを経由するのが一番向いているようです。「設定」の「プライバシー」の「写真」のDropboxの項目をONにするだけで、アップロードダウンロードが簡単にできます。後は、iPadのPhotoExpressでトリミングすれば、OKです。
これで、どこでもインターネットにつながりさえすれば、ブログの更新ができます。
と思って、iPadでトライして見ましたが、Web上での写真のレイアウト変更がうまくできませんでした。結局、最後はMacからアクセスし直して、レイアウト調整を行いました。ここをクリアできれば、当初の目的が達成できるのですが、さらなる研究が必要なようです。
ちなみに、この文章も、iPadからアップロードしてみましたが、Web上でコラム内のスクロールがうまくいかず、結局、Macから編集しました。

Straw&Berry「マリア」


2013年4月17日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:河西裕介
出演:野田祐貴、百花亜希、鮎川桃果、金丸慎太郎、松澤匠、野田滋伸、佐賀モトキ、岡野康弘、岩本えり
手書きをそのまま印刷したようなチラシに惹かれて見にいきました。「絶望」と「再生」をテーマだと言っていますが、中身は明らかに神聖かまってちゃんのの子をモデルにした躁鬱病のバンドマンのわがままいっぱいの恋とセックスと失恋の話で、この年になると全く共感できるところがありません。輪をかけてわからないのが、「おまけ演劇」の「会沢ナオトインティライミ」です。「愛は地球を救う」と称してわけのわからない寸劇が上演されましたが、あれは何だったんでしょうか?
お客さんへのサービスのつもりでしょうか?こっぱずかしい芝居をしてしまったことの照れ隠しでしょうか?
私には全く理解できませんでした。
二度と見に行くことはないでしょう。

2013年4月14日日曜日

犬と串「左の頬」

2013年4月10日 19時30分開演 シアター風姿花伝
作・演出:モラル
出演:鈴木アメリ、二階堂瞳子、満間昂平、藤尾姦太郎、一色洋平、堀雄貴、石黒淳士、宮本初、萩原達郎
犬と串の鈴木アメリと、昨年解散したバナナ学園の二階堂瞳子のW主役なんですが、二人とも全く可愛くない。まず、それが残念でした。しかし、最大の残念はくだらないことを貫徹できなかったことです。くだらないことを、僕たちはこれがくだらないことだとわかってますけど、やります。という意識が見え隠れするところが、最大の残念でした。くだらなかろうがなんだろうが、これだと信じてやり抜く意思と熱意、それこそがくだらないけれど面白い芝居を作るのに、それをするには頭が良すぎるのでしょうか?
結局、よくある若者のダジャレ芝居になっていました。
次回作は、見ないと思います。


2013年4月8日月曜日

iPad 4


去年の12月にiPadを購入しました。
購入は前々から考えていたことですが、iPhone 5にしてテザリングができるようになったこと、iPadにもRetinaディスプレイが乗ったことが最後の購入動機となって、Applestore渋谷店に飛び込みました。
考えてみれば、iPhone 5にしたのも前に使っていたiPhone 4を間違ってiOS 6にアップグレードした結果、動きが緩慢になったのに耐えきれなかったせいでした。見事に、Appleの術中にはまったというべきでしょう。iPad購入の最大の目的は、夏に向けてハンモックに寝っ転がりながら、ウエブブラウズしたり、映画を見たり、読書をすることでした。また、外出時も、MacBookより手軽に持ち運んで芝居の感想を書いたり、ブログの更新もできればしたいというものでした。
買ったのは、64GBのWi-Fi専用の黒です。Wi-Fi 3G兼用は、テザリングできるし、LTEにはつながらないし、月々5000円払うのは、たまにしかつなげないのにもったいなさすぎると思って、最初から眼中にありませんでした。
約、4ヶ月使って見ての感想は、このサイズ、この重さでは、まだまだ大きいし、重すぎるというものです。
寝っ転がって使うには、手で支えているのには重すぎでした。すぐに手がくたびれてしまいます。
外出時には、やはり、直に電話回線につながらないのは、不便です。テザリングは、結構めんどくさいです。また、ブログの更新も今のところ成功していません。
結論としては、あれば便利だけれど、なくても大丈夫という感じです。
私の外出時の理想は、iPad Miniのサイズで、LTEにも対応したiPhoneです。そう思われている人も少なくないと思いますが、Appleはわかっていてもそんな機種は出さないでしょうね。自分のマーケットを荒らすだけで、パイが増えるわけではないですから。
とりあえず、夏までに、フレキシブルアームのついたiPadのスタンドを探しています。

ブルドッキングヘッドロック「少し静かに」

2013年4月4日 19時開演 下北沢ザスズナリ
作:喜安浩平
演出:西山宏幸
出演:山口かほり、帯金ゆかり、はしいくみ、星原むつみ、津留崎夏子、宮下雄也、嶋村太一、深澤千有紀、寺井義貴、篠原トオル、福原充則、喜安浩平、永井幸子、根本宗子、小島聴、藤原よしこ、岡山誠、猪爪尚紀
元バンドマンの劇団主催者が、本公演23本目にして初めての演出というチラシの裏情報に惹かれて見にいきました。
様々な演出上のアイデアに溢れた舞台でしたが、そのために芝居の焦点がぼけて、上演時間が延びただけの結果に終わっていました。
例えば転換ですが、セットが写実的ななため、転換しなければならない小道具が山のようにありました。それを役者達がシルエットの中、音楽に合わせて、踊りながら転換する。上手の壁には時間経過を表す日付が投影される。気詰まりな転換時間を少しでも面白いものにしようという考えでしようが、役者の動きが計算され尽くされていないので、へんにワサワサした落ち着かない時間になっていました。
芝居のテーマとしては、人と人のコミュニケーション、関わり方の難しさでしたが、ラスト、テルミンが故障して、偶然すべての人がつながってしまうのは、あまりにも御都合主義ではないでしょうか?その疑問を打ち消すためか、オーストラリアかニュージーランドのオールブラックスが試合前にやるアボリジニの戦いのダンスを全員でやるのですが、疑問は減るどころか、増えるだけでした。
芝居の楽しみの一つに前見た芝居に出ていた役者が、今回は別のキャラクターで出ているのを見ることがあると思います。今回は前々から気になっていた役者が多く出ていたので、その面では楽しかったです。
役者は面白かったが、芝居は残念というところでしょうか。

テアトル・ド・アナール「従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ攻勢の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行“─およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない”という言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか?という語り得ずただ示されるのみの事実にまつわる物語」

2013年4月3日 19時30分開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:谷賢一
出演:伊勢谷能宣、井上裕朗、榊原毅、西村壮悟、山崎彬
手で書いたら間違えずに書き写すことが不可能なほど長い題名が、すべてを言い表しているような芝居でした。しかし、それは中身がないという意味ではなく、それにふさわしい内容の充実した芝居でした。始めて谷賢一の作・演出を見たのは、俺とあがさと彬と酒とというプロジェクトによる「マクベス」でしたが、その時の印象は、「若さゆえの勢いと未熟さ」でした。しかし、今回はうってかわって大人な感じのがっしりした思考実験にも似た落ち着いた芝居に仕上がっていました。
第一次世界隊のオーストリアの最前線の兵舎という生と死が隣り合っている場所で、人間の様々な本性がむき出しになっていく中で哲学的考察を続けるウィトゲンシュタインが、有名な命題「およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない」にたどり着く過程を、イギリスにいる友人の亡霊との対話や、周りの兵士たちとの対立を通じて、わかりやすく描いて行きます。
実に見応えのある105分間でした。
悪い芝居の中では、少し嫌味に感じる山崎彬の芝居も、今回のアンサンブルの中では、即物的な人間性の迫力として感じられ、好演でした。
谷賢一としては、「語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない」という言葉の後に、「語り得ぬことを語るのは、芸術の仕事だ。」と、続けたかったのだろうと思います。

2013年4月4日木曜日

2013年第一四半期観劇のまとめ


1月3日 「新年工場見学会2013」
1月8日 「100万回生きた猫」
1月9日 ぬいぐるみハンター「ゴリラと最終バス」
1月10日 東京デスロック「東京ノート」
1月12日 生前葬「笑ってタナトスくん」
1月13日 長塚圭史「音のいない世界で」
1月19日 ナカミチ円陣「三人獅子舞」
1月19日 30 Years Godot「ゴドーを待ちながら」
1月20日 マームとジプシー「あ、ストレンジャー」
1月23日 毛皮族「ヤバレー、虫の息だぜ(仮)」
1月24日 タカハ劇団「世界を終えるための会議」
1月25日 トムプロジェクトプロデュース「熱風」
1月26日 砂地「Disk」
1月30日 サンプル+青年団「地下室」

2月2日 羽衣プロデュース「サロメ VS ヨナカーン」
2月3日 劇団宝船「撫で撫で」
2月25日 柿食う客「発情ジュリアスシーザー」
2月26日 ナイロン100℃「デカメロン21あるいは男性の好きなスポーツ」
2月27日 鹿殺し「BONE SONGS」
2月28日 扉座「つか版・忠臣蔵」
2月28日 レモンライブ「トリオ」

3月5日 KAKUTA「秘を以て成立とす」
3月12日 月刊根本宗子「今、出来る、精一杯。」
3月14日 松尾スズキ「マシーン日記」
3月15日 ワワフラフラミンゴ「馬のリンゴ」
3月25日 MONO「うぶな雲は空で迷う」
3月26日 悪い芝居「キャッチャーインザ闇」

2013年の第一四半期は、1月 14本、2月7本、3月6本で、計27本。1月は暇だったので、大量に芝居を見ることができました。しかし、チラシの印象だけで見ず知らずの劇団を見にいくと、ハズレの芝居に出会うこともよくあることで、そんな芝居が2、3本続くと、劇場に行くことさえ辛くなったりします。やはり、芝居は間を開けて、体調も万全で心に余裕がある状態で見たいものです。
幸いなことに、面白い芝居も何本もありました。到底ベストスリーに絞れないので、面白かった芝居を列記したいと思います。
1月8日 「100万回生きた猫」
1月13日 長塚圭史「音のいない世界で」
1月20日 マームとジプシー「あ、ストレンジャー」
1月25日 トムプロジェクトプロデュース「熱風」
1月26日 砂地「Disk」
1月30日 サンプル+青年団「地下室」

2月2日 羽衣プロデュース「サロメ VS ヨナカーン」
2月27日 鹿殺し「BONE SONGS」
2月28日 扉座「つか版・忠臣蔵」
2月28日 レモンライブ「トリオ」

3月14日 松尾スズキ「マシーン日記」

以上、11本でした。
ざっと見渡すと、若手の小劇場の劇団に混じって、中堅の劇団や一般的に評価されている劇作家が入っていることが今期の特徴でしょうか?
長く続けているにはそれなりの理由があるわけですし、一般の評価もそんなに間違っているわけでもなさそうです。問題は、それらの劇団の料金が若手に比べて高いことです。そちらに照準を合わせていくと、財布が持ちません。懐具合と相談しながら、見る劇団を選んで行きたいと思います。

2013年4月2日火曜日

悪い芝居「キャッチャーインザ闇」



2013年3月26日 14時開演 王子小劇場
作・演出:山崎彬
音楽 : 岡田太郎
出演:池川貴清、植田順平、大川原瑞穂、北岸淳生、呉城久美、宮下絵馬、森井めぐみ、山崎彬、大塚宣幸、田川徳子、福原冠
MONOに続いてこちらも2回目の観劇でした。「目が見えるようになると、見えなかった時に見えていたものが見えなくなる。」を合言葉にした、「夢をみる。夢を見続ける。」ことについての芝居でした。
前回の「カナヅチ女、夜泳ぐ」では、漠然とした目標はあるものの、そこにどのようにたどり着いたらよいかわからず、手探りで闇雲に進んでいるような印象でしたが、今回は目標にたどり着く方法はわかったつもりなのだが、思っているようには進めない、その焦りが色こく現れていました。何とかスピードをあげることで、目標に早くたどり着きたいという気持ちばかりが前面に出すぎて、空回りしている場面が多々ありました。
全体にスピード感を出すことにこだわりすぎて、焦っているように見えてしまうことが多々ありました。
3本のストーリーが入り乱れる構成ですが、そのうちの1組が松本大洋の「鉄コン筋コンクリート」のパクリで、衣装がほとんど漫画のままというのには、笑いました。
一作毎に成長の感じられる劇団です。次回作も是非、見たいと思います。

MONO「うぶな雲は空で迷う」


2013年3月25日 19時30分開演 赤坂レッドシアター
作・演出:土田英生
出演:水沼健、奥村泰彦、尾方宣久、金替康博、土田英生
2回目のMONO観劇でした。ロビーで今までの40回の公演のポスターの展示がありました。時間ギリギリで入ったので、詳しく見る余裕がなかったのですが、私が知らないだけで結構古い劇団だったのですね。前回の「少しはみ出したら、殴られた」と言い、今回の公演もそうですが、落ち着きというのか、安定感はそこからきているのでしょう。
「大きな戦の後、大陸がなくなって様々な島々に別れてしまった世界を、飛行船で飛び回る五人の窃盗団」という、ラピュタから借りてきたような背景設定には、ラピュタ好きとしてはニンマリしてしまいました。
嘘をついてまでも自分のアイデンティティを確立したいという馬鹿げているが愛おしい人間を、優しく描けているのには、感心しました。

2013年3月24日日曜日

ワワフラフラミンゴ「馬のリンゴ」


2013年3月15日 19時30分開演 神楽坂フラスコ
作・演出 : 鳥山フキ
出演:北村恵、浅川千恵、石井舞、加藤真砂美、佐藤祐香、名児耶ゆり
以前、鳥山フキの個人企画の公演を見に行ったところ、独特の不思議な感覚があることはわかるものの、それのどこが面白いのか全く理解できず、本体のワワフラフラミンゴの公演を見てみようと考えていたことを実行しました。
神楽坂の表通りを一歩はいったところにある、小さなギャラリーが会場でした。私には慣れ親しんだ、劇場という「何かを見せてやる。」という雰囲気に満ちた場所とは違い、何かが始まるという感じの全くしない静かな時間が流れているだけというギャラリーを、会場に選ぶ理由は何なのでしょうか?
会場費が安い。
観客と出演者の距離が異常に近い。
そんなところでしょうか?もっと、何か深い理由があるような気もします。
芝居は、やはり、フワフワ、フニャフニャした不思議な感覚に包まれた日常会話と、同じ感覚のままでの吸血鬼との会話で構成されていました。どなたかがチラシの裏の推薦文で、「女の子の秘密の会話を覗き見ているようないけない感覚」というようなことを書いていましたが、私とっては、目前で赤裸々に繰り広げられる不思議な会話という感じでした。
私が男性だからか、年寄りだからか、理由は今ひとつわかりませんが、面白いとは思えませんでした。あの感覚に共感できる人には、面白いのかもしれませんが、私はダメでした。

2013年3月14日木曜日

月刊根本宗子「今、出来る、精一杯。」


2013年3月12日 18時開演 下北沢駅前劇場
作・演出:根本宗子
出演:早織、加藤岳史、墨井鯨子、梨木智香、大竹沙絵子、前園あかり、下城麻菜、あやか、遠藤隆太、浅見紘至、野田裕貴、根本宗子、片桐はづき
劇団名の珍しさに惹かれて見に行きました。結論を一言でいえば、高校演劇じゃないんだから、そんなに頭でっかちにならないで芝居をして欲しいということです。
チラシや当日パンフレットにも書かれていますが、最近、根本宗子の親しい人が亡くなったようで、そのことに影響を受けて書かれた芝居のようです。
他人との関係をあまりにも真面目に、もしくは頑なに自分の考えを貫き通そうとするために、めんどくさい人になっている人々が描かれています。中学時代に事故で女性を半身不随にしてしまい、自分はどもりになってしまった人、引きこもりに惚れたため相手のすべてを肯定しすぎて、完全に依存され自分も崩壊してしまう人、前のバイト先で自殺がおき、それを自分のせいだと思ってしまい、さらに自分のからに閉じこもってしまう人など、様々なめんどくさい人々が出てきます。その人たちが、一人のバイトのわがまま放題の振る舞いに振り回され、やがて、自分なりの「今、出来る、精一杯」を考えて、一歩を踏み出そうとする。そんなストーリーなのですが、何しろ、ほとんどすべてを台詞で説明してくれるので、芝居を見ているというよりは、芝居の解説を聞いているような感覚に陥ります。最後に、駄目押しでスライドで、「人間関係はめんどくさいことが色々起きる。一度に呑み込むことはできないけれど、精一杯飲み込んで前に進んでいこう。それが、私にできる精一杯。」(おおよそ、そのような意味だったと思います。なにしろそれまでに説明が多すぎて、お腹いっぱいの状態だったので、半目を開いているのが精一杯だったので)という言葉が出てしまいます。
これを出すくらいなら芝居なんかやめて小説か、エッセイでも書けば良いのにと思わざるを得ません。それは、芝居を見たお客さんが感じることで、そのために芝居をするにではないでしょうか?
完全に勘違いしているとしか思えません。
次回作を見に行くことはないでしょう。

2013年3月12日火曜日

KAKUTA「秘を以て成立とす」


2013年3月5日 19時30分開演 三元茶屋シアタートラム
作・演出:桑原裕子
出演:吉見一豊、藤本喜久子、清水宏、成清正紀、瓜生和成、原扶貴子、佐賀野雅和、若狭勝也、高山奈央子、野澤爽子、桑原裕子、ヨウラマキ
トムズプロジェクトの「熱風」の時にも思ったのですが、桑原裕子は達者な作家だと思います。謎を含んだまま進んで行くストーリーで観客の興味を引っ張り、最後にスッキリ謎解きをして納得させ、更に明日への希望をさらりと提示して、優しい気持ちで客を帰す。できそうでなかなかできないことだと思います。
ストーリーは、子供の頃、姉を死なせてしまったと思い込んだ医者が、それを超えるため、エリートの医者と、乱暴者の大工を別人格として生み出し、生きていく。家族は、それを秘密として隠して生きことで家の平和を守っていく。しかし、町内のマラソン大会をきっかけに秘密が公になり、もう一度、やり直す決心をする。それ以外にも様々な人の様々な秘密が描かれて行き、人間は実に秘密を抱えながら生きている動物であることが提示される。
秘密というテーマ自体よりも、それを抱えて右往左往する人々が良く描かれていて、実に笑える芝居に仕上がっている。
しかし、自分の病気を自覚した主人公がやり直す決心をするラストで、妻と手を取り合ってマラソンに復帰するのは、あまりにも安直な演出にしか見えませんでした。何か別の意図があったのでしょうか?
最後に、役者としての桑原裕子も特筆すべき存在だと思います。
ブサ可愛いを絵に描いたような演技で、メインストーリーとあまり関係ないところで、芝居を膨らませていました。

アマヤドリ「月の剥がれる」


2013年3月5日 14時開演 座高円寺1
作・演出:広田淳一
「散華」と言えば、私の世代だと高橋和巳の小説「散華」ということになるのですが、この劇団にとっては、どんな意味を持つのでしょう。本来の意味は仏教で法要時に花をまいて場を清め、悪霊を祓うということらしいですが、その後、戦死の婉曲的表現として使われるようになったようです。
ストーリーとしては、散華と称する平和運動が起こる。これは、自国の軍隊が人を殺すたびに、会員は一人づつ自殺していくという運動。運動はやがて世界中に広まるが、最終的に大量殺戮兵器が使われ、会員の大量自殺が起こり、運動は崩壊する。
それを反省して、その国では「怒り」を放棄することで、平和を目指すことを選択する。ざっとまとめるとこのようなストーリーなのだが、私には、どこにも共感できるところがありませんでした。
と、ここまで書いたところで、時間となったにでソワレで劇団KAKUTA「秘を以て成立とす」を見ました。KAKUTAの感想はまた別稿で書きますが、見てわかったことがあります。それは、アマヤドリの役者の芝居が下手でそれに共感できなかったので、散華の考え方に共感できなかったわけではないということです。共感以前の問題で、下手な芝居にうんざりしただけだったのです。
演出家にもその自覚があったようで、ダンスをいれたり、コロスのような人が場面場面で、外から見ているという演出を多用したりしていました。しかし、私には更に意味不明度を増しているだけのように思えました。
次世代を担う劇作家の一人と期待されているという前評判を聞いて、見に行ったのですが、残念な結果となりました。

2013年3月4日月曜日

LEMON LIVE Vol. 10「トリオ」


2013年2月28日 19時30分開演 下北沢 OFF-OFFシアター
作・演出:斎藤栄作
出演:西牟田恵、野口かおる、武藤晃子
日替りゲスト:我善導
開演前の日替りゲストと作・演出の斎藤栄作のトークで知らされるまで全く知らなかったのですが、LEMON LIVEとは斎藤栄作のプロデュースユニットであり、過去9回男優ばかりで公演を行ってきたこと、今回、10回目ということで、初めて女優ばかりの芝居をやってみたことなどを知りました。
何も知らないまま見に行った私のお目当ては、もちろん、野口かおる。ベッド&メイキングスの好演以来、気になる女優です。
芝居は、完全に三人に向けた当て書きで、売れない音曲漫才トリオで、酸いも甘いも噛み分けた年増の姉御が西牟田恵、奔放でだらしなく一人では生きていけない女が野口かおる、チャッカリしていて目ざといが、基本的にはいいこの若手が武藤晃子、その三人が一人の男(日替りゲストの男優)を取り合うのだが、実は女癖の悪い男を懲らしめる手のこんだお芝居だったというストーリー。
トムプロデュースの「熱風」の時にも思ったことですが、当て書きで演技に余裕のある時のベテラン女優の爆発力は、すごいものがあります。この芝居でも、コント風あり、ドタバタあり、サスペンスありの盛りだくさんの内容でしたが、あっという間の90分でした。
特に、野口かおるが長いアドリブのシーンで叫んだ「台詞なんかどうでもいいじゃない。(舞台の上で)生きてさえいれば!」というセリフには、感動しました。
秋には、つかさんの「買春捜査官」を演じるようですが、今から楽しみです。

扉座「つか版忠臣蔵」


2013年2月28日 14時開演 すみだパークスタジオ
原作:つかこうへい
脚本・演出:横内謙介
つかこうへいさんとは、つかさんが有名になる前、早稲田の劇団と一緒にやっている時に、その劇団に参加していた高校の同級生の誘いで手伝いに行ったのが、最初の出会いでした。まだ、「熱海殺人事件」の前で、「郵便屋さん、ちょっと」をやっている頃でした。それがきっかけで、私は、舞台照明の世界に足を踏み入れました。途中、いろいろ回り道をしたけれど、今、また、照明の仕事をしています。つかさんとその劇団の人々には、芝居について色々教えてもらいました。
その後、仕事が忙しくなってつかさんの舞台を見ることもなく、今日、40年以上ぶりにつかさんの芝居と再会しました。
40年ぶりのつか芝居は、思っていた以上に面白く楽しいものでした。年をとったせいで、役者や観客のエモーションを無理やり高めるために大音量で鳴り響く音楽は、少々辛いものがありましたが、あっという間の2時間15分でした。現代にあのような形でつか芝居を再現できた横内謙介の才能はたいしたものです。
つかさんの芝居は、「やせ我慢の美学」だと思います。惚れた女のためにすべてを打ち捨てて討ち入りにいく。忠臣蔵では、討ち入りを企むものとして井原西鶴と中村座の座長七五郎が描かれていますが、討ち入りを悪用する黒幕というより、討ち入りの動機を説明するという役目にしか見えません。つかさんの力点は、「やせがまん」におかれています。
他に面白かった点としては、井原西鶴役の役者が、どう見ても漫画美味しんぼの「海原雄山」にしか見えなかったこと。本人も完全に意識していると思います。また、殺陣が、すごく良くできていて、様式美の領域まで達しているように思えました。最近見た殺陣の中では、秀一でした。
前から思っていたことですが、つかさんのあの長台詞のルーツは、大衆演劇の「見得」にあることを、再確認しました。逆説的にいえば、長台詞を成立させるために、日本人の共通の美学である「やせ我慢」を持ち出し、それを煽るために大音量の音楽を流すと言えるかもしれません。
これだけ楽しかったのですが、、もっとつかさんの芝居が見たいとはあまり思いませんでした。昔のガールフレンドに久しぶりに再会して楽しかったが、よりを戻したいとは思わなかっということなのかもしれません。