2014年5月13日火曜日

砂地「3 crock」

2014寐ん月12日 14時開演 吉祥寺シアター
作・演出:船岩祐太
出演:小野健太郎、野々山貴之、とみやまあゆみ、日下部そう、中村梨那、NIWA、浦川拓海、小瀧万梨子、林愛子、尾崎宇内、高川裕也
河竹黙阿弥の「三人吉三廓初買」を基に現代語訳したような作品。緊張感の途切れない、シリアスで面白い芝居でした。複雑に絡み合う因果法王の下世話なストーリーがみごとに蘇り、現代の不安や消失感の物語になっていました。
ただ1つ気になったのは、その台詞が翻訳調というか台詞を言ってる感満載で、自然さがないところでした。もう少しこなれていればさらに面白くなっていたのにと言う思いが消えません。

快快「へんしん(仮)」

2014年5月10日 19時30分開演 駒場東大前アゴラ劇場
作:北川陽子
演出:快快
出演:大道寺梨乃、野上絹代、山崎皓司
私にはよく理解できない若手女性演劇人を、多少なりとも理解しようとする修行のような観劇も、限界に近づいてきたようです。前回の「6畳間ソーキュート社会」の批判的な印象にもかかわらず、また快快を見にいきました。
前回よりもさらにわけがわかりませんでした。理解不能と言うよりも、やってることが全く面白いと思えません。ゴリラの物まねや、鳴き真似、あれはいったい何だったのでしょう。こうなると、三田後でもいいから、どなたかに解説していただきたいものです。
当面の間、若手女性演劇人の芝居は見ない方が良さそうです。

2014年5月7日水曜日

離風霊船「運命なんてぶっとばせ!」

2014年4月29日 15時開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:大橋泰彦
出演:伊東由美子、松戸俊二、山岸諒子、小林裕忠、橋本直樹、江頭一晃、竹下知雄、瀬戸純哉、柳一至。栗林みーこ、祥子、松延春季、大迫綾乃、沙織、比留間彩理
初めて見たときには「昭和の小劇団」の古き良き雰囲気を今に伝えて面白かったのに、その後の作品は30周年記念公演の2作品は同じ装置で2本やるという企画自体に無理があったし、再演物はノスタルジーしか感じられない低調な物でした。久しぶりの新作と言うことで期待して見にいったのですが、残念な結果に終わってしまいました。
ストーリーは、サスペンスコメディ物でよくある感じだし、何よりも離風霊船の特徴だと思っていた大転換が一つもないところが残念です。
音楽でもそうですが、同時代感が感じられない物はノスタルジーとして語るしかないというのは、真実だと思います。
劇団の歴史に関係なく今を生きているという感性はとても大事です。出なければ、時代を超越できるような強力な個性がなければ、見ていて面白いわけがありません。

2014年4月21日月曜日

シベリア少女鉄道「あのっ、先輩…ちょっとお話が… …ダメ!だってこんなのって…迷惑ですよね?」

2014年4月17日 14時開演 座・高円寺1
作・演出:土屋亮一
出演:篠塚茜、加藤雅人、竹岡常吉、川田智美、小関えりか、岸茉莉、雨宮生成
実に大胆というか、人を食った設定の芝居でした。ビフォートークと称して、演出家とよくシベリア少女鉄道に出演しているが、今回はスケジュールの都合で参加できなかった役者3人が、つまらない話をしてから芝居が始まります。ストーリーはよくある学園物で、「なんだこれは」と思っていると、ビフォートークに出演した役者が勝手に舞台に登場し始めます。最初は、遠慮がちでしたが、だんだん大胆に成り、学園物の出演者に絡んだりします。本来の出演者は笑いを一生懸命こらえながら、なんとか芝居を続けようと懸命の努力を続けます。乱入者3人は、「俺たちだって舞台に出たい」との思いがエスカレートして、ラストには「進撃の巨人」の大きな着ぐるみを着て学園物の登場人物に襲いかかります。ひとしきり、格闘シーンがつづいて、ラストにやたらと長いタイトル名を叫んで暗転、お終い。タイトル自体がオチでしたというわけです。
ある構造に全く関係のない別の構造が突然挿入されてくる。その混乱と、戸惑いをドタバタ風に描き、最後はわかりやすいパロディでしめる。その基本構造は面白そうなのですが、実際の舞台はそんなに面白くはなりませんでした。ひと味足りない物は、いくら足してもおいしくならないと言うことでしょうか。

2014年4月17日木曜日

江古田のガールズ「仮面音楽祭」

2014年4月16日 19時開演 赤坂レッドシアター
作・演出:山崎洋平
出演:瓜生和成、内野聡夢、恩田隆一、小林光、幸野紘子、荒川佳、藻田留理子、増岡裕子、うらじぬの、大村わたる、長瀬みなみ、斉藤祐一
開演前の前説を作・演出の山崎洋平自ら行っていたが、その段階から薄ら寒さ全開でそのまま、寒い芝居が2時間続いてしまいました。
「観客にただただ楽しんでもらいたいだけだ。」という芝居だそうですが、その思いに嘘はないものだとしても、お笑いにはセンスや才能が何よりも必要であり、それがないとどうしようもないことが証明されたということでしょう。この「江古田のガールズ」は、何度もチラシは見かけたのですがタイミングが合わずなかなか見られなかった劇団ですが、見てがっかりの劇団でした。見るまでにかかった時間の分だけがっかり度も大きかったのかもしれません。
深夜のカラオケボックスでの合コン、「最初からうまくいかない男女の思いをカラオケにのせて替え歌で歌いまくる。」というアイディアは悪くないと思うのですが、誰でも思いつきそうなプランだけに、作・演出のセンスが重要だと思います。それを、どこかで見たことがあるような安直な演出に終始し、加えて役者の歌が下手すぎときては救われません。演出も歌がもたないという自覚はあるらしく、振付やコーラス、合いの手などを入れてくるですが、ダンスも下手、合いの手を入れるために出入りするのもうるさいだけという有様で、救われません。

2014年4月13日日曜日

東京乾電池「そして誰もいなくなった」

2014年4月10日 19時開演 下北沢本多劇場
作:別役実
演出:柄本明
出演:柄本明、柄本時生、伊東潤、山地建仁、麻生絵里子、血野滉修、重村真智子
東京乾電池の芝居を見るのはこれで3本目になるのですが、またしても面白くない芝居を見る羽目になりました。戯曲は、アガサ・クリスティの同名小説「そして誰もいなくなった」を元に、なぜか集められた10人が順番に不条理な理由で殺されていくと言うストーリーになっています。本多劇場のこけら落としに、別役実が書き下ろしたものだそうです。
「人が殺されたことにより周りにかける迷惑」を理由に殺されていく、まさに不条理なナンセンスな話なのですが、それを声高に喋りまくるだけで、不条理に従わざるを得ない人間の悲しみや空しさに注意を払わないがさつな演出にがっかりしました。
前回見た「真夏の夜の夢」の時にも感じたのですが、細かいニュアンスを無視していくような演出方法に魅力はありません。
若い頃、今はなき渋谷のジャンジャンで見た「ストーリーは全く頭に残らないが、ただただ面白かったという印象だけがのこる。」東京乾電池はなんだったのでしょうか?
不条理の罠にはまって、頭でっかちになり、体力もなくなるとあのような結果になるのでしょうか。とても残念です。

2014年4月8日火曜日

ちからわざ「はるヲうるひと」

2014年4月3日 19時開演 下北沢ザ・スズナリ
作:佐藤二朗
演出:堤泰之
出演:大高洋夫、兎本有紀、今藤洋子、笹野鈴々音、野口かおる、大田善也、韓英恵、佐藤二朗
芝居を見終わった後この芝居について考えていると、その前に見た芝居と比較していることに気がつきました。その前の芝居とは、遊園地再生事業団の「ヒネミの商人」のことですが、「ヒネミの商人」がほとんど日常会話で成り立っているのを中村ゆうじの意味ありげな芝居がぶちこわしているという構造だったのに対して、この芝居はほとんど全てを台詞で表現してました。
大高洋夫演じる鬼畜な置屋の経営者のむなしさも、今藤洋子演じる娼婦のいらいらもすべて台詞として書かれています。唯一、そんな台詞のない佐藤二朗演じる大高の腹違いの弟で娼婦たちの世話係も、ラストでは自殺した父親との約束で喋ってはいけない秘密を抱えて生きてきたことを語ってしまいます。
それ故、役者たちの演技は台詞にリアリティをもたせることに主眼が置かれ、ほとんどの台詞が客席に向かっており、会話をしているという感じがありません。実にわかりやすいと言えばわかりやすいのですが、ソロパートばかりでアンサンブルのない音楽を聴いているようで、違和感がありました。

2014年4月3日木曜日

鳥公園「緑子の部屋」

2014年3月26日 19時開演 3331 Arts Chiyoda B104
作・演出:西尾佳織
出演:武井翔子、浅井浩介、鳥島明
私には今ひとつ理解できない若い女性演出家の芝居に再チャレンジしてみました。ストーリーは、「なぜか死んでしまった緑子のお葬式に、元彼と中学高校の同級生が呼ばれ、話していく内に、緑子の人生が浮かび上がっていく。」というようなことが、チラシに書いてあったような気がしたのですが、実際の芝居では緑子の人生よりも、元彼のどうでもいい今時の若者にありがちな実態が明らかになってきます。この元彼は結構どうしようもない奴で、緑子と同棲中にもバイト先で女の子に手を出したり、緑子に暴力をふるって追い出してりしていたようです。
芝居は淡々と進んでいき、ラストは「絵の中の見守っている女性は私です。」という唐突な台詞で終わりました。
結局、私には何もわかりませんでした。

遊園地再生事業団「ヒネミの商人」

2014年3月25日 19時開演 座・高円寺1
作・演出:宮沢章夫
出演:中村ゆうじ、宮川賢、片岡礼子、ノゾエ征爾、笠木泉、上村聡、佐々木幸子、牛尾千聖、山村麻由美
宮沢章夫の芝居を見るのは「夏の妹」に続いて2本目だったのですが、どうも私には向いていないようで、面白くありませんでした。シェイクスピアの「ベニスの商人」を下敷きにしているようで、三つの箱を選ぶとかそれらしいエピソードが出てきます。どうも、主役の中村ゆうじがシャーロックのようで、ひたすら腹の中では別のことを考えているような芝居をしていました。本当に中村ゆうじは、ある目的を持って芝居をしているように見せる天才で、彼にかかるとなんでも演出意図に沿った芝居をしているようにあからさまにみえるので、それが気になってしょうがありません。

2014年3月20日木曜日

ゲキバカ「男の60分」

2014年3月19日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:柿ノ木タケヲ
出演:西川康太郎、菊池裕太、鈴木ハルニ、石黒圭一郎、書川勇輝、伊藤亜斗武、伊藤今人
梅棒の伊藤今人が掛け持ちで参加しているということで見にいきました。
コンセプトは、梅棒と全く同じ、くだらないことを熱意と勢いだけでやりきる。笑ってしまうほど同じです。ただし、梅棒がダンス8割の芝居2割なら、ゲキバカは芝居8割のダンス2割という割合の違いはあります。
地点、サンプルとシリアスな芝居の後だったので、余計面白く感じたのかもしれません。
梅棒と同じで、年に1回くらい見るのはよいかもしれません。
小劇場を見る楽しみの一つに、「つぎの伸びしろに期待する」というのがあると思うのですが、梅棒もゲキバカもその楽しみはあまりありません。吉本新喜劇と一緒で、定番の笑いを楽しむのが正しい楽しみ方だと思います。

2014年3月19日水曜日

サンプル「シフト」

2014年3月18日 19時開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:松井周
出演:古屋隆太、奥田洋平、野津あおい、兵藤公美、武谷公雄、黒宮万里、市原佐都子
2007年に初演された作品の再演になるのだそうです。その頃から松井周の関心が、「閉ざされた集団」にあることがわかりました。ただし、松井の関心は。「度座された集団」それ自体にあるのではなく、そうであれば、極端な状況や、あり得そうもない設定をすることが可能になるのだからだと思います。それがだんだんとエスカレートして、最近の悪趣味な設定にまでなってきたようです。
初演は見ていないので、今回どの程度改訂がされているのかわかりませんが、悪趣味とか露悪趣味と呼べるほどのえぐさは見られません。
その悪趣味のバランスが絶妙だったのが「自慢の息子」で、あれがサンプルの最高傑作なのかもしれません。

2014年3月18日火曜日

地点「悪霊」

2014年3月17日 19時30分開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
原作:F. ドストエフスキー
演出・構成:三浦基
出演:阿部聡子、小林洋平、窪田史恵、根本大介、小河原康二、岸本昌也、河野早紀、石田大、永濱ゆう子
とても疲れた1時間半の観劇でした。3年前の幻の公演「河童」以来、地点の東京公演はほとんど見ているはずですが、回を重ねるごとに観劇の疲労度は増し、地点がどこに向かおうとしているのかわからなくなるような気がします。
今回は、1時間半の上演中ほとんどの時間を役者はひたすらぐるぐる舞台を走り、とっくみあい、わけのわからない言葉を叫び、時々ドフトエフスキーの言葉を喋るという状態で、気をつけていないと、誰が誰に話しているかということすらわからなくなるのでした。
誰もが役柄を誇張したしゃべり方をする中で、小河原康二だけが話し方が自然で、最後には彼が喋り出すだけで、ほっとする有様でした。

小池博史ブリッジプロジェクト「銀河鉄道 -Milky Way Train-」

2014年3月13日 19時30分開演 池袋あうるすぽっと
演出・脚本・振付:小池博史
出演・振付:津村禮次郎、白井さち子、小尻健太、南波冴、松尾望、石原夏美、谷口界
昔から名前だけは知っていたパパ・タラフマラの演出家、小池博史が、今どんなことをやっているのか知りたくて見にいきました。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフにしていますが、ストーリーをなぞるのではなく様々な人が一緒に旅立つようなイメージになっています。オープニングも、私服で客席から表れた出演者が舞台上で衣装に着替え、自己紹介をするところから始まります。その後、列車に乗り込み出発するのですが、それ以降、私には一つも面白いところがありませんでした。
確かに、能楽師、サーカスの芸人、ダンサーなど、様々なバックグラウンドをもつ出演者を違和感なく一つにまとめて動かす振付能力はたいした物だと感じましたが、本筋が退屈というか、見えてこないのは困ったものです。
Twitter上の好評も観劇の動機の一つだったのですが、あてにはならないことが、また証明された形です。

岩松了プロデュース「宅悦とお岩」

2014年3月7日 19時開演 下北沢駅前劇場
作・演出:岩松了
出演:安藤聖、梅宮万紗子、尾上寛之、亀田梨沙、児玉拓郎、小林竜樹、駒木根隆介、清水優、高橋ひろ無、滝沢恵、永岡裕、橋本一郎、藤木修、ジョンミョン、𠮷牟田眞奈
トラッシュマスターズの次の日に見たせいもあって、よい劇作家の条件には「性格の悪さ」が上げられるに違いないと思わせるような芝居でした。昨年秋のハイバイの公演「月光のつつしみ」の本が面白かったので、最近の岩松了はどんな感じなのか知りたくて見にいきました。
四谷怪談の稽古をしている劇団の稽古場を中心に、横暴な演出家、その演出家に言い寄られている女流新進作家、当て馬なのに舞い上がって仕事をやめてしまった作家の幼なじみ、演出家に反発して稽古にこない俳優などの複雑でどこか滑稽な人間関係を、過不足なく描いて面白かったです。
岩松了は、劇中で「岩松は、ぱっと見、人の良さそうなおじさんに見えるが、本当は性格が悪いらしいよ。」と、役者に言わせるほど性格が悪いですが、それくらいひねくれて物事を見ないと行き届いた脚本は書けないのかもしれません。
安藤聖は小劇場に出演しても花のあるよい女優だとは思いますが、いつ見ても何か堅い印象があります。頑固というか頑なに何かを守っているような気がします。それが見えなくなると、もっといいのになあと見るたびに思います。

2014年3月10日月曜日

トラッシュマスターズ「虚像の礎」

2014年3月6日 19時開演 座・高円寺
作・演出:中津留章仁
出演:カゴシマジロー、吹上タツヒロ、星野卓誠、龍座、村上洋康、井上裕朗、坂東工、林田麻里、川崎初夏
まめに小劇場を見て回っていると、定期的にチラシは目にするが、なぜかいつもスケジュールが合わずに見に行けない劇団ができてきます。今回は、そんな劇団の一つ、トラッシュマスターズを見てきました。今まで見ていなかったのはスケジュールの都合が大きいのですが、いつもチラシが暗くて地味な絵で面白そうに見えなかったのも理由の一つです。
物語は、人々の争い、戦争や、人種差別の原因を「人が、自分の心の矛盾に気づかない二している」ところに求め、それを気づかせ、教えていくのは、「心の専門家」である「劇作家」のつとめだと主張する主人公を中心に進んでいきます。実際、彼は自分の周りで怒る様々な争いに、誠実に勇気を持って行動し、説得していきます。実に明快で、新興宗教の教祖のお話を聞いているようでした。でも、私が芝居でみたいのは、そんなお説教ではありません。様々な矛盾の中で葛藤している人間であって、安易な解決策ではないのです。
きっと、この作者はまじめで優しい人間なのだとは思いますが、まじめだからと言って芝居が面白くなるわけではないのです。

2014年3月4日火曜日

ニッポンの河川「大きなものを破壊命令」

2014年3月3日 20時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:福原充則
出演・音響・照明:峯村リエ、佐藤真弓、中林舞、光瀬指絵
役者が芝居をしながら、音響・照明の操作を自ら行う芝居でした。その格好はジャージの上下にレッグウォーマー、スニーカー、膝当てまでつけて、左手には懐かしいウォークマンタイプのカセット、腰のベルトにはスピーカーとアンプとバッテリーをつけているという、芝居の衣装と言うよりは重装備のジョギングマニアのようでした。その左手のウォークマンのカセットを入れ替え入れ替え、 BGMを流し、照明の切替は舞台の各所に設けられたフットスイッチを踏むことで ON/OFFすることで操作するのです。物語は、首締めジャックをやっつけようとする熊谷の珍走団ビートルズと、鳥と戦うジャングルの脱走兵、お見合いを進められる小津安二郎の映画のような4人姉妹の話が、テンポよく切り替わって語られていきます。3年前の東日本大震災以降を受けての芝居らしいのですが、私にはその辺のことは少しも感じられませんでした。ただただテンポよく、切れのよい動きの中で話がどんどん飛んでゆく、その気持ちよさに笑っていただけでした。それにしても、4人の役者は大変だっただろうと思います。台詞、動き、カセットの入れ替え、フットスイッチを踏むタイミング。いくら練習しても、うまくいかないような気がします。それをほぼパーフェクトにやりきっただけでも感動ものです。

2014年2月27日木曜日

M & O playsプロデュース「サニサイドアップ」

2014年2月24日 19時開演 下北沢本多劇場
作・演出:ノゾエ征爾
出演:荒川良々、赤堀雅秋、小野寺修二、町田水城、竹口龍茶、富川一人、山口航太、ノゾエ征爾
私が勝手に「小劇場童貞派」と呼んでいる内の一人、はえぎわのノゾエ征爾が外部で作・演出するというので見にいきました。(ちなみに残りの「童貞派」は、ままごとの柴幸男とか、ロロの三浦直之です。特徴は、恥ずかしいほどのナイーブさ。基本的に人生を肯定的にとらえていて、それを素直に表現するところ。)
荒川良々演じる嵐山鯛の人生を、エピソードに切り分けて時系列ばらばらに演じていく。それに関わる人々の人生も同じように切り分けて演じられていく。どのエピソードも、同じような重さで演じられ、様々な人生が肯定されていく。それに色々なおもしろ小ネタや、小道具が飽きずに出てくる。プロデュース公演と言うことで、制作的によゆうがあるのか、やってみたかったネタをできるかぎり詰め込んだような印象がある。
はえぎわでのノゾエ征爾に比べると、スケベすぎるだろうとすら思えてしまう。

2014年2月23日日曜日

tamagoPLIN「さいあいシェイクスピア・レシピ」

2014年2月21日 20時開演 三軒茶屋シアタートラム
作・演出・振付:スズキ拓朗
出演:柴田千絵里、石井友樹、清水ゆり、一平杏子、本山三火、中井沙織、鳥越勇作、川越美樹、平井千尋、浅井裕子、ジョディ、長嶺安奈、スズキ拓朗
コンドルズのダンサー スズキ拓朗とパフォーマンス集団・たまごが合体したのがtamagoPLINだそうですが、もちろん全く知りませんでした。名前の面白さに惹かれて見にいきましたが、これが大当たり。文句なく面白い1時間30分でした。
アスファルトを割って生えてくるど根性野菜たちに、母親を事故で目の前でなくした女子中学生がシェイクスピアを教えるというストーリーなのですが、なにしろありとあらゆる癖球をコントロールを気にせず投げ続ける勢いにあっという間に飲み込まれて、笑って泣いての1時間半でした。けして、一人一人の演技やダンスはうまくないのですが、それがうまく組み合わさって、シルクドソレイユの見事さではなく、サーカスの楽しさに魅了されました。

MONO「のぞき穴、哀愁」

2014年2月20日 19時30分開演 下北沢駅前劇場
作・演出:土田英生
出演:水沼健、奥村泰彦、尾方宣久、金替康博、土田英生、森谷ふみ、古籐望、高橋明日香、松永渚
初めて見る劇団の芝居を面白いと思い、公演があるたびに見にいくようになる。すると、だんだんその劇団の特徴や持ち味がわかってきて、それに慣れてくる。次に来るのは、面白いのだけれども、飽きてくくるのだ。MONOも3回目となり、そろそろ飽きてきたようだ。20年以上の歴史がある劇団なので、いきなり新しいことを始める訳もないこともよくわかるのだが、新しい芝居が見たいという最近の私の気分からすると、物足りないことは否めない。本もよく書けているし、演出もあざといくらいうまい。でも、いつものMONOとかわりない。というところが実に残念だ。
いや、実は大きな変化はあった。過去2回の公演は、男性だけのキャスティングだったのが、今回は女優が3人も入っていた。でもそれが劇団にとって大きな変化であったようには全く見えなかった。

2014年2月18日火曜日

玉造小劇店「洋服解体新書」

2014年2月8日 14時開演 座・高円寺
作:演出:わかぎゑふ
出演:うえだひろし、谷川未佳、若松武史、曾我廻家八十吉、佐藤誓、桂圭一、浅野雅博、西牟田恵、伊東孝明、小椋あずき、山藤貴子、浅野彰一、江戸川卍丸、荒木健太朗、谷畑聡、山内庸平、長橋遼也
何十年かぶりの東京の大雪の日に見にいきました。わかぎゑふの作・演出を見るのは初めてでしたが、わりと構成のすっきりした見やすい芝居でした。特に印象に残ったのが舞台転換で、前のシーンと後のシーンの登場人物が転換をするのですが、その動きがうまく整理されていてスムーズに次のシーン移行できていました。
また、関西人のせいか天皇制に対する親近感が東京より強い感じがしました。

2014年2月9日日曜日

秘密結社ブランコ「独占!女の70分」

2014年2月7日 20時開演 ムーブ町屋ハイビジョンルーム
1.「町屋の火事」
作:ふじきみつ彦 演出:鎌田順也
出演:中島真央、水野伽奈子、鶴まき、はしいくみ
2.「たまたま」
作:新井友香 演出:飯田こうこ
出演:はしいくみ、宇野なおみ、徳元直子
3.「センチメンタル嘔吐物」
作:福原充則 演出:飯田こうこ
出演:土田由有未、深澤千有紀、野々山椿、田村朋世
4.「こし…」
作・演出:鎌田順也
出演:女優たち
またまた残念というか、はっきり言ってひどい芝居を見てしまいました。芝居を集中的に見るようになって3年目、もっともひどい芝居だったかもしれません。
まず第一に、演技がひどすぎます。客が40人くらいしか入らない視聴覚教室のようなところで、新劇をひどくしたような芝居をされても観客としてはどこを見てよいのかわからず、困ってしまします。まるで普通の劇場のような目線で芝居をされるとこの人たちには観客が見えていないのではないかと思えてしまいます。
次に、構成と演出がひどすぎます。4本の短編を4人の作家が書いて二人の演出家が演出するという形ですが、4本目の「こし…」を書き演出した鎌田順也が全体をまとめてオチをつけるという役目を負わされていたようですが、自分の好きなゾンビ話に持ち込んで好きなようにやっているだけでした。前の3本にゾンビの伏線があるわけもなく、無理矢理全てを台詞で説明するという前代未聞の台本になっていました。あまりにひどいできに、悲しみや怒りを通り越して、笑うしかないような状況でした。
脚本的には、3本目の「センチメンタル嘔吐物」がおもしろく、うまく展開していけば30分物のテレビドラマが作れそうなネタでしたが、それもゾンビの出現で台無しです。
この惨劇の主な犯人と思われる鎌田順也の関わった芝居を今までに2本(ナカゴー「黛さん、現る」と、野鳩+ナカゴー「ひとつになれた」)
見ましたが、どちらも残念なできでした。私にとっては鬼門なのかもしれません。

モモンガ・コンプレックス「ご多分にもれず、ふつう 再」

2014年2月6日 19時30分開演 横浜STスポット
構成・演出・振付:白神ももこ
出演:北川結、臼井梨恵、夕田智恵
舞台美術の人々:内海正考、榎本純子、小野正彦、新宅一平、鈴木燦、中本章太、村上聡一
ダンスがよくわからないのに、見にいくのはなぜでしょう。「日常的な仕草を美しい動きに昇華する」といわれているらしいモモンガ・コンプレックスを見ましたが、やはりよくわかりません。多少、台詞があり、それを英語の字幕やアナウンスでも提示するやり方から、日本だけでなく、世界を意識していることはわかります。
メインの3人以外に7人のダンサーが出演しているのですが、その陰に隠れて板付きしていたりしていたので、彼らを「舞台美術の人々」と呼んでいるのもわかります。
しかし、演出、振付家が何を言いたいのか、ダンサーがどのような感情で踊っているのかを言葉にすることができません。
ただ、その時間が退屈であったか、そうでなかったという感想は残ります。その点で言えば、退屈なところもありましたが面白かった1時間だったと言えると思います。その面白さを言葉にできないところがもどかしいところです。

2014年2月6日木曜日

ロリータ男爵「しのび足のカリン」

2014年2月5日 19時30分開演 下北沢 OFF-OFFシアター
作・演出:田辺茂範
出演:橘花梨、大沢ラーク、はまい海、ボッチン、足立雲平、たにぐちいくこ、高橋未希、清水くん、矢頭睦、北村泉、丹野晶子、横塚真之介
今年に入ってから芝居の当たり外れが極端な気がします。傑作か、見るんじゃなかったと始まったとたんに後悔するほどの駄作か、どちらかしかなかったような気分です。
このロリータ男爵は、残念ながら外れの方でした。何しろ演技がひどい、今時の高校演劇の方がはるかにうまいだろうと思えるほどのひどさでした。台詞は棒読み、動きはぎこちない。まともに見る気になれませんでした。そして、脚本もひどい。「ガラスの仮面」と「オペラ座の怪人」と映画「ゴースト」を適当に混ぜ合わせて、最後に芝居への愛を叫ばれても、それはないだろうとしか思えません。
ロリータ男爵という面白そうな劇団名につられて見にいきましたが、完敗でした。

2014年2月3日月曜日

梅棒「ウチの親父が最強」

2014年2月1日 17時開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:伊藤今人
振付・構成:梅棒
Team A 出演:梅澤裕介、塩谷拓矢、楢木和也、大村紘望、IG、パイレーツオブマチョビアン、菊池裕太、小坂奈央美、野田裕貴、Mayuka、角田大樹、津田勇輝、美優
一昨年のKAATでの「ダンスレジェンド・ファイナル」でダントツに面白かった梅棒の公演があると知り、飛び込みで見てきました。
梅棒のダンスの特徴はストーリーがあり、それをほとんど全てダンスで表現していくところです。途中一カ所台詞がありますが、99%段だけと言っていいでしょう。当然、当て振りが多くなるわけですが、それをうまく振付の中に解消して飽きさせません。1時間半のダンスを超えせい、演出していく力はたいしたものです。既存の歌詞付きの曲を使うため、曲とダンスの距離感が微妙なところもありましたが、おおむね選曲のセンスもよく、あっという間の1時間半でした。
もちろん、ダンス特有の私の苦手なストイックさはあるのですが、それが前面に出てこないので、さほど気になりません。
このストーリーダンスを初めて見ましたが、芸として完成している感じがしてこれ以上発展していく感じはあまりしません。しかし、1年に一回ぐらいは見たいかなという感じです。

FUKAI PRODUCE 羽衣「女装、男装、冬支度」

2014年2月1日 14時30分開演 座・高円寺1
作・演出・音楽:糸井幸之介
出演:伊藤昌子、大石将弘、澤田慎司、墨井鯨子、浅川千絵、高橋義和、深井順子、鈴木利典、ゴールド☆ユスリッチ、島田桃子、熊川ふみ、日高啓介、鯉和鮎美、代田正彦
FUKAI PRODUCE 羽衣のテーマはいつも同じで「愛」についてなのですが、大きく分けて二つのパターンがあるようです。全体のストーリーがあるものと、オムニバスのような形の二つです。
今回は、「サロメ VS ヨナカーン」と同じようなオムニバス形式でしたが、ちょっと不思議な体験をしました。羽衣は、いつも踊ったり歌ったりの本人達曰く、「妙ージカル」な形なのですが、そのレベルはけして高くありません。こんかいは、それに輪をかけてレベルが低い。歌は音痴すれすれ、客席から失笑が漏れるくらい、ダンスは一切切れがない学芸会といってもいいくらいでした。なのに芝居が進んでいくうちに、ひしひしとこれは傑作なのではないかという気がしてくるのです。
芝居の肝は、様々なカップルの愛の形が、前半と後半で男女が衣装を取り替えて、繰り返すことです。それにより、同じ出来事が重層的でありながら、実は同じであるということが描かれていきます。
歌が下手でも踊りがひどくても、ついでに照明もけしてよいできではありませんでしたが、それでも感動できる舞台ができるというのは素晴らしいことだと思います。

アトリエ・ダンカンプロデュース「有頂天家族」

2014年1月21日 19時開演 下北沢本多劇場
原作:森見登実彦
脚本・演出:松村武
出演:武田航平、渡辺大輔、新垣里沙、佐藤美貴、小手伸也、小林至、成清政紀、奥田努、藤原薫、樹里咲穂、久保酎吉
選択の失敗というか、最近の自分の芝居の指向に反した傾向の芝居を選んでしまった自分が悪いとしか言いようがないのですが、耐えきれず休憩で劇場をあとにしてしまいました。確かに風邪気味で体調も悪かったのですが、地の文を様々な役者が喋って、話を展開していく手法や、狸の話なので主人公が化けた女子高生だったり、男だったり、ぬいぐるみだったり、めまぐるしく変わっていく演出もただただうるさいだけで、一つも面白く感じられませんでした。新しい振りをして実は古い演出が気にいらなっかたのだと思います。

2014年1月18日土曜日

東京タンバリン「しなやかに踊りましょう」

2014年1月17日 19時30分開演 三軒茶屋シアタートラム
作・演出:高井浩子
出演:内田淳子、広中麻紀、ザンヨウコ、黒岩三佳、宮下今日子、高山玲子
東京タンバリンというほとんど知らない劇団を見にいく気になったのは、二つの理由があります。一つは、昨年4月頃、「吉祥寺散歩」という吉祥寺の街を歩きながら演劇を見るという企画のチラシを見た覚えがあったことです。参加しようと思うほど、若くはありませんが、面白い試みだとは思いました。もう一つは、こちらの方が大きな理由なのですが、シアタートラムで行われたことです。私の見たことがない、情報もほとんどない劇団の場合、劇場によって当たり外れの確率が大きく異なるような気がします。外れる確率が少ないのが、吉祥寺シアター、シアタートラムで、座高円寺は当たり外れが激しいような気がします。三鷹市民芸術文化センターはその中間でしょうか。
そんな外れの少ないシアタートラムでの今回の観劇は、中当たりといったところでしょうか。町のゴミ集積場を中心に、なにげない日常生活を送る人々のところに行方不明の姉を探しに来た一人の女性の訪問から、さまざまな感情が表れていきます。それはけしておどろおどろしくなく静かに見えてくるだけなのですが、現代人の複雑さを十分示しているといえます。少し気になったのは、登場人物の性格の誇張がオーバー気味で鼻につくところと、登場人物による転換時のダンスというか、動きが照明の点滅の中で行われることです。転換をダンスにすること自体は問題ないのですが、それを照明点滅の中でやられると、ごまかそうとしているのか、恥ずかしいのかと、かえって気になります。

2014年1月14日火曜日

泥棒対策ライト「うん」

2014年1月9日 19時開演 渋谷サラヴァ東京
振付・演出:下司尚美
出演:佐々木富貴子、野口卓磨、藤田善宏、村田正樹、下司尚美
新年最初の観劇は、なぜか苦手なダンス公演になってしまいました。昨年初めて見た時に、私の苦手なダンス特有のストイックさが感じられなくて、面白く感じた泥棒対策ライトの公演があることを、たまたまTwitterで知って見にいきました。
今回は前回に比べて演劇的なストーリーが希薄な分ダンスが前面に出てきていて、そうなるとやはりダンスのストイックさの目立ってきて、気になりました。
私が勝手に思っていたように、ストイックなところがないダンスというわけではなく、ストーリーがストイックさを隠していたようです。
2回見たところ、スケールは違いますが「女性版コンドルズ」といったところでしょうか?
3回目のを見るかどうかは微妙なところです。

2014年1月2日木曜日

2013年第四四半期観劇のまとめと年間の総評

2013年の10月から12月に見た芝居は、以下の通りでした。

10月8日 シンクロ少女「ファニー・ガール」
10月9日 鹿殺し「無休電車」
10月10日 表現・さわやか「ストレンジストーリーズ」
10月19日 快快「6畳間ソーキュート社会」
10月23日 文学座アトリエの会「未来を忘れる」
10月29日 鳥公園「甘露」
11月8日 Carne 「売春捜査官」
11月15日 イキウメ「片鱗」
11月23日 サンプル「永い遠足」
11月27日 トリコロールケーキ「ギョーザ丸、出港す」
11月28日 子供鉅人「ハローヘル!!!」
11月29日 マームとジプシー「モモノパノラマ」
11月30日 リミニ・プロトコル「100%トーキョー」
12月4日 城山羊の会「身の引きしまる思い」
12月7日 ブラジル「性病はなによりの証拠」
12月7日 小松台東「デンギョー」
12月10日 官能教育「三浦直之(ロロ)×堀辰雄「鼠」
12月12日 モダンスイマーズ「死ンデ、イル。」
12月13日 北村想作「グッドバイ」
12月27日 ポップンマッシュルームチキン野郎「銀色の蛸は五番目の手で握手する」
12月29日 DULL-COLORED POP「アクアリウム」

計 21本
第三四半期に続き、忙しい中でよく見にいったと思います。
その中でベスト1は、リミニ・プロトコルの「100%トーキョー」です。ドキュメンタリー演劇と呼ばれていますが、新しい芝居の形がまだあることを教えてくれた作品でした。この形がどのような発展をみせるかは未知数ですが、新しい芝居の可能性を指し示してくれただけでも、私にとって重要な作品でした。
ベスト3の残り2本は、表現・さわやかの「ストレンジストーリーズ」とマームとジプシー「モモノパノラマ」です。表現・さわやかのばかばかしさは、単純に芝居を見ることの面白さを再確認させてくれましたし、マームとジプシーは藤田貴大の才能と感性が益々進化していることを証明してくれました。
一方、シンクロ少女、快快、鳥公園の3本では、若い女性の脚本・演出家の感性が理解できていないのではないかという疑問が生じました。自分に取って「おもしろくない」といいきれるならそれでよいのですが、今ひとつ言い切れない何かがあるような気がします。
年間を通しての観劇数は、93本でした。2年間100本弱の芝居を見てきて、自分の芝居の見方が、決まってきたように思います。
1)いわゆるメジャーな芝居はあまり興味がない。チケット1万円とか高すぎる。
2)チケット代は五千円前後まで。それなら、つまらない芝居も我慢できる。
3)新しい芝居を探すために、芝居を見る。
2014年はそんなところに注意して芝居を見ていきたいと思います。
又、今年は3年ぶりにニューヨークに行ってブロードウェイミュージカルを見たいと思っています。今の計画では、5月に3週間の予定で考えています。何とか実現したいと思います。


DULL-COLORED POP「アクアリウム」

2013年12月29日 15時開演 シアター風姿花伝
作・演出:谷賢一
出演:中林舞、桃花亜希、堀奈津実、渡邉亮、東谷英人、中間統彦、中村梨那、若林えり、大原研二、一色洋平、広田淳一
谷賢一作・演出の芝居を見るのは3回目になるのですが、毎回最初に感じるのは「僕あたまがいいんです。」臭というか、ペダンチックなところです。発想も脚本力も演出力もあるのですが、「頭いい風」に見えてしまうところが若さでしょうか。
今回もシェアハウスとアクアリウムの相似性を生かしつつ、若者の夢と現実を描いていくのはうまくいっているのですが、その相似性を懇切丁寧に台詞で説明するところや、つか芝居のパロディのような刑事コンビをアクセントに、平田オリザ風静かな芝居を展開したりという才気走った演出が嫌みにさえ感じます。才能はあると思うのですが、それが嫌みに見えるのが残念です。それがなくなれば面白い才能だと思うので、今後も注目していきたいと思っています。

2013年12月30日月曜日

ポップンマッシュルームチキン野郎「銀色の蛸は五番目の手で握手する」

2013年12月27日 19時30分開演 新宿シアターサンモール
作・演出:吹原幸太
出演:加藤慎吾、小岩崎小恵、サイショモンドダスト★、高橋ゆき、野口オリジナル、渡辺裕太、杉岡あきこ、井上ほたてひも、宮原将護、NPO法人、吹原幸太、CR岡本物語、今井孝裕、山口航太、青山雅士、増田赤カブト、横尾下下、加藤チャック、村上亜利沙、仁田原早苗、小林ピヨ美、田坂啓太、辰巳晴彦、内野聡夢
2回目の観劇でした。1回目の観劇記録を読み返したら、「2度と見ない」と書いてありました。それにもかかわらず、見にいったのはチラシに書いてあった「金のコメディフェスティバルで優勝した」という言葉のせいでした。我ながら権威に弱いと思いますが、いつ面白い芝居をするかわからない若い劇団の場合には、プラス要素の評価は積極的に受け入れていかないて見にいかないと、面白い芝居を見逃す恐れが多分にあります。
そう思って2回目を見にいきましたが、結果はやはり残念なものでした。
当日パンフレットを読むと作・演出の吹原幸太はアニメやテレビの脚本、それに小説も書いているようですが、そのせいか、荒唐無稽な設定をうまくまとめる構成力はあるのですが、肝心なテーマ、「自己犠牲」を新しく魅力的に見せるほどの筆力はありませんでした。最近、新しい感性の芝居が見たいという欲求が増している私にとって、見たくない種類の芝居でしかありませんでした。
新しい感性が感じられるか、使い古されたテーマなら、それを面白く見せてくれるだけの演出力、演技力がある芝居を見たいのです。
結局、2回目の観劇後の感想は、「やはり、だめだ。もう見る必要はない。」です。

2013年12月15日日曜日

北村想作「グッドバイ」

2013年12月13日 19時開演 三軒茶屋シアタートラム
作:北村想
演出:寺十 吾
出演:段田安則、蒼井優、柄本佑、半海一亮、山崎ハコ、高橋克実
その昔、傑作戯曲「寿歌」を書いた北村想の新作と言うことで、見にいきました。沙汰ートラムとはいえ、一月公演のなかばだというのに客席は満員なのは蒼井優のおかげでしょうか。
本も役者も特に目立って悪いところない休憩なしの2時間でした。こういう可もなく不可もない芝居を見ると、私が見たい芝居は、「新しい芝居」なんだと気づかされます。「わけはわからないが面白い」、「無我夢中で、我を忘れる」そんな観劇体験をしたいのだと、そんな芝居を求めて、劇場に通っているのです。だからTwitterの「面白い」につい、騙されてしまうのです。そんな反省をさせてくれる芝居でした。

2013年12月13日金曜日

モダンスイマーズ「死ンデ、イル。」

2013年12月12日 19時30分開演 下北沢ザスズナリ
作・演出:蓬莱竜太
出演:古山憲太郎、津村知与支、小椋毅、西條義将、坂田麻衣、松本まりか、西井幸人、宮崎敏行、高田聖子
前作「楽園」からずいぶん間があきましたが、女優を1名、劇団に加えての公演でした。派手なところはないですが、手堅い構成のしっかりした脚本がこの劇団の強みです。
演出面では、主役の新加入女優の台詞をほとんどプロジェクターから投影することで、彼女の負担を減らし、演技の自由さを確保しているように見えました。
その甲斐あってストーリーの流れがスムーズになり、主人公のイメージも十分広がっていました。
いずれにせよこの劇団の肝は、作・演出の蓬莱竜太であることは代わりありません。

2013年12月12日木曜日

官能教育「三浦直之(ロロ)×堀辰雄「鼠」

2013年12月10日 19時30分開演 六本木音楽実験室・新世界
脚本・演出・構成:三浦直之
出演:望月綾乃、三浦直之
その昔自由劇場だった場所が知らないうちに音楽実験室・新世界としてオープンしていました。内装は最小限の改装という感じで、壁、天井を白く塗り、ステージとオケピット、バーカウンターを作っただけでした。全体に天井が高くなっていたので、少し床面を掘り下げたのかもしれません。
そんな新世界でロロの三浦直之による」朗読劇を見てきました。演劇評論家の徳永京子による「官能教育」というシリーズの一環で、演劇人に自分がエロい思う小説を朗読してもらうというモノでした。知らなかったのですが、過去に私のお気に入りのFUKAI Produceの糸井幸介のやっていたようです。
朗読自体は1時間程度で、出演者自らスタンドライトをつけたり、マイクのセットをしたりという手作り感満載のものでしたが、内容はうまく整理できておらずわけのわからないものでした。この公演で一番面白かったのは、produce lab 89.comにのせた三浦直之の「童貞宣言」ともいうべき文章でした。わけがわからないなりに三浦直之が変わろうとしていることだけは、はっきりわかりました。

小松台東「デンギョー」

2013年12月7日 19時30分開演 高田馬場ラビネスト
作・演出:松本哲也
出演:小林俊祐、永山智啓、中田麦平、尾倉ケント、小笠原健吉、塙育大、竹岡真悟、石澤美和、大竹沙絵子、佐藤達、松本哲也、緑川陽介
劇団名は、「こまつだいとう」ではなく、「こまつだいひがし」と読むそうです。
「デンギョー」というタイトルだけで見にいきました。デンギョーとは、電気工事業者の略です。社長が入院している傾きかけた電気工事業者の職人詰め所を舞台に、義理と人情と過酷な競争がリアルに描かれていきます。笑ったのは、オープニングで職人全員が一斉に缶コーヒーを飲むところでした。職人さんは本当に缶コーヒーが好きでよく飲みます。
昔、私が通っていた建築現場では、缶コーヒーのプルリングを集めて、施設に車いすを2台寄付できたほどでした。
電気工事の内情がよくかけているし、職人達の人物像もリアリティにあふれているので、作者は電気工事業で働いていたことがあると思います。
しかし、私にとっては今更こんな芝居を見せられても意味がありませんでした。単なる「あるある」ものを見ているようでした。

ブラジル「性病はなによりの証拠」

2013年12月7日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:ブラジリィー・アン・山田
出演:辰巳智秋、西山聡、諌山幸治、印宮伸二、堀川炎、金沢涼恵、佐々木千恵、小川夏鈴
2012年の吉川威史 PRESENTS「素晴らしい1日」の脚本を書いたブラジリィー・アン・山田自身の劇団での公演を見ました。「素晴らしい1日」の時に脚本が面白いと思って、ずっと、本人の演出も見たかったのです。
結論的にいえば、「本は達者だが、演出はいまいち。」といったところでしょうか。
特に、最後に二人だけが生き残ってからの幻覚シーンはいただけませんでした。うまい
オチが考えつかず、開き直って松田聖子というのがみえみえで残念です。

城山羊の会「身の引きしまる思い」

2013年12月4日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:山内ケンジ
出演:岸井ゆきの、石橋けい、ふじきみつ彦、成瀬正太郎、原田麻由、岩谷健司、島田桃衣、KONTA
最初に城山羊の会を見た時にこれは不条理劇だと書きましたが、それは私の勘違いだったようです。2回、3回と見ていくうちに、山内ケンジが描きたいのは人間の意識がふとずれる、いわゆる「魔が差す」瞬間なのではないのかと思うようになりました。
亡くなった夫を愛していたはずなのに、初めて会った怪しげな男に心を奪われる。そして、結婚までしてしまう。周りからも認めらる常識的な生き方から、突然スイッチが切り替わったように、別の世界にはいってしまう。そんな瞬間を舞台上に表すことに興味があるように見えます。
そんな役目を負わされて舞台に登っている役者たちは、皆少しだけ自信なさげに見えます。ただ、芝居をするだけでは許されないことが、プレッシャーになっているのでしょうか。その不安が周りを探るような芝居として表れ、いわゆる大人の会話的な雰囲気を醸し出して、城山羊の会の芝居らしさを作っているような気がします。
今回の芝居の最大のポイントは、三鷹市芸術文化センター職員の森元さんでした。彼は、前説として現れ、一般的な諸注意を述べた後、実は、城山羊の会の三鷹市芸術文化センターでの最初の公演の時、自分はすぐ殺される夫の役で出演したと話出します。そこに銃声の効果音。森元さんはまたもすぐ殺される役で出演していたの
でした。その上、ラストでは亡霊となって現れ、そのまま終演の挨拶までしました。
最近見た芝居の導入部としては、最も面白いものでした。

2013年12月4日水曜日

リミニ・プロトコル「100%トーキョー」

2013年11月30日 15時開演 池袋東京芸術劇場プレイハウス
作・構成:リミニ・プロトコル(ヘルガルド・ハウグ、シュテファン・ケーギ、ダニエル・ヴェッツェル)
演出:ダニエル・ヴェッツェル
出演:統計に基づき選出された100名の人々
東京都の統計に基づいたいろいろな年齢、性別、国籍、住所の人が100名集められ、「イエス、ノー」で答えられる簡単な質問に答えていくことで、今のトーキョーを浮かび上がらせようとする試み。
世界各国で上演され、様々な反響を巻き起こしてきたそうですが、ここトーキョーではいかに。
結論を言えば、新鮮でとても面白かったです。舞台上で繰り広げられる普通の人々(役者ではない)の生き生きとした様に、涙さえ流しました。
そして、上演中ずっと、日本人と欧米の人の差について考えていました。外国のパフォーマンスアートを(私の場合は、ほとんどアメリカのものですが)見ると、「くどい」、「しつこい」、「このシーンはわかったから早く次のシーンにいってほしい」と思うことがよくあります。なぜあんなにしつこいのか長年疑問だったのですが、この芝居を見て少し理由がわかったような気がします。
日本人は、「一を聞いて十を知る」ことを喜ぶ傾向があると思います。芝居でもそれはよくあって、短い印象的なシーンをつなげて言いたいことを表現しがちだと思います。少し丁寧に追いかけていくと、説明的だと言われたりします。それに比べて、欧米人は、はるかに論理的です。「1+1=2」というような公理から始まって、理屈を組み立て、「だから、結論はこうです」という形が身についているようです。
その過程を日本人の私は、「くどい」、「しつこい」と感じてしまうのでしょう。
今回の公演のポイントは二つです。一つは、統計に基づいて選出されたという客観性(統計学的には、900万人に対して100人では、サンプル数が少なすぎて正しい統計とはいえないと思いますが、これは学問ではなくて演劇なので問題にならないと思います)、もうひとつは選出された人が次の人を紹介していくという関係性。これにより、見ている人は100人の人を一つの集団として見ることがたやすくなります。出演者同士にも連帯感が生まれているようでした。
このように、客観性とシンパシーを与えられた人々に、様々な質問を与え、答えさせる。
あたかも
単純な論理を繋いでゆき、その結果、単純な足し算の結果をはるかに上回る感動を作り上げる。
極めて実験的な作品と言われつつも、実は欧米的な演劇の作り方を忠実に行っていった結果の作品だと思います。


2013年11月30日土曜日

マームとジプシー「モモノパノラマ」

2013年11月29日 19時30分開演 横浜芸術劇場大スタジオ
作・演出:藤田貴大
出演:石井亮介、伊東茄那、荻原綾、尾野島慎太朗、川崎ゆり子、成田亜佑美、中島広隆、波佐谷聡、召田実子、吉田聡子
この劇団独特の語り口も回を重ねていくうちに気にならなくなって、内容がすんなり入ってくるようになりました。又、今回は四方客席のため、同じシーンを視点を変えて繰り返す手法も四方の客へのサービスともなって、有効性が上がっていました。
今回のテーマは「生きる」でした。猫のモモの生涯が周りの人間の生死と平行して語られていきます。けんかしたり、恋愛したり、自殺してしまったりする人間の傍らで、「ただ、生きている。」だけの猫。じんわりと、感動が押し寄せてくるいい作品でした。
少し気になったのは、途中で役者のうちの何人かが感情オーバーになって、涙声になってしまうことでした。個人的には、クールな視点をキープした方がこの演出にはふさわしいという感じがします。前はそれができていたのに、今回できなっかたのはなぜでしょう。演出の考え方に変化があったのか?役者の質の問題でしょうか?
少し、
気になります。

2013年11月29日金曜日

子供鉅人「ハローヘル!!!」

2013年11月28日 19時30分開演 池袋シアターグリーンビッグツリーシアター
作・演出:益山貴司
出演:影山徹、キキ花香、億なつき、益山寛司、小中太、岡野一平、小嶋海平、クールキャッツ高杉、山西竜矢、三ツ井秋、地道元春、山本大樹、小林欣也、益山U☆G、松原進典、ミネユキ、永沼伊久也、花本ゆか、東ゆうこ、藤澤賢明、PIKA☆、呉山夕子、BAB、グレコワ・タテュー、デグルチーニ、益山貴司
前の日に見たトリコロールケーキがあまりにひどかったので、それと無意識のうちに比べてしまうせいか面白く見られました。
初めて見たときは、「芝居が派下手だが、熱意と勢いはある。ただ、その方向がばらばらでうるさいだけだ。」というような印象でしたが、今回は勢いの方向性がそろってきて見やすくなっていました。
前回の記録を読み返してみたら、「まったく、受け付けない。」とまで書いてありました。今回、そんな拒否反応が出なかったのは、脚本、演出が整理されて見やすくなっていたからだと思います。
役者的には、大鬼役のでかい外人のバリトンサックス吹きとサタン役のわけのわからない人(多分、歌手)が、役者には出せない存在感で面白かったです。

2013年11月28日木曜日

トリコロールケーキ「ギョーザ丸、出港す」

2013年11月27日 20時開演 新宿眼科画廊・スペース地下
企画・原案:鳥原弓里江
脚本・演出:今田健太郎
出演:鳥原弓里江、古田彩乃、今田健太郎、藤野帆奈美、河村美沙、川口雅子、長谷川一樹、南綾希子、モリサキミキ
久しぶりに全く面白くない芝居を見てしまいました
。このところ、若手女性作・演出家の芝居で「理解できない」作品が何本か続いていましたが、それらは「何かありそうだが、それがなんなのか私には理解できない=言葉にできない」ものでした。
しかし、この芝居は違います。まったくなにもありません。演技は超へたくそで、高校演劇にも劣るレベルですし、演技の下手さをカバーする熱意も全く感じられません。ストーリーはシュールではなく、単なるご都合主義しかすぎず、そのご都合主義も苦笑すらできないものでした。役者も可愛い女の子やかっこいい男子が一人もいないので、芝居中目を開けていることすら辛い有様でした。
これだけいいところがないと、かえってあっぱれといえるのかもしれません。
私も大きな声で、「二度と見ない。」ときっぱり言い切ることができます。

2013年11月25日月曜日

サンプル「永い遠足」

2013年11月23日 14時開演」にしすがも創造舎
作・演出:松井周
出演:久保井研、野津あおい、羽場睦子、坂倉奈津子、古屋隆太、奥田洋平、稲継美保、坂口辰平
当日パンフレットによると、オイディプス王を下敷きにした家族の変態の物語とのことです。この変態とは、いわゆる異常者のことではなく、周囲の状況により変わっていく人という意味だと思います。母親との間にできた娘は養子に出され、やがてそれを知らされて当然のようにぐれます。何日も家に帰らず、その間売春したりもします。養父母はそんな娘にどう接してよいかわからず、おかしな指導者に言われるままに性転換したり、犬になったりします。ラストで真実を知った父親は、オイディプスの話のとおり自分の両目をつぶしてしまうのですが、この意味が私にはよくわかりません。目をつぶすと言うのは、世界の否定でしかないと思います。オイディプスは世界の汚れを取り除くためと称して様々な悪行をなし、最後に本当の汚れが母親と姦通した自分であることを知るわけです。その自分を否定するのではなく、世界の方を否定するのはなぜでしょう。一度、ちゃんと原作を読まなければいけません。
電気自動車の荷台に張り出し舞台を乗せて、ぐるぐる回りながら転換していく装置は紙芝居みたいで面白かったです。

2013年11月20日水曜日

イキウメ「片鱗」

2013年11月15日 19時開演 青山円形劇場
作・演出:前川知大
出演:ハマダ信也、安井順平。伊勢佳世、盛隆二、岩本幸子、森下創、大窪人衛、清水葉月、手塚とおる
イキウメにおける前川知大のテーマはこのところ一貫して、「集団に異物が入ってくることにより起こる集団の変化」です。その異物が、宇宙人だったり、モノリスだったり、超能力者だったするのですが、焦点は「集団の変化」にあります。そして今回はホラーと言うことで、ゾンビというか化け物が現れ、人にとりつきやがては死んでしまうということになっています。原因は引っ越してきた少女で、彼女の初潮が始まって以来住んでいる町内にゾンビが現れるようになり、それが原因でその家族は引っ越しを繰り返していたのでした。
道具立ては完全にホラーですが、ホラー的な脅かしの演出があるわけではないので少しも怖くありませんし、集団の変化についても町内がゴーストタウン化してしまうだけなので、印象に残るシーンもありませんでした。名前や人間関係、職業などの設定がしっかりしていることからくる構成力はさすがイキウメという感じですが、結果としては不満がのこる舞台でした。
今回、もっとも印象に残ったのは、装置でした。9尺×9尺の4尺高の二重が四つ、3尺ずつ離れておいてあるだけの装置ですが、二重が各家庭の部屋として使われ、間の3尺の通路が人々の行き交う道として設定されていました。各家がどの二重と決めないでシーン、シーンで役者が3尺幅を飛び越えて展開していくスピード感は快感でした。

2013年11月12日火曜日

Carne 「売春捜査官」

2013年11月8日 19時30分開演 下北沢 OFF - OFF シアター
作:つかこうへい
演出:黒川麻衣
出演:野口かおる、なだぎ武、植木潤、宮下雄也
気になる女優の一人である野口かおるが主役の舞台ということで見にいきました。いつものはちゃめちゃさが主役と言うことで、どうなるのかという興味が一番にあったのですが、とりあえず主役の役目は果たしていたとはいえましょう。
この芝居は、主役の木村伝兵衛が強面やしおらしさやずるがしこいときなどをめまぐるしく変えていくことで緩急をつけ、話を進めていく構造なので、野口もはちゃめちゃよりは、しっかり芝居をして主役のつとめを果たしていました。それはそれで面白かったのですが、私が見たい野口かおるとは違ったようです。はちゃめちゃなまま、危うい綱渡りで話が進んでいく。そのスリルこそが野口かおるだと思うのです。あの芝居なら、もっとうまくやれる役者がきっといることでしょう。そうではなく、野口かおるにしかできない木村伝兵衛が見たかったのに少し残念です。
植木潤は絶妙な距離感を保って、はげでホモの警官を演じていました。それに比べて、なだぎ武は芝居が堅く、一本調子なのが気になりました。なだぎと野口の距離がもっと柔軟であれば、野口の芝居ももっと面白くなったと思います。

2013年11月6日水曜日

鳥公園「甘露」

2013年10月29日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:西尾佳織
出演:浅井浩介、鳥島明、笹野鈴々音、武井翔子、森すみれ、伊藤俊輔、実近順次
忙しくて鳥公園の芝居を見てから感想を書くまでに、かなり間が空いてしまいました。暇があるときには、内容を思い出して括弧とを頭の中でまとめていたつもりでしたが、時とともに、ここ最近見た若手の女性脚本・演出家の作品との比較で考えるようになりました。いわゆる芝居に一番こだわっているのが、シンクロ少女、芝居から距離があるのが、快快、鳥公園はその間にいるような気がします。
その感覚は特に舞台美術によく表れていて、舞台美術家の考えたエッシャーの階段のように見せたかったであろう舞台美術のシンクロ少女は、成功しているとはいえませんが、十分芝居の範疇にあると思われます。6畳間を四方の上から見下ろすという環境を設定することが一番の目的だと思われる舞台美術の快快は、芝居的な感覚よりも現代美術の日常の中に非日常を持ち込んで、そのインパクトを得ることに満足する感覚に非常に近い気がします。鳥公園の舞台美術は、奈落をセットの一部として使うためにわざわざ通常の客席と舞台を逆転させて使い、パイプ組の二階屋を立てて、その奥の客席部分は公演という感じでベンチと街灯を配するというものでした。セットの考え方は芝居的でしたが、出入り口の処理をしないとか客席壁面がそのままであるなど、ディティールの処理に気がゆかないところは、舞台的というより
美術的な感じがしました。

2013年10月28日月曜日

Golater

久しぶりに使い込んでみたいと思わされるiPhoneアプリにであったので、メモ代わりに書き残しておきます。
「Golater」はEvernoteのノートのうち行ってみたいと思うところのタグに、「g:/」を頭につけて住所を書いておくと、アプリ内の地図にピンを立ててくれるソフトです。出かけた先でアプリを開くと、近くの行ってみたいところを教えてくれるわけです。
じつは3年ぶりくらいに来年の5月か6月にニューヨークに行ってみようと考えています。その時にこれがあれば、長年集めてきた細かいニューヨーク情報を簡単に活用できると思ったのです。
いざやってみると簡単にはいきませんでした。まず最初に、タグ欄に「g:/」と入力してからそのあとに住所をペーストしていったのですが、Evernoteが勝手にタグを「g:/」と「住所」に分割してくれます。しかも住所の途中にカンマが入っていると、そこでもタグが分割されてしまいます。調子よくコピーペーストを繰り返して、アプリの地図を見てみるとほとんどピンが立っていません。使えないのかと思って、1週間ほどほっておいたのですが、暇なときにピンが立っているノートと立っていないノートののタグを比べて、やっとタグの分割に気がつきました。
仕方がないので、いちいちステッキーズにペーストして頭に「g:/」を付け足してから、タグ欄にペーストしていきました。また、他のタグが悪さをしているようなので、他のタグはすべて削除してみました。ついでにWebで検索して、明らかに閉店している店は省いていきました。
結果、閉店していた店は、130弱。残った店が400弱になりました。この状態で、アプリの地図を開いてみると、立っているピンの数は、わずか40弱です。しかも、明らかに住所とピンの位置がずれているものもあります。落ち着いて、地図の拡大縮小を繰り返していると、表示されるピンの数が変化していました。マンハッタン全体を表示刺せると、赤いピン1本になり、それをクリックすると、113ノートと表示されます。
どうも、現在表示されている範囲の情報だけを表示する仕様のようです。その113のノートのリストを見ると、タグ欄に削除したはずのタグが住所に合成された形で残っているものが、ピンの位置が正しくないようです。
Evernoteのバグなのか、Golaterのばぐなのか暇を見つけて確認していきたいと思います。
iPhoneのアプリは無料のものも多いので、気になったものはちょくちょく落としてみるのですが、ほとんどすぐに使わなくなります。使う機会がないからです。Golaterはつかえれば、ニューヨークで楽しめるので、なんとか使えるように原因を探っていくつもりです。

2013年10月24日木曜日

文学座アトリエの会「未来を忘れる」

2013年10月23日 14時開演 信濃町文学座アトリエ
作:松井周
演出:上村聡史
出演:大滝寛、加納朋之、南拓哉、南一恵、藤崎あかね、増岡裕子
松井周の書き下ろし戯曲と言うことで、普段は見にいかない文学座の芝居を見にいきました。文学座といってもアトリエ公演なので、普段の路線とは違い、新しめの戯曲を上演することが多いようです。つかこうへいさんが有名になるきっかけもこのアトリエ公演の熱海殺人事件でした。
ストーリーは、近未来の日本、行き詰まった人間はゴキブリの遺伝子を取り込むことができるクスリを開発し、それを注射して生き延びるか、このまま人間として死んでいくか、選択を迫られる、という「地下室」に続いての少しグロテスクな話でした。グロテスクではあるが、生きると何かということに向かい合った作品だと思いました。
テーマとは別に私が気になったのは、文学座の芝居の質についてでした。
演出は映像を多用したり様式的な動きを取り入れたりして、新しい戯曲を新しい演出で見せようとがんばっているようでしたが、それが逆目に出て演技が薄っぺらく見えて仕方がありませんでした。
以前、仕事で俳優座のゲネプロについたことがあったのですが、その時は久しぶりに見る新劇の演技が、余計な動きをしない、発声がよくていってることがよくわかることにびっくりして、少々感動したことがありました。今にして思えば、あれは、普通の市民会館のサイズと距離感と芝居の質が合っていたことが主な原因だったのではないかと思われます。文学座アトリエは劇場と言うよりスズナリくらいの小劇場です。そこで、7〜800人以上の会場での芝居をされても、余計な動きが少ない分薄っぺらく見えてしまうのでないでしょうか。

2013年10月20日日曜日

快快「6畳間ソーキュート社会」

2013年10月19日 19時30分開演 トーキョーワンダーサイト渋谷
作・演出:北川陽子
出演:野上絹代、山崎皓司、加藤和也
最近感じていることなのですが、年のせいか私が男性だからなのか若い女性の脚本家、演出家の作る芝居に理解や、共感できなくなっているようです。シンクロ少女の時にも感じたのですが、テーマを日常的な事柄に落とし込む、その回路がよく見えなくて化けた印象しか残らない感じなのです。もともとたいしたことのない私の感性が、ますます鈍くなっていると言うことなのでしょう。
21世紀になって未来への夢が見にくくなっている現代で、未来を夢見るとはどういうことなのか。iPhoneや、お腹の中の子供に未来の夢を見ざるを得ない、少しせつないお話しでした。
当日パンフレットに出演者、演出家のインタビューをまとめた小冊子がついてきて、それを読むと制作過程、この芝居のテーマなどがよくわかるのですが、あとから読んで芝居がわかるというのはどうなんでしょうか?
抽象画を解説してもらってわかった気になるみたいで、いまひとつ納得できませんでした。

2013年10月15日火曜日

表現・さわやか「ストレンジストーリーズ」

2013年10月10日 19時開演 下北沢駅前劇場
作・演出:池田鉄洋
出演:原史奈、佐藤真弓、村上航、いけだしん、岩本靖輝、伊藤明賢、池田鉄洋、大川宗哲
Good Morning No.5を見たときにも思ったのですが、コメディ指向の強い役者はときに全てを忘れて馬鹿に徹した芝居をやりたくなるようです。この芝居も内容は全くなく、ただただコスプレをして馬鹿なことをやり続けるだけです。そしておもしろい。それだけが肝心なことで、残りはどうでもいい。素晴らしいことです。こんな芝居が2,3ヶ月に一度でも見られればとてこ嬉しいのですが、このグループの次回公演は来年だそうで、なかなかうまくはいきません。
モンティパイソンにも影響を受けていそうなこのグループは、大好きです。

2013年10月9日水曜日

鹿殺し「無休電車」

2013年10月9日 19時開演 青山円形劇場
作:丸尾長一郎
演出:菜月チョビ
出演:丸尾長一郎、福田転球、岡田達也、オレノグラフティ、山岸門人、菜月チョビ、美津乃あわ、橘輝、坂本けこ美、円山チカ、傳田うに、山口加菜、鷺沼恵美子、浅野康之、近藤茶、峰ゆとり、有田杏子、越田岬
菜月チョビの海外研修制度による1年間のカナダ留学前の最終公演でした。これをもって鹿殺しは1年間の充電期間に入るそうです。ストーリーは、見ていないのでよくわかりませんが、「電車は血で走っている」の続編のような形で、大阪から出てきて路上パフォーマンスを繰り広げる劇団の話です。ほとんど自分たちのことが元になっていると思われます。
私にとっての鹿殺しの魅力は、今時の若手劇団にしては珍しく上昇志向が強く、それを隠さないところでした。それが着ぐるみショーや、大げさな作り物、むちゃくちゃな殺陣になって現れ、しかも実力が伴わないのでうまくいかない。その意志と実践のギャップが面白かったのです。しかし、この2,3作品では経験を積んだせいか、そこそこうまくいくようになってしまいました。それに比例して、鹿殺しの魅力は薄れていきました。まるで、ひどいブスだけど声だけはチャーミングだった女の子が、整形で顔は美人になったが声の質は普通になってしまったかのようです。しかも、美人としてみるとどう見ても中の下、きれいな人は他にいっぱいいる状況です。
今回の芝居にも、歌舞伎風の派手な衣装で歌い、踊り、殺陣をするシーンがありますが、それならもっとイケメンで歌も踊りもうまい何とかボーイズとかがそこら辺にいそうです。
1年間の充電期間を経て、新しい鹿殺しの魅力を持って帰ってきてほしいものです。

シンクロ少女「ファニー・ガール」

2013年10月8日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:名嘉友美
出演:泉政宏、横手慎太郎、中田麦平、名嘉友美、浅野千鶴、満間昴平、坊薗初菜、墨井鯨子、用松亮、あやか、原西忠佑、太田彩佳、赤澤涼太、吉岡そんれい
全体に柔らかい印象の芝居でした。それはよいのですが、装置や照明の弱さ、演出の詰めの甘さが足をひっぱている感じが残念でした。
装置や照明がだめなのは小劇場ではよくあることなのでたいした問題ではないと思いますが、演出の甘さは結構問題です。
会話のつながりがうまく作れなくて、「なぜだかわからないが私の経験と勘によれば、ここはあの二人を追いかけていくべきだ。」と突然役者に言わせたり、(さすがに客席から失笑が漏れていました)ラストでこれも突然「Somebody to love me」と役者全員で歌い踊ったりするのは、あんまりだと思います。しかも、ワイヤレスマイクをつけているわけでもないので、ダンスの体の向きによっては歌詞が聞き取れず、それでなくてもわかりにくい英語がほとんど理解できませんでした。
このシーンが始まったときの第一印象は、「お前はそこまでして救われたいのか?」という思いでした。
「人生にはいろいろなことがあって、それにはそれぞれ理由がある。それを考えていくと、とても大変で、身動きができないこともある。それでも、愛することは素晴らしい。」というのがテーマで、劇中でも語られ、その具体例が芝居の中身という形はわかりやすいと言えばわかりやすいのですが、あまり広がりが持てないような気がします。
芝居の雰囲気は悪くないのに、あからさまにテーマを言葉にする必要もなかったのではないかと思います。

2013年10月7日月曜日

2013年第三四半期観劇のまとめ

7月2日 ピチチ5「はぐれさらばが"じゃあね"といった」
7月3日 扉座「アトムの伝言」
7月8日 「盲導犬」
7月12日 FUKAI PRODUCE 羽衣「Still on a roll」
7月17日 おにぎり「トークトワミー」
7月18日 「ストリッパー物語」

8月2日 カタルシツ「地下室の手記」
8月3日 INGELプロデュース「鮫に食われた娘」
8月15日 マームとジプシー「COCOON」
8月16日 七里ガ浜オールスターズ「オーラスライン」
8月22日 東京乾電池「真夏の夜の夢」
8月25日 ミクニヤナイハラ プロジェクト「前向き、タイモン」
8月26日 少年王者館「ハニカム狂」

9月3日 玉田企画「臆病な町」
9月11日 悪い芝居「春よ行くな」
9月17日 財団、江本純子「常に最高の状態」
9月18日 砂地「Hedda」
9月18日 遊園地再生事業団「夏の終わりの妹」
9月23日 メガロザ「アンド ヒア アイム スティル アライブ」
9月23日 Good Morning No.5「ジャンキ−・ジャンク・ヌードット」
9月24日 ハイバイ「月光のつつしみ」

第三四半期の観劇数は、21本。割と忙しかった中では、よく見に行けた方だと思います。
ベストスリーは、ハイバイ「月光のつつしみ」、カタルシツ「地下室の手記」、「ストリッパー物語」の3本です。
次点は、財団、江本純子「常に最高の状態」と、Good Morning No.5「ジャンキ−・ジャンク・ヌードット」です。
なんといっても、ハイバイ「月光のつつしみ」の静かな衝撃が印象的でした。

ハイバイ「月光のつつしみ」

2013年9月25日 19時30分 横浜芸術劇場大スタジオ
作:岩松了
演出:岩井秀人
出演:能島瑞穂、松井周、平原テツ、永井若葉、上田遥、坂口辰平
久しぶりに心が震える芝居を見た気がします。今まで、いかに頭で芝居を見ていたかに気づかされました。
大きな「沈黙」の周りを、役者が各々のやり方で歩いたり少し足を踏み入れたりするとてもデリケートな時間が流れている。そんな感じでした。
特に、能島瑞穂と松井周の二人が素晴らしく、松井のさまざまな突っ込みを、あるときは流し、あるときは跳ね返す、またあるときは正面から受け止める能島瑞穂は素敵でした。また、太り、気になる女優が増えました。
前回見た「手」がピンとこなかったので、ハイバイは「ある女」や、「霊感少女ヒドミちゃん」のようなポップな作品のほうが自分にはあっていると思っていましたが、想でもないと考え直しました。
ハイバイの次の作品が楽しみです。