2012年9月5日水曜日

ヨーロッパ企画イエティ#6「ウィークポイントシャッフル」

2012年9月3日 19時30分開演 下北沢駅前劇場
作・演出:大歳倫弘
出演:酒井善史、角田貴志、土佐和成、安藤真理、花本有加、福井菜月、向井咲絵
ヨーロッパ企画という名前は、いろいろな芝居で客演している役者の所属先としてよく聞く名前なので、チケットをとってみました。外部から呼ばれることが多い劇団は、たぶんよい芝居をするだろうという読みでした。
残念ながら、その読みは完全に外れました。慌てて調べてみたら、「イエティ」というのは劇団内ユニットで、本体とは別の人が作・演出されているようです。
芝居は、ザット(that)と呼ばれる怪物が怖くて外出できず、通販で暮らしている4人姉妹の家に、謎の男が車が故障したといって現れるところから恥じます。父親はザットに殺され、唯一ピザの配達人だけがいろいろなものを届けてくれる。という導入部分から、シリアスにも、ホラーにも、サスペンスにもいかず、ひたすら緩く通販の商品を喜々として説明しまくる4人姉妹。
しかし、その4人姉妹を演ずる女優がそろいもそろって、ひどくて見ていられない。台詞は、棒読み、体は動かない。ストーリーがどうのこうのいう前に、見る気が全くしないのです。まあ、ストーリーも突っ込みどころ満載ですが、そこまで気が回りませんでした。
ヨーロッパ企画本体の芝居も見てみたいものです。

2012年8月30日木曜日

バストリオ「Very Story,Very Hungry」

2012年8月29日 19時30分開演 横浜 BankArt Studio NYK
作・演出:今野裕一郎
出演:狗丸トモヒロ、橋本和加子、八木光太郎、深川奈緒美、伊藤羊子、平石はと子、秋山莉紗、今野裕一郎、児玉悟之、酒井和哉、石田美生、砂川佳代子、萬州通擴、小林光春
海外で芝居でも見ようと入ったら、それが前衛的な芝居だったりして全く訳がわからず、せめて言葉がわかれば少しは理解できておもしろいかどうかの判断くらいはできるのに、それもかなわず意味不明のまま劇場を後にするという経験が何度かありましたが、日本でも同じ目に会うとは思いませんでした。
もちろん、台詞は日本語なのでいっていることはわかりますが、台詞が理解できたところでおもしろくなるものではないことがよくわかりました。おもしろいと思うことと、台詞の意味が理解できることは、別の次元の話なんですね。
稽古の時に、演出家は役の性格や、位置づけ、なぜこのような台詞の言い方をするのか説明しながら芝居を作っていき、役者はそれを受けて役作りをしていったと思うのですが、舞台に現れたものは、棒読みの台詞と、意味不明の動作、全くつながらず何のイメージも広がらない細切れのシーンの羅列でした。
会場もこの芝居にはよくなかったと思います。昔の倉庫をそのままホールにしたので、コンクリート打ちっ放しの床、壁、柱には「坪荷重 20t」と大きく赤字で書かれている実にリアリティあふれる空間です。ここでは、すべての演技が嘘にしか見えません。普通の劇場でやった方が、まだ意味ありげに見えたかもしれません。実にお尻が痛いだけの90分でした。

2012年8月25日土曜日

ぬいぐるみハンター「ゴミくずちゃん可愛い」

2012年8月24日 14時30分開演 王子小劇場
作・演出:池亀三太
出演:浅利ねこ、満間昂平、川本直人、江幡朋子、佐賀モトキ、富山恵理子、石黒淳士、猪股和麿、平舘宏大、竹田有希子、浅見紘至、工藤史子、橋口克哉
2回目のぬいぐるみハンター観劇。相変わらず、ポップでポジティブ、前向きな作風は好感が持てます。残念だったのは、モノローグがものすごく多くて、それがブレーキとなって、スピード感がなかったことです。モノローグはどうしても説明的になってしまうので、退屈してしまうし、景色が広がらないので苦手です。
役者としては、漫画の「お坊ちゃま君」を彷彿とさせるゴウトクジの浅見紘至や、その秘書クニマツの工藤史子、ボディガードのコムスビ、橋口克哉がおもしろかったです。とくに橋口克哉はその体のでかさで、演技力以前に独特の存在感を醸し出していました。
この劇団の魅力は、ポップ、ポジティブ、スピードだと思うので、そのうちの一つがかけたこの公演は、少々残念です。

演劇企画集団ガジラ「Happy Days 幸せな日々」

2012年8月14日 19時開演 笹塚ファクトリー
作・演出:鐘下辰男
出演:千葉哲也・柿丸美智恵・とみやまあゆむ・皆戸麻衣・山口航太・寺十吾・塩野谷正幸
小劇場界のベテランのがっぷり四つ相撲に若い俳優が力を振り絞って挑む、見応えのある舞台でした。びっくりしたのは、直接的な身体接触(髪の毛を引っぱる、つかみかかる、投げ飛ばす)の多さと、その迫力です。もちろん演技でやっているのでしょうが、その荒々しい迫力は、先日のナカゴーの乱闘シーンがままごとに思えるくらいでした。
演技は楽しめたのですが、ストーリーがいまいちよくわかりませんでした。

2012年8月12日日曜日

クロモリブデン「進化とみなしていいでしょう」

2012年8月8日 19時30分開演 赤坂レッドシアター
作・演出:青木秀樹
出演:奥田ワレタ、ゆにば、久保貫太郎、花戸祐介、佐藤みゆき、武子太郎、手塚けだま、森下亮、幸田尚子、小林義典、渡邊とかげ、金沢涼恵
おしゃれな町赤坂のおしゃれなレッドシアターで、メジャーを目指す気ありありのSFのような芝居でした。自分の空想と現実が入り乱れてドタバタコメディになっていきます。台詞のきれもよく、なかなかおもしろく話は進んでいくのですが、ラストシーンで突然、国家権力による統制社会というイメージが前面に出てきて、それに対するプロテストという感じでかっこよく終わります。
ワタシは、そこで完全にしらけてしまいました。この劇団は、かっこよければ何でもよいような印象を受けたからです。
元々この劇団のメジャー指向に抵抗があったせいもあると思います。私のいうメジャー指向とは、過去作品のDVD販売、Tシャツなどの物品販売に熱心だということを指します。一つの作品から様々な形で収入を得ようとするのは、制作の力があることの印でしょうし、劇団を続けていく上でかなりの助けになることは理解できますが、そこまで気が回らない、もしくはそんなことに興味がない不器用な劇団に好感が持てます。
一回見たら十分という感じで、次回作は見ないと思います。

ハンモック

夏の寝苦しさ対策として、去年から考えていたハンモックを購入しました。最初は単管パイプとジョイント金具でつり枠を作ろうかと考えたのですが、3〜4万円のお金がかかるので、タンスを三つ移動して柱にフックを取り付けました。寝心地は、想像していたものと全く違いました。勝手に、ウォーターベッドのようなふあふあ浮いているような寝心地をイメージしていたのですが、実際には自分の体重でネットが沈み込み、寝返りも簡単にはうてないような状態になります。頭やお尻など体重が重くかかるところは、ネットが深く沈むので、自分でその部分にネットを寄せ集めて沈まないような工夫も必要です。
ハンモックで寝て気持ちがよいのは、ゆっくりとゆりかごのように揺れてくれるところと、敷き布団と触れているところに汗がたまらないところです。

2012年8月8日水曜日

ロロ「父母姉僕弟君」

2012年8月7日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:三浦直之
出演:亀島一徳、島田桃子、望月綾乃、内海正考、田中祐弥、葉丸あすか、多賀麻美、篠崎大悟、山田拓実、小橋れな
前回の笑いの内閣が非常に後味が悪かったので、いっそう魅力的に見えたのかもしれませんが、台詞の一つ一つがさわやかで、とても好感が持てました。
家族という人間関係を再構築するために、忘れたことを思い出したり、再確認したりするストーリーです。
特に、台詞のさわやかというか素直さがすてきでした。
一部,理屈が不明なところもありましたが、それでも素直に聞けたのは、役者の力量と台詞の力だと思います。
残念だったのは、装置が上下の大きなベニヤの東西パネルと正面のベニヤパネルだったのですが、東西パネルに丁番がついているのが見えたりして、ラストにこの東西が閉まって、その間に正面パネルでかくされていたものが現れる大ドンデンがあるだろうことがわかってしまうことでした。
そこは、残念。
次回公演も、是非みたいです。

第16次笑いの内閣「非実在少女のるてちゃん」

2012年8月4日 13時開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:高間響
出演:伊集院聖羅、田中浩之、小林真弓、上蔀優樹、鈴木ちひろ、中西良友、由良真介、眞野ともき、藤井真理、合田団地、浪崎孝二郎、キタノ万里、髭だるマン、柾木ゆう、向坂達矢
始まったとたんに、来たことを公開しました。すぐにでも帰りたかったのですが、狭いアゴラ劇場でお客さんの視線を感じながら退出する勇気もなく、しかたなく最後までいました。
東京都の青少年健全育成条例にに反対することをテーマにした芝居ですが、推進派はヒステリックに、反対派は理路整然と心優しく描かれています。どちらの台詞もすべて、今までどこかで聞いたことがあるものばかり。それが学芸会のような芝居と、へたくそな歌で表されていきます。
本当に私の嫌いなパターンの芝居でした。
いいたいことは様々あるでしょうが、その前に芝居としておもしろくなければ、芝居にする必要があるとは思えません。あれなら、街頭演説でもした方がまだ多くの人に聞いてもらえるだけ、ましなんじゃないでしょうか?
芝居としては見るに堪えないし、プロパガンダだとしたら、多くの人に知られないので失敗だと思います。
見に行ったことを、心から後悔しています。

2012年8月3日金曜日

中屋敷法仁「露出狂」

2012年7月30日 19時開演 渋谷パルコ劇場
作・演出:中屋敷法仁
出演:江本時生、遠藤要、入野自由、玉置礼央、畑中しんじろう、磯村洋祐、板橋瞬谷、稲葉友、孔大維、遠山悠介、長島敬三、松田凌、間宮祥太朗、森崎ウィン
中屋敷法仁演出作品を見るのはこれで2回目ですが、早くも飽きました。ダイヤローグ、モノローグの区別なく、短いセンテンスを早口でしゃべりまくる。衣装は、ユニフォームのようにみんな同じ学生服で、誰が誰だか区別がつきにくい。何かに似ているなあと考えたら、AKB48でした。AKBも同じ衣装で、魅力を感じて中に入り込めば、大島優子だの前田敦子だの区別がつきますが、興味がなくて遠目から見たら誰が誰だか見分けるのは難しいです。今回も学生服で喋りまくられて、見分けがつかない中、一人目立っていたのは、柄本時生でした。「黄色い月」の時はわざとらしく耳障りだった台詞回しが、画一的なしゃべりの中では、魅力的に聞こえます。画一的なかっこよさや、安直な動きの中では、ださい独特な仕草が、とても新鮮に見えます。
柄本時生がうまいのは、自分とそのほかの画一的な役者達とを対立構造に持っていかず、あくまでマイペースで芝居を進めていくところです。それにより、画一の海でふわふわ浮いているように見え、他の役者が柄本を押し上げているように見えます。柄本家の血筋のなせる技でしょうか。
中屋敷演出の魅力は、そのスピードで観客を巻き込み、テーマをぶちこわしていく爽快感にあると思います。前回の「女人マクベス」では、その対象がシェークスピアのマクベスでであったわけで、あの大家の大作を清水もこみちもかくやと思えるスピードであらみじんに切り刻み、新しい料理のように見せました。今回の料理は失敗だと思います。もしくは、私が、その味付けに飽きただけでしょうか。
この芝居を見る前に、9月の「柿食う客」公演のチケットを予約してしまいました。
少し後悔しています。

2012年7月27日金曜日

ナカゴー「黛さん、現る」

2012年7月26日 20時開演 王子小劇場
作・演出:鎌田順也
出演:佐々木幸子、鈴木純子、墨井鯨子、田畑菜々子、鎌田順也、高畑遊、篠原正明、甘粕阿紗子、菊池明明、飯田こうこ
高校時代の友人3人が都電の駅で待ち合わせて、もう一人の友人の家に行こうとしている。
どうもその友人がストーカー被害にあっているらしく、それを助けに行くつもりなのだ。家に着くと、そこには、昔所属していた劇団の仲間(カムヰヤッセンの甘粕阿沙子実名そのまま)もいて、じつはストーカー騒ぎはあっさり解決していたことがわかる。高校時代の話から、同じ美術部で事故でなくなった親友だった子を思いだし、喪失感のあまり海に行って死にたくなる。なぜか全員にそれが感染し、海に行こうとするが、一人夜アルバイトのある子が、正気を取り戻し、金槌を使った大立ち回りで阻止しようとする。
延々と続いた立ち回りの後、全員痛さのあまり正気を取り戻し、悪魔払いをして亡くなった子の記憶を忘れる。
あらすじをまとめてみると、荒唐無稽というか行き当たりばったりというか、何が言いたいのかわかりません。
それよりも気になったのは、最初の駅での会話が、妙に間の悪い訥々とした調子で始まったことでした。
現実の会話は考えながらしゃべるので、おかしなところに間があったり、話が途中で飛んだりしがちなものですが、それを再現したのかもしれませんが、舞台上で聞くとリアルには聞こえず、へたくそに聞こえるだけでした。
金槌の立ち回りまでは、少ししらけた雰囲気が漂いつつ、無理矢理話が進んでいきます。
立ち回りで、一気にヒートアップして、おもしろかったです。
もしかしたら、この立ち回りがやりたかっただけなのかもしれません。
次回公演は、見に行かないと思います。

ハイバイ「ポンポン、おまえの自意識に小刻みに振りたくなるんだポンポン」

2012年7月25日 19時開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:岩井秀人
出演:荒川良々、岩瀨亮、安藤聖、平原テツ、川面千晶、坂口辰平、永井若葉、師岡広明、岩井秀人
「ある女」に続いて2回目のハイバイ観劇。前半が、ファミコンをする子供の話。後半が、うさんくさい劇団の稽古の話。前半の子供パートは、荒川良々の個人芸炸裂。後半は、岩井秀人のあやしい芝居爆発という、一度で二度おいしいともいえる芝居でした。
巷では、ハイバイの傑作といわれているらしいですが、どこが傑作なのかよくわかりませんでした。
私のハイバイの興味は、岩井秀人の演技にあることは変わりませんでした。

2012年7月15日日曜日

範宙遊泳「東京アメリカ」

2012年7月11日 14時開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:山本卓卓
出演:大橋一輝、熊川ふみ、杢本幸良、浅川千絵、斎藤マッチュ、高木健、田中美希恵、福原冠、山脇唯、緑茶麻悠
作・演出の山本卓卓がTwitterで、「芝居の方法論を語るよりも、舞台上で役者がどれだけ生き生きしているかの方が重要だ。」というようなことをつぶやいていたので、見に行きました。本番直前の小劇場演劇の稽古場風景。思いつきのように様々な要求を出す演出家。
理解できないながら何とかそれに応えようとする役者。
なぜか、遅刻ばかりする演出助手。
はたまた、演出家と女優ができていたり、理屈で役柄を理解しようとする新人がいたり。
実は、この芝居を見た後、ある劇団の稽古に立ち会う機会がありました。実際の演出家も、結構、わがままな要求を矢継ぎ早に出していて、おかしかったです。
役者が実名で登場するすることや、演出家役の役者がいることで、現実なのか虚構なのかだんだん曖昧になっていき、降板した役者の代役に海王星人が現れたり、作り物のレーザーガンで人が死んだりします。
現実と虚構の間をぬっていく脚本と演出はうまいと思いました。
しかし、悪い芝居の時に感じたように、「前に見た気がする」感が否めません。
次回公演を見るかどうかは、微妙なところです。

2012年7月11日水曜日

悪い芝居「カナヅチ女、夜泳ぐ」

2012年7月10日 19時30分開演 王子小劇場
作・演出:山崎彬
出演:吉川莉早、呉城久美、植田順平、森井めぐみ、大河原瑞穂、村上誠基、渡邊圭介、、大塚宜幸、池川貴清、畑中華香、山崎彬、宮下絵馬
悪い芝居という魅力的な劇団名に誘われて、観劇しました。芝居をしていない役者も舞台上にいて、必要に応じて様々な役を演じていく形で、芝居は進みます。道具も学校椅子と机が二つくらい。窓や、扉などは、必要なときに役者が持って出てきたりします。
役者の若さとチームワークの良さで、話はテンポよくどんどん進みます。
物語は、河童と人間の合いの子の主人公蛍は、気持ちが高揚すると体が宙に浮いて、空が飛べる。なぜだかわからないが、高校卒業と同時に東京に家出するが、12年ぶりに故郷に帰ってくる。しかし、東京の12年間はおろか、故郷でのこともほとんど記憶がない。親友らの助けを借りて記憶をたどってみると、どうも自分は4年前に自殺したらしい。記憶がないのもそのせいらしい。河童の力で過去に飛んで帰り、自殺しようとしている自分を説得しようとする。
うーん、実に話がめちゃくちゃですね。私が肝心なところを聞き逃していたのか、勢いに乗せられて見過ごしていたのか、よくわかりません。
とにかくラストは、東京に夜行バスで着いたときのモノローグを、テンション高く繰り返して唐突に終わる。
十分楽しかったし、おもしろかったです。しかし、こういう芝居って前に見た気がするんですね。
役者がいつも舞台にいる。(出番でない人が、楽屋に引っ込まない。)
舞台の転換も役者がやることで、芝居の中に積極的に取り込んでしまう。
過去の自分を助けに行く物語。
うまくいったり、いかなかったりしていた芝居を昔、具体的にどれといえないけれど,
さんざん見た気がする。
別に、似ていてもいいんです。でも、そんなことが気にならないくらいおもしろいわけではなかったことが、少し残念です。

2012年7月9日月曜日

可児市文化芸術振興財団「高き彼物」

2012年7月5日 14時開演 吉祥寺シアター
作・演出:マキノノゾミ
出演:石丸謙二郎・田中美里・品川徹・金沢映子・酒井高陽・細見大輔・藤村直樹
人生を生きるということに、正面から取り組んで真摯に考える良質な作品。物語の展開は、ユーモラスで涙もあり、ラストはハッピーエンドで終わる。誰も、なんの文句もつけないような芝居でした。私も感動しましたし、泣きました。
ただ一つ気になるのは、ラストの終わり方です。
昔、TVの中継録画で、マキノノゾミ作・演出、森光子主演で「本郷菊富士ホテル」を見ました。大正から戦前にかけて、いろいろな文豪や哲学者、政治活動家が集まった本郷の菊富士ホテルを切り盛りする女将に森光子が扮して好演しました。また、がらっぱちな伊藤野枝を高畑淳子が演じて、印象に残っています。
この芝居のラストも、終戦後、焼けてしまった菊富士ホテルの跡地の屋台に、森光子が現れて再建を誓うというハッピーエンドでした。その時も、このラストは不必要だ、ない方が芝居の印象がより深まると思った記憶があります。
「高き彼物」でも、主人公が昔、高校教師を辞めた理由(宿直室で寝てしまった男子生徒に欲望を覚えて思わずオナニーをしてしまったことを恥じ、その学生を深く傷つけたことを恥じて退職する。)が、娘の婚約者として現れたその生徒により記憶にもないこと、転校の理由も両親の離婚による物であることがわかり、主人公の暗い噂は打ち消されます。また、肝臓癌だとの思い込みも、膵臓炎であるとわかり、ハッピーエンドを迎えます。
しかし、これはハッピーなことでしょうか?
「自分の過ちを自分の物として、自分の一部として生きる。」が、信条の主人公にとって、自分の一部として10何年一緒に生きてきた想いが、一瞬にしてなくなってしまったのです。これは、かなりの不幸だと思うのですが。

オフィスコットーネプロヂュース「コルセット」

2012年7月4日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:前川麻子
出演:伊佐山ひろ子・明星真由美・松永玲子・有園芳記・白井圭太・十貫寺梅軒
伊佐山ひろ子といえば、40年前の日活ロマンポルノで、おっぱいが小さくてもエロい人はエロいことを教えてくれた人でした。でも、それから40年たっているし、もともと映像の人で舞台経験はほとんどないようですから、大丈夫だろうかと心配しながら見に行きました。
結果は、ぎりぎりセーフという感じでしょうか。緊張のせいか、年のせいか、台詞が落ち着かず、周りに対する反応も鈍いものでした。その分、残りの二人の女優が大車輪の活躍でストーリーを進めていくという感じでした。
話は、新任の美術教師(明星真由美)が生徒と無理矢理関係を持ったという噂が流れ、事実無根にもかかわらず、噂だけがエスカレートして周りが右往左往してしまう。犯人は、中年の国語教師(伊佐山ひろ子)で、関係を持った生徒に捨てられると同僚の英語教師(松永玲子)の息子に手を出したり、美術教師の日記をねつ造して夫に読ませ仲を裂いたり、以前には音楽教師にストーカーしてやめさせたりする、極悪非道ぶり。
でも、舞台上では、我関せずのマイペースを貫くという不思議な感じでした。それを犯人と誤解される美術教師を演じた明星真由美が、思ったことを口にすぐ出す天然が入ったキャラクター全開で演じて、カバーしきっていました。
あて書きの台本だと言うことなので、役者の力量、性格を考えて、この構成になったものと思われますが、この不思議なバランスを作り出した作・演出の前川麻子の才能はたいしたものだと思います。
ぎりぎりセーフな伊佐山ひろ子でしたが、ラストの「愛なんかいらない」という台詞には、ゾクッとする魅力がありました。あれだけでも、伊佐山ひろ子が出てきた価値があると思います。
前川麻子の次回作は、ぜひ、みたいと思いました。

2012年7月4日水曜日

ままごと「朝がある」

2012年7月3日 19時30分開演 三鷹芸術文化センター星のホール
作・演出:柴幸男
出演:大石将弘
チケットを予約した後で、苦手な一人芝居なことに気がつき、キャンセルもできないので気が進まないまま、見に行きました。
課題曲のコンクールを模したような形で、同じ台詞をさまざまなバリエーションで語っていきます。独特なアクセントがリズムを生み、時々挿入される映像や照明がアクセントにになって、飽きさせない工夫がされています。しかし、地味な前半は正直半分寝ていました。後半は、声も振りも音も大きくなり、何とか起きていられました。
そして、最後には歌ってしまうのですが、これが微妙に音程がずれていて、笑っていいのか盛り上がるべきなのか心が迷ってしまいます。
動きもだんだんダンスのようになってくるのですが、発声に従って動きがあるという関係が明確にわかるので、あまり気になりません。しかし、歌は、新しい次元に入ると言うことなので、あの微妙な下手さ加減がとても気になりました。
演劇の枠を広げるのか、演劇を飛び越えた表現をめざしているのかわかりませんが、とても明快な方法論があることはわかります。
それが、どれくらい有効なのかなわかりませんが。
次回公演も、ぜひ、見たいと思います。

2012年第二四半期観劇のまとめ

2012年4月から6月に見た芝居は、以下の通り。
4月7日 リジッター企画「もし、シ」
4月12日 離風霊船「SUBJECTION」
4月17日 柿食う客「絶頂マクベス」
4月24日 チェルフィッチュ「現在地」
4月26日 毛皮族「軽演劇」

5月1日 ナイロン100℃「百年の秘密」
5月2日 サンプル「自慢の息子」
5月15日 桟敷童子「軍鶏307」
5月16日 イキウメ「ミッション」
5月17日 はえぎわ「I'm here」
5月19日 コーヒーカップオーケストラ「チャンス夫妻の確認」
5月25日 バナナ学園純情乙女組「翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)」
5月30日 東京乾電池「恐怖ハト男」

6月1日 温泉キノコ「コアラちゃんの世界」
6月6日 タテヨコ企画「鈴木の行方」
6月13日 五反田団「宮本武蔵」
6月20日 ネオゼネレータープロジェクト「The Icebreaker」
6月21日 長塚圭史「南部高速道路」
6月26日 競泳水着「Goodnight」
6月30日 チャリT企画「12人のそりゃ恐ろしい日本人2012」

の、20本。相変わらずの貧乏の中、よく頑張ったと思います。
この中で、ベスト3は、
離風霊船「SUBJECTION」
サンプル「自慢の息子」
長塚圭史「南部高速道路」
の、3本でした。
離風霊船は、私がよく知っている昭和の小劇団のにおいがする劇団でした。
サンプルは、人間の自立と依存に関して新しい見せ方をしてくれました。
南部高速道路は、劇中の時間の流れがすてきでした。

次点は、柿食う客「絶頂マクベス」、はえぎわ「I'm here」と、バナナ学園純情乙女組「翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)」です。
柿食う客は、登場した女優さんがほとんどかわいかったです。
はえぎわは、よく理解できていないですが、そのさわやかさがすてきでした。
バナナ学園純情乙女組は、あのパフォーマンスをどこまで維持して走り続けられるのか、見届けたいと思います。



2012年7月1日日曜日

チャリT企画「12人のそりゃ恐ろしい日本人2012」

2012年6月30日 14時開演 座高円寺1
作・演出:楢原拓
出演:熊野善啓、松本大卒、内山奈々、雷時雨、前園あかり、川本直人、小杉美香、北側竜二、海原美帆、岡田一博、原扶貴子、浪打賢吾、飯塚克之、大石洋子、おくむらたかし、久保田南美、平田耕太郎、堤千穂、小寺悠介、小見美幸、室田淫人、丸山夏未、津田拓哉、下中裕子
小劇場を見ているとここに所属している役者がよく客演しているので、それなら一度本体を見てみるかと思って、高円寺に足を運びました。
結果は、約2時間の間、全くおもしろくありませんでした。あまりにもおもしろくなかったので、私の見方が間違っているのかと思い、ネット上で劇評を探してみました。この作品の劇評は見つかりませんでしたが、過去の作品の劇評によれば、「前面でコメディを演じつつ、背景にシリアスな問題を展開して作品に深みをもたせる。」のが、この劇団の持ち味のようです。
しかし、私の見たところ、コメディらしい台詞の繰り返しによるギャグはただ叫んでいるだけで少しも笑えないし、背景にあるべきシリアスな問題(今回は、林マスミのヒ素事件から裁判員裁判の問題、ホームレスの派遣村問題、女子高生のいじめ自殺事件など)は、前面に並列に提示されて、芝居がばらばらでまとまっていないことを明確にしているだけでした。
東京乾電池の芝居には、簡単におもしろくないと言わせないようなわけのわからない迫力がありましたが、チャリT企画のこの芝居は簡単におもしろくないと言い切れてしまいます。
次回公演は、絶対見ないと思います。

2012年6月28日木曜日

競泳水着「Good night」

2012年6月26日 14時30分開演 王子小劇場
作・演出:上野友之
皆本朋和、竹井亮介、吉野みのり、黒木絵美花、黒田聡志、澤田慎司、清水遙、篠原彩、皆本亮、瀬川英次、皆本純子、岡田あがさ、藤原けい、川村紗也、堺万里子、阿久澤菜々、平市朗、菅野貴夫、大林つかさ、大川翔子
つぶれかけのレストランで、昔アルバイトで働いていた女の子が転勤で北海道に行くので送別会が行われる。そこに現れるいろいろな人々。けんか別れしたオーナーの弟、兄二人を心配する妹。間違えて誘われた元予備校の講師。融資の返済を催促しにきた銀行員。
水道管の破裂事故が起こり送別会はお流れとなり、みんな様々な思いを抱えて、去ってゆく。
「日常のささやかな出来事を優しくすくい上げて、しっとりと提示してみました。」的な、最近よくある芝居でしたが、年寄りの私には、全く共感できずおもしろくなかったです。
いつも思うのですが、この手の芝居には、役者の力量と、演出のナイーブでしたたかな演出力がないかぎり、おもしろくなるのは難しいのではないでしょうか。
今回の芝居では、間違って呼ばれた元予備校講師が、無駄に明快な発声で現れる様々な問題に解答を与え、ストーリーを展開していくのは、ルール違反という気さえします。
次回公演は、見ないと思います。

2012年6月22日金曜日

長塚圭史「南部高速道路」

2012年6月21日 14時開演 三軒茶屋シアタートラム
原作:フリオ・コルタサル 構成・演出:長塚圭史
出演:安藤聖、植野葉子、梅沢昌代、江口のりこ、黒沢あすか、真木よう子、赤堀雅秋、梶原善、加藤啓、小林勝也、菅原永二、ジョンミョン、横田永司
原因不明の渋滞に巻き込まれ、高速道路の上で立ち往生する人々。なぜか渋滞はいっこうに解消されず、日常から切り離された人々は、高速道路の上で生きていくことを余儀なくされる。四方が客席の真ん中舞台で、美術と言えば、壁面に取り付けられた4本のナトリウム灯だけ。後は、役者が持つ車を表す傘と、バック類だけというほとんど何もない舞台で、繰り広げられる不思議な時間感覚の物語でした。
最初のうちは日常と同じ時間が流れているのに、知らないうちに少しゆっくりなどこか風通しのよいような不思議としか言いようのない時間の流れに、舞台も観客席も巻き込まれていました。それは、あまりにも自然な変化だったので、最後に渋滞が解消されて人々が動き出して、初めて自覚できるような繊細な感覚でした。まるで、うたた寝から覚めて夢を見ていたことに気づくような、少し幸せな感覚。
実におもしろい2時間の演劇体験でした。
長塚圭史、恐るべし。次回の長塚作品も、是非見たいと思います。

2012年6月21日木曜日

ネオゼネレイタープロジェクト2012「THE ICEBREAKER」

2012年6月20日 19時30分開演 下北沢「劇」小劇場
作・演出:大西一郎
出演:石丸だいこ、井上英行、猪股敏明、今井勝法、碓井将仁、木村健三、小林麻子、中山朋文、畑中葉子、保倉大朔、森口美樹、依田朋子
どうも自ら「B級」と名のる芝居とは、相性が悪いような気がする。「あひるなんちゃら」とか「コーヒーカップオーケストラ」と同じように、私には楽しめない芝居だった。
私の中では、「普通の芝居」である。特にうまいわけでもない演技と、普通な演出。私が見たいのは、荒削りかもしれないがそこにしかない個性、発想、情熱なのだと思う。
「普通の芝居」と書いてみたが、「普通の芝居」=「新劇」というイメージが私の中にはあるようだ。しかし、彼らの芝居は「新劇」ではないだろう。
正確には、私の中の「平均点以下の芝居」ということだ。「平均点以下」とは何かと言えば、要するに「おもしろくなかった」と言うことだ。
「B級SFホラー」と称しているが、最後に神様が出てきてオチをつける話は、SFではなくてファンタジーだと思う。
次回公演は、見ないと思う。

2012年6月16日土曜日

五反田団「宮本武蔵」

2012年6月13日 15時開演 三鷹市芸術文化センター星のホール
作・演出:前田司郎
出演:大山雄史、小河原康二、萩野友里、金子岳憲、久保亜津子、黒田大輔、前田司郎、岸井ゆきの
この劇団は、別の作品をCSのシアターTVで放映されたものを録画して見たら、全く理解できなかったので、一度、生で見なければいけないと考えたのが動機でした。
誰かが五反田団のことを、「脱力系口語体演劇」と呼んでいましたが、言い得て妙でした。「ぼそぼそといいわけじみたことを頑なにしゃべり続ける。」それが、この劇団の基本であり、すべてです。宮本武蔵も、時代劇であることも、たいした意味はありません。過去の作品も次回作もすべて同じだろうと思えてしまいます。
あの語り口に好感が持てれば楽しいのかもしれませんが、特に興味を持てなかった私には、この1本で十分という感じでした。
次回公演は、見に行かないと思います。

2012年6月7日木曜日

タテヨコ企画「鈴木の行方」

2012年6月6日 19時30分開演 下北沢駅前劇場
作・演出:横田修
出演:青木柳葉魚、奥田洋平、佐藤滋、西山竜一、館智子、ちゅうり、奈賀毬子、市橋朝子、久行しのぶ、館野完、林ちひろ、大塚あかね、五十嵐明、向原徹
前説に出てきて初めて気がついたのですが、作・演出の横田修さんは、昔、一二度一緒に仕事をしたことがある青年団(元青年団?)の横田さんでした。前説の顔を見て、初めて知りました。
芝居は、中年になり「自分がだんだん消えていくような気がする主人公が、子供時代の親友を散歩の途中で探し始める。」という、自分探しの旅というような、よくあるというか、演劇界不変のテーマの一つというか、まあ、そんな感じでした。
現在と子供時代の回想シーンが入れ替わり立ち現れるのですが、その転換をスムーズにするため、役者が小道具の転換をしたりするのが、すごく気になりました。セットの一部の踏み台から、麻雀卓が出てきたり、犬のぬいぐるみやひよこのぬいぐるみがでてきたり、けんかのシーンでピンポンのボールを大量にぶつけ合ったり、突然、シャワーのような本水の雨を降らしたりして、観客を楽しませようとしていましたが、全部中途半端でご都合主義的に見えてしまいました。回想シーンと現在の違いを衣装で表すため、不自然な退場もしばしば見られ、気になって仕方がありませんでした。
逆に小道具も衣装も最小限に抑えて、ミニマムな形でこの芝居を作ったら、おもしろいんじゃないかと観劇中に考えてしまいました。たぶん、次回公演は見ないでしょう。

2012年6月2日土曜日

温泉キノコ「コアラちゃんの世界」

2012年6月1日 19時開演 下北沢駅前劇場
作・構成・演出:大堀光威、中西広和
出演:佐藤もとむ、井本洋平、大堀光威、中尾ちひろ、たにぐちいくこ、井澤崇行、中西広和、時田愛梨、家納ジュンコ、羽田謙治
九つの短い芝居というか、コントが並べられた作品でした。一貫したテーマがあるわけでもなく、オムニバスではないと思います。
開演前に、突然、コアラのかぶり物をした役者がカラオケで歌い始めるという演出がありました。別にうまいわけでもなく、場つなぎのつもりなのでしょうか。しかし、始まる前から、場つなぎとはなんなんでしょう。
見ている間中、「彼らは、誰に向かって、芝居をしているのだろう。」というのが疑問でした。それぞれの芝居のテーマや笑いは、よくコントでありそうな月並みなものでしたが、それを誰に向かって演じているのか全くわかりませんでした。少なくとも、私の年代や、趣味嗜好には全く響いてこないものでした。
最後の「サウンド・オブ・口臭学」だけは、ミュージカルのパロディとしておもしろかったです。いかにもミュージカル風なメロディに乗せて、歌で説明しなくてもよいことを歌い、ストーリーの進行とともに、同じメロディの変奏曲で歌い上げる。ミュージカルの形式を逆手にとって、思わずクスリと笑ってしまいました。

2012年5月31日木曜日

東京乾電池「誰か、月光 恐怖・ハト男」

2012年5月30日 19時開演 下北沢本多劇場
作:加藤一浩
演出:柄本明
出演:江本時生、山地健仁、茨木真之介、戸辺俊介、西田静史、江本明、飯塚祐介、山肩重夫、綾田俊樹、血野滉修、川崎勇人、吉橋航也、田中洋之助、伊東潤
昔、昔、渋谷の山手教会の下にジャン・ジャンがあった頃、そこで見た東京乾電池は、死ぬほどおもしろかった記憶があります。わけは全くわからなかったけれど、ただひたすらおもしろかったのです。
30数年たって、彼らはさらに進化しました。わけがわからない上に、おもしろいのかどうかもわからなくなったのです。
あまりのわけのわからなさに、途中で何分か寝てしまったほどです。
このブログは、感想をメモして芝居を見続けるモチベーションを保つために始めたものですが、ここにきて「感想をメモするにも、言葉にならない」芝居に出逢ってしまいました。
雑居ビルの5階のエレベーターホール、わけありげな男達が出入りして会話を交わしていく。商品の移動を頼まれたが、依頼主が現れず途方にくれる便利屋、絵本作家の書斎に住み着いているアルバイト達、妻がスペインに行ってしまい連絡が取れなくて困惑するサラリーマン、有名らしい皮膚科にやってきた兄弟、漫画喫茶に済んでいるような中年男、殺人があったようななかったような。ハトの怪人がいるような、いないような。突然、ラストはかっぽれを踊っておしまい。
特に芝居がうまい人がいるわけでもなく、不思議なムードだけが全体を覆っている。
東京乾電池の芝居は、あの不思議なムードを楽しむものなのでしょうか?
私には、わかりません。
次回公演を見に行くべきなのか、見なくてもよいのか、それすらもわかりません。

2012年5月26日土曜日

バナナ学園純情乙女組「バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮)(仮)(仮)」

2012年5月25日 17時開演 王子小劇場
構成・演出:二階堂瞳子
出演:加藤真砂美、野田裕貴、前園あかり、浅川千絵、あに子、飯田一期、石黒淳士、石澤希代子、今野雄二、海田眞祐、大川大輔、高麗哲也、紺野タイキ、嵯峨ふみか、サノケイコ、七味まゆ味、Jaamil Kosoko、高田百合絵、高村枝里、田中正伸、出来本泰史、中林舞、楢原拓、橋本和瑚、長谷川雅也、林田亮、引野早津希、日高愛美、保坂藍、堀越智太郎、三塚瞬、山田伊久麿、山森信太郎、吉原あおい、吉原小百合
昔、昔、私がまだ高校生だった頃、「アングラ演劇」「アングラパフォーマンス」と呼ばれた演劇がありました。元々の理屈は、その当時欧米に留学していた人たちが持ち帰ったものだと思うのですが、物語のストーリーやテーマ、役者の演技論などよりも、「生の肉体」「生の感情」を観客にぶつけることが大事だとして、裸になったり火を噴いたり、叫び回ったりしていました。音楽のパンクロックに近いものがあると思います。
今回のバナナ学園は、まさにこれです。始まってすぐ、「これは、オタ芸によるアングラ演劇の復活だ。」と、思いました。
びしょ濡れになるほど、水が降る。水だけでなく、ワカメまで降る。たいまつは燃える。花火が上がる。爆竹が爆発する。紙吹雪はまかれ放題。
マイクに向かって叫んでいるが、何を言っているのか全くわからない。
とにかく、マイクに向かってなにか叫んで、大勢でオタ芸で踊る。この繰り返しが、猛スピードで突き進んでいきました。
本番中は、とにかく次に何か起こるのかわからないので、はらはらわくわくしながら、見ていただけでしたが、終演後、冷静になって考えてみると、あの複雑な構成と、ハイスピードな展開をスムーズに行うために、かなりのハードトレーニングがあったと推察されます。役者達は自分の感情を思う存分爆発させられて、一番楽しかったのではないでしょうか。
今回の芝居がおもしろかったと言うよりも、今後、バナナ学園がどのような方向に進んでいくのか、よりパワーアップするのか、方向転換するのか、はたまた、失速してしまうのか、見届けるまで見続けたいと思います。

2012年5月19日土曜日

コーヒーカップオーケストラ「チャンス夫妻の確認」

2112年5月19日 14時開演 王子小劇場
作・演出:宮本初
出演:宮本初、前田昂一、後藤彗、モリサキミキ、田中慎一郎、ともい江梨、椎橋綾那、上山光代、後藤陽子、鹿島ゆきこ、長瀬みなみ、竹田りさ、赤本颯、菅山望、川島啓嗣、皮墓村、ヨウラマキ
作・演出の宮本初が前回見てとてもおもしろかったはえぎわの演出助手をしていたと言うことで、結構期待して見に行ったのですが、結果は残念の一言。
テンポは悪いし、ギャグは寒い、物語はつまらない。よいところが見当たらないできばえでした。何しろ役者がおもしろがってやっていないというか、与えられた台詞を繰り返しているだけという感じでした。
物語の作り方にはえぎわの影響が見えるのですが、批評なき真似は本家の劣化版にしかならないという見本のようでした。
チラシに「馬鹿馬鹿しい物語をストイックに追求していきたい」とありましたが、こういうことを公言している劇団は、言うほどでもないところが多いようです。
次回公演は見に行かないつもりです。

はえぎわ「I'm here」

2012年5月17日 19時30分開演 地も北沢ざ・スズナリ
作・演出:ノゾエ征爾
出演:井内ミワク、町田水城、鈴真紀史、滝寛式、竹口龍茶、踊り子あり、川上友里、鳥島明、富川一人、山口航太、ノゾエ征爾、金珠代、萩野肇、鈴木将一朗、笠木泉
この劇団を見ることに決めたのは、どーんと大きく写ったプールのチラシがすてきだったからです。どんな芝居をするのか予備知識ゼロで見ましたが、思いもよらず、素晴らしい観劇になりました。自己紹介から始まり、なぜか全員追い詰められた状況にあることがだんだん明らかになります。場面転換は素早く、時間はめまぐるしく過去と現在を行ったり来たりします。会話にはユーモアとペーソスがあふれ、よくわけはわからないのだが、ぐいぐい物語の中に引き込まれてしまいました。
ラストでは、全員、結構大変な状況にいるけれど、それでも私たちはここにいる。「I'm here」と自己紹介をもう一度して、終わります。うまく言葉にしていえないけれど、少し感動しました。
次回公演も是非見たいと思います。

2012年5月17日木曜日

イキウメ「ミッション」

2012年5月16日 19時30分開演 シアタートラム
作:前川知大
演出:小川絵梨子
出演:渡邊亮、浜田信也、井上裕明、岩本幸子、安井順平、太田緑ロランス、伊勢佳世、盛隆二、森下創、大窪人衛、加茂杏子
以前、イキウメの「散歩する侵略者」のゲネプロを見る機会があって、その時、場面転換で芝居がクロスフェードする演出に感心したのが、今回の観劇の動機でした。
「ミッション」では、芝居自体のクロスフェードはありませんでしたが、場面転換の道具の移動を役者が実にスムーズに行って、転換による集中力の途切れを感ずることなく、2時間の芝居を一気に見ることができました。おかげで、終演後一度に足腰のこわばりを感じて、しばらく動けませんでした。
いかに他の芝居では、転換により集中力が途切れているか、考えさせられました。こんなに丁寧な演出は、この劇団ならではと思います。「平凡な日常生活に、ささやかな違和感が知らず知らずのうちに入ってきて、いつの間にか新しい世界が見えてくる。」というのがテーマだと思うのですが、結構さりげなく描かれているので、うっかりすると単なる家庭劇と思ってしまいそうです。
役者では、妙に賢くて独善的ないやな奴を演じた大窪人衛が目立っていました。
今後も、注目していきたいです。

2012年5月16日水曜日

劇団桟敷童子「改訂版 軍鶏307」

2012年5月15日 19時30分開演 すみだパークスタジオ
作・演出:東憲司
出演:中井理恵、稲葉能敬、鈴木めぐみ、大手忍、山本あさみ、川原洋子、外山博美、徳留香織、椎名りお、もりちえ、新井結香、原口健太郎、桑原勝行、深津紀暁、井上昌徳、橋本克己、板垣桃子
つい字面だけを見て、いきおいで「ざしきわらし」と読んでしまいますが、正しくは「さじきどうじ」だそうです。
私の中では、状況劇場→新宿梁山泊→桟敷童子とつながる唐十郎派閥の劇団というイメージでした。もちろん、そんな派閥があるわけではなく、あくまで私の中での勝手な想像に過ぎません。
今回、初めて見に行ったこの劇団に対する興味は、唐十郎好き三代目の演劇人が、どんな芝居を見せてくれるのか、ということでした。唐十郎の物語性、ロマンチックさを、どんな新しい地平で見せてくれるのかというのが、観劇前の私の勝手な期待でした。
観劇後の私の感想は、「これは演歌だ」という一言に尽きます。反戦、反体制にまで突き抜ける、息子を思う母の狂気をテーマに、ラストに大仕掛けな装置を出してお客を圧倒して終わらせる。
一見、ドラマチックでダイナミックなテーマと展開に見えますが、実際は先のストーリーがすぐ読めてしまう予定調和的な芝居になっていました。
きっと、作・演出の東憲司は確信犯なのだと思います。日本人の心情を揺さぶるエピソードを並べて、最後に大仕掛けな脅かしを見せてカタルシスを与えれば、オーケーを考えているように見えます。妙に前舞台が狭く、書き割りで奥を隠し続ける装置も、ラストに大物が出てくることが容易に想像できますし、それが飛行機であることも「希望の飛行機の塔」という台詞でわかってしまいます。何よりも、オープニングの竹槍訓練の場面が説明的すぎて、単調で退屈でした。あそこがもっと、わけがわからない演出なら先の展開が読めなくて興味が持てたのかもしれませんが、あそこで、70%くらいストーリーがわかってしまうのは、いただけません。
まるで、無法松の一生の母版のような「演歌」な芝居でした。次回公演は、見に行かないと思います。

2012年5月6日日曜日

サンプル「自慢の息子」

2012年5月2日 19時30分開演 駒場アゴラ劇場
作・演出:松井周
出演:羽場睦子・古館寛治・古屋隆太・奥田洋平・野津あおい・兵藤公美
第55回岸田戯曲賞受賞作品の再演公演だいうことは、観劇後に読んだパンフレットで知りました。先入観を持たずに見られたのは、よかったかもしれません。
自分の部屋にぬいぐるみの王国を作る引きこもりの男、徘徊症で夜は街角に立つ母親、殺人衝動を抑えられない兄、そんな兄に依存している妹、いもしない赤ちゃんの洗濯をし続ける隣の女、全員、現実と妄想の間で宙ぶらりんになり、身動きがとれないでいる。兄と妹は、引きこもりの王国に身を寄せることで再起を果たそうとするが、兄は隣の女のいもしない赤ちゃんの二代目になることで新しい妄想を獲得し、妹は引きこもりと結婚することで、新たな依存を獲得する決意をする。物語は、ラスト、現実と妄想の間で身動きできない彼らを象徴するように、ストップモーションで暗転する。妄想のツアーガイドをする宅配便の男は、母親と結婚すると表明することで、現実と妄想、両方を引き受けることを表しているようだ。それは、作者の意志を表しているのかもしれない。
次回公演もぜひ、見たい。

2012年5月2日水曜日

ナイロン100℃「百年の秘密」

2012年5月1日 19時開演 下北沢本多劇場
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:犬山イヌコ、峯村リエ、萩原聖人、山西惇、大倉孝二、近藤フク、田島ゆみか、廣川三憲、松永玲子、長田奈麻、みのすけ、村岡希実、藤田秀世、水野小論、猪股三四郎、小園茉奈、安澤千草、伊与勢我無、木乃江祐希、
私の中のケラリーノ・サンドロヴィッチのイメージは昔、有頂天でチューリップの心の旅を変なハイテンションで歌っていたときのものでした。初めて見るナイロン100℃の芝居も勝手にハイテンションなものだと思っていました。
しかし、実際の芝居は構成力に富んだ落ち着いたものでした。みんな演技はうまいし、要所要所で現れる映像演出も今まで見た中で一二を争うほど素晴らしいものでした。
でも、もう一度ナイロン100℃を見たいかと考えると、「もう十分だ。」しか思えません。
私が芝居で見たいのは、ある種の「過剰さ」なのだと知りました。バランスをくずしても何かを追求している様を見たいという気持ちがあります。それは、「若さ」と呼べるのかもしれません。3時間半という長丁場を飽きずに見終わって、満足はしているのですがそんな想いが心を離れません。
おもしろかったと思いつつも、また見たいとは思わなかった。初めての体験でした。
役者の中では、コナ役の峯村リエが押さえた演技で特に素晴らしかったです。

2012年4月27日金曜日

毛皮族「演劇の耐えられない軽さだネッ Wの喜劇」

2012年4月26日 19時30分開演 スタジオイワト
作・演出:江本純子
出演:江本純子・金子清文・高野ゆらこ・高田郁恵・柿丸美智恵・延増静美
江本純子は、青木さやかに似ている。顔つきも、「どこ見てんのよ!」と世間にけんかを売っているような雰囲気もそっくりだ。
物語は「Wの悲劇」のパロディのような筋立てで、役者が大げさに演じる「女優」を江本が、突っ込んだり、ぼけたりして進めていくが、全体の構成が結構ラフなので、そのまま流れてしまうシーンも多く見られた。
芝居のできがどうのこうのというよりは、江本純子の「どこ見てんのよ!」という姿勢の裏側にある怒りや悲しみ、あきらめこそがおもしろい舞台でした。
次回公演は、余裕があれば見たいと思います。

2012年4月26日木曜日

Phoebe Snow

4月26日で、大好きだったフィービー・スノウが亡くなって1年がたちます。
初めてフィービー・スノウを聞いたのは、ファーストアルバムの「フィービー・スノウ Phoebe Snow」でした。どんな歌手か全く知らなかったのですが、バックにベースのチャック・イスラエルやズート・シムス、テディ・ウィルソンなどジャズ畑の人が入っているので、それに惹かれてLPを買いました。まだ、CDではありませんでした。
一曲目を聞いて、その声に一発で惚れました。元来、マリア・マルダーや、リタ・クーリッジなどの少しハスキーで太めの声が大好きだったので、即、マイフェイバリットシンガーの仲間入りです。
初期に、2回来日した記憶があります。1回目は読売ホールで私はいけなかったのですが、行った人の話では、かわいそうなほどお客が入っていなかったそうです。2回目は、私も横浜県民ホールに見に行きました。ギタリストがフィービーのギターのチューニングを時々直してあげていたのが、ほほえましかったことを覚えています。お客の入りも8割くらいは入っていて、これなら3度めの来日もあるだろうと安心したことを覚えています。
しかし、その後生まれた赤ちゃんに障害があることがわかり、育児に専念するためにツアー活動をやめるという記事を雑誌で読んでがっかりしました。
ツアーに出ないでスタジオでコーラスの仕事やコマーシャルソングを歌っていたようです。そういえば、パティ・オースティンもお母さんの体が弱くて、鳴り物入りでデビューしたのツアーに出ないで、スタジオワークだけにしぼり、一部で「コマーシャルソングの女王」と呼ばれたりしてましたね。
その後は、新しいアルバムが出たのがわかれば買う程度だったのですが、2回、生のフィービーを見損ねた想い出があります。
両方ともニューヨークに遊びに行っていたときのことですが、一度は、チケットエージェントのホームページを見ていたときにニュージャージーの野外劇場で、フィービーのコンサートがあることを知りました。場所が鉄道とバスを乗り継いで行かなければ行けないようなところで、コンサート後、深夜にマンハッタンに戻ってこれるかどうかわからなくて、あきらめました。
2回目は、オープン間もないB・B・キングクラブのスケジュールボードを見たら、次の週にフィービー・スノウの名前があったのです。そのときは急いでいたので、次の日にお金を持って行ってみたら、もうキャンセルになっていました。
最近は、新しいアルバム「ナチュラル・ワンダー」もだし、少しづつ露出も増えてきたので、これは来日もあるかもと期待していたところに、入院、訃報の知らせで残念でなりません。
Youtubeで検索すると、ポール・サイモンやリンダ・ロンシュタット、スティリーダンのコンサートで歌っているフィービー・スノウを見ることができます。
元々、神経質な人のようで、ライブでは緊張しているのか声が固く、CDで聞く方が柔らかくて豊かな声が楽しめます。
代表的なCDはほとんど持っていると思いますが、CD化されていないビリー・ジョエルのバックバンドとやった「ROCK AWAY」は聞いたことがありません。
どこか、CD化してくれないかなあ。
未CD化といえば、ジョー・コッッカーがスタッフをバックに歌っている「スティングレイ」も、CDになっていませんね。これも是非聞いてみたい一枚です。
そのうち、ジョー・コッカーについてもかいてみたいと思っています。

2012年4月25日水曜日

チェルフィッチュ「現在地」

2012年4月24日 19時30分開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
作・演出:岡田利規
出演:山崎ルキノ・佐々木幸子・伊東沙保・南波圭・安藤真理・青柳いづみ・植村梓
「絶頂マクベス」に続き女優だけの芝居でした。
まるで物語を語るように全員同じようなトーンでゆっくり語られていく、寓話のようなお話でした。
3月11日の大震災後の日本の現状を色濃く反映した内容だったと思います。とくに、ラストの「そして村は何事もなかったように、穏やかな日々を取り戻しました。」という台詞とともに、客電がつき、舞台もフラットに明るくなる演出に、作者の考えがはっきりと現れていました。
淡々と進んでいく芝居、全員が同じような形の台詞回しの中で、2時間休憩なしの舞台を飽きさせないで見せる構成力、演出力はすごいと思いましたが、次回もみるかと言えば、微妙です。

2012年4月21日土曜日

Levon Helm

Twitterで、4月19日にLevon Helmが亡くなったことを知りました。好きで、今でもiPhoneに入れてよく聞いているミュージシャンが、また一人行ってしまいました。
Levon Helmの最大の想い出は、RCOオールスターズでの初来日です。今はなき久保講堂と日比谷野音でのコンサートに仕事でつきました。1978年のことです。
今から考えてもメンバーがすごくて、Levon Helm,Steve Cropper,Donald Duck Dunnがいました。そういえば、Satday Night LiveのハウスバンドやブルースブラザースのバンドにいたTom Maloneもいましたね。
最高におかしかったのは、Dr. Johnがメンバーに同行していてコンサート会場にも毎回きていたのに、一回も歌わずに帰ってしまったことでした。スタッフ一同、是非とも彼の歌を聴いてみたいと熱望していたのですが。今から考えれば、レコード会社との契約の問題があったのかもしれません。
私は、このコンサートで初めてパーライトとロックボードを見ました。野音の昼間でシュートしても当たりがわかる、色が見えることや、ロックボードの無限とも思える点滅パターンに感激したことを覚えています。
何よりびっくりしたのは、パーライトの軽さと明るさでした。それまでの野音の仕込といえば、3Kwや5Kwのソーラーやサンスポットを汗をかきかきイントレの上に担ぎ上げ、夕方を待って無理矢理シュートして、照明がきき始める頃にはコンサートが終わるという状態でしたから、ひとりで何台も持てるパーライトが、真っ昼間からシュートできるくらい明るいというのは革命的でした。
私をはじめてパーライトと出逢わせてくれたLevon Helmに感謝、そして合掌。

2012年4月18日水曜日

柿食う客 女体シェイクスピア「絶頂マクベス」

2012年4月17日19時30分開演 吉祥寺シアター
原作:W.シェイクスピア 脚色・演出:中屋敷法仁
出演:深谷由梨香、内田亜希子、荻野友里、我妻三輪子、葛木英、佃井皆実、小野ゆり子、斎藤淳子、藤沢玲花、葉丸あすか、渡邊安理、岡田あがさ、七味まゆ味、新良エツ子、きたまり
初めての柿食う客観劇。女優だけのシェイクスピア。休憩なしの90分バージョンなので、多くの場面が、役者の一人台詞で語られる。メリハリのきいた台詞回しと、細かいポージングの切替は、宝塚を思わせるものがありました。この記事を書くに当たり、ネットで柿食う客を検索していたら、中屋敷法仁さんのインタービューがあり、その中でも、台詞回しとポージングについて言及がありましたから、中屋敷さんの演出方法なのかもしれません。
女優はみんなかわいくて、好感が持てるのですが、演出の中で踊っているだけのような気がします。一人でも、その枠から飛び出してくるような人がいれば、さらにおもしろくなったような気がします。
次回は、男優も交えた芝居がみてみたいです。
是非、次回作も見に行きます。

追記(2012/4/21)
その後、Ustermで、すべての配役を入れ替えた乱痴気公演を見ました。といっても、気づくのが遅くて、ラストの30分だけでしたが。
確かマクベスをやったのは。七味まゆ味さんだったと思いますが、本公演の深谷由梨香さんにルックスでは負けていましたが、マクベスの狂気という点では優れていました。
全体のバランスでは本公演、マクベスに関しては乱痴気公演のほうが上という感じでした。

2012年4月17日火曜日

2012年第一四半期観劇の総括


20121月から3月の間に見た芝居は、16本でした。

114日 アイガットマーマン
121日 劇団鹿殺し「青春漂流記」
131日 ハイバイ「ある女」

22日 下谷万年町物語
210日 ぬいぐるみハンター「愛はタンパク質で育ってる」
211日 地点「トカトントンと」
2月20日 角角ストロガノフ「昆虫美学」
2月21日 劇団MONO「少しはみ出したら殴られた」
2月28日 KAKUTA「分岐点」

3月6日 あひるなんちゃら「まあまあだったね」
3月7日 「すばらしい一日」
3月10日 加藤健一事務所「ザシェルター」「寿歌」
3月14日 FUKAIPRODUCE羽衣「耳のトンネル」
3月15日 「黄色い月」
3月28日 MODE「満ちる」
3月30日 キティフィルム「破壊ランナー」

月平均5本強、何十年かぶりに芝居を見始めたにしては、まあまあいいペースなのではないかと思います。
この中で、ベスト3を選ぶならば、

ハイバイ「ある女」
劇団MONO「少しはみ出したら殴られた」
FUKAIPRODUCE羽衣「耳のトンネル」

の、3本です。
ハイバイ「ある女」は岩井秀人の芝居がおもしろく、劇団MONO「少しはみ出したら殴られた」は人間の弱さ、ずるさをさらりと日常のなかで描いたのに好感が持てました。FUKAIPRODUCE羽衣「耳のトンネル」は力一杯明るく楽天的で楽しい芝居でした。
次点としては、

劇団鹿殺し「青春漂流記」
ぬいぐるみハンター「愛はタンパク質で育ってる」
KAKUTA「分岐点」

の、3本を選びたいと思います。
劇団鹿殺し「青春漂流記」は、ゲスト出演の高田聖子だけがおもしろいという残念な結果でしたが、あの過剰なサービス精神は素晴らしいものがありますし、ぬいぐるみハンター「愛はタンパク質で育ってる」の若さあふれるスピード感もおもしろかったです。KAKUTA「分岐点」は劇団15周年記念公演で、3章の芝居を別々の演出で見せるというごちゃごちゃになりそうな芝居をシンプルにまとめ上げた劇団の力量に感心しました。
すべて、次回公演も見たいと思わせるに十分な内容だったと思います。

第一四半期全体を振り返ってみると、私の好きな芝居の傾向がかなりはっきりしてきました。
第一に、大きな劇場で有名な役者が出ている演目に、あまり好感を持っていない。1万円以上も払って見に行く気になかなかなれない。チケットが取りにくいせいもありますが。
第二に、シリアスなテーマを大上段に振りかぶって、正面から攻めるタイプは苦手。
第三に、基本、笑わせてくれる芝居がすき。
こんなところでしょうか。
4月以降も、がんばって芝居を見たいと思います。

2012年4月13日金曜日

劇団離風霊船「SUJBJECTION」

21012年4月12日 19時30分開演 下北沢ザ・スズナリ
作・演出:大橋泰彦
出演:伊東由美子、松戸俊二、山岸諒子、小林裕忠、倉林えみ、橋本直樹、江頭一晃、竹下智雄、神谷麻衣子、瀬戸純也、大矢敦子、鈴木紀江、柳一至、栗林恵美子、祥子、相川倫子、平石祥子、長橋佳奈
劇団名と、おもしろいという評判は昔から知っていましたが、なぜかチャンスがなく、初めての観劇でした。一言で言えば、評判通りおもしろい。
一つの舞台に二つの芝居が存在するというアイディア、そのかみ合い方やかみあわなさ加減の妙。個々の役者の演技の質の高さ。すべてが好ましいものでした。
一つ残念なのは、ラストの終わり方がおとなしすぎることです。何かばしっと決まる演出があれば、もっと締まったのにと思ってしまいます。
とはいえ、もっと前から見ていれば、私の観劇ライフもより豊かなものだったかもしれないと思わせる芝居でした。
次回公演も、是非見に行きたいです。

2012年4月7日土曜日

リジッター企画「もしも、シ」

2012年4月7日 14時開演 王子小劇場
作・演出 中島庸介
出演:工藤理穂、芦沢統人、川上ルイベ、石澤希代子、津和野諒、マリカ、丸石彩乃、中島康介、沖山麻生、西川康太郎、森脇洋平
大人計画の当日券の電話があまりにもつながらないのであきらめ、同時期に公演していたこの芝居を予約してみました。
物語は、「1995年1月17日、フルサトという名の少女が死んだ。その15年後、東京。舞台はテレマーケティング事業部。今日も主任のタカラとアルバイト達は電話の仕事をしていた。そんな中、嫌われ者のハジメは謎の少年と出逢う。少年に名はなく、心臓は止まっていた。ハジメは言う。『君は見えちゃまずい奴なんじゃないか?』その出逢いによって、ある記憶が蘇ったハジメは、ピストルを持ってタカラの元へ向かうのだった。タカラとハジメの過去とは。そしてその少年の望みとは。」(公演チラシの裏面より)
まあ、こういったストーリーが華麗なレトリックに満ちた台詞で語られるわけです。私は、若い頃見た寺山修司を思い出しました。もっと若い人なら、野田秀樹みたいと言うかもしれません。
でも、その華麗なレトリックに満ちた台詞の洪水の果てにくる結論は、「フルサト/故郷を忘れるな」というあまりにもストレートなわかりやすいものなのです。その結論なら、もっとふさわしい演出、演技があったと思います。華麗なレトリックに満ちた台詞の芝居のエンディングは、華麗に決めていただきたいものです。
この芝居を見て、なぜ寺山修司があまり好きでなかったのか思い出しました。それは、「華麗なレトリックに満ちた台詞」が成立するにはそれを支える役者の肉体が必要なのに、当時の天井桟敷の役者はへたくそでみていて恥ずかしくなるほど空回りしているだけだったからです。役者が台詞を理解しているとはとうてい思えず、役者の演技をすべて無視し、台詞の意味だけに集中して寺山修司のイメージを追いかけていたような気がします。
この芝居の役者達は、昔の天井桟敷よりははるかにうまく、決められた動きを無難にこなし、指示された感情で台詞を言って、芝居をしていました。でも、それがかえって操り人形のように見えて、うすら悲しい気持ちにさえなりました。
この団体の次回公演を見に行く気にはならないと思います。
「チャレンジ観劇シリーズ」第九弾も、残念な結果となりました。

2012年3月31日土曜日

キティフィルムプレゼンツ「破壊ランナー2012」

2012年3月30日 19時開演 東池袋 あうるすぽっと
作・演出:西田シャトナー
「惑星ピスタチオ」の公演は、一度も見たことがありません。ピスタチオ解散後、どこかの芝居に客演していた腹筋善之介が、自分の持ちネタのような扱いで「パワーマイム」を披露していたのを見て、とてもおもしろかった記憶がありました。その記憶を頼りにこの公演を見に行ったのですが、開始5分で残念な結果に終わることが予想でき、最後までその予想は外れることはありませんでした。
小道具や装置を排除し、すべての状況や状態、心象までを説明しすぎるほどに説明しつつ、大量のギャグをその中に投入するこの芝居には、役者に講談師や、落語家のような「語り」の技術、芸が必要とされると思います。それを、そこいら辺の若い役者に要求するのは無理がありすぎます。結果、何を言っているかわからない場面ばかりの薄ら寒い時間だけが流れていくことになってしまいました。
台本は結構おもしろいし、演出もがんばっている、でも役者がそれに答えられなければ、ろくな舞台にはなりません。
懐かしさから舞台を見に行くのは、やめた方がよいと思いました。昔の戯曲でも、舞台はいつも現在進行形のものなのですから。

2012年3月27日火曜日

MODE「満ちる」

2012年3月26日 19時開演 座・高円寺1
作:竹内銃一郎
演出:松本修
出演:すまけい、小嶋尚樹、中田春介、若松力、岡部尚、山田キヌヲ、大崎由利子、中地美佐子、山田美佳
いつもは「カフカの小説の舞台化」という、あまり私が興味が持てない作業をしているMODEの舞台を見に行く気になったのは、ひとえにすまけいが出演するからでした。私が芝居に関心を持ち始めた30年以上前に、すでに「伝説の役者」だったすまけいは、私が芝居を見始めた頃には、すでに舞台から遠ざかっていて、井上ひさしの芝居で復活したときは、私の方が舞台を見にいく意欲を失っていた時機でした。
初めてのすまけいは、片手片足が不自由で台詞回しも完全とはいえませんでした。芝居後半の娘との二人だけのシーンは、年老いた役者の芝居はこうあってほしいと私が思っていたことを具現したような素晴らしいものでした。森繁久彌や三国連太郎のような妙に偉そうな芝居でなく、どこか悲しくでも誇り高い、人間味あふれる堂々としたものでした。残念ながら、登場人物が増えてくるとまわりのスピードについて行けず、もたもたしてしまうのは残念でした。
何人かの役者が大声で怒鳴ることで怒りを表す芝居をしていましたが、それがうるさく気になりました。
舞台装置として、前面にシネマスクリーンを表す枠がつり下げられ、場面転換の時にフィルムのコマ落としのような効果がほどこされて、全体を映画にみせる演出がされていました。
また、カメラリハーサルのように台詞に詰まる→台本が出てきて段取りの確認→その前からやり直すというようなシーンもありました。これらが、「映画=虚構」を表す演出なのか、すまけいの不自由さ故の方策なのかよくわかりませんでした。

2012年3月24日土曜日

ローチケ

今年に入っていろいろ芝居を見るようになって、劇場に行くたびにくれるチラシを大切に持って帰って、仕事のスケジュールとにらみ合わせて見に行く芝居を決めています。
見に行く芝居が決まったら、次はチケットの予約です。インターネット上のいろいろなチケット予約サービスを使って予約していくわけですが、現在様々な予約サービスがあります。チケットぴあ、イープラス等々。
今回、ローチケというサービスを初めて使ったわけですが、これが実に使いにくいのです。
まず、会員になるときに、いろいろな会員があってどれにしたらいいかわかりにくい。最初に「ローチケWEB」の会員になろうとしたら、ほしくもない「PONTAカード」を作らされそうになって慌ててブラウザ閉じたりしました。
やっとの思いで会員になり、チケットを予約しても、発券がまた実にめんどくさい。
「Lopi」とか言う専用端末に、「会員番号」「予約番号」「暗証番号」をいちいち入力して、あげくに予約に使ったクレジットカードを自分でスワイプしなければいけないのです。最後のとどめは、出てくるのは実券ではなく「引換券」、それを持ってレジに行き、やっとことで、実券を手にできるのです。
なんと回りくどいサービスでしょう。二度と使いたくありません。

パルコプロデュース「テキサス」

2012年3月22日 19時開演 渋谷パルコ劇場
作:長塚圭史 演出:川原雅彦
出演:星野源、木南晴夏、野波麻帆、岡田義徳、福田転球、政岡泰泰志、伊達曉、吉本菜穂子、山岸門人、湯澤幸一郎、川原雅彦、高橋和也、松澤一之
この芝居を見ることに決めたのは、噂だけで見たことがなかった長塚圭史の戯曲を、同じく評判だけ知っていたハイレグジーザスの川原雅彦が演出するからでした。
要するに、今、生きがよいとされている脚本家、演出家がどんなものだか自分で体験したかったのです。
極端な設定(トロッコとロープウェイと称する綱渡りでしかたどり着けないど田舎で、住民は暇つぶしに格安の整形手術を受けて、全く別の顔になっている)を違和感なく見せるのに、けれんみあふれる演出は有効だとは思うのですが、全体の疾走感が全く足りていません。ギャグを一つ言うたびに、役者が「ドヤ顔」を決めているような気すらして、スピードが全く上がっていきません。
疾走感があれば、暇つぶしに整形で別人になってしまう人々のやるせなさまで、明確に観客に伝わったと思います。
殺し屋の役で出てきた川原雅彦之演技はかっこつけてるのが見え見えで、今時、高校の演劇部でもやらないような芝居で、みていられませんでした。

2012年3月16日金曜日

オフィスコットーネプロデュース「黄色い月」

2012年3月15日 15時開演 下北沢ザ・スズナリ
作:デイヴィット・グレッグ 演出:高田恵篤
出演:柄本時生・門脇麦・仲川安奈・下総源太朗
パンフレットにプロデューサーの言葉として、2009年からずっとこの戯曲を上演したくて、やっと今回できたというようなことが書いてありましたが、どこにプロデューサーを引きつけた魅力があったのかわかりませんでした。出演者が、交互にナレーターと役を行き交いながら、ストーリーが進行していきます。ストーリーは、その場の勢いで人を殺してしまった若者が女の子と北に逃げ出し、一時、平和な暮らしを営むが最後に捕まってしまうという、ボニーとクライドのような話です。ナレーションが、背景や登場人物の内面を説明してくれるので、シーンはわかりやすく、テンポよく進んでいきます。しかし、同じ役者が同じようなトーンで台詞もしゃべるので、すべての台詞が説明的に聞こえて、膨らみが全くありません。約75分の芝居なので、あれよあれよという間に終わってしまいますが、あれ以上長かったら、退屈してしまったに違いありません。
現在のイギリス演劇(正確には、スコットランドですが)は、どんなものかという興味から見に行きましたが、残念な結果でした。

2012年3月15日木曜日

FUKAI PRODUCE羽衣「耳のトンネル」

2012年3月14日 19時30分開演 東大駒場前アゴラ劇場
作・演出・音楽:糸井幸之介 
出演:深井順子・日高啓介・鯉和鮎美・高橋義和・寺門敦子・澤田慎司・伊藤昌子・西田夏奈子・加藤律・幸田尚子・並木秀介・金子岳憲
私の大好きな芝居として、「上演中は、笑って笑って笑いが止まらないけれど、劇場を出たらすぐ内容はすっかり忘れてしまい、笑った記憶だけが残る。」というものがあります。その昔、東京乾電池が今はなきジャンジャンで公演していたときに、経験した記憶があります。内容はすっかり忘れてしまったので、題名も覚えていませんが。
FUKAI PRODUCE羽衣の「耳のトンネル」を見て、このことを思い出しました。もしかしたら、私の理想を実現してくれるグループかもしれません。現在のところ、小笑い程度で、大爆笑まではほど遠いのですが。
音楽ライブもやっているらしいので、動向を注意してみていきたいグループです。
そんなことを思った「チャレンジ観劇シリーズ」第八弾でした。

2012年3月10日土曜日

加藤健一事務所「シェルター・寿歌」

2012年3月10日 17時開演 下北沢本多劇場
作:北村想 演出:大杉祐 出演:加藤健一・小松和重・日下由美・占部房子
何よりも、「寿歌」が見たくてチケットを買いました。今年に入って、シスカンパニーが新国立で上演したのですが、スケジュールが合わず見られなかったので、こちらを見ました。
79年に書かれたという、ゆうに30年以上前の戯曲なのに少しも古くないです。核戦争後の世界を、ゲサクとキョウコという二人がいい加減な芸を見せながらさまよい歩くうちにヤスオという男と出会う。どうもヤスオは神様らしいのだが、何もできない。キョウコとヤスオは惹かれあうのだが、最後にはヤスオはエルサレムへ、キョウコとゲサクはモヘンジョダロにいくために分かれてしまう。べたな設定にべたなストーリーなのだが、不思議とイメージが広がり、見た後に様々な言葉にならない感情が残ります。
このブログを書くために、少しインターネットで「寿歌」について検索してみたところ、「六号通り診察所所長のブログ」というところに、「寿歌」の感想があり、なかに「これはゴドーを待ちながらの1バージョンだ」というような文章がありました。実は、私が一番好きな戯曲は「ゴドーを待ちながら」でして、そう言われれば同じにおいがすると、一人で納得しました。
もう一本の「シェルター」は、「ほかの出演者のテンションを軽く受け流す芝居のうまい加藤健一」という構図に飽き飽きするだけでした。唯一の感想は、「加藤健一の声は、江守徹に似ている」というものです。無理に2本立てにしなくてもよかったのではないでしょうか?
加藤健一の芝居はこの公演で十二分に見た気がするので、もう一生見なくても済みそうですが、「寿歌」はいつかどこかで上演されたら、また、是非みたいです。

2012年3月8日木曜日

吉川威史 PRESENTS「素晴らしい1日」

2012年3月7日 19時30分開演 下北沢 駅前劇場
原作:平安寿子 脚本:ブラジリィー・アン・山田 演出:龍川英次
出演:内浦純一・伊勢佳世・宇田川椎子・石澤美和・安藤聖・浅野千鶴
「チャレンジ観劇」シリーズ第七弾。この芝居を見ることに決めたポイントは、チラシの裏にあった原作者の推薦文でした。内容は、ユーモアを交えながらハリウッドでも映画化されるかもしれない(韓国では、映画化された)この小説が、日本ではまったく注目されていないことを嘆いているものでした。それを読んで、見てみたいと思いました。
結果は、中当たりというところでしょうか。脚本、演出、役者、劇場の大きさまで、バランスのよいおもしろい芝居でした。
昔、お金を貸した男を見つけた女がお金を返してもらうため、金を借りて回る男について回るというロードムービーのようなお話なんですが、前半のエピソードが生き生きしているのに比べ、後半の元大女優のエピソードでは、肝心の大女優が大女優に見えないし、婦人警官とシングルマザーを演じた浅野千鶴の芝居が少々ぎこちないのが残念でした。プロデュース公演なので、次回は全く違う配役になるのでしょうが、「吉川威史」の名前は覚えておきたいと思います。

2012年3月6日火曜日

あひるなんちゃら「まあまあだったね。」

2012年3月6日 15時開演 下北沢 OFF-OFFシアター
作・演出:関村俊介
出演:根津茂尚、佐藤遼、渡辺裕也、江崎穣、堀靖明、三枝貴史、永山智啓、澤唯、三瓶大介、関村俊介
「チャレンジ観劇シリーズ」第六弾
この劇団を選んだのは、ひとえに「あひるなんちゃら」という劇団名のせいです。なんていい加減というか、こだわりのない名前なんだろうか。「笑いあり、涙なし」が劇団のモットーだということだし、ひょっとしたら、ひたすらおもしろいだけの芝居を見せてくれるのではないのかと勝手に思って、行ってきました。
結果は、残念ながら、涙はないが笑いもない。できの悪いコントのような台本を、芸もなく、芝居もうまくない役者がテンションまで低く演じるという、苦笑いしかできないような内容でした。アンケートの「芝居の感想」の欄に、「まあまあだったね。という感想だけは勘弁してください。」と書いてありましたが、「まあまあ」以下だったねという感じです。
次回公演を見る気には、なりませんでした。

2012年3月5日月曜日

KAKUTA「Turning Point(分岐点)」

2012年2月28日 19時30分開演 ザ・スズナリ
作:堤泰之・金井博文・桑原裕子
演出:堤泰之・山崎総司・桑原裕子
出演:木下智恵、大枝佳織、武藤心平、熊野善啓、鳥島明、ヨウラマキ、佐賀野雅和、前田勝、原扶貴子、冠仁、野澤爽子、高山奈央子、成清正紀、桑原裕子、若狭勝也、馬場恒行、長尾長幸
「チャレンジ観劇シリーズ」第五弾です。
昨年夏の「ピーターパン」の演出をしたのが桑原裕子さんだと知り、今まで全く知らなかった名前なのでネットで調べたところ、KAKUTAという劇団の方だとわかりました。それ以来、一度芝居を見たいと思っていたのが今回ようやく果たせました。
劇団結成15周年記念公演ということで、芝居のストーリーは、劇団の歴史に重なるような「出発」「決別」「迷路」「対峙」「覚悟」と名付けられたプロローグ、エピローグつきの三つの話からなる二人の女性の物語でした。居場所を探して転々と移動する絵里と一緒にいたいために見当外れの努力をする貴和子。
二人は何度もすれ違い、最後に「全く違う場所にたどり着いて、そこでまた出会った。だったら、そこから、また、始めればいいじゃない。」という結論にたどり着く。最後の結論はあまりにもナイーブすぎるようにも思えますが、彼女たちの心情としては、正直なところなのでしょう。
桑原裕子さんのブログに、今回の公演は「いつもより賑やかで、ガチャガチャしている」という言葉がありましたが、普通のKAKUTAの芝居を知るためにも、次の公演も見たいと思います。

2012年2月25日土曜日

MONO「少しはみ出したら殴られた」

2012年2月22日 19時30分開演 吉祥寺シアター
作・演出 土田英生
出演:水沼健、奥村泰彦、尾方宣久、金替康博、土田英生、岡島秀昭、諏訪雅、中川晴樹
昔WOWOW舞台中継を見て、おもしろかった記憶があったので見た「チャレンジ観劇シリーズ」第四弾。
あっさりとした日常会話のなかで、知らず知らずのうちに進んでいく軋轢と差別。
ある日、突然二つの国に分裂した国の刑務所は、偶然にも国境線の真上にありました。
仲のよかった囚人たちも出身地で二つに分かれ、次第に仲が悪くなり、最後には大乱闘になります。
オチは、二つの国はEUのように周辺諸国を巻き込んで統合され、刑務所には、気まずい日常が戻ってきます。この芝居を見て、前の角角ストロガのフの芝居で、納得できなかったところがはっきりとわかりました。角角ストロガのフでは、現実を「事件」という形で再構成して、ゴロンと舞台に投げ出しただけに過ぎないのです。その先にあってほしい「評価」が全く見えてきません。
「評価」とは、「マインドコントロールは非人道的です。」などというありきたりな主張ではなく、「犯人の徹底的な悪の魅力」でもよかったと思います。それが見えてこず、全体の演技力不足で、クールに人を操る犯人と何となくそれに従ってしまう普通の人々という構図が見えていたに過ぎませんでした。
MONOでは、地味ですが確かな個々の演技力とアンサンブルで、苦くもささやかな希望を含んだ評価を見せてくれました。
次回公演も是非みたいです。

2012年2月20日月曜日

角角ストロガのフ「昆虫美学」

2012年2月20日 13時30分開演 王子小劇場
作・演出:角田ルミ
出演:青柳尊哉、村田唯、正木佐和、犬塚征男、関亜弓、椿かおり、塚田まい子、島崎裕気、綱川凜、仲田敬治

「チャレンジ観劇シリーズ」第三弾。この芝居を選んだのは、劇団名のおもしろさと、王子小劇場に一度行ってみたかったという簡単な理由でした。

安易な選択理由と裏腹に、芝居は実際にあった「一家監禁殺人事件」をもとに、マインドコントロールとそれによって自我が崩壊していく人々を描く重いものでした。始まりから一気に一家崩壊に導いていく作者の筆力は相当なものです。残念ながら、役者の力量が全体に不足気味で、マインドコントロールする方もされる方もいまいち、説得力がありません。特に、犯人の吉田がラスト近く長女にプロポーズするところは、唐突な感じが残りました。
それにしても、演出家の能力のなかには「洗脳」する力が含まれていることがよくわかりました。
きっと、優れた演出家は、セールスマンやネットワークビジネスでもよい成績を上げることでしょう。
この劇団の次回公演を見に行くかどうかは、作演出の興味がどこにあるのかわかってからにしたいと思います。

2012年2月12日日曜日

地点「トカトントンと」

2012年2月11日 15時開演 神奈川芸術劇場大スタジオ
構成・演出:三浦基
実は、この芝居は最初見る予定にしていませんでした。たまたま仕込中に覗いてみたら、とても変わった舞台装置だったので、これが芝居のなかでどう使われるのかを知るには、本番を客席で見るしかないと思い、慌ててチケットをとりました。
変わった舞台装置というのは、正面すべてが10センチ角の金属片で埋め尽くされていて、その金属片は上辺を死点としてぶら下げられていうだけで、後ろからの送風機の風でゆらゆら揺れるという「風を視覚化する」装置と、逆開帳の床の組み合わせというものでした。
逆開帳の傾斜はかなりの物で、客席から床は全く見えません。
ホリゾントと床の接するところも死角になっており、その隙間から役者が出入りするのも見えず、役者が立ち上がって初めてその存在がわかることになります。通常、黙認している登退場のタイムラグがゼロになるという不思議な感覚が味わえました。
「風を視覚化する」装置の方は、私には残念ながら成功していいるようには見えませんでした。送風機を回すと、金属片の動きは風というよりは波紋のようにしか見えませんでしたし、なによりも送風の音がうるさくて金属片の動きの変化より、音に気持ちが持って行かれます。録音した送風機の音を流して、金属片は動かないというバリエーションを作っていましたが、それもたいした効果を生んでいませんでした。
風を舞台効果として使うことは、前々から何度もいろいろな芝居で見てきましたが、すべてその音に邪魔されてうまくいったのを見たことがありません。
「風の視覚化」で私が思い出すのは、ずいぶん前の化粧品のコマーシャルで、画面一面の風車が左から右にさーっと回り出す場面です。もちろん、音はしません。あれほど鮮やかに、風の視覚化をとらえた例はほかにないと思います。
もちろん、映像だからできた技で、舞台では無理ですが。
さて、芝居の中身ですが、一言で言えば、「既存のテキストを解体・再構築して、新たな発声を与えることにより、新しいドラマを作り出す。」ということでしょうか?
実はこれは私が若い頃見た早稲田小劇場の「劇的なるものをめぐって」についていわれていたことですが、戦術は違えど、戦略的には同じものに思えました。
その成果がどれほどのものであったかは、私には正直わかりません。マイナスの地点から出発しなければならない悲しみや、まだ、何も成し遂げられていないという静かな絶望感は、ゆっくり心にしみていきます。
その気持ちを心に抱えたまま、観客は静かに劇場を後にします。
最後にどうでもいいことですが、ラストに出てきてほっとする雰囲気をかもしだした男の子は、演出の三浦さんのお子さんでしょうか?お顔がそっくりでした。

追記
後日知ったことですが、子役の子は演出家の甥御さんだそうです。

2012年2月11日土曜日

ぬいぐるみハンター「愛はタンパク質で育ってる」

2012年2月10日 19時30分開演 下北沢駅前劇場
作演出:池亀三太 
出演:神戸アキコ、浅利ねこ、石黒淳士、猪股和麿、武田有希子、浅見紘至、浅見臣樹、黒木絵美花、でく田ともみ、町田水城、松本大卒、満間昂平
私のなかで密かに始まった「チャレンジ観劇シリーズ」第二弾。
これは大きな劇場で芝居を見ても、今ひとつおもしろくない。みんな芝居もうまいし、よくできているけれど、なぜかわくわくどきどきしない。そんな思いから、とりあえずわくわくどきどきするために、今まで見たこともない劇団やユニットを見に行くギャンブルシリーズです。
ルールは、劇場でもらったチラシやWeb上の情報からおもしろそうな物を選び、必ず予約して見に行く。劇評や感想は、考慮しない。なぜなら、基本おもしろいと思った人が感想を書くので、参考にならないことが多いからです。
ちなみに、「チャレンジ観劇シリーズ」第一弾は、ハイバイでした。
さて、ぬいぐるみハンター。
三蔵法師や黄門様、イージーライダー、イソップ童話のウサギとカメ、童謡の犬のおまわりさんと迷子の子猫ちゃん、猿岩石などが、なぜか一本道をひたすら前に進む話と、不器用なカップルのラブシーンと交互に描かれます。。この部分は、コントを見ているようでおもしろいです。しかし、神様が現れるあたりからタイトルと併せて、だんだんと結末が透けて見えてくるようになり、2回目の神様登場で決定的になります。
すなわち、三蔵法師たちはすべて精子であり、ゴールは赤ちゃん誕生、受精なんです。結末に向かえば向かうほど、スピード感は減り、どこかで見たようなシーンや台詞が多くなり、おもしろさは減っていきます。作者もそれを気にしたのか、ラストに今までのシーンをフラッシュバックの連続で見せることで、スピード感を取り戻そうとしたようですが、残念ながらカタルシスを得ることには失敗しています。
ほかの結末はなかったのでしょうか?
前半の疾走感のまま、突き抜けてくれればもっとおもしろかったと思います。
振り返って見れば、コントのようなシーンの台詞も、結末に向かって慎重に配置されており、プロットに従ってちゃんと構成されていることがわかります。(ただし、「ぼろぼろになって立ち止まる女」のシーンは、変にシリアスなため、全体から浮いているように感じました。)
だから、別の結末などあり得ないことはわかるのですが、ラストがあまりにも陳腐なのがとても残念です。
役者では、女優陣がそれぞれ、とてもかわいかったです。特に、不器用なカップルのムクミを演じた神戸アキコが、八面六臂の大活躍でおもしろかったです。別の演出で芝居しているところを見てみたいです。
劇団としては、次回公演を見るかどうかは微妙なところです。

2012年2月6日月曜日

iCalへの不満

私は自分のスケジュール管理をプライベートも仕事も、すべてiCalでやっています。今までは特に不満もなく、年末年始に行った、MobilemeからGoogleカレンダーでの同期に移行後も快適に使っていました。
ところが、「今年は芝居を見る。しかも、金を払って」という年頭の誓いを実行するため、気になる芝居の公演スケジュールをiCalに入力し始めたところ、困ったことが起きました。日常的に私が使っているのは13inchのMacBookですが、これに画面いっぱいにiCalを表示しても、月間画面で一日4件以上のイベントは表示されないのです。オーバーフローしたイベントは、「 ... 」と小さく表示されるだけです。これでは簡単に見逃してしまいます。
私の観劇スケジュールの決め方は、
「きになる芝居の公演スケジュールをiCalに入力しておく。
仕事のスケジュールが決まったら、空いている日に見られる芝居を確認し、チケットの手配をする。」というものです。
このため、芝居のスケジュールが4本以上重なっていると、その日の仕事のスケジュールがオーバーフローしていて、芝居と仕事のダブルブッキングの危険性があるということです。
その可能性がある日には、週間画面なり、日間画面に切り替えて確認すればよいという話ですが、それもめんどくさい。ましてや、そのために広い画面のiMacを立ち上げるのは、もっとめんどくさいです。
要は、iPhoneのカレンダーのように月間画面の下に、その日のイベントがリストで表示されていればベストで、少なくとも、Googleカレンダーのようにオーバーフロー分は、「その他5件」とはっきり表示されればすみそうです。
そんなスケジュールAppがないかと、「Mac AppStore」も見てみましたがスケジュールアプリ自体の数が少ないし、欲しい機能のアプリは見つかりませんでした。
とりあえずは、観劇スケジュールの決定時には、慎重に確認するしかないみたいです。


2012年2月3日金曜日

下谷万年町物語


2012年2月2日 14時開演 シアターコクーン
作:唐十郎 演出:蜷川幸雄 出演:宮沢りえ、藤原竜也、西島隆弘 そのほか

突然思いついて見に行ったわりには、2階の前から2列目という見やすい席で見られました。
しかし、長い。休憩が2回あるとはいえ、3時間30分は長いです。立ち見席だったら、途中で帰っていたかもしれません。
やり過ぎと思えるほど、水に落ちながら熱演する藤原竜也の1幕。何度も墜落しそうになりながら、そのたびに高度を上げて持ち直す、スリルあふれる演技の宮沢りえの2幕。ワハハ本舗の梅垣義明を思わせる怪演の六平直政を狂言回しに、爆走する3幕。
なかでも全編を通して、きれいな台詞回しと情感あふれる感情表現で全体を落ち着かせた西島隆弘は、すてきでした。
脇では沢隆二が渋く、いぶし銀の演技で光りました。
しかし、私にとっての唐十郎戯曲の最高の語り部は、やはり、李麗仙であり根津甚八であり、不破万作、大久保鷹をはじめとする状況劇場なのです。
宮沢りえの台詞を聞きながら李麗仙ならなんというだろうとか、藤原竜也をみながら根津甚八ならどうだろうとか、妄想が止まりません。

私にとっての唐芝居は、上野の不忍池水上音楽堂で見た「ベンガルの虎」だったことを改めて自覚しました。若くもなく美人でもないのに平然とヒロインを務める李麗仙、自分の台詞のとちりに自分で吹き出してしまう芝居なんか全然できない根津甚八、一歩間違えば浮浪者にしか見えない不破万作や多く場鷹。多すぎる猥雑な物や余計な物を抱え込んだまま、物語は場面を飛び回り、ラストに向かって爆走する。これが私の唐芝居のイメージです。
やはり、宮沢りえではやらしさが足りない。きれいだし、崇高な感じも十分だが、猥雑さがない。

2012年2月1日水曜日

ハイバイ「ある女」

2012年1月31日 14時開演」駒場アゴラ
作演出:岩井秀人 出演:岩井秀人、小河原康二、猪股明、上田遙、平原テツ、坂口辰平、永井若葉、吉田亮
不倫をしている女性タカコの話です。タカコは、同棲していた恋人に振られたショックで会社を変わり、すぐに上司の森と不倫の関係になる。最初は不倫だとわからなかったが、わかった後もずるずると関係を続け、お金までもらうようになる。それでも相手を喜ばせようと、怪しげなセックス教室に通い、だまされて売春までさせられるようになる。
タカコは、他人とも関係にとても臆病です。自分のささやかな望みも、何度もつばを飲み込み、口ごもってからでないといえない。自分の希望が通らなくても、その場を立ち去る勇気もありません。
こんなタカコを、作演出でもある岩井秀人が、悲しく切なくおかしく演じて、すばらしい。ただ、周りの登場人物の話し方が、みんな同じように聞こえてしまうのが残念です。もう少し性格がはっきり出れば、もっと物語が膨らんだと思います。
隣の定食屋の娘を演じた上田遙は、とてもかわいかったです。舞台上で、女優がかわいく見えると、とても得した気分になります。
次回作も見に行こう。