2014年9月11日木曜日

はえぎわ「ハエのように舞い 牛は笑う」

2014年8月25日 19時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:ノゾエ征爾
出演 : 川上友里、橘花梨、井内ミワク、富川一人、河井克夫、町田水城、笠木泉、竹口龍茶、鳥島明、鈴真紀史、上村聡、踊り子あり、滝寛式、山口航太、ノゾエ征爾
ゾンビ映画のエキストラが主な産業である南の火山島で、様々なエピソードが語られていく。離婚して東京で父親と暮らす妹と一緒にアイスクリームを食べるために牛乳が飲めるようになりたい姉、ゾンビのバイトするために島に流れてきた弟と、自ら記憶喪失になろうとしている兄、大規模なレジャー施設開発の噂におびえるボーリング場オーナーとその右腕、ボーリングのボールが抜けなくなり,悪戦苦闘する二人の男、人間嫌いな自販機飲料補充員、全くかみ合わないカップル、悪事を推奨して落書きをする女、人間でもない動物でもない謎の生物もろた、すべてがどこかでつながっているようでも有り、全く関係ないようでもある。
物語は、それぞれのエピソードを淡々と、しかし十分おもしろく描き、突然、歌と共に終わってしまう。
最後に、口の周りを血だらけにしながら何かを食べている謎の生物もろたと、高校生ながら妊娠しているらしい妹のつぶやきを残して。
まるで、映画のイントロ部分だけか、知らされていなかったシリーズ物の導入部分のようである。この先続きがあるのかどうかもわからないが、それを知るためだけにでも次回作を見たい。

2014年8月25日月曜日

ままごと「わたしの星」

2014年8月22日 19時30分開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:柴幸男
出演 : 生駒元輝、坂本彩音、佐藤まい、西片愛夏、西田心、札内茜梨、山田菜々緒、吉田圭織、吉田恵、吉永夏帆
現役女子高生をオーディションで選抜して(男子も一人いますが)稽古して、上演する形で作られた芝居でした。
どこかで聞いたことがある話だと思って検索したら、今をさかのぼること20年前、1994年に青山円形劇場の企画公演で、平田オリザ作・演出の「転校生」が同じ形で上演されていました。この公演は私も見ていて、素直に感動したことを覚えています。丁度平田オリザの芝居を続けてみていたときで、この「転校生」、緑魔子主演の今はなき渋谷のシードホールで上演された「思い出せない夢のいくつか」、青年団の「S高原より」を見た覚えがあります。
緑魔子の「思い出せない夢のいくつか」はもちろんおもしろかったのですが、芝居としては「転校生」の方が全体のできがよかった記憶があります。いちばんできがよくなかったのが「S高原より」で、自分が主宰している劇団の芝居がよくないなんて、作・演出にとって、劇団って何だろう、どんな意義があるのだろうと疑問に思ったことも覚えています。
今回、検索した結果、この「転校生」に劇団KAKUTAの桑原裕子が出演していたことも知りました。あのおばさんも20年以上のキャリアがあるのかと知って、少しびっくりしました。
色々昔のことを思い出させてくれた「わたしの星」ですが、今素直におもしろいといえる芝居になっていました。決して芝居がうまいわけでもない、エキセントリックな性格の子をコント的に演じるのは中々うまいのですが、普通の性格、少しドジで、引っ込み思案で、コンプレックスを抱えている役などは結構ぐずぐずになってしまったりしていたのですが、それも台詞に救われたりして、気にならないできあがりでした。
現役女子高生(男子も一人いますが)には、何か魔法のような力があるのでしょうか?
あるとしても、それに気づき、引っ張り出した柴幸男の才能は(20年前の平田オリザも)すばらしいものがあります。
ままごとはなかなか東京での公演がありませんが、あれば是非見たいと思います。

オフィス鹿プロデュース「山犬」

2014年8月13日 19時開演 座・高円寺1
作・演出:丸尾丸一郎
出演 : 鳥肌実、森下くるみ、オレノグラフィティ、山岸門人、ISOPP、丸尾丸一郎
葉月チョビの留学後、2本目の公演になります。1本目の「ジルゼの事情」が評判がよかったようなので見に行きました。
結論から言うとほとんど普通の小劇場の芝居で、鳥肌実の中二病全開の演技と、本来ならチョビがやるであろう役を、かわいい森下くるみが下手なりに健気に演じていたのがおもしろかったくらいで、あの鹿殺しで私が好きだった無謀ともいえるぎらぎらした上昇志向は、葉月チョビに由来するところが大きかったのだと,よくわかりました。
「ジルゼの事情」は再演されるようですが、チョビが帰ってくるまで見に行く必要はないようです。

東京乾電池 ET X 2「ゴドーを待ちながら」

2014年8月9日 19字開演 下北沢ザ・スズナリ
作:サミュエル・ベケット
演出:戸辺俊介
出演 : 柄本佑,柄本時生、山根博、綾田俊樹、荒川楽
柄本明の息子たち、佑と時生が「ゴドーを待ちながら」をやるというので、見に行きました。前評判も高いらしく、満員で補助席まで出る騒ぎでした。
正直言ってスズナリの狭い椅子で3時間弱の芝居を見るのはかなりの苦行です。特に1幕は何度も寝そうになりました。
演出は,1幕を日常として描き、2幕を悲劇として描くというオーソドックスなものでした。
2幕は基本的に1幕の繰り返しであり、それが観点を変えて悲劇的に描かれるわけで、わかりやすくおもしろいのですが、問題はやはり1幕です。
ゴドーを待つということが日常として描かれ,それも延々と続いている訳ですが、ポッツォが出てくるまで、ほとんど何も起こりません。何も起こらないことに意味があるのですが、退屈です。
ベテランの漫才コンビがお互いの芸に飽き飽きしているのですが、話し出すとおもしろい。そんな感じで出来ればいいのにといつも思うのですが、若いETの二人には望むべくもありません。
毎年とはいいませんが、何度もチャレンジしてくれたら、嬉しいです。

サードステージ「朝日のような夕日をつれて2014」

2014年8月5日 19時開演 新宿紀伊國屋ホール
作・演出:鴻上尚史
出演 : 大高洋夫、小須田康人、藤井隆、伊礼彼方、玉置玲央
今をさかのぼること40年以上昔、手伝いに行っていた早稲田の劇団が稽古場を共用していたので、鴻上尚史さんとは2,3回挨拶をしたような記憶があります。ちょうど、彼が第三舞台を立ち上げる少し前くらいだったと思います。それから40年以上がたち、今回初めて彼の作品を見ました。今まで見なかった理由は、会ったときの印象が、「ずるがしこい男」「好きになれない」という、私の勝手な好き嫌いが主な原因だったような気がします。
今なら、本人の性格と作品は別物だとわかりますが、若いときは本当に単純でした。
今回、見に行く気になったのは、この作品が「ゴドーを待ちながら」を下敷きにしていると知ったからでした。ゴドー好きとしては、見ないわけにはいきません。
見た結果を一言で言えば、「やはり好きになれない」という物でした。
何回も再演された演目にもかかわらず、2014年現在にうまくアップデートされていますし、構成も演出もスピーディで鮮やかなものでした。芝居として十分おもしろいものだと思うのですが、例えば、ダンスのうまくない役者のためにゆっくりした振付であらが見えないようにする工夫とかが、本当はかっこよくないのにかっこよく見せようとする考え方が、生理的にだめなのだと思います。
今後、鴻上尚史の芝居を見に行くことは二度とないと思います。

ジョンソン&ジャクソン「窓に映るエレジー」

2014年7月29日 14時開演 渋谷シブゲキ
作・演出:ジョンソン&ジャクソン(大倉孝二 ブルー&スカイ)
出演 : 大倉孝二、ブルー&スカイ、村岡希美、池谷のぶえ、菊池明明、川原一馬、池田成志
役者が自分のやりたい芝居をするために、ユニットを組むとなると、どうしても池田鉄洋の表現さわやかとか、グッドモーニングNO.5のようにぶっ飛んだ芝居を期待してしまうのですが、それからすると少し期待外れの感は否めませんでした。
チラシの文章は結構過激だったのですが、大倉孝二はまともな演劇人だったということなのでしょう。
最初、コント風に始まった芝居もだんだんとストーリーに収束され、最後には2段オチで終わるという見事な構成、演出といってもいいでしょう。しかし、自分のやりたい芝居がそのような普通の芝居なら、わざわざユニットを立ち上げてまでする必要もないような気がします。
役者的には、池田成志オンステージという感じで、池田の重い鉈でずばずば切っていくような演技が堪能できましたし、池谷のぶえの普通のようでいてどこかおかしい不思議な芝居がスパイスとしてよく効いていました。
とくに、池谷の犬の芝居は最高でした。

ロロ「朝日を抱きしめてトゥナイト」

2014年7月20日 19時30分開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:三浦直之
出演 : 伊東沙保、板橋瞬谷、森本華、篠崎大悟、小橋れな、山口航太、大橋一輝、島田桃子、大場みなみ、亀島一徳
私が勝手に「演劇童貞派」と読んでいる三浦直之の新作です。ずいぶん久しぶりだなあと昔のブログを検索してみたところ、なんと1年1ヶ月ぶりでした。
ボーイミーツガール物と称されてきたロロですが、ここに来てそれを推し進めて「ミーツ」物に進化してきたようです。自分が自分に会う、自分が親に会う、他人に会う、世界に会う、そんな世界観を獲得したように見えました。相変わらずの語り口のさわやかさと少々のおセンチはそのままに、新しい世界に出発したようです。秋の、シェイクスピアが楽しみです。
最後に、板橋瞬谷が,若き日の竹内力を彷彿とさせてほほえましかったです。

DULL-COLORED POP「河童」

2014年7月19日 18時開演 吉祥寺シアター
作・演出:谷賢一
出演 : 東谷英人、大原研二、中村梨那、百花亜希、若林えり、天羽尚吾、一色洋平、井上裕明、今村洋一、岩瀨晶子、内田悠一、港谷順、小角まや、澄人、平佐喜子、ドランクザン望、ナカヤマミチコ、浜田えり子、東ゆうこ、山中一美、三津谷亮
今まで2回ほど見た谷賢一の作品は、いずれもシリアスなタッチのものでしたが、今回の作品は打って変わって、コメディタッチというかミュージカルというか、全く変わったできあがりになっていました。芥川龍之介の「河童」を基に、河童独自の合理性から人間の矛盾や、だめなところを浮き彫りにするというのが狙いなんでしょうが、成功していたとは思えませんでした。
当日パンフレットに、「芥川の言葉を使ったのは10パーセント以下で、ほとんど私の創作です。」というようなことが書かれていましたが、それにしては芥川の世界から抜け出ていないのが気になりました。
今ここで、芥川の世界を劇化することに何の意味があるのか?私には全くわかりませんでした。

2014年7月7日月曜日

ハリケーンディスコ「博多アシッド山笠」

2014年7月4日 14時開演 参宮橋トランスミッション
作・演出:江崎穣
出演:三瓶大介、竹岡真悟、帖佐寛徳、澤唯、津波恵、牛水里美、大室光来、為平康規、江崎穣
見た芝居はあまり面白くなかったけれど、チラシだけは毎回面白い「あひるなんちゃら」のチラシで、おすすめされていたので見にいきました。
見てびっくり、あまりの斬新さというか、自由さというか、やりたい放題さ加減にはもう笑うしかありませんでした。まず第一に、BGMやSEが舞台奥に設置されたDJセットから流されるのですが、オペレートするのは役者で、役の中でオペしたり、役と関係なくオペしたりなんの説明のなくオペしていて、唖然とします。転換も明転のなか、手の空いている役者が堂々と出てきて転換する自由さでした。
考えてみれば、大衆演劇ではよくあることかもしれませんが、大衆演劇の場合は、「人手が足りなくてやむをえずやっています。」という恥じらいが感じられるのですが、それも一切ありません。
「細かいことはいいんだよ。俺は俺の言いたいことを言うだけだ。」という姿勢は一貫していて清々しくさえありますが、15年もやってきてこれはいかがなものでしょうか?いっそ、死ぬまでこの姿勢を貫いてもらいたいもの
です。

ハイバイ「おとこたち」

2014年7月3日 19時30分開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:岩井秀人
出演:菅原永二、平原テツ、岡部たかし、用松亮、安藤聖、永井若葉、岩井秀人
2年ぶりのハイバイの新作、「ある女」と同じ系列に連なる、男たちの人生の話でした。仲のよい4人組の男たちの人生が会話やト書きまでも読んでしまうテンポよいスピードで気持ちよく語られていきます。計画通り人生を進めて、それ故、闇を抱えてしまう者や、手軽な成功に溺れて自滅してしまう者など、様々な人生が繰り広げられていきますが、最後は一人ずつ別々にフェードアウトしていきます。今まで芝居で語られることがなかった普通の男の人生が、語られたことだけでも十分意義深いことだと思いますが、その上、面白いのだから言うことはありません。
ラストのヘルパーに介助されながら階段を降りていくシーンは、人間の死に方そのものに思えtw、感傷的にさえなりました。

シンクロ少女「許されざる者」

2014年7月2日 19時30分開演 五反田アトリエヘリコプター
作・演出:名嘉友美
出演:泉政宏、中田麦平、名嘉友美、田中のりこ、菊川朝子
前回見たのが三鷹市芸術文化センター星のホールで、成功していなかったとはいえしっかりセットを組んだ芝居をしたのに、今回はアトリエヘリコプターでどんな芝居をするのかという興味もあって、見にいきました。芝居の内容自体は全くといっていいほど変わっていなくて、ぶれていないと言うことはよくわかりましたが、だからといって面白いかというと、それは別の問題で、私にとっては少しも面白くありませんでした。
名嘉友美は、セックスという切り口から人間関係を見ていくのが好きなようで、よくセックスの話が出てきますが、あくまでも切り口の1つであって、セクシャルな感覚やムードには興味がないようです。それが普通にスケベな私としては、とても残念なところです。

2014年6月22日日曜日

味わい堂々XバジリコFバジオ「怪獣使いの娘たち」

2014年6月21日 14時開演 下北沢駅前劇場
作・演出:佐々木充郭
脚本協力:岸野聡子
出演:三枝貴志、宮本奈津実、浅野千鶴、岸野聡子、田中嘉治郎、イチキ遊子、阿久澤菜々、橋本昭博、石澤美和、浅野康之、今藤茶、堀靖明、横山莉枝子、植田祥平、佐藤有里子、槇平々、小名木美里、キタラタカシ、今福李寛、澤井祐太、長瀬良嗣
小劇場の舞台で時々見かけて気になっていた浅野千鶴が所属する劇団の公演と言うことで、見にいきました。
ストーリーはいわゆるダークファンタジーで、小劇団がやるとしょぼくて見ていられないものになりがちなものでしたが、今回はそんなこともなく面白く見られました。
それは、ほとんど脚本と演出の力だと思います。作・演出の佐々木充郭は初めてでしたが、結構達者で感心しました。
今回は、味わい堂々とバジリコFバジオ野合同公演ということで、全体のバランスがどうなるのかと思っていたのですが、それも杞憂に終わりました。
まず、味わい堂々の3人が3人姉妹問いことで、しっかり関係性を造り、周りともその関係性をたもってあたっていく形を取ることで、スッキリした仕上がりになっていました。
また、三枝貴志の子供っぽい両主役の熱演も光りました。
味わい堂々、バジリコFバジオそれぞれの単独公演も見てみたいです。

ベッド&迷キングス「南の島に雪が降る」

2014年6月17日 19時30分開演 お台場潮風公園内「太陽の広場」特設テント
原作:加東大介
脚本・演出:福原充則
出演:富岡晃一郎、猫背椿、早乙女友貴、円山厚人、久保貫太郎、加瀬澤拓未、畑中実、矢野昌幸、結城洋平、望月綾乃、佐藤銀平、小林顕作
前回見たときには、唐十郎へのオマージュとも思える作風で面白かったベッド&メイキングスが、テント芝居をすると聞いて、さらなる唐十郎的なものを期待して見にいきましたが、ワタシの勝手な思い込みは見事に外れました。
ずいぶん前になくなった俳優の加東大介が書いた実話を基にした芝居で、太平洋戦争中南方の前線で、兵隊たちが慰問のため芝居をするという話でした。
前半は、その実話から取ったのであろう衣装やカツラを造る苦労話に引きずられて、テンポが悪かったのですが、芝居をすることが舞台公認になった後半は、そんな細かいことにこだわらず、テンポよく面白くなってきました。
実際にも仮設の芝居小屋を造ったようで、そこからテント公演という発想はよくわかるのですが、やってみると今までにやり尽くした手法をまた見せられるだけで、あまり感心しませんでした。
実話に引きずられてどこにも到達できないまま、終わってしまった長い3時間でした。

FUKAI PRODUCE 羽衣「耳のトンネル」

2014年6月16日 19時開演 吉祥寺シアター
作・演出:糸井幸之介
出演:深井順子、日高啓介、鯉和鮎美、高橋義和、澤田慎司、伊藤昌子、西田夏奈子、金子岳憲、並木秀介、加藤律、幸田尚子、内田滋、Sun!!、枡野浩一
2012年の「耳のトンネル」の再演です。2年経って、上演時間も休憩を挟んで3時間という大作になっていました。
初めて見たFUKAI PRODUCE 羽衣がこの「耳のトンネル」で、その時は結構気に入って好印象だったのですが、その後何本か見ていく内に、この劇団は広い舞台が苦手なのではないかという気がしてきました。
基本的に人生と愛を讃えるというのがテーマなので、どうしても二人芝居が多くなります。その時舞台が広いと、役者の力量不足とそれを補う演出がほとんどないため、印象が弱くて、見ている方も退屈してしまいます。
モノローグ芝居でもその他大勢が舞台にいれば、そのようなことはないので、脚本の問題と言うよりは、役者の力量、演出の力量の問題だと思います。
そういえば、広い舞台で唯一面白かったシアターイーストの「サロメ VS ヨナカーン」は、いつも大勢の役者が舞台にいました。
本も独特なものがあるし、曲も独特で面白いので、次回も見にいくと思いますが、できれば、アゴラ劇場くらいの広さのところでやっていただきたいものです。

2014年6月20日金曜日

池田鉄洋「BACK STAGE」

2014年6月11日 14時開演 シアタークリエ
作・演出:池田鉄洋
出演:相葉裕樹、植原卓也、新垣里沙、永岡卓也、西ノ園達弘、小野寺大夢、近江谷太朗、鈴木砂羽
昨年の秋、下北沢で見た表現・さわやかの自分がしたいことをするためだけの見事にくだらない芝居を見て、感心した池田鉄洋がなぜかシアタークリエでやるというので、見にいきました。ストーリーは相変わらずくだらないのですが、シアタークリエの普通の観客、中年女性と若手イケメン男優目当てであろう若い女性にもわかりやすく、娘道成寺の鐘の説明なども交えつつ、最後には舞台への愛も叫んで感動を与えたりして、結構バランスのよいところを見せてくれました。
予算があったらやってみたかったであろう盆回しや、ムービングライトの導入など本人も嬉しかったに違いありません。ただ、やっていることの本質はいささかも変わりなく、それが偉いと言えば偉いのですが、だったら、下北で安い料金で見ればよいではないかとも思いました。
日頃、コメディになどやったことがないであろう鈴木砂羽が意外ながんばりで検討していました。

マームとジプシー「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと----------」

2014年6月10日 19時30分開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:藤田貴大
出演:成田亜佑美、尾野島慎太朗、萩原綾、吉田聡子、川崎ゆり子、伊東茄那、波佐谷聡、斉藤章子、中島広隆、石井亮介、召田実子
マームとジプシーの初期作品の再演のようで、私が初めて見た「ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。」よりも前の作品のようでした。というか、多分、ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。」が、この作品を再構成したもののように思われます。せっとは、「モモノパノラマ」のように、細いmくざいで造った四角形を様々に組み合わせて、家や駅、通りを表していくというおしゃれなものでしたが、そこに表れる感情は結構生々しく、独特のテンポで繰り返されていくうちに、コントロールが効かなくなっているのではないかと思われるところもありました。
この劇団は見るたびに、表現が洗練されてきて新しい地平に到達したのではないかと思っていたのですが、この作品を見て、彼らの初期衝動がどんなものであるか再確認できたような気がします。

ブルドッキングヘッドロック「おい、キミ失格!」

2014年6月7日 19時開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:喜安浩平
出演:西山宏幸、篠原トオル、永井幸子、岡山誠、川本成、竹井亮介、森谷ふみ、筒井俊作、傳田うに、小園茉奈、竹内健史、小笠原健吉、浦嶋健太、葛堂里奈、鳴海由莉、二見香帆
三鷹市芸術文化センターの「太宰治に関する演劇」シリーズと、ブルドッキングヘッドロックの組み合わせ。いつも一定レベル以上の芝居を提供してきたシリーズであることと、前回見たブルドッキングヘッドロックの公演が、西山宏幸作であり、今回が通常の喜安浩平の作・演出であることから、興味を持って見にいきました。
結果は、全体にテレビのコント的な安易さはあるものの、おもしろいコメディに仕上がっていました。しかし、全体の流れを悪くする部分があり、それが太宰治に関する部分なのは、「太宰治に関する演劇」としては残念でした。太宰に関するパートがない方が上演時間も短くてスッキリした仕上がりになったのに、無理矢理挿入した感がありありで不満が残ります。
通常舞台で使用する方に客席を組み、プロセミアムアーチのところに後ろを隠すように天井までのセットが組まれていて、その後ろに別なセットが隠されている感じがありありだったのですが、いざそのシーンになると、見えていたセットがズーと後ろに下がり、本来客席である広々とした空間が、多田、おっかけっこをするためだけに表れてのでした。いい意味で裏切られて感じは最高でした。

2014年6月11日水曜日

男肉 du Soleil「ロンリーガール &ブギーロボ」

2014年6月7日 13時開演 下北沢シアター711
団長:池浦さだ夢
出演:江坂一平、クリ太マメ男、小石直輝、高坂勝之、ジャングル、城之内コゴロー、すみだ、吉田みるく、酒井善史、伊勢村圭太、和田聖来
前々からダンスを見にいくのに今ひとつ気乗りしないのは、ダンス特有のストイックさに辛くなるからだと思っていたのですが、いざ、そのストイックさのかけらもない公演を見てみるとそのダンスの下手さ加減に嫌気がさし、見てるのが辛いばかりでした。
ストーリーは漫画のようだし、芝居は芝居とは呼べないほどへたくそ。肝心のダンスも、「踊りたい」という熱い気持ちだけはあるようですが、技術がまったくともなっていないので見苦しいだけでした。
何度も途中で出ようと思いましたが、狭い劇場のためその勇気もでず、最後まで見てしまいました。
劇中で観客をあおる台詞、「心が躍れば、それがダンスだ」は素敵ですが、そのダンスが人様にお見せできるものかどうかは、別物だと思います。
ダンスには、ストイックさが必要です。

2014年6月5日木曜日

DULL-COLRED POP「proof / 証明」

2014年5月29日 19時開演 新宿サンモールスタジオ
作:デヴィッド・オーバーン
翻訳・演出:谷賢一
出演:百花亜希、大家仁志、山本匠馬、遠野あすか
連日同じ芝居を見るのもどうかと思ったのですが、スケジュールの都合でやむなくこうなりました。
と思いながら開演を待っていると、後ろの席から、「マチネで風琴工房を見て、夜はここを見る」といっているお客さんがいて、上には上がいるものだとも思いました。
どうしても風琴工房と比べながら見てしまうのですが、風琴に比べるとこちらの方が全体に渋い仕上がりになっていました。しかし、戯曲の力はすごい物で、2回目にもかかわらず飽きることなく見られました。こちらのキャサリンは、自分の才能が認められないことを、少しあきらめて受け入れている少し年上なかんじで、父親はより厳格で、自分にも周りにもより厳しい印象でした。1つ残念なのは、姉役の遠野あすかで、宝塚出身のせいか、台詞のトーンの切替が極端で、一人だけ大劇場で芝居をしているようでした。
私の中では、このDULL-COLRED POPも風琴工房と同じく「正統派演劇の小劇団」の範疇に入るのですが、2本続けて「正統派演劇」を見ると、私が見たいと思っているのはこのような正統派ではないことがよくわかりました。
決して、正統派を否定するものではありませんが、その道の先には、数多くの名優がおり、それに追いつき追い越すには、とても長い年月がかかることは目に見えています。それをわかって、日々精進いくことは立派なことですが、そうではなく今すぐ自分たちの方法論で自分たちのいいたいことを言いたいという、野心や意地が見てみたいのです。
それと出逢うために、名前の知らない小さな劇団を見ているのだと改めて気づかされました。

風琴工房「proof / 証明」

2014年5月28日 19時30分開演 SHIBAURA HOUSE 5階
作:デヴィッド・オーバーン
翻訳・演出:詩森ろば
出演:清水穂奈美、佐藤誓。金丸慎太郎、李千鶴
全面ガラス張りの芝浦の新しいビル(建築設計は妹島和世のようでした)の5階で、そのガラス面を背景に、中庭のようなセットを組んでの公演でした。カーテンは客入れ時から開けてあり、周りのビルや東京タワーが借景で見えている環境です。この芝居のために場所を探し回り、宙に浮いているような不安定な心情にぴったりということでここでの公演となったようです。
まず第一に戯曲がとてもよく書けていて、飽きのこない構成で2時間以上退屈しないで見ることができました。また、主人公のキャサリン役の清水穂奈美が、認められない天才の葛藤を思い切りのよい演技で演じ、それを優しく受け止める父親役の佐藤誓とのバランスもよく好演でした。
秘湯残念なのは、仮設劇場のため、ガラス面にスポットが映り込んでしまい、せっかくの借景がずっと見えづらいままだったと言うことです。
風琴工房は初めて見ましたが、演技、演出の質も高く、私の中では、小劇団ながら「正統派演劇」の王道をいくという感じでした。

イキウメ「関数ドミノ」

2014年5月27日 19時30分開演 三軒茶屋シアタートラム
作・演出:前川知大
出演:安井順平、浜田信也、大窪人衛、森下創、伊勢佳世、吉田蒼、新倉ケンタ、盛隆二、岩本幸子
2012年5月以来のシアタートラムでのイキウメ公演を見ました。その時のブログを読み返してみたら、結構感動したようなことが書いてあったのですが、その後、何本かイキウメを見てくると、その「ミッション」がそれほど優れた作品とは思えなくなってきました。
どうも図書館とか、柱とか作品のテーマというか中心におかれた物が、具体的で実在しているか、簡単にイメージできる物の時はわかりやすくて、今回や「ミッション」の時のように超能力という概念の時には、話がぼやけてわかりにくくなってしまうような気がします。それは私の感受性が鈍いだけなのかもしれませんが、今まで見てきた作品を思い返してみるとそのような気がしてなりません。

2014年5月20日火曜日

清水宏「清水宏の情熱コント大陸」

2014年5月18日 19時開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出・出演:清水宏
INGELプロデュースの「鮫に食われた娘」で、野口かおると互角にやりあったり、KAKUTAの「秘を以て成立とす」でいつも怒っている大工のペルソナをハイテンションで演じて、気になっていた清水宏の単独ライブを見にいきました。
私の中では「役者」に分類されていたのですが、エジンバラのフリンジフェスティバルに毎年出ていたりして、「コメディアン」の活動に軸足を置いているようです。
自分のコントを複数舞台にかけていくのですが、ネタによって出来不出来が激しく、困ってしまうようなネタ「プロレス三本勝負」があるかと思えば、一人芝居のように完成度が高い「ウルトラセブンに告ぐ」があったりで、本人の性格をそのまま表しているかのように、複雑ではちゃめちゃな舞台でした。
特筆すべきは各々のネタの出来不出来ではなく、見終わった後、感動的な大ネタ「ウルトラセブンに告ぐ」の後に、「やる気満々男」として出てきて、わけのわからない小ネタを連発したにもかかわらず、清水宏という男を大好きになっているということです。素直に応援したくなる。また、見にいって大きな声で笑いたくなる。清水宏の人間の魅力に心打たれた一晩でした。


娯楽天国「ゴドーを待ちながら」

2014年5月18日 13時開演 下北沢OFFOFFシアター
作:サミュエル・ベケット
構成・演出:小倉昌之
出演:高畑加寿子、小倉昌之、関口英司、沢井エリカ、角野竜太、戸澤進
今まで見た「ゴドーを待ちながら」の中で自分が思い描く芝居に最も近い上演でした。ただし、それは方向性が近いということで、できあがりは色々と不満があります。
ポイントは、この芝居を喜劇ととらえて台詞を関西弁とし、帽子のやりとりなどのコメディの体芸をはっきりと際ただせた演出にあります。
関西弁にすることで、会話のリズムがはっきりとし、芝居の流れがスムーズになったことは大きな進歩です。また、テンポがよくなったことで要所要所で繰り返される「ゴドーを待つんだ」という台詞の意味がよりはっきりしてきます。ただし、それにたいするエストラゴン(高畑加寿子)の反応は、大げさなだけでいただけませんが。
さて、方向性が私の好みだということになると、次に気になるのはその到達点です。これは、残念ながら納得できるものではありませんでした。作者のサミュエル・ベケットはバスター・キートンとチャップリンのコンビで上演されることを望んでいたといわれていますし、日本でもツービート、星セント・ルイス、コント55号でやったら面白いのではないかといわれたりするように、漫才やコントの芸人が演じた方がよりよい舞台ができるでしょう。要するに演技を見せるのではなく、「素の自分」を見せているような演技が必要とされているのです。そこが、この芝居の面白いところであり、難しいところです。
多分、私の好きな戯曲 No.1であるこの芝居について、長年思っていたことが間違いではなかったことがわかって、嬉しいです。

2014年5月15日木曜日

財団江本純子「じんせい2ねんせい」

2014年5月13日 19時30分開演 下北沢小劇場B1
作・演出:江本純子
出演:佐久間麻由、羽鳥名美子、藻田留理子、鄭亜美、加藤啓、江本純子
2回目の財団江本純子の観劇でした。毛皮族の公演に比べてとんがったところがなく、その分喜楽に見られました。とんがった表現はそれが自分の感性にうまく突き刺さると、その衝撃もひとしおですが、外れた場合「なにやってるんだか。」となってしまいます。前回の毛皮族「ヤバレー、虫の息だぜ」の外れ感は相当なものでした。
主人公のさちこは、30才で自殺したが、なぜか妹の子供として生まれ変わり、何となくその自覚があるという設定で、2回目の人生を生きていく女性です。これがなかなかかわいらしく、生き生きと演じていて好感が持てました。周りの女性陣も結構極端な性格設定でおもしろおかしく好演でした。
はつらつとした女性陣の中で、狂言回し的な役割の江本純子だけが、どんよりした印象だったのが気になります。

2014年5月13日火曜日

砂地「3 crock」

2014寐ん月12日 14時開演 吉祥寺シアター
作・演出:船岩祐太
出演:小野健太郎、野々山貴之、とみやまあゆみ、日下部そう、中村梨那、NIWA、浦川拓海、小瀧万梨子、林愛子、尾崎宇内、高川裕也
河竹黙阿弥の「三人吉三廓初買」を基に現代語訳したような作品。緊張感の途切れない、シリアスで面白い芝居でした。複雑に絡み合う因果法王の下世話なストーリーがみごとに蘇り、現代の不安や消失感の物語になっていました。
ただ1つ気になったのは、その台詞が翻訳調というか台詞を言ってる感満載で、自然さがないところでした。もう少しこなれていればさらに面白くなっていたのにと言う思いが消えません。

快快「へんしん(仮)」

2014年5月10日 19時30分開演 駒場東大前アゴラ劇場
作:北川陽子
演出:快快
出演:大道寺梨乃、野上絹代、山崎皓司
私にはよく理解できない若手女性演劇人を、多少なりとも理解しようとする修行のような観劇も、限界に近づいてきたようです。前回の「6畳間ソーキュート社会」の批判的な印象にもかかわらず、また快快を見にいきました。
前回よりもさらにわけがわかりませんでした。理解不能と言うよりも、やってることが全く面白いと思えません。ゴリラの物まねや、鳴き真似、あれはいったい何だったのでしょう。こうなると、三田後でもいいから、どなたかに解説していただきたいものです。
当面の間、若手女性演劇人の芝居は見ない方が良さそうです。

2014年5月7日水曜日

離風霊船「運命なんてぶっとばせ!」

2014年4月29日 15時開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:大橋泰彦
出演:伊東由美子、松戸俊二、山岸諒子、小林裕忠、橋本直樹、江頭一晃、竹下知雄、瀬戸純哉、柳一至。栗林みーこ、祥子、松延春季、大迫綾乃、沙織、比留間彩理
初めて見たときには「昭和の小劇団」の古き良き雰囲気を今に伝えて面白かったのに、その後の作品は30周年記念公演の2作品は同じ装置で2本やるという企画自体に無理があったし、再演物はノスタルジーしか感じられない低調な物でした。久しぶりの新作と言うことで期待して見にいったのですが、残念な結果に終わってしまいました。
ストーリーは、サスペンスコメディ物でよくある感じだし、何よりも離風霊船の特徴だと思っていた大転換が一つもないところが残念です。
音楽でもそうですが、同時代感が感じられない物はノスタルジーとして語るしかないというのは、真実だと思います。
劇団の歴史に関係なく今を生きているという感性はとても大事です。出なければ、時代を超越できるような強力な個性がなければ、見ていて面白いわけがありません。

2014年4月21日月曜日

シベリア少女鉄道「あのっ、先輩…ちょっとお話が… …ダメ!だってこんなのって…迷惑ですよね?」

2014年4月17日 14時開演 座・高円寺1
作・演出:土屋亮一
出演:篠塚茜、加藤雅人、竹岡常吉、川田智美、小関えりか、岸茉莉、雨宮生成
実に大胆というか、人を食った設定の芝居でした。ビフォートークと称して、演出家とよくシベリア少女鉄道に出演しているが、今回はスケジュールの都合で参加できなかった役者3人が、つまらない話をしてから芝居が始まります。ストーリーはよくある学園物で、「なんだこれは」と思っていると、ビフォートークに出演した役者が勝手に舞台に登場し始めます。最初は、遠慮がちでしたが、だんだん大胆に成り、学園物の出演者に絡んだりします。本来の出演者は笑いを一生懸命こらえながら、なんとか芝居を続けようと懸命の努力を続けます。乱入者3人は、「俺たちだって舞台に出たい」との思いがエスカレートして、ラストには「進撃の巨人」の大きな着ぐるみを着て学園物の登場人物に襲いかかります。ひとしきり、格闘シーンがつづいて、ラストにやたらと長いタイトル名を叫んで暗転、お終い。タイトル自体がオチでしたというわけです。
ある構造に全く関係のない別の構造が突然挿入されてくる。その混乱と、戸惑いをドタバタ風に描き、最後はわかりやすいパロディでしめる。その基本構造は面白そうなのですが、実際の舞台はそんなに面白くはなりませんでした。ひと味足りない物は、いくら足してもおいしくならないと言うことでしょうか。

2014年4月17日木曜日

江古田のガールズ「仮面音楽祭」

2014年4月16日 19時開演 赤坂レッドシアター
作・演出:山崎洋平
出演:瓜生和成、内野聡夢、恩田隆一、小林光、幸野紘子、荒川佳、藻田留理子、増岡裕子、うらじぬの、大村わたる、長瀬みなみ、斉藤祐一
開演前の前説を作・演出の山崎洋平自ら行っていたが、その段階から薄ら寒さ全開でそのまま、寒い芝居が2時間続いてしまいました。
「観客にただただ楽しんでもらいたいだけだ。」という芝居だそうですが、その思いに嘘はないものだとしても、お笑いにはセンスや才能が何よりも必要であり、それがないとどうしようもないことが証明されたということでしょう。この「江古田のガールズ」は、何度もチラシは見かけたのですがタイミングが合わずなかなか見られなかった劇団ですが、見てがっかりの劇団でした。見るまでにかかった時間の分だけがっかり度も大きかったのかもしれません。
深夜のカラオケボックスでの合コン、「最初からうまくいかない男女の思いをカラオケにのせて替え歌で歌いまくる。」というアイディアは悪くないと思うのですが、誰でも思いつきそうなプランだけに、作・演出のセンスが重要だと思います。それを、どこかで見たことがあるような安直な演出に終始し、加えて役者の歌が下手すぎときては救われません。演出も歌がもたないという自覚はあるらしく、振付やコーラス、合いの手などを入れてくるですが、ダンスも下手、合いの手を入れるために出入りするのもうるさいだけという有様で、救われません。

2014年4月13日日曜日

東京乾電池「そして誰もいなくなった」

2014年4月10日 19時開演 下北沢本多劇場
作:別役実
演出:柄本明
出演:柄本明、柄本時生、伊東潤、山地建仁、麻生絵里子、血野滉修、重村真智子
東京乾電池の芝居を見るのはこれで3本目になるのですが、またしても面白くない芝居を見る羽目になりました。戯曲は、アガサ・クリスティの同名小説「そして誰もいなくなった」を元に、なぜか集められた10人が順番に不条理な理由で殺されていくと言うストーリーになっています。本多劇場のこけら落としに、別役実が書き下ろしたものだそうです。
「人が殺されたことにより周りにかける迷惑」を理由に殺されていく、まさに不条理なナンセンスな話なのですが、それを声高に喋りまくるだけで、不条理に従わざるを得ない人間の悲しみや空しさに注意を払わないがさつな演出にがっかりしました。
前回見た「真夏の夜の夢」の時にも感じたのですが、細かいニュアンスを無視していくような演出方法に魅力はありません。
若い頃、今はなき渋谷のジャンジャンで見た「ストーリーは全く頭に残らないが、ただただ面白かったという印象だけがのこる。」東京乾電池はなんだったのでしょうか?
不条理の罠にはまって、頭でっかちになり、体力もなくなるとあのような結果になるのでしょうか。とても残念です。

2014年4月8日火曜日

ちからわざ「はるヲうるひと」

2014年4月3日 19時開演 下北沢ザ・スズナリ
作:佐藤二朗
演出:堤泰之
出演:大高洋夫、兎本有紀、今藤洋子、笹野鈴々音、野口かおる、大田善也、韓英恵、佐藤二朗
芝居を見終わった後この芝居について考えていると、その前に見た芝居と比較していることに気がつきました。その前の芝居とは、遊園地再生事業団の「ヒネミの商人」のことですが、「ヒネミの商人」がほとんど日常会話で成り立っているのを中村ゆうじの意味ありげな芝居がぶちこわしているという構造だったのに対して、この芝居はほとんど全てを台詞で表現してました。
大高洋夫演じる鬼畜な置屋の経営者のむなしさも、今藤洋子演じる娼婦のいらいらもすべて台詞として書かれています。唯一、そんな台詞のない佐藤二朗演じる大高の腹違いの弟で娼婦たちの世話係も、ラストでは自殺した父親との約束で喋ってはいけない秘密を抱えて生きてきたことを語ってしまいます。
それ故、役者たちの演技は台詞にリアリティをもたせることに主眼が置かれ、ほとんどの台詞が客席に向かっており、会話をしているという感じがありません。実にわかりやすいと言えばわかりやすいのですが、ソロパートばかりでアンサンブルのない音楽を聴いているようで、違和感がありました。

2014年4月3日木曜日

鳥公園「緑子の部屋」

2014年3月26日 19時開演 3331 Arts Chiyoda B104
作・演出:西尾佳織
出演:武井翔子、浅井浩介、鳥島明
私には今ひとつ理解できない若い女性演出家の芝居に再チャレンジしてみました。ストーリーは、「なぜか死んでしまった緑子のお葬式に、元彼と中学高校の同級生が呼ばれ、話していく内に、緑子の人生が浮かび上がっていく。」というようなことが、チラシに書いてあったような気がしたのですが、実際の芝居では緑子の人生よりも、元彼のどうでもいい今時の若者にありがちな実態が明らかになってきます。この元彼は結構どうしようもない奴で、緑子と同棲中にもバイト先で女の子に手を出したり、緑子に暴力をふるって追い出してりしていたようです。
芝居は淡々と進んでいき、ラストは「絵の中の見守っている女性は私です。」という唐突な台詞で終わりました。
結局、私には何もわかりませんでした。

遊園地再生事業団「ヒネミの商人」

2014年3月25日 19時開演 座・高円寺1
作・演出:宮沢章夫
出演:中村ゆうじ、宮川賢、片岡礼子、ノゾエ征爾、笠木泉、上村聡、佐々木幸子、牛尾千聖、山村麻由美
宮沢章夫の芝居を見るのは「夏の妹」に続いて2本目だったのですが、どうも私には向いていないようで、面白くありませんでした。シェイクスピアの「ベニスの商人」を下敷きにしているようで、三つの箱を選ぶとかそれらしいエピソードが出てきます。どうも、主役の中村ゆうじがシャーロックのようで、ひたすら腹の中では別のことを考えているような芝居をしていました。本当に中村ゆうじは、ある目的を持って芝居をしているように見せる天才で、彼にかかるとなんでも演出意図に沿った芝居をしているようにあからさまにみえるので、それが気になってしょうがありません。

2014年3月20日木曜日

ゲキバカ「男の60分」

2014年3月19日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:柿ノ木タケヲ
出演:西川康太郎、菊池裕太、鈴木ハルニ、石黒圭一郎、書川勇輝、伊藤亜斗武、伊藤今人
梅棒の伊藤今人が掛け持ちで参加しているということで見にいきました。
コンセプトは、梅棒と全く同じ、くだらないことを熱意と勢いだけでやりきる。笑ってしまうほど同じです。ただし、梅棒がダンス8割の芝居2割なら、ゲキバカは芝居8割のダンス2割という割合の違いはあります。
地点、サンプルとシリアスな芝居の後だったので、余計面白く感じたのかもしれません。
梅棒と同じで、年に1回くらい見るのはよいかもしれません。
小劇場を見る楽しみの一つに、「つぎの伸びしろに期待する」というのがあると思うのですが、梅棒もゲキバカもその楽しみはあまりありません。吉本新喜劇と一緒で、定番の笑いを楽しむのが正しい楽しみ方だと思います。

2014年3月19日水曜日

サンプル「シフト」

2014年3月18日 19時開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:松井周
出演:古屋隆太、奥田洋平、野津あおい、兵藤公美、武谷公雄、黒宮万里、市原佐都子
2007年に初演された作品の再演になるのだそうです。その頃から松井周の関心が、「閉ざされた集団」にあることがわかりました。ただし、松井の関心は。「度座された集団」それ自体にあるのではなく、そうであれば、極端な状況や、あり得そうもない設定をすることが可能になるのだからだと思います。それがだんだんとエスカレートして、最近の悪趣味な設定にまでなってきたようです。
初演は見ていないので、今回どの程度改訂がされているのかわかりませんが、悪趣味とか露悪趣味と呼べるほどのえぐさは見られません。
その悪趣味のバランスが絶妙だったのが「自慢の息子」で、あれがサンプルの最高傑作なのかもしれません。

2014年3月18日火曜日

地点「悪霊」

2014年3月17日 19時30分開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
原作:F. ドストエフスキー
演出・構成:三浦基
出演:阿部聡子、小林洋平、窪田史恵、根本大介、小河原康二、岸本昌也、河野早紀、石田大、永濱ゆう子
とても疲れた1時間半の観劇でした。3年前の幻の公演「河童」以来、地点の東京公演はほとんど見ているはずですが、回を重ねるごとに観劇の疲労度は増し、地点がどこに向かおうとしているのかわからなくなるような気がします。
今回は、1時間半の上演中ほとんどの時間を役者はひたすらぐるぐる舞台を走り、とっくみあい、わけのわからない言葉を叫び、時々ドフトエフスキーの言葉を喋るという状態で、気をつけていないと、誰が誰に話しているかということすらわからなくなるのでした。
誰もが役柄を誇張したしゃべり方をする中で、小河原康二だけが話し方が自然で、最後には彼が喋り出すだけで、ほっとする有様でした。

小池博史ブリッジプロジェクト「銀河鉄道 -Milky Way Train-」

2014年3月13日 19時30分開演 池袋あうるすぽっと
演出・脚本・振付:小池博史
出演・振付:津村禮次郎、白井さち子、小尻健太、南波冴、松尾望、石原夏美、谷口界
昔から名前だけは知っていたパパ・タラフマラの演出家、小池博史が、今どんなことをやっているのか知りたくて見にいきました。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフにしていますが、ストーリーをなぞるのではなく様々な人が一緒に旅立つようなイメージになっています。オープニングも、私服で客席から表れた出演者が舞台上で衣装に着替え、自己紹介をするところから始まります。その後、列車に乗り込み出発するのですが、それ以降、私には一つも面白いところがありませんでした。
確かに、能楽師、サーカスの芸人、ダンサーなど、様々なバックグラウンドをもつ出演者を違和感なく一つにまとめて動かす振付能力はたいした物だと感じましたが、本筋が退屈というか、見えてこないのは困ったものです。
Twitter上の好評も観劇の動機の一つだったのですが、あてにはならないことが、また証明された形です。

岩松了プロデュース「宅悦とお岩」

2014年3月7日 19時開演 下北沢駅前劇場
作・演出:岩松了
出演:安藤聖、梅宮万紗子、尾上寛之、亀田梨沙、児玉拓郎、小林竜樹、駒木根隆介、清水優、高橋ひろ無、滝沢恵、永岡裕、橋本一郎、藤木修、ジョンミョン、𠮷牟田眞奈
トラッシュマスターズの次の日に見たせいもあって、よい劇作家の条件には「性格の悪さ」が上げられるに違いないと思わせるような芝居でした。昨年秋のハイバイの公演「月光のつつしみ」の本が面白かったので、最近の岩松了はどんな感じなのか知りたくて見にいきました。
四谷怪談の稽古をしている劇団の稽古場を中心に、横暴な演出家、その演出家に言い寄られている女流新進作家、当て馬なのに舞い上がって仕事をやめてしまった作家の幼なじみ、演出家に反発して稽古にこない俳優などの複雑でどこか滑稽な人間関係を、過不足なく描いて面白かったです。
岩松了は、劇中で「岩松は、ぱっと見、人の良さそうなおじさんに見えるが、本当は性格が悪いらしいよ。」と、役者に言わせるほど性格が悪いですが、それくらいひねくれて物事を見ないと行き届いた脚本は書けないのかもしれません。
安藤聖は小劇場に出演しても花のあるよい女優だとは思いますが、いつ見ても何か堅い印象があります。頑固というか頑なに何かを守っているような気がします。それが見えなくなると、もっといいのになあと見るたびに思います。

2014年3月10日月曜日

トラッシュマスターズ「虚像の礎」

2014年3月6日 19時開演 座・高円寺
作・演出:中津留章仁
出演:カゴシマジロー、吹上タツヒロ、星野卓誠、龍座、村上洋康、井上裕朗、坂東工、林田麻里、川崎初夏
まめに小劇場を見て回っていると、定期的にチラシは目にするが、なぜかいつもスケジュールが合わずに見に行けない劇団ができてきます。今回は、そんな劇団の一つ、トラッシュマスターズを見てきました。今まで見ていなかったのはスケジュールの都合が大きいのですが、いつもチラシが暗くて地味な絵で面白そうに見えなかったのも理由の一つです。
物語は、人々の争い、戦争や、人種差別の原因を「人が、自分の心の矛盾に気づかない二している」ところに求め、それを気づかせ、教えていくのは、「心の専門家」である「劇作家」のつとめだと主張する主人公を中心に進んでいきます。実際、彼は自分の周りで怒る様々な争いに、誠実に勇気を持って行動し、説得していきます。実に明快で、新興宗教の教祖のお話を聞いているようでした。でも、私が芝居でみたいのは、そんなお説教ではありません。様々な矛盾の中で葛藤している人間であって、安易な解決策ではないのです。
きっと、この作者はまじめで優しい人間なのだとは思いますが、まじめだからと言って芝居が面白くなるわけではないのです。

2014年3月4日火曜日

ニッポンの河川「大きなものを破壊命令」

2014年3月3日 20時開演 池袋東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:福原充則
出演・音響・照明:峯村リエ、佐藤真弓、中林舞、光瀬指絵
役者が芝居をしながら、音響・照明の操作を自ら行う芝居でした。その格好はジャージの上下にレッグウォーマー、スニーカー、膝当てまでつけて、左手には懐かしいウォークマンタイプのカセット、腰のベルトにはスピーカーとアンプとバッテリーをつけているという、芝居の衣装と言うよりは重装備のジョギングマニアのようでした。その左手のウォークマンのカセットを入れ替え入れ替え、 BGMを流し、照明の切替は舞台の各所に設けられたフットスイッチを踏むことで ON/OFFすることで操作するのです。物語は、首締めジャックをやっつけようとする熊谷の珍走団ビートルズと、鳥と戦うジャングルの脱走兵、お見合いを進められる小津安二郎の映画のような4人姉妹の話が、テンポよく切り替わって語られていきます。3年前の東日本大震災以降を受けての芝居らしいのですが、私にはその辺のことは少しも感じられませんでした。ただただテンポよく、切れのよい動きの中で話がどんどん飛んでゆく、その気持ちよさに笑っていただけでした。それにしても、4人の役者は大変だっただろうと思います。台詞、動き、カセットの入れ替え、フットスイッチを踏むタイミング。いくら練習しても、うまくいかないような気がします。それをほぼパーフェクトにやりきっただけでも感動ものです。

2014年2月27日木曜日

M & O playsプロデュース「サニサイドアップ」

2014年2月24日 19時開演 下北沢本多劇場
作・演出:ノゾエ征爾
出演:荒川良々、赤堀雅秋、小野寺修二、町田水城、竹口龍茶、富川一人、山口航太、ノゾエ征爾
私が勝手に「小劇場童貞派」と呼んでいる内の一人、はえぎわのノゾエ征爾が外部で作・演出するというので見にいきました。(ちなみに残りの「童貞派」は、ままごとの柴幸男とか、ロロの三浦直之です。特徴は、恥ずかしいほどのナイーブさ。基本的に人生を肯定的にとらえていて、それを素直に表現するところ。)
荒川良々演じる嵐山鯛の人生を、エピソードに切り分けて時系列ばらばらに演じていく。それに関わる人々の人生も同じように切り分けて演じられていく。どのエピソードも、同じような重さで演じられ、様々な人生が肯定されていく。それに色々なおもしろ小ネタや、小道具が飽きずに出てくる。プロデュース公演と言うことで、制作的によゆうがあるのか、やってみたかったネタをできるかぎり詰め込んだような印象がある。
はえぎわでのノゾエ征爾に比べると、スケベすぎるだろうとすら思えてしまう。

2014年2月23日日曜日

tamagoPLIN「さいあいシェイクスピア・レシピ」

2014年2月21日 20時開演 三軒茶屋シアタートラム
作・演出・振付:スズキ拓朗
出演:柴田千絵里、石井友樹、清水ゆり、一平杏子、本山三火、中井沙織、鳥越勇作、川越美樹、平井千尋、浅井裕子、ジョディ、長嶺安奈、スズキ拓朗
コンドルズのダンサー スズキ拓朗とパフォーマンス集団・たまごが合体したのがtamagoPLINだそうですが、もちろん全く知りませんでした。名前の面白さに惹かれて見にいきましたが、これが大当たり。文句なく面白い1時間30分でした。
アスファルトを割って生えてくるど根性野菜たちに、母親を事故で目の前でなくした女子中学生がシェイクスピアを教えるというストーリーなのですが、なにしろありとあらゆる癖球をコントロールを気にせず投げ続ける勢いにあっという間に飲み込まれて、笑って泣いての1時間半でした。けして、一人一人の演技やダンスはうまくないのですが、それがうまく組み合わさって、シルクドソレイユの見事さではなく、サーカスの楽しさに魅了されました。

MONO「のぞき穴、哀愁」

2014年2月20日 19時30分開演 下北沢駅前劇場
作・演出:土田英生
出演:水沼健、奥村泰彦、尾方宣久、金替康博、土田英生、森谷ふみ、古籐望、高橋明日香、松永渚
初めて見る劇団の芝居を面白いと思い、公演があるたびに見にいくようになる。すると、だんだんその劇団の特徴や持ち味がわかってきて、それに慣れてくる。次に来るのは、面白いのだけれども、飽きてくくるのだ。MONOも3回目となり、そろそろ飽きてきたようだ。20年以上の歴史がある劇団なので、いきなり新しいことを始める訳もないこともよくわかるのだが、新しい芝居が見たいという最近の私の気分からすると、物足りないことは否めない。本もよく書けているし、演出もあざといくらいうまい。でも、いつものMONOとかわりない。というところが実に残念だ。
いや、実は大きな変化はあった。過去2回の公演は、男性だけのキャスティングだったのが、今回は女優が3人も入っていた。でもそれが劇団にとって大きな変化であったようには全く見えなかった。

2014年2月18日火曜日

玉造小劇店「洋服解体新書」

2014年2月8日 14時開演 座・高円寺
作:演出:わかぎゑふ
出演:うえだひろし、谷川未佳、若松武史、曾我廻家八十吉、佐藤誓、桂圭一、浅野雅博、西牟田恵、伊東孝明、小椋あずき、山藤貴子、浅野彰一、江戸川卍丸、荒木健太朗、谷畑聡、山内庸平、長橋遼也
何十年かぶりの東京の大雪の日に見にいきました。わかぎゑふの作・演出を見るのは初めてでしたが、わりと構成のすっきりした見やすい芝居でした。特に印象に残ったのが舞台転換で、前のシーンと後のシーンの登場人物が転換をするのですが、その動きがうまく整理されていてスムーズに次のシーン移行できていました。
また、関西人のせいか天皇制に対する親近感が東京より強い感じがしました。

2014年2月9日日曜日

秘密結社ブランコ「独占!女の70分」

2014年2月7日 20時開演 ムーブ町屋ハイビジョンルーム
1.「町屋の火事」
作:ふじきみつ彦 演出:鎌田順也
出演:中島真央、水野伽奈子、鶴まき、はしいくみ
2.「たまたま」
作:新井友香 演出:飯田こうこ
出演:はしいくみ、宇野なおみ、徳元直子
3.「センチメンタル嘔吐物」
作:福原充則 演出:飯田こうこ
出演:土田由有未、深澤千有紀、野々山椿、田村朋世
4.「こし…」
作・演出:鎌田順也
出演:女優たち
またまた残念というか、はっきり言ってひどい芝居を見てしまいました。芝居を集中的に見るようになって3年目、もっともひどい芝居だったかもしれません。
まず第一に、演技がひどすぎます。客が40人くらいしか入らない視聴覚教室のようなところで、新劇をひどくしたような芝居をされても観客としてはどこを見てよいのかわからず、困ってしまします。まるで普通の劇場のような目線で芝居をされるとこの人たちには観客が見えていないのではないかと思えてしまいます。
次に、構成と演出がひどすぎます。4本の短編を4人の作家が書いて二人の演出家が演出するという形ですが、4本目の「こし…」を書き演出した鎌田順也が全体をまとめてオチをつけるという役目を負わされていたようですが、自分の好きなゾンビ話に持ち込んで好きなようにやっているだけでした。前の3本にゾンビの伏線があるわけもなく、無理矢理全てを台詞で説明するという前代未聞の台本になっていました。あまりにひどいできに、悲しみや怒りを通り越して、笑うしかないような状況でした。
脚本的には、3本目の「センチメンタル嘔吐物」がおもしろく、うまく展開していけば30分物のテレビドラマが作れそうなネタでしたが、それもゾンビの出現で台無しです。
この惨劇の主な犯人と思われる鎌田順也の関わった芝居を今までに2本(ナカゴー「黛さん、現る」と、野鳩+ナカゴー「ひとつになれた」)
見ましたが、どちらも残念なできでした。私にとっては鬼門なのかもしれません。

モモンガ・コンプレックス「ご多分にもれず、ふつう 再」

2014年2月6日 19時30分開演 横浜STスポット
構成・演出・振付:白神ももこ
出演:北川結、臼井梨恵、夕田智恵
舞台美術の人々:内海正考、榎本純子、小野正彦、新宅一平、鈴木燦、中本章太、村上聡一
ダンスがよくわからないのに、見にいくのはなぜでしょう。「日常的な仕草を美しい動きに昇華する」といわれているらしいモモンガ・コンプレックスを見ましたが、やはりよくわかりません。多少、台詞があり、それを英語の字幕やアナウンスでも提示するやり方から、日本だけでなく、世界を意識していることはわかります。
メインの3人以外に7人のダンサーが出演しているのですが、その陰に隠れて板付きしていたりしていたので、彼らを「舞台美術の人々」と呼んでいるのもわかります。
しかし、演出、振付家が何を言いたいのか、ダンサーがどのような感情で踊っているのかを言葉にすることができません。
ただ、その時間が退屈であったか、そうでなかったという感想は残ります。その点で言えば、退屈なところもありましたが面白かった1時間だったと言えると思います。その面白さを言葉にできないところがもどかしいところです。

2014年2月6日木曜日

ロリータ男爵「しのび足のカリン」

2014年2月5日 19時30分開演 下北沢 OFF-OFFシアター
作・演出:田辺茂範
出演:橘花梨、大沢ラーク、はまい海、ボッチン、足立雲平、たにぐちいくこ、高橋未希、清水くん、矢頭睦、北村泉、丹野晶子、横塚真之介
今年に入ってから芝居の当たり外れが極端な気がします。傑作か、見るんじゃなかったと始まったとたんに後悔するほどの駄作か、どちらかしかなかったような気分です。
このロリータ男爵は、残念ながら外れの方でした。何しろ演技がひどい、今時の高校演劇の方がはるかにうまいだろうと思えるほどのひどさでした。台詞は棒読み、動きはぎこちない。まともに見る気になれませんでした。そして、脚本もひどい。「ガラスの仮面」と「オペラ座の怪人」と映画「ゴースト」を適当に混ぜ合わせて、最後に芝居への愛を叫ばれても、それはないだろうとしか思えません。
ロリータ男爵という面白そうな劇団名につられて見にいきましたが、完敗でした。

2014年2月3日月曜日

梅棒「ウチの親父が最強」

2014年2月1日 17時開演 東京芸術劇場シアターイースト
作・演出:伊藤今人
振付・構成:梅棒
Team A 出演:梅澤裕介、塩谷拓矢、楢木和也、大村紘望、IG、パイレーツオブマチョビアン、菊池裕太、小坂奈央美、野田裕貴、Mayuka、角田大樹、津田勇輝、美優
一昨年のKAATでの「ダンスレジェンド・ファイナル」でダントツに面白かった梅棒の公演があると知り、飛び込みで見てきました。
梅棒のダンスの特徴はストーリーがあり、それをほとんど全てダンスで表現していくところです。途中一カ所台詞がありますが、99%段だけと言っていいでしょう。当然、当て振りが多くなるわけですが、それをうまく振付の中に解消して飽きさせません。1時間半のダンスを超えせい、演出していく力はたいしたものです。既存の歌詞付きの曲を使うため、曲とダンスの距離感が微妙なところもありましたが、おおむね選曲のセンスもよく、あっという間の1時間半でした。
もちろん、ダンス特有の私の苦手なストイックさはあるのですが、それが前面に出てこないので、さほど気になりません。
このストーリーダンスを初めて見ましたが、芸として完成している感じがしてこれ以上発展していく感じはあまりしません。しかし、1年に一回ぐらいは見たいかなという感じです。

FUKAI PRODUCE 羽衣「女装、男装、冬支度」

2014年2月1日 14時30分開演 座・高円寺1
作・演出・音楽:糸井幸之介
出演:伊藤昌子、大石将弘、澤田慎司、墨井鯨子、浅川千絵、高橋義和、深井順子、鈴木利典、ゴールド☆ユスリッチ、島田桃子、熊川ふみ、日高啓介、鯉和鮎美、代田正彦
FUKAI PRODUCE 羽衣のテーマはいつも同じで「愛」についてなのですが、大きく分けて二つのパターンがあるようです。全体のストーリーがあるものと、オムニバスのような形の二つです。
今回は、「サロメ VS ヨナカーン」と同じようなオムニバス形式でしたが、ちょっと不思議な体験をしました。羽衣は、いつも踊ったり歌ったりの本人達曰く、「妙ージカル」な形なのですが、そのレベルはけして高くありません。こんかいは、それに輪をかけてレベルが低い。歌は音痴すれすれ、客席から失笑が漏れるくらい、ダンスは一切切れがない学芸会といってもいいくらいでした。なのに芝居が進んでいくうちに、ひしひしとこれは傑作なのではないかという気がしてくるのです。
芝居の肝は、様々なカップルの愛の形が、前半と後半で男女が衣装を取り替えて、繰り返すことです。それにより、同じ出来事が重層的でありながら、実は同じであるということが描かれていきます。
歌が下手でも踊りがひどくても、ついでに照明もけしてよいできではありませんでしたが、それでも感動できる舞台ができるというのは素晴らしいことだと思います。

アトリエ・ダンカンプロデュース「有頂天家族」

2014年1月21日 19時開演 下北沢本多劇場
原作:森見登実彦
脚本・演出:松村武
出演:武田航平、渡辺大輔、新垣里沙、佐藤美貴、小手伸也、小林至、成清政紀、奥田努、藤原薫、樹里咲穂、久保酎吉
選択の失敗というか、最近の自分の芝居の指向に反した傾向の芝居を選んでしまった自分が悪いとしか言いようがないのですが、耐えきれず休憩で劇場をあとにしてしまいました。確かに風邪気味で体調も悪かったのですが、地の文を様々な役者が喋って、話を展開していく手法や、狸の話なので主人公が化けた女子高生だったり、男だったり、ぬいぐるみだったり、めまぐるしく変わっていく演出もただただうるさいだけで、一つも面白く感じられませんでした。新しい振りをして実は古い演出が気にいらなっかたのだと思います。